>> やんばるセンチュリーライド <<
〜200kmレースのコース体験ができる、189kmサイクリング〜
04:40 起床。天候は晴れ。
数々の試練を乗り越えつつも、なんとかほぼ正常なコンディションでこの日を迎えられたこと、そして心配の種であった天候にも恵まれたようで、まずはホッと胸を撫で下ろす。
05:00 朝食。
06:00 スタート地点へ移動する。
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南国と言えども、夜明けの時間はさほど変わらないのだろうか。
しかしこの薄明かりがまた幻想的であり、これから始まるイベントの幕開けを徐々に実感させる演出にも感じられ、次第にテンションも上がってゆく。
06:10 スタート地点到着。既に多くのレーサーが集っていた。
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また地元のテレビ局の取材クルーも素材撮りやインタビューに勤(いそ)しんでいた。
このレースは(今日はサイクリングだけど)比較的国際色豊かなイベントのひとつであり、外国人レーサーの姿も少なからず見受けられる。
そんな彼らへのインタビューの準備も万端なようで、しっかり通訳を介していたのが印象的だった。
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06:50 スタート目前。全参加者がスタートラインへと一斉に集う。
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07:00 189kmサイクリング部門スタート。
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比較的ゆっくりしたペースで(そりゃそうだ)まずは明日に控える50kmレースと同じ道を走る。
さて、当然ながら自分にとって50kmレースのコースは走ったことがない。が、幸いにもこれが試走にもなるため、コースの雰囲気や危険と思われる箇所、そして特徴のあるアップダウンを脳裏に刻みつけながら、遥か先のゴールを目指す。
07:20 名護湾沿いの海岸線を走る。
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朝日が昇り、陽の光が次第にその力を増してゆく。
若干肌寒かった気温も、優しい太陽の恩恵にあずかり、こわばった身体はほぐれ、ペダルを踏む力へと絶え間なく還元されてゆく。
07:50 少し長い上り坂を上りきったところで、美ら海水族館のある海洋博公園で最初の休憩をとる。
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今回の沖縄訪問の目的のひとつに、世界最大の水槽で世界最大のサメを飼育いているこの水族館に訪れるというものがある。
しかしその予定日は、明日の50kmレースのすぐ後だ。
果たしてうまくいくだろうか…。
そんな不安と共に抱く、もうひとつの感情「明日は必ずここにまた戻ってくる」という決意をひとり固めつつ、その場を後にする。
08:40 レース分岐点。
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50kmレースはここで右折をし、ゴール地点へと向かう。
左折すれば200kmレースのコースである。
そしてもちろん、今回のサイクリングでは左折をし、沖縄本島最北端を目指してゆく。
09:20 スタート地点から多少はあった市街地や信号もすっかり無くなり、ひたすら海岸線を進む頃、陽はすっかり昇っていた。
そんな爽やかな朝のサイクリングを楽しみつつも多少の疲れを感じた頃、休憩地点・道の駅「大宜味(おおぎみ)村」到着。
現在65km地点。
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ここでは補給食も用意されており、どうやら本格的な休憩タイムのようだ。
自分が到着する頃、先頭集団は早くも出発の体制をとっていた。
が、焦ることは無い。競い合うのは明日、存分にすればいい。
今は天候と、景色と、風を楽しむ。
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09:40 体力がひと通り回復したところで、再び走り出す集団を見つけ、これに自分もついてゆく。
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日差しが強くなり、気温が上がる。
ただひたすらに続く海岸線の道。聞こえるのは風を切る音と、鳥の鳴き声。
都心の喧騒を忘れ、純粋に自分の体力を駆使しつつ、大自然と戯れる・・・
※海岸線を走行中の様子をデジカメ動画で撮影してみました。
ダウンロードはこちらからどうぞ。(6.8MB)
10:30 休憩所“宜名真漁港”到着。
現在80km地点。あと約16kmで昼休憩だ。
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僅かな給水休憩を挟みつつも、大きな集団を探し、これに合流するタイミングを計り、再び自転車を走らせる。
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しかし、さすがに海岸沿いをひたすら走るコースには気が滅入ってきた。
気分は早くも昼休憩に向いていた。
11:00 「名護」の地名を目にする。
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ほぼ中間地点に入った。そしてコースも本島最北端を辿り、8年前に参加した120kmレースのコースを逆走する状態となっている。
そう、記憶さえ辿れば確実にここは思い出すことの出来る場所なのだ。
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急勾配の坂を上る。
中にはこれを得意とし、ダンシングをしながら一気に上るライダーもいる。
中には自転車を降り、これを押して歩くライダーもいる。
恥ずかしながら今の自分には一気に上る体力は…残り90余kmを考えると、これを実行する体力も勇気もない。
しかし、だからと言って歩くわけにはいかない。
かつて、どんな急勾配だろうと、レースであれば酸欠になろうと足がつろうと、全力で駆け上がった時期があった。
それが出来ない今の自分に不甲斐無さを感じながらも、それでも自転車から降りることなく上り続けるのは自分なりの意地なのかもしれない。
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山頂を越え、一気に下り坂を下りてゆく。
下り道は得意中の得意。
もちろん、自分の中で制御できる限界速度というものがあって、これを超えた時のカーブには未だに恐怖感が伴うのだけれども、そのゾーンに突入するギリギリの状況を維持しながら、上りで遅れをとった距離を下りで縮めてゆく。
そして坂を下りきったところで係員が右折を促す姿が目に入る。
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11:10 中間地点・奥やんばるの里に到着。快晴。
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昼食にカレーライスを食べながら、これまで撮影した写真を眺める。
また、ふと携帯(SoftBank)を取り出すが、これは圏外だった。
※「奥ヤンバルの里」で休憩をとるライダーの光景をデジカメ動画で撮影してみました。
ダウンロードはこちらからどうぞ。(2.3MB)
11:40 長時間の休憩は以後の走行に影響するため、ある程度体力が回復したところで走行を再開する。
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再開ほどなくして、58号線の起点を発見する。
この道は前日にシフトワイヤーを求めて訪れたが臨時閉店をしていた自転車屋の目の前を通る道であり、繁華街・国際通りの入り口にほど近い道であり、もっと言えば8年前にレース終了後、那覇に戻って1泊したホテルが面していた道でもある。
そんな道も、全てはここから始まっていたのか…。
また、起点目印のすぐ近くにある「名護 86km」表示も目にする。
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確実に距離は消化している。
戻ろう、名護へ。
12:00 大雨。
突き刺さるような鋭い雨が降り注ぐ。
目の前で雷が落ちる。
事前説明でこの辺りは毎年降るとは言っていたが、どうやら今年もその法則通りとなったようだ。しかし、軽装を基本とした今の自分は当然ながら雨合羽の類は持っていない。
体温の低下と携帯・デジカメの浸水が(ビニールに包んだとは言え)心配の種。
ただ、雨雲の周りは青空が見えるのが、この雨が一時的なものであるという希望が持てる唯一の救いであった。
もうすぐ止む。この場所を抜ければきっと止む。
天候の回復を信じ、キツい勾配の山道をつき進む。
12:50 突然道が開け、最初の山岳地帯が終わり、雨が止み、休憩所に着く。
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しかし天候がまた悪化しないとも限らない。体力的な心配もあったが、体温が保たれているうちに進んでおきたかったので、休憩をとること無く、そのまま道を進む。
13:20 残り50km。既に8年前の120kmレースのコースをトレースする段階にある。体力の低下に加え、アップダウンが続くキツい区間。
13:40 山の駅「高江売店」到着。
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和菓子とコーラを買い、しばしの休憩。ちなみに携帯はまたもや圏外。
14:20 下り坂と平地が続くこと約10km。次の休憩所到着。146km地点。
しかし休んでばかりもいかないので、ここも素通り。
14:40 レースの「残り25km」表示を確認。
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15:00 レースのルートから外れ、再び山岳地帯突入、そして大雨も再び。上り坂も雨も、もういらん。
ちなみにレースのルートだと、残り約20kmは平坦な市街地なのだが。。。
15:40 名護市役所久志支所の最後の休憩所到着。171km。
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休憩所は晴れている法則でもあるのだろうか?!
澄み切った青空のもと、補給とセルフマッサージを行なう。
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最後の上り坂を上る。
残りはあと僅か。。。
16:45 道を下り、突然開けた市街地に入ると誘導員が手招きをしていた。
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指示に従い、道を進むと、商店街と人だかりが目に入った。
どうやら、ここがゴールのようだ。
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ゴールの余韻もさほど感じぬままに完走証を受け取り、センチュリーライドの幕が下りる。
それにしてもこの人だかりはいったい、なんなのだろう・・・?
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ミクロの部分を目にし、訳の分からぬまま視点を引いてゆき、マクロの状態で物事を見ることが出来た時に初めて、その内容を把握するという経験はあるだろうか。
商店街。
人だかり。
自転車関連ショップの出店。
サポートやスポンサーの車・旗・人。
100m・50m・GOALの表記。
エントリー受付の看板とボランティア。
前夜祭。
思い出した。
国際レース第1ステージ「市街地クリテリム」。
そして市民レースのエントリー会場。
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センチュリーライドのゴール地点はクリテリウム会場であり、エントリー会場であり、開会式会場だったのだ。
17:00 前夜祭が始まる。
地元の子どもたちによる民族舞踊に始まり、演奏、そして開会宣言が催される。
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※子どもたちによる民族舞踊をデジカメ動画で撮影してみました。
ダウンロードはこちらからどうぞ。(4.0MB)
8年前の開会式および前夜祭は中心街から少し外れた名護市民会館(レーススタート&ゴール地点)での開催だったが、今回はどうやら地元市民を巻き込んだものにコンセプトが変わったようだ。
選手エントリーもこの商店街で実施したり、また自分たちがセンチュリーライドで走っている間に開催された、国内・海外のトップ選手による市街地クリテリウム(1周2km程度の短い距離を数10周(今回は30周回)するレース)を実施することで、地域密着型イベントとして盛り上げようという意気込みや努力が感じられたのは何となく嬉しい気持ちになった。
19:00 ホテルに戻り、シャワーを浴び、夕食をとる。
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サイクリング仕様にて取り付けたスピナッチを外し、レース用のゼッケン・ナンバーカード・ICチップを取り付け、明日の50kmレースに備える。
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体力は果たしてどの程度まで回復するだろうか。
しかし、8年の歳月を経て再び辿り着いたこの舞台にそのような心配は無用だ。
レーサーとして再び走ることが出来る。
それだけで充分だ。
…それだけで充分。。。本当にそうか?
センチュリーライドのゴール後、クリテリウムに参戦したプロレーサーの姿を見る機会があった。
彼らの放つオーラ、自転車に賭ける意気込み、勝利へのこだわり・・・
それは自分にとっての憧れであり、同時に単なる“無いものねだり”でもある。
全てを犠牲にして、自分はどのくらい自転車に打ち込んだだろうか。
そして打ち込む覚悟はあるだろうか。
…覚悟を持ち続け、結果にこだわり続けた者だけがプロとして生き残ることが出来る。
残念ながら自分にはそこまでの覚悟は持てなかった。
でも、そんな自分にも意地があり、そんな自分でもやれる事はあるはずだ。
だから明日のレースでは…やれるだけの事を、、、やるだけだ。
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