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2018年9月9日、日曜日。

ついにこの日を迎えることになった。

IRONMAN Gurye : Korea 2018.
アイアンマン韓国・求礼大会。その決戦の日。


およそ10ヶ月の鍛錬、
初の海外トライアスロン、
移動の苦悩、
言葉の壁。

幾多の困難をなんとか乗り切り、ようやくこの日を迎えることができた。


その日、早朝3時起床。
まずは無事に起きることができたことに安堵。
昨晩は妙にエアコンの雑音と部屋の温度に気を取られたことに加え、レース前の興奮も重なってなかなか寝付けなかったけど、どうやら体調はだいたい問題なさそうだ。

ホッとするのも束の間、すぐに準備に取り掛かる。
まずお湯を沸かし、アルファ米とコーヒーを用意。
その間にパワージェルボトルを6個、ボトルに入れて水に溶かす。
もう一方のボトルには水を入れ、ビニール袋に2本入れて、しっかりとクチを閉じる。
長崎バラモンキングの移動中、横向きになったためか、少し漏れていた経験。その対策だ。


服を着替えつつ、アルファ米とハンバーガーを食べつつ、荷物の用意をする。

昨晩の予想外の下痢の影響も、どうやら問題なさそうだ。


「がっつり食べてしっかり出す」ルーチンは、今回の旅程全体に言えるけど、どうもお腹に入らず、それほど出てくれない。
なんとかひねり出して、いつもの願掛けを果たす。

ハンバーガーは大きすぎて食べきれなかったので、道中、少しずつ持って食べることにしよう。



天気予報は、晴れ。



よかった。
雨さえ降らなければ何でもいい。
ありがたい。感謝。


荷物を身にまとう。
部屋に残された荷物の中に、レースに必要なものが何も無いことを確認し、鍵を持って、部屋を出る。

4時過ぎ、出発。
よかった、ホテルの玄関はちゃんと開いている。





長袖トレーナーを着たが、やや寒い。そして霧が掛かっている。

真っ暗闇。
信号や建物が照らす、わずかの光が霧に乱反射する。
その灯りを頼りに、シャトルバスの待つJirisan Information Centerまでの道のりを歩く。



距離はおよそ1km。
何度も通った道も、シーンと静まり返ったその雰囲気が、日中とはまた違った顔を覗かせる。

ところどころの建物の灯り、信号の灯りを経て、15分ほど歩き、到着。




真っ暗闇にパスのヘッドライトが煌々と光る。
よかった。間に合った。
いや、時間は全然余裕があるけど。

ふと、霧が晴れていることに気付く。
空を見上げる。
夜空に輝く、無数の星。


パスに乗り込む。
どうやら一番乗りのようだ。




運ちゃんに挨拶。
こんな早朝にも関わらず、職務をまっとうしてくれることには、何だかんだ言っても、感謝そのものだ。


朝食の残ったぶんを少しずつ食べながら、出発時間を待つ。
徐々に選手たちが集まってくる。

グッドモーニーン。
おはようございまーす。

日本語の挨拶も交じっている。


4時30分。定刻通りの出発。
歩いてきた道を一瞬で通過し、深夜のハイウェイを飛ばし、Jirisan Lakeに向かう。


選手たちの話し声が聞こえる。
「1本後ろの、30分後に出る便でも良かったかもねー」なんて会話もあり、たしかにそうかもなーなんて思ったけど、自分はゆっくり準備、というか遅いので、いつも通りやればちょうどいいだろう。

早め早めの行動、時間目一杯ギリギリに近いプランに焦るかのような動きから、時間に余裕をもって、ときにそれが早すぎることもあるけれど、全体的にゆっくり行動するようになってきたのは、いつからだろう。
そして、ゆっくりし過ぎたり、何かしらトラブって、だいたいいつも時間ピッタリになってしまうのは、まぁ、織り込み済みかな。


そうこうしているうちに、どうやら到着したようだ。乗車時間にして15分くらいだろうか。

ただ、駐車場に入るまでの道路が渋滞しているらしい。

少し待って、運ちゃんがジェスチャーを交えて何か言ってる。
あァ、たぶん、けっこう待つからここで降りてしまえ、ということか。

カムサハムニダ。


車のテールランプが連なっている。
ざわざわと、選手たちが準備の動きをみせている。
道を歩き、トランジッションエリアに向かう。




数々のテント、そして湖の施設のライトから煌々と照らされたトランジッションエリア一帯。
少しずつ、闘いの始まりが近付いてくる。


BIKE準備をする選手、談笑する仲間たち。
まだ人の数はまばらだ。

自分もBIKE準備をしに向かう。





ふと、声を掛けられる。
あ。日本語版レースブリーフィングの司会をしてくれた人だ。まさか見つけてくれるとは。
嬉しいね。

「なんかレースに出る格好じゃないですねw」
と、自分の格好を見て茶化される。
朝が寒いので、普段着の長袖長ズボンで来たけど、まぁ、考えてみればどのレースもだいたいこんな感じの格好をしていたな。
これも自分の中でのルーチンワークかもしれない。


トランジッションエリア。
BIKEチェック。
雨露がずいぶんと掛かっている。カバーを掛けてよかった。




そういえばここは霧が掛かっている。
パス乗り場だけ、たまたま晴れていたらしい。

カバーを外し、ボトルをセット。



続いてタイヤを確認。
よかった、バーストはしていないようだ。
空気圧を105まで入れて、しっかり閉じる。





作業中、会場を盛り上げるためのMCが始まった。
ウェルカムパーティと同じ、聞き慣れたあの声。
レースの興奮が少しずつ高まってゆく。




気温はまだ低い。
今回もアイアンマン 北海道の時と同様、寒さや雨対策として、レインコートとアンダーシャツを小さくビニール袋に入れて、DHバーの裏側にビニールテープでぐるぐる巻きにしておいた。
けど、雨の心配は無さそうだ。

問題は寒さ。
MCの情報によると、まだ14度くらいしか無いらしい。昼になればむしろ暑くなるだろうけど、滞在中の朝は肌寒かった。だから最初のうちはアンダーシャツを着ておいて、途中で脱ぐことにしよう。
急遽、ビニール袋を取り外し、 アンダーシャツをBIKEギアバッグに入れることに。

ルール的にはトランジッションバッグエリアにはアクセスできない、と書いてあった気がしたけど、他の選手もガンガン触っているし、それを咎める審判の様子もないから、大丈夫みたい。

そいういばレースブリーフィングで言っていた。
よほどの事がない限り、厳密にペナルティを取られることは無いし、ボランティアに至ってはルールすら把握していない人たちが多い、と。
審判が見ていないところだったら何をしてもいい、じゃなくて、最低限の常識的なルールさえキッチリ守っていれば、あとは正々堂々勝負すればいいだけだ。


トランジッションエリアの準備は完了だ。

トイレがまだガラガラだったので、今のうちに行っておく。


まだ真っ暗だ。
ストリートギアバッグの回収テント、スペシャルニーズバッグ回収のテント、給水のテント。
連なるテントとその灯り。




その中に、給水のほか、マフィンとコーヒーを配っているテントがあったので、ひとついただく。
こんなのは初めてだ。サポート体制ばっちりだな。



 



選手たちが増えてきた。
気持ちが徐々に高まってゆく。




着替えテントに入り、いよいよレースに向けた準備を始める。
っと、テントの中とはいえ、地面は湿っている。
大きめのビニール袋を何枚か持ってきていたので、レジャーシートのように敷くことに。




ワセリンを塗り、ウエットスーツを着る。
テント内にはワセリンもフリーで提供されていたけど、せっかく使い慣れたものを持参してきたので、無難に自分のものを使用。

ふと、辺りを見る。
薄明るくなってきた。
テントの隙間から差し込む、淡い青色の光。

選手たちが足早に入ってきては、準備を済ませて、テントを出てゆく。


忘れ物は無い?
準備、OK?

よし、行こうか。


テントを出ると、それまでとは一変した、多くの選手でごった返していた。


公式Flickrより拝借



行き来する選手。
ストレッチする選手。
談笑する選手。
報道陣。
多くの観客。

そしてハイテンションで盛り上げるMC!


公式Flickrより拝借



時間はどう?
大丈夫。時間はまだある。

BIKEとRUNのスペシャルニーズバッグを預ける。

残りの手荷物をストリートギアバッグに入れて、預ける。
少しはみ出ていた部分を上手いこと、ボランティアが縛ってくれた。ありがたい。


念のためもう一度トイレへ。
いつもと違って、ガラガラだ。
ってか、トランジッションエリアのクローズ時間ギリギリだからか。


スタンバイエリアに戻る。
みんなもう、臨戦態勢だ。

蛇口ゾーンに人だかりが出来ている。


公式Flickrより拝借


自分もこれに交じり、曇り止めを塗ったSWIMゴーグルに水を掛ける。
ウエットスーツの内側に水を入れる。
冷たっ!


SWIMタイム申告をしたカテゴリを示すプラカードを掲げるボランティアおばさん。
そのおばさんの周りに、各グループの選手が集まっている。
自分はCグループだ。


公式Flickrより拝借



いやぁ、盛り上がってるな。
同じアジアでも、日本と違ってみんな遠慮しない。そしてその雰囲気に、いつものように完全に飲み込まれ、一切の緊張と不安が消滅してゆく。

この場に立てたことに、感謝。


今回のレースは自身初めての、4人ずつのウェーブスタート。
だから一斉スタートのような興奮は無い。

ボランティアに先導され、スタート地点に向かってぞろぞろと進んでゆく。


公式Flickrより拝借



おぉ、どうやら先頭グループがスタートを切ったようだ。
湖を泳ぐ選手の姿が見える。
盛り上がる選手と観客たち。


ボランティアがハングル語で何か言っている。
選手が4列になる。

列が進む。

あっ、あれは!
日本語版レースブリーフィングですぐ近くに座っていた、CEEPOのお偉いさんだ。
そういえば「レースには出ない」と言ってて、何しに来たんだろう?と思ったけど、CEEPOのスポンサーフラッグもたくさん立っていたので、今回はきっと仕事メインなんだろう。
けど、こんな朝から来るということは、やはりレース自体、好きなんだろうなぁ。


列が進む。
さまざまな言語が飛び交う。

誰かがハングル語の大きな声で、グループ全体に向かって鼓舞する。
言葉は分からないけど、ハートは伝わる!
間髪入れず、自分も周りに合わせて気合いの雄叫びを上げる!



階段を下り、いよいよスタートエリアに入る。


公式Flickrより拝借


三角コーンに沿って、4人が整列し、数秒間隔でどんどん進んでゆく。



公式Flickrより拝借


一瞬待たされて、そしてすぐに「行け!」というような言葉が発せられる。

計測ラインを越える!
選手が足早に進む!
そしてヘッドダイビング!


公式Flickrより拝借



17時間の長い闘いが、2回目のIRONMANが、初めての海外トライアスロンが今、幕を開けた!





Rolling Start ! 〜SWIM 3.8km〜



選手が次々に飛び込んでゆく。

自分はヘッドダイブ時のゴーグルずれを避けるために、ゆっくり足元から入るw
その深さは、けっこう深い。足は付かなかったけど、予想していた事だったので慌てることも無く。

態勢を整えて、いざ、戦闘開始!


公式Facebookより拝借


今回のような少人数でのローリングスタートは初めてだ。
けど、そのぶん人数は分散されるから水面下のバトルは少なくて済みそう・・・と思っていたら、いきなりバシバシ。
水があまり綺麗じゃないから周囲の様子が分からないので、まぁ仕方ない。

スタート前のアナウンスによると、気温こそ17度程度と低かったものの、水温は22度ほどあるらしい。そして実際、ウエットスーツを着ていると寒くもなく暑くもなく、ちょうと良い。
周囲とガンガンぶつかりながらも、大きなブイを目印に前に進む。


公式Facebook動画より拝借


今シーズンは3種目とも、基本から見直した地道なトレーニングを意識した。
特にSWIMに関しては「トータルイマージョン」、通称「TIスイム」をひとつの教科書として、これ一本に集中してフォーム改造を試みた。
少し高めのレッスンにも数回参加し、その甲斐あってか、比較的ストローク数の少ない、効率的な泳ぎができるようになった。
タイムの伸びにはなかなか直結しないのがもどかしかったが、5kmの練習会では比較的余力を残してコンプリートできたので、ロングレースに向けた手応えは感じることができた。


水が汚く、まっすぐに泳げず、周りはぶつかってくる。なのでなかなかプールの時のような4ストローク、伸びのある泳ぎができない。
けど、まだ序盤とは言え、ゆっくりペースながら周りの選手を次々に抜いていく。

果たして、自分が速くなったのか、それとも周りが抑えているだけなのか。
それはチェックポイントでの目標タイムと照らし合わせて考えよう。



今回のコースは、920mを直進し、右折して50m。そしてさらに右折して1900m地点まで直進。
折り返し地点をUターンし、同じコースを戻ってくるという、単純なコースだ。



ロングでは2010年の宮古島以外のいずれもが、安全性を考慮してか、中間地点で一度上陸する2周回コース、ないし往復コースだったのに対し、今回は久しぶりの完全水中3,800m。
若干の不安が無くはないが、波もなく、塩味もしない淡水の湖が舞台ゆえ、マイペースで泳げば問題ないはずだ。

ペースを確認するための自分用チェックポイントは、往路のほぼ中間地点である2回目の右折:970m地点と、折り返し地点:1,900m地点と、復路2回目の左折:2,870m地点の3箇所。
その目標基準は、ペースにしていずれも100m:2分ジャスト。
トータルタイムにして、1時間16分だ。
本当は1分50秒くらいを目指したいけど、オープンウォーターならではの環境では、1分50秒を目指した泳ぎをして、結果的に2分ジャストくらいになるだろう。

コース取りは、一番ブイ寄りの最短エリアは混み合うので、そこからやや外れた場所をキープ・・・すべく、頑張る。
周りに選手が多いぶん、それを目印にすることでヘッドアップこそあまりしなくて済むが、気付けばみんなでヘンな方向に泳いでいた、なんてこともあるので、やはり時々はヘッドアップが必要だ。



行けども行けども920m地点は見えてこない。朝特有の霧が辺りを覆うが、ブリーフィングにあったような、「ブイが見えない」ほどのものでは無い。
まだレースは始まったばかり。
ウォーミングアップのつもりで、自分を信じて、マイペースで進めば大丈夫。


ブレスのたびに横目で周りの選手の位置とブイを確認しつつ、前に進む。
時折、蹴られたり乗られたり叩かれたりしつつも、ガマンして前を目指す。


その先にようやく見えてきた、ひときわ大きなブイ。白地に赤いエムドットのロゴを目指し、選手が進んでゆく。


公式Facebook動画より拝借



進む、進む。
ブイが近付き、そして通り過ぎてゆく。
ブレスのたびに流れてゆく景色。推進力を感じる。
いいぞ。


大きなブイを右手に、ぐるりと右折する。
そしてそのすぐ先、50m前方にある2つめの大きなブイを右手に、ぐるりと右折。

970m地点。
目標タイム:20分に対し、タイムは20分05秒。やるじゃん。




このあと少しペースアップする目標設定にしているけど、今のところはイイ感じ。
気分もまるで、いつもの遠泳大会のようにリラックスしている。
引き続き、この感じでいってみようか。


ブイ周辺の混雑を避け、やや外側に位置取りして、次の目標ポイント、折り返し地点を目指す。

適当な速さの選手を見つけては、その真後ろにピッタリくっ付いてドラフティング。
その効果は100m ×50本練習会で身をもって体感した。
けど、透明度の高いプールと違って、ひと呼吸ごとに視界から目標物が一瞬でも消えると、すぐに分からなくなってしまう。
ほとんど同じスピードで泳いでいるから、そう離れてはいないハズなのに、一度見失うと、不思議と見つけられない。

が、あまりドラフティングばかりしていると、そのペースが速いのか遅いのかが分かり辛い。
なので、目標物を見失ったときはむしろ自分のペースで泳ぐスピードを確認するようにする。


疲労感はまったく無い。
心拍も問題無い。
たまにバトルに巻き込まれるけど、しつこいときはその場から離れてやり過ごす。

行けども行けども折り返し地点のブイが見えないけど、もう10数分も泳げば勝手に辿り着くはず。
226kmの長丁場を考えればまだまだ始まったばかり。焦る必要は無い。



オレンジのコースブイを横目に、前へと進んでゆく。
と、そのブイの向こう側、復路を泳ぐ選手とすれ違うようになってきた。
ということは、彼らとのスピードの違いはあるにせよ、もうしばらく泳げば折り返し地点が見えてくるハズだ。

景色は相変わらず霧が立ち込めていて、岸の様子を見ることができない。
けど、一切の不安な気持ちが無く、平静を保てている。
ほかの選手との接触も相変わらずながら、わりと無心で、淡々と泳げている。

と、その視界の先にようやく白と赤のエムドットブイが見えてきた。

おや?
ブイの隣にはオレンジ色の、、、アーチ?

おぉ、、、あのバルーンアーチをくぐるのか!
おそらくチェックポイントの計測センサーが仕込まれているんだろう。
泳ぎながらアーチをくぐるのは、初めての経験だ。

アーチがみるみる近付いてくる。
その幅はあまり広くないから、またまたバトルに巻き込まれる。
アーチを頭上にこれを通過、そして巨大なブイを右手に180度ぐるりとUターン。

なんか、楽しい。

中間地点、目標タイム:36分。
現在のタイム、38分。
少し遅れたか。
けど、100m2分ジャストのベースは保っている。
悪くない。
この感覚を維持したまま、行こう。

そして今来たコースを戻ってゆく。





コースブイの向こう側、往路の選手とすれ違いつつ、適当な速さの選手に付いて、淡々と前に進む。

あれ、このロゴのウエットスーツはさっきも見たな。
やはりローリングスタートゆえ、ある程度はみんな、同じようなペースで泳いでいるらしい。

ドラフティングポジション争いをたまに繰り広げつつも、付かず離れずの位置をキープする。


次の目標ポイントは、900m先の左折地点。
ここを53分で到達できれば上出来。
まぁすでに目標タイムに遅れてるけど、はっきり言って誤差の範囲内だ。
いかに疲労を残さず泳ぎ切るか。
そのために練習を重ねたTIスイム、その泳法は、この競技にガッチリ合っている。


しばし、同じロゴウエットスーツの選手に付いてゆく。
無心で泳ぐ。
見失っては、TIスイムの基本泳法に沿ってフォームを整える。
バトっては、崩れるストローク数、キック数をその都度、調整する。

水中の様子が把握でき、邪魔をされないプールとは違い、視界ゼロのこの状況ではなかなかキチンと泳げないけど、それでもブイの通過スピードを横目で見る限り、そこそこの推進力をもって前に進めているハズだ。


直線距離が長いと、次の目標ポイントまでの距離・時間をヘンに意識して気が滅入るものだけど、無心で泳ぐか、こうしてフォームのことを考えながら泳いでいると、比較的安定して距離を刻むことができる。
そうこうしているうちに、、、
ほら、見えてきた。白と赤の巨大なブイ。


公式Flickrより拝借


ブイが見えると、不思議と選手間の距離が近くなり、バトルに巻き込まれがちだ。
なので混み合った場合は無理をせず、意図的にペースを落としてコースを変えて泳ぐ。


ブイを目印に左折する。
50mを直進する。

おや、左手にはコンクリートの足場があるな。
まさかこのレースのために造られたものでは無いだろうけど、そこから審判かレスキューが見守っている。

50m泳ぎ、ブイを目印に左折。
これで残り920m。

もう、3種目のひとつが終盤に差し掛かっている。
ここまで3km弱を泳いできたけど、気分は上々。
体力消耗もぜんぜん問題無い。

目標タイム:53分に対し、現在のタイム:58分。
100m2分ジャストペースは維持できている。

いい感じ、いい感じ。





残りの直線を、浮き足立つこと無く、マイペースで消化してゆく。
少し、ペースアップしてみようか?
いや、ドラフティングしているほうが、遅く感じても結局のところはだいたい同じタイムの事が多い。
今はこのまま行こう。

最後の一直線、20分弱を淡々と泳げば自然とSWIMアップだ。
いや、時間は意識するのは、よそう。かえって長く感じてしまう。


公式Facebook動画より拝借


霧はいまだ晴れず、フィニッシュエリアはまだまだ見えない。
しかしそれも、もうしばらくすれば、、、

ほら、聞こえてきた。トランジッションエリアからの実況の声、そして音楽が少しずつ耳に入るようになってきた。


進行方向を確認するためのヘッドアップ、その視界に入るは黄色いコースブイ、その先に見えてきた、白と赤のエムドットブイ。
そのすぐ下には、、、おや、最後もバルーンアーチがある。
あれが計測ポイントかな?

心なしか、周りの選手たちのスピードが上がる。
あともう少しでSWIMアップ。
はやる気持ちを抑え、ひと掻きひと掻きを確実に、バルーンアーチを目指す。


ん?
近付くにつれ、そのアーチのサイズ感が分かってくるが、、、ずいぶんと狭いなコレ。
渋滞になりゃしないだろうか。

と、そんな心配をしつつもぐんぐんとその距離を縮める。

アーチをくぐる。

くぐってすぐ、足場がある。
よっこらせ、と、立ち上がる。

これでSWIM終わり!


目標タイム:1時間13分に対し、SWIM記録:1時間18分。
100mを2分04秒ペース。

オープンウォーターにしては悪くない。
安定したタイムは、さすがは淡水、といったところか。いい感じだ。





Transition #1



レッドカーペットの敷かれた橋を渡り、ウエットスーツを脱ぎながら小走りでトランジッションエリアに向かう。


※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(5.9MB)



途中のシャワーでは、ウエットスーツは軽くすすぐ程度に留める。
海水なら今後のレースの事を考えて、多少なりとも塩を洗い流してその劣化を防ぐようにするけど、今回は淡水だからたぶん、そこまで心配する必要は無いだろう。


公式Flickrより拝借





前に進む。
焦る必要は無い。
落ち着いて自分のBIKEギアバッグを取り、着替えテントに入る。

補給食を口にしつつ、身体をタオルで拭き、着実に着替えを進める。

朝のBIKE準備で取り外したレインコートとアンダーシャツ。
いろいろと迷ったけどそのシャツは、今回は最初から着ていくことにしよう。

アームウォーマーはBIKEウェアの背中に入れておく。
レッグウォーマーは、今回も無しで。
日焼け止めも無しでいいだろう。

首回りと足の裏にファイテンテープを貼り、BIKE装備完了。

不要なアイテムをバッグに詰めていると、ボランティアがそれを回収しようと近付いてくる。
身の回り品を確認し、忘れ物が無いことをチェックして、ボランティアに託す。

カムサハムニダ!

ヘルメットを被って、BIKEへと走ってゆく。



公式Flickrより拝借


1000台を超えるBIKEがずらりと並ぶ。
自分の設置場所に迷わぬよう、昨日のイメトレを実践しつつ、スムーズに辿り着く。

サイクルコンピュータ、電源スイッチオン。
パンク、無し。
全て、問題無し。

BIKEをラックから出し、小走りで出口に向かう。
っとその前に少し寄り道して、トイレに。

ガラガラのトイレで手早く用を足し、再び走り出す。


坂道を丁寧に下り、ライディングラインを越えて、BIKEにまたがる。



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(5.5MB)



トランジッションに要した時間は、目標10分ジャストに対し、12分01秒。
相変わらず遅いな。
でも、まだまだ大丈夫。


さぁ、レースはここからだ。
20年以上連れ添った相棒!
今回も、よろしくな!





スピードコース、安定した高速走行 〜BIKE 180km〜



BIKEスタートしてしばらくは細い道が続く。


公式Facebook動画より拝借


と、後方から「どけどけ!」的なハングル語が飛んできた。
あァ、そうだった、ここは右側通行の国だった。うっかりいつものクセで左側通行してたから、追い越そうとしていた選手の邪魔になってしまったんだな。気をつけねば。


少し走ったのち、高速道路に入る。
みんな飛ばすなぁ。

霧が立ち込めている。
そして、いくらか寒い。アンダーシャツ&アームウォーマーは正解だ。


公式Facebook動画より拝借


少し走ったのち、高速道路を降り、市街地を走る。
ところどころにあるバンプ。これを注意してねとレースブリーフィングでアドバイスをもらったけど、BIKEにとっては、すなわち平地のBIKE程度のスピードであれば、パンクの不安のない段差のようだ。
しかし、下り坂で気を抜くとやられるらしいので、注意はしておこう。


ゲートをくぐり、片側2車線の一般道を走る。


公式Facebook動画より拝借


朝の時間帯。まばらながら沿道の声援の姿を目にする。

少し霧が晴れてきた。気温もやや上がってきたか。


ふと、見慣れた景色が続いていることに気付く。
おっ、ここはSandong Marketじゃないか。昨日バスで立ち寄った、メインのホテルエリアだ。

頭の中で地図をイメージし、全体像のどの辺りを走っているかを想像する。


公式Facebook動画より拝借



今回のBIKEコースは、Jirisan Lakeからいったん北上し、このSandong Marketを経て少しの登坂。
折り返してJirisan Lakeの東側を走り、メインスタジアムを経て30km。そこから周回に入る。
周回コースは、大きなY字を3度描く。
その一端にはややキツめの登り坂があるけれど、距離は短い。
あとは多少のアップダウンがあるにせよ、だいたい平坦だ。

1周40km強を3周回。そのY字の中心部あたりにはスペシャルニーズバッグ受け取りゾーンがある。
どのタイミングでこれを受け取るかは、自由。
周回を終えたら、あとは高速道路を走って20km走ればBIKE FINISHだ。





と、前方がやや詰まってきた。
どうやら登り坂が始まったようだ。けど、まだ序盤とはいえ、みんな遅過ぎだろ、、、

と思いきや、なるほど、意外と傾斜がある。
ここは自分も集団に合わせてゆっくり。


公式Facebook動画より拝借



選手同士、談笑する姿。ゴツいBIKEに派手なジャージ。いつ見ても、ロングのBIKEはすんげー装備のBIKEがホント、多い。

前方から折り返し地点を経て、高速で下ってくる選手とすれ違う。
高速道路から降りてからしばらく、ここら一体はコースの都合上か、日本と同じく2車線の左側レーンを走るのだが、右側通行ゆえセンターライン側がこの国の走行車線になる。
なんかすごく変な感じ。


公式Facebook動画より拝借


だいぶ陽が昇ってきた。アームウォーマーは外したが、アンダーシャツはどうしよう。
とりあえず、下りは冷えそうだからまだ着ていよう。
にしてもほかの選手は薄着ばかりだな。寒くないんだろうか。


8.6km地点、最初のチェックポイント。
のろのろペースでようやく折り返し地点到達。




ぐるりと回って一気に下ってゆく。気持ちいい。

ここまでのアベレージはなんと22km/hという遅さ。
この遅れを取り戻すかのように、平地に至っても34km/h前後を維持する。追い風か、それとも全体的に下っているのか。ペース配分もあるけど、しばし、本能のままに飛ばし続ける。


コースはJirisan Lakeの湖畔、向かって左側を走る。
少し遠くから、聞き慣れたMCの声が聞こえる。SWIMがローリングスタートゆえ、まだ泳いでいる選手も多そうだ。

湖の様子は、霧でほとんど見えない。晴れたのは登坂のあたりだけだったようだ。
まぁ、日中になればおのずと晴れることだろう。

陽が隠れ、やや肌寒いコンディション、再びアームウォーマーを付けて走る。
ウォーマーを完全に外さず、手首のあたりに下げたり戻したりを駆使して調節するのは、アイアンマン北海道で即席で編み出したテクだ。


霧の立ち込める一般道を下ってゆく。
コースは最終的に、またJirisan Lakeに戻ってくることになる。今は軽い下り坂ゆえラクチンだけど、トータル180kmを走るその終盤、果たしてこの坂を登る体力は果たして、どれくらい残っていることだろう。

と、登り坂に差し掛かったようだ。
おや?前方が賑やかだな。おっ、エイドステーションか。日本のロングレースと変わらないその光景。
まだ序盤ゆえ補給は必要無かったけど、この後たくさんお世話になることだろう。





エイドを過ぎ、右側車線、その右側を走る。
T.T. BIKEにびゅんびゅん抜かれてゆく。
今回は平地メインのスピードコース。みんな速いな。

霧に囲まれた一本道。33km/hアベレージで負けじと飛ばす。
ここまで結構速いペースだ。大丈夫かな?まぁ、飛ばし過ぎなければたぶん、大丈夫だろう。




それにしてもボランティアが多い。ちょっとした小道のたびに、そこからの飛び出しを制止するために配置されているのだろう。
声援を送ってくれるボランティア、スマホいじりに夢中のボランティア。
どちらにしても、ボクらを安全に走らせるために立ってくれている。だから、声援に対しては、分からないなりにもこれに応える。

カムサハムニダ!


しばらく走ると、見慣れた市街地に出た。
おぉ、メインスタジアムじゃないか。





これを横目に通過し、メイン通りへと向かう。
その反対車線では、ボクらのレースのために、車の渋滞が延々続いている。
悪いね〜。


ルートは右折し、メイン通りに出る。
多くのボランティアそして警察官と思われる姿が交通整理をしている。


公式Facebook動画より拝借


ペースは快調。
やはり市街地を堂々と走るのは楽しい。


公式Facebook動画より拝借


メイン通りを左折し、ローカルな道へと進んでゆく。
もうしばらく走れば、周回コースに入ることになりそうだ。


大きな橋を渡り、木々で覆われた道をひたすら走る。


公式Facebook動画より拝借



公式Facebook動画より拝借



サイクルコンピュータを確認する。
あれ、周回開始地点をもう過ぎている?気付かなかったな。それともこの先かな?

アベレージは29km/hまで回復した。目標を上回る、良いペースだ。


左側車線を、数人の選手が走り去ってゆく。先頭グループの選手たちだろう。
ということはやはり、周回は始まっているようだ。ちゃんとラップ取れなかったな。まぁ、いいか。

いい感じのペースで走り続ける。霧も晴れてきた。


公式Facebook動画より拝借


大きな連続S字カーブを抜け、小さな橋を渡ったあたり、数組の家族連れがドンチャンドンチャンと楽器を鳴らして応援してくれる。
カムサハムニダ〜!

そこから少し走ると、Y字路の突き当たりに到達。そして右折のサインが出ている。




おぉ、このあたりが中心部かな。沿道の声援も盛り上がっている。
コースを右折し、進む。

天気がいい。霧がすっかり晴れたどころか、むしろ暑いくらいだ。
もう、アームウォーマーはいらないだろう。
完全にこれを取り外し、ジャージの背中ポケットにしまう。


公式Facebook動画より拝借



右側車線を進む。反対車線を絶え間なく、選手たちが走ってゆく。
そのスピードは速めだ。反面、こちらはどうもスピードが乗らないな。まさか早くも疲れてきたのか?、、、いや、どうやら他の選手もゆっくりペースだから、微妙な登り坂なんだろう。
焦らずに、進む。




エイドステーション。元気なオバチャンたちが様々な補給食やボトルを手に、選手たちを後押しする。
まだ手持ちの補給食もボトルも残っているけど、IRONMANロゴのボトルはコレクションになるから、確実に手に入れておきたい。

「Water チュセヨ〜!」
水ボトルをひとつ受け取る。

「カムサハムニダー!」
ボトルケージに差し込む。

「ファイティン!」
激励の言葉を背に、前に進む。

半透明のボトルにくっきりとプリントされた、IRONMAN Gurye Koreaのロゴ。
格好いい。


夏の陽射し。ややキツい登り坂。
今年の夏も暑かった。あの酷暑下での練習を思い起こさせられるような暑さが徐々に顔を覗かせてきた。10km/hを切るかのようなペースで、多くの選手がのろのろと坂を登ってゆく。

ふと、反対車線で応援するオッサンの姿を目にする。
はて、なんだろう、、、いや、見た瞬間にこの人と分かった。
CEEPOのお偉いさんだ。

「あ、おとといはどうも〜。」
というような会釈をする。

向こうもつられて、会釈。
「ん?誰だろう。」
そんな顔をしている。

そりゃそうか、こちらはチラッと会っただけの、しかも今はヘルメットもサングラスもしている、ただの1人の日本人選手だ。
しかしまさか、自走してここまで応援に来ているとはねぇ。なんか嬉しくなった。


坂を登る。反対車線は、かっ飛ばしてゆく選手の姿。その坂の頂上には、こちら側の車線の沿道、大きなスピーカーからお気に入りの曲をバックに、ただひたすらガッツポーズでリズムを刻みながら応援をするオッチャンの姿。なんか、笑えてしまうw
自然の風景と、選手の息づかいしか無い退屈な世界に彩りを添えてくれる、その応援に力をもらい、山頂を越える。

少しの下り坂。右脇には湖が見える。
そしてすぐに折り返し地点。
コーンをぐるりと回り、また来た道を引き返してゆく。

チェックポイント。
アベレージは28.4km/hと、少し落ちたがまだ目標ペースよりは速い。


公式Facebook動画より拝借






キツい登坂も、反対側からすればカッ飛ばしの絶好の場。のろのろのストレスを吹っ飛ばすかのように、一気に下ってゆく。
スピード抑止のためのガタガタバンプ。これを避けるために、ほぼセンターラインを走る。

!!
ガタガタガタガタガタガタ!!!

な、なんだ?!
あっ、キャットアイを踏んだのか!

センターラインオーバー防止のための障害物。
マズいな、結構な衝撃だったな。。。パンクしてないだろうか?
しばらくは大人しくしていよう。


下り坂の勢いは活かし、40km/hオーバーで飛ばす。
少し走って、また賑やかな場所に戻ってきた。Y字の中心部だ。今度はこれを右折し、コース最東端を目指す。

木々に覆われた、まるで自然のトンネル。木漏れ日の照らす道を、34km/h平均で飛ばし続ける。
今日はここまで風の影響をほとんど受けていない。その上、この風除けトンネルが周回コースの多くを占めている。
このレース、だいぶ余裕をもっていけそうだ。攻め姿勢をこのまま続けていこう。



公式Facebook動画より拝借


木々に覆われているがゆえ、時々、乾ききっていない路面状況に出くわす。中には避けられない水たまりでビシャーン!なんてこともあるけど、むしろ気持ちいいくらいだ。
気温はちょうどいい。湿度も申し分ない。
時々、崩れた悪路にタイヤを取られそうになるので、油断は禁物だが。


ややアップダウンを経て、一本道をひたすら進む。
絶え間なくすれ違う選手たち。まだ前半だからか、みんなまだまだ元気いっぱいだ。

しばらくして、突然視界が開ける。そして距離表示を示す看板、大きな三角コーン。
折り返し地点のチェックポイントだ。


公式Facebook動画より拝借





コケないよう、しっかり減速してぐるりと回る。
そして道を引き返す。
アベレージは29.8km/h。いいぞ。



走って少しのエイドステーション。


公式Facebook動画より拝借


ここらで補給食でも戴こうかなと、差し出されたバナナを走りざまに受け取・・・りそこねた!

ごめーん。
思わず日本語を発する。いや、ハングル語が分からないだけだけど。

ちょっと今のは自分のスピードが速すぎたな。ボランティアも恐怖感を抱くかもしれない。レースブリーフィングでもそんなことを言ってたっけ。次は気を付けよう。


多少のアップダウンを、気持ちよく飛ばす。
そして戻ってきた、Y字の中心部。これを通過し、1周目のスタート地点を目指す。

木々のトンネルを走り、ドンチャン家族の応援を左手に、S字カーブを抜けてゆく。




登り坂をゆっくりペースで走り、一気に下る!
っと、その直後が折り返し地点か!もったいないながら、減速して引き返す。
これで1周だ。
チェックポイント、アベレージは29.5km/h。




来た道をまた走り、Y字の中心部を目指す。



1周走って、その感触はどうだろう。
基本、風の影響の少ない自然のトンネルが3分の2。暑さに晒される田園風景と、短いが急な登坂。
全体的な高速コース。

・・・問題ない。
2周目も、この調子でいこう。



公式Facebook動画より拝借



1周走れば、勝手がだいぶ分かってくる。ペース配分、アップダウンの長さ、陽射しの強さ、そしてエイドステーション。
行き交う選手たちに交じり、淡々と距離を刻んでゆく。

気温がだいぶ高くなってきた。もう少ししたらアンダーシャツを脱ごう。
一度停止してからのほうが安全だから、次のスペシャルニーズバッグエリアあたり、かな。


Y字路を右折し、最も陽射しと傾斜のあるエリアを走る。
暑い。そしてスピードが出ない。だから暑い時間帯が長引く。けど、それもどこまで走ればいいか、分かっている。


エイドステーションに差し掛かる。




エイドの前後にあるゴミ捨てゾーンでゴミを捨てる。
って、日本のどのレースでも必ずあるネット状のゴミ捨てエリア、通称ボトルキャッチャーが今回のレースは皆無。みんな、好き勝手に捨てているから、わりと広範囲にゴミが散乱している。まぁ、これも国民性か。

不要なゴミを処分し、今度はしっかり減速して追加の補給食をキャッチする。

いつものように、事前に大量に積み込んだ補給食は、比較的ペースよく費やしている。
この後スペシャルニーズバッグエリアもあり、それほど追加の補給食は必要無かったけど、なんか、せっせと配るボランティアのおばちゃんの姿に感化されてw
その元気っぷりは、皆生のそれに似た可笑しさを感じる。
言葉こそ分からないけど、「ほらほら、しっかり走りな!」とでも激励されているかのようなそのアクションに、国境を超えたボランティア精神を感じる瞬間。

「ファイティン!」
「カムサハムニダ!」


最大傾斜のある最後の坂、その頂上にはまだまだ、ガッツポーズする応援おじさん健在。手を振ってこれに応える。
三角コーンをUターンし、坂を一気に下る。
チェックポイント、アベレージは28.4km/h。

下り坂の勢いそのままに、すがすがしい晴天の山岳地帯そして田園風景を疾走する。


公式Facebook動画より拝借



ブォーン!
オートバイマーシャルに抜かれる。
おや?その後ろにはBIKEを担いだ選手がこれに乗せられて走ってゆく。メカトラブルだろうか。
これでレースは終わってしまうのだろうか?
自分も1周目、キャットアイをガンガンガンと踏んでヒヤリとしたけれど、幸い、影響はまだ出ていない。
けど、快適な高速コースだからこそ、油断大敵なのかしれない。


しばらく走り、Y字路に差し掛かったところで、さきの選手が降りていた。
キチンとしたメカニックがいるポイントだろうか。
復帰できる事を、願う。


右折し、スペシャルニーズバッグエリアを、、、どうするか。
手持ちの補給食はまだある。パワージェルボトルの残りは少ないが、まだ大丈夫。
アンダーシャツを脱ぐのはまだもう少し。

木漏れ日の光が差し込む自然のトンネルを走る。1周目の水たまりはまだ少し残っている。
ペースこそ多少落ちてきたが、まだまだ大丈夫。わずかに残ったパワージェルボトルを飲み干し、100km地点を通過する。

そして折り返し地点を経て、来た道を戻る。
チェックポイント。
走行距離、およそ102km。累計アベレージは28.9km/h。


公式Facebook動画より拝借



そしてエイドステーション。
飲み干したパワージェルボトルを捨て、ゲータレード入りのIRONMAN Guryeボトルを受け取る。




長い間。
およそ10年を共にしたこのボトルは安物とは言え、ここまで闘ってきた戦友だ。
その別れは少し辛いけど、劣化も進んでいる。
ありがとう。


同じエイドに備え付け、いや、もともとここに存在していると思われるトイレに寄る。
それからアンダーシャツを脱ぐ。
最初に受け取ったIRONMAN Guryeボトルに残った水を全て捨てて、ここに脱いだシャツをねじ込む。
再びBIKEに乗り、走り出す。

さぁ、後半戦はここからだ。


疲労感は、さすがに出てきた。
ペースを意図的に、しかし少しだけ落とす。

自分を抜いていく選手、自分に抜かれる選手。
速い選手はもっと前の方に行ってしまっているだろうか。心なしか、行き交う選手の数が減ってきた。


Y字路を抜ける。元気なオネーチャンが選手の国籍を問わず、声援を送る。
これに応え、右折。周回の起点を目指す。

ペースが落ちてきた。それに、膝の内側が少し痛み出してきた。
なんだこれは。こんな所が痛むのは初めてだ。

ここまでほぼノンストップ。交通規制そして快適な高速コースが、知らずのうちに未知のダメージを蓄積してきたか。
痛みが出ないようなペダリングをする。
ペースが上がらない。
わずかのアップダウンは、こんなに傾斜があっただろうか。

ガマンを続け、ペースを落とし過ぎず、なんとか2周回完了。あと1周だ。
チェックポイント、アベレージは28.1km/h。


公式Flickrより拝借


陽が高くなってゆく。けど、自然のトンネルそして低い湿度に助けられている。

道中、ポツンと表示された電光掲示板。
現在の気温、28度。湿度、30%。
快適過ぎだろこれ。



公式Facebook動画より拝借



カラッとした気候に、流れる汗も気持ちよく蒸発してゆく。
それに反比例するかのように、膝の痛みは少しずつ明確になってゆく。


アップダウンを経て、Y字路を右折、3度目の田園地帯を走る。
そのペースはだいぶ落ちてきた。今度のスペシャルニーズバッグエリアは、途中まで素通りするという選択肢もチラついていたけど、どうやらしっかり活用したほうが良さそうだ。

行き交う選手はだいぶ減ってきた。あれだけ渋滞気味だった1周目、最大傾斜の登坂ゾーンも、今やノロノロと登ってゆく選手たちの息づかいがところどころ聞こえる程度だ。
中には、完全に降りて、歩いている選手いる。
さすが欧米の体格、その横にデカい身体を自らの脚力で登るのは、なかなかの試練となっていることだろう。

なんとかこれを登りきり、三たびのガッツポーズ応援おじさんとハイタッチ。
チェックポイント、アベレージは27.5km/hまで落ちてきた。


公式Facebook動画より拝借



折り返し地点を引き返し、下り坂を利用して少しでもペースを取り戻す。
が、その勢いも長くは続かない。風が無いのが救いか。

高速で駆け抜けた前半と違って、ペースが落ちるとその景色も変わって見えてくる。
気持ちは全く死んでいない。流れる景色に気分転換を図りつつ、痛む膝をごまかし、前に進む。


Y字路ゾーンに到達、そして右折してすぐのところに陣取るスペシャルニーズバッグエリアに入る。




意図的にぐるりと大回りするよう設定されたルートを通る。
そして広場に出たと同時に自分のSPバッグを受け取る。

そうか、この大回りの間に選手のBIBナンバー確認→バッグ特定→手渡しをすべく、最小限のロスタイムで済ませるためのルートだっのか。
ありがたい。
まぁ、BIKEを降りて小休止しちゃうんだけどねw
レースブリーフィングで茶化していた「お弁当タイム」のごとく。



公式Facebook動画より拝借



受け取ったバッグから補給食を取り出し、サドルバッグやBENTO BOXそしてジャージポケットに入れてゆく。
ボランティアに声を掛け、メインボトルに水を入れてもらう。
軽くストレッチをする。
おや、欧米風の女性選手が怒った口調で、何やらマーシャルに向かって話している。
けど、どうも言葉が伝わらないらしい。

「まったくもう!!」

というジェスチャーをして、走ってゆく。
何かSPバッグを巡ったトラブルでもあったのだろうか。
そんな姿を見つつも、あまりのんびりもしていられない。

体勢を整え、いざ出発。
残り、43km。


痛む膝は、わずかな休憩時間で回復することも無く、ガマンの走りが続く。

1周目、水しぶきを上げた水たまりはすっかり乾いたようだ。
少しのアップダウンも、ここにきて若干のインパクトを与えてくるが、それよりも問題はJirisan Lakeへの復路。序盤が下り基調だったから、終盤は多少なりとも登りを覚悟しなければならない。

森林のトンネルを走り、最東端に至る。
ぐるりとUターンして、これを戻ってゆく。
チェックポイント、アベレージは27.4km/h。


すれ違う選手の数はまばらだ。けど、まだまだ絶えることは無い。全体的に、そう悪くない走りは出来ているはず。
ペースを抑え、ひたすら走る。

全長180kmの大部分が周回コースゆえ、距離感こそ掴みやすいが、アイアンマン 北海道や佐渡アストロマンのように、広大な1Wayを期待すると、若干のスケールダウン感は否めない。
けど、その周回ももう少しすれば終わる。もう少しの辛抱だ。




Y字路を抜け、最後の周回コースを走る。

すれ違う選手、これから3周目に入る人数は少なめだ。高速コースゆえ、やはりT.T. BIKEでみんな颯爽と前のほうを走っているのだろうか。
けど、遅いT.T. BIKEの選手もいるし、速いROAD BIKE選手もいる。
結局は、走り手の自分自身の実力あってこその「道具」なのだろう。


周回コース、最後のチェックポイント。
アベレージは27.2km/h。
下り坂の勢いそのままに、これを通過してゆく。

あー、トイレ行っておけばよかったかなぁ。
チェックポイントに併設されたトイレ。
立ち寄るかは迷っていたけど、直前からの下り坂のスピードを落としたくなかったのでここは通過したけど、果たしてこのままBIKE FINISHまでガマンできるだろうか。


前半で走った大きな橋を再び渡る。
これが周回コースを抜ける目印。


公式Facebook動画より拝借


周回を抜けて少しして、最後のエイドステーションに差し掛かる。
ご当地パワージェルとゲータレード入りのIRONMAN Guryeボトルを受け取る。
空になったIRONMANボトルはジャージの背中ポケットに入れ、ボトルケージにこれを入れ替える。
IRONMANシリーズのボトルコレクションは今回も3本入手できた。

パワージェルを口にする。
うわっ、あまり美味しくないなぁ。(苦笑)


走ること少し。すぐに高速道路へと入ってゆく。


公式Facebook動画より拝借


片側2車線の1つを完全に封鎖し、追い越し車線側をひたすら走る。
残り、20km。






求礼:Guryeは田舎街ゆえ、さほど交通量は多くなかったが、追い抜いていく車から、ときどき激励の声を掛けられる。
これに応えたいが、、、ここにきて、向かい風が最後の試練として立ちはだかる。
風を遮るものは何も無い。
ひたすらの一直線が延々と続いている。

選手の姿は多くは見えないが、みんなコタえているようだ。
23km/h前後にまで落ちつつも、何人かの選手を追い抜きつつ、前を目指す。

高速道路だから、トイレは無いよな。
まだガマンできるけど、やっぱり寄っておけばよかった、などと思いつつ、風に抗(あらが)ってゆく。


しばらく走るうち、どこか見覚えのあるガソリンスタンドが見えてきた。
昨日、BIKEチェックインで移動中に見た、工事中のスタンドだ。
とすると、Jirisan Lakeまではあと、もう少しだ。
そう思うと、自然と力が湧いてくる。



公式Facebook動画より拝借



さて、残し少しの距離をペースアップして遅れを取り戻すか、それとも抑えてRUNに備えるか。

・・・やや迷って、後者に決め。
けど、足を緩めても勝手に進んでくれる、レース中唯一の種目も残り、あとわずか。
レースは休みどころ無く、まだまだ続く。


右側前方に、賑やかな音、そしてカラフルな光景が見えてきた。
Jirisan Lake、トランジッションエリアは盛り上がっているようだ。
けど、コースはまだこのまま前方に続いている。
BIKE FINISHはまだしばらく、おあずけのようだ。


走ること10数分。
マーシャルが右折方向を示すとともに、走行車線をゆく車の交通整理をしている。
あくまでも、選手優先。
ありがたい。
高速のランプを降りて、市街地に戻る。




大きなゲートをくぐる。
あれ、これってBIKEスタート序盤に見たものと同じかな?

今朝のBIKEコースと同じ道を少し走り、けど、今はその先は折り返しルートになっている。
Uターンして、少し走って、左折して、路地の道を走る。


公式Facebook動画より拝借


残り、あと5分も掛からないだろう。
と、ジャージ背中ポケットに入れていたボトルが落ちてしまった。
一瞬、どうしようか迷ったけど、せっかくここまで運んできたIRONMAN Guryeボトルコレクション。
減速、引き返してこれを拾う。

少し離れた後方で、選手がハングル語で何か大きな声を出している。
前方注意!
と、周りの選手にサインをした、、、とか、まぁそんなところだろう。

お邪魔してごめーん。
すぐに拾い上げ、戦線復帰。



公式Facebook動画より拝借


田舎道をくねくねと走り、そしてようやく、今度こそJirisan Lakeに戻ってきた。
BIKE降車ラインちょい手前でBIKEを降り、バルーンアーチをくぐる。


180km、走りきった!
タイムは6時間44分14秒、アベレージは26.7km/h。

目標:6時間40分、27.0km/hにかなり近い。

いいぞ。
今のところ、なんとか順調に刻んでいけている。
この調子でRUNもいこう。





Transition #2



BIKEを押して、所定の場所まで駆け足で向かってゆく。

すでに多くのBIKEが戻ってきている。
自分もそれに交じり、BIKEをスタンドに差し込む。

BIKEから手を離してから、ヘルメットを脱ぐ。
ルールにしっかり準拠w

残った補給食を背中のポケットに入れて、着替えテント、、、の前に、トイレに駆け込む。
ガマンしていたからか、若干、お腹が痛くなってしまった。
そのため大きい方を出すべく少しばかりの間、踏ん張る。
けど、中身は出てこない。
小さいほうの用を足して、トイレを出る。


RUNギアバッグを手にして、テントに入る。
多くの選手は時間短縮のために、BIKEジャージそのままで走る。
けど自分はRUN用のシャツとパンツにしっかり着替えをする。まだ5時間強を走るにあたって、フルマラソンにしっかり備えた装備をするほうが、自分にとっては良いからだ。

着替えをしつつ、GARMINウォッチの電源を入れ、テントの外、適当なポールの上にこれを置き、GPS取得をする。
もちろん、盗難が怖いから目につく距離の場所に置いて、だ。

SWIM、BIKEはいつものTIMEX IRONMANウォッチを使った。
よくあるタイプの、なんの変哲も無いスポーツウォッチだ。
けどRUNは、現在の走行ペースを確認するために、GPSウォッチが必需品だ。
今までずっと肌感覚でペースを刻んでいたけど、去年の夏、ついに買ったGARMIN 35J。そのGPSが教えてくれるリアルタイムラップの威力は絶大なもので、この半年前にようやく「キロ6分」を切る4時間10分をマークできたのは、そのおかげもあるかもしれない。

ただ、バッテリーがMAXで13時間しか持たないので、ロングのトライアスロンの全行程では間に合わない。
なので、SWIM、BIKEは今まで通りのウォッチを、そしてRUNでこれを活用するという使い分けをする算段だ。


補給食を口にしながらワセリンを塗り、着替えを進める。
疲労はあるけど、まだまだいける。
BIKEで感じた膝の痛みがどう影響するかは未知数だけど、今年はかなりRUNに力を入れた。
自己ベスト更新の手応えもある。
だから、今日がその本番だ。

最後まで攻め続けるぞ。


GPS取得を完了し、主人の出発を待つGARMINウォッチ。これを身に付ける。
シューズをしっかり履く。



着替えを終えた頃合い、ボランティアがギアバッグを回収しに来た。
身の回りの品を確認。
すべて問題無し。

ギアバッグを預ける。
カムサハムニダ。


テントを出る。
いい天気だ。
先は長いが、まだまだやれる。


トランジッション、目標11分に対し、さすがに20分33秒は遅いか。
トイレによる影響だろう。
お腹まわりの調子は万全では無いけれど、目立つ痛みは出ていないから、今はそれで良しとしよう。


RUN STARTのバルーンアーチをくぐる。
GARMIN、計測開始。

海外トライアスロン制覇に向けた、最後の42.2kmが始まる!



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(2.6MB)






最後まで歩かない、止まらない 〜RUN 42.2km〜



太陽が最も高い位置にある時間帯からは1時間ほど経過した、15時過ぎのRUNスタート。
けど、まだTシャツの袖をまくるほどの暑さだ。でもこれがまた、カラッとしていて気持ちいい。


Jirisan Lakeの脇を走る。
スロースタートで、歩いている選手もいるけれど、それに誘惑されじと走る。
今回は出来るだけ、最後まで頑張る。だから最初からしっかり走る。




吊り橋を渡り、駐車場を抜け、田舎道を走る。のどかだ。


しばらくして1km地点、エイドステーションに到達。
ベースはキロ7分か。悪くない。
軽く補給をして、すぐに走り出す。




湖から続く水路だろうか、滝のような流れのすぐ脇、急な下り坂を足元に注意しながら降りてゆく。


川沿いを走る。
田んぼの広がる、のどかな風景。佐渡アストロマンを彷彿とさせる。


公式Flickrより拝借



高速道路の下、短いトンネルを抜け、前に進む。
昨日、BIKEチェックインのために自走した道だ。
ベースは速くはないが、体力を温存しつつ、ここまで良い感じで走れている。


公式Facebook動画より拝借






工事中の道路、その脇を通り、しっかりと舗装された道に出る。
まだ暑い。みんなゆっくりペースだ。
それぞれがそれぞれのマイペースで、田舎道に歩を刻んでゆく。



走ること10数分。次第に賑やかになってきた。
5km地点、エイドステーション。

ベースは変わらず、キロ7分ジャスト。
いい感じ。

ボランティアの姿、行き交う多くの選手の姿。
ここから周回コースが始まる。


公式Flickrより拝借



コースはここから5km、FINISHエリアのメインスタジアムすぐ手前まで走り、川沿いをぐるりと回って5.6kmを戻る。
これを3周回。
そして最後にもう一度5km進んで、今度こそメインスタジアムに入って栄光のFINISH GATEを迎えることになる。





周回コースゆえ、広大なフィールドを走るわけでは無いけれど、常に選手に囲まれて、賑やかな雰囲気の中を安心して最後まで走ることが出来そうだ。
そしてスペシャルニーズバッグはこの5km地点、周回のいずれかで受け取ることが出来る。

陽が落ちれば、寒くなることも考えられる。なのでバッグには長袖アンダーシャツのほか、足元まであるタイツを預けてある。
これをいつ回収するか、そして実際に着るかどうかはその時その状況に応じて判断予定。

もし未回収でも破棄はされないけど、返却場所と時間を考えると、明日の帰国プラン、移動時間から逆算しても、回収する余裕は無さそうだ。かと言って破棄するには、タイツがちとお高いシロモノだから、それもなるべく避けたい。

レース中にレース後のことを考えるのもなんだけど、少しは脳ミソを使うことは、長丁場にあってその気分転換になるから、まぁ、いいかな。



エイドで軽く補給をして、前に進む。

右側通行、その右端を走る。
心配のヒザの痛み。これも幸い、まだ大丈夫そうだ。

片側1車線の車道、一直線の道、その両端は整然と木が並んでいる。

行き交う選手たち。その選手の手首には、周回を示すカラフルなバンドが巻かれている。
ここから5km進んだチェックポイントで、1周につき1つ受け取る。
これを3つ集めて、もう1周すれば念願のFINISHだ。



抜いていく選手、こちらに向かってくる選手たちの手首を確認しては、そのスピードそして表情を観察する。
やはり、周回を重ねた上位の選手は速い。
キツそうな表情においても、どこかまだ、余裕を感じさせるその走り。
上を目指す選手、ハワイを狙う選手はやはり、格が違う。

いやしくもハワイを夢見る資格は、今の自分にはとてもじゃないけど無謀、いや、考えること自体がこのうえない無謀な事なのだろう。
でも、無理だといくら分かっていても、どこかそういった上位の選手たちの姿を夢描いてしまう。
それが明日へのモチベーションとなり、地道な鍛錬へと繋がり、そして今この瞬間の一歩一歩に繋がっている。
果てしなく遠い所を走る選手たち、けど、今は彼ら彼女らと同じ場所、同じ目的地を目指して走っている。
俺は、幸せ者だ。
しかし、その程度で満足しているようでは駄目だ。現状に甘んじること無く、今は全力を尽くそう。


単調な一本道、ときどきの声援に応えつつ、多くの選手に囲まれながら前を目指す。

往路と復路の中心に位置するエイドステーション。自国産のパワージェルに果物、スポーツドリンクに水。
紙コップで給水しては、ゴミ箱に捨てる。
そのゴミ箱まわりはやはり、ゴミが散乱している。
コップから漏れた水とスポーツドリンクが路面を濡らし、糖分のベタベタが靴底にくっ付き、そして離れる。
ひっきりなしに来ては去ってゆく選手たちをサポートしようと、ボランティアのおばちゃんたちも負けじと元気いっぱいだ。
言葉は通じないけど、必ずお礼は言う。

カムサハムニダ〜!


一本道だったコースはやがて左折、そして右折し、川沿いのサイクリングロードへと進んでゆく。
川の手前側が往路、向こう側が復路のようだ。
道はやや狭くなったけど、全体的に選手もバラけているので、混雑だと感じることは無い。




コースはサイクリングロードから河川敷に降りてゆく。
その傾斜はやや急なので、意識的にペースを落としてヒザへの負担を和らげる。


公式Flickrより拝借



細い道を走る。
ときどきの小さなアップダウンも、ギリギリ歩かないペースでこれをパスする。
街の景色も看板も、応援するギャラリーもいない河川敷。その光景は、ここが韓国であることを忘れさせるような、のどかな風景が続く。


GARMINウオッチの距離を確認する。もう少しで10kmだ。
ということは、折り返し地点まではあともう少しのはずだ。

ペースはキロ7分03秒。まずまずだ。
時刻は16時半。
暑さは和らぎ、少しずつ陽が傾くのを感じる。


コースは河川敷から再び、サイクリングロードへと登ってゆく。
その傾斜もまた、急だ。

ここまで走り続けてきた実績に執着すること無く、ここは無理せず歩を緩める。
けど、登りきったらすぐに走り出す。

2年前の酷暑・佐渡アストロマンではその制限時間にも追われ、前半21kmを走り続けた。
今回は気温も落ち着いているし、身体へのダメージも少ない。だから、少なくとも走り続ける距離を、佐渡のそれを更新したい。




サイクリングロードを上がると、さすがメインスタジアムのすぐ近くということもあってか、ギャラリーがいきなり増えた。
狭い道の左右から声援が飛ぶ。
これに応え、周回チェックポイントを目指す。

少し先のメインスタジアムから、賑やかな音楽、そしてノリノリのMCの声が聞こえる。
速い選手はもう、続々とゴールしていることだろう。
けど自分はまだ、10kmを走ったばかり。
自分の目標を胸に、マイペースで距離を刻むだけだ。


周回チェックポイント少し手前のエイドステーション。
果物や飲み物を少しずついただく。


後方から走ってきては、すり抜けざまに補給食を受け取り、紙コップをゴミ箱に捨てて走ってゆく選手。

「ワ〜オ。」
ボランティアの低い声が聞こえる。

「ごめんなさーい!」
その選手が謝る。

まだ水が少し残った紙コップがうまくゴミ箱に入らず、水しぶきが掛かってしまったようだ。
咄嗟(とっさ)に出る言葉はやはり、母国語なのだろう。




その先を少し行き、分岐エリアに着く。




右折は栄光のFINISHゾーン。
しかし自分はまだあと、32km。

分岐を直進し、周回リストバンドを受け取る。
その色は黄緑、ピンク、青の3色。周回ごとにこれをそれぞれ受け取るわけだ。


複数人のボランティアのジェスチャー、その中から人差し指を1本立てるボランティアから、リストバンドを受け取る。

肌触りは悪くない。少しだけキツいかな?でも、ビニールビニールして気持ち悪かった長崎バラモンキングよりはだいぶマシだ。

ちなみにこのバンドには特に計測チップなどは埋め込まれていない。おそらくは、単純に自分が何周したかを判別するためのものだろう。
疲労度MAXにあって、ちょっとしたことですら頭が回らなくなる。
そんなときに、「3本受け取って分岐に辿り着いたら、あとはゴールするだけ」という、分かりやすい指標になるわけだ。



コースは左折し、賑やかなメインスタジアムを背に、橋を渡って川の向こう側へと走ってゆく。


2日前に撮影した写真より


求礼に到着した翌日、選手受付のあとに走った道だ。
ガランとした一昨日とは一転、多くのギャラリーに囲まれ、選手がそれぞれの歩を刻んでゆく。


橋を渡ったところで、エイドステーション。
スープが提供されている。


2日前に撮影した写真より


まだ暑いから、スープは今はいいや。
次か、その次の周あたりで戴こうかな。



左折し、川沿いの道を走る。
舗装されていない道、雑草の生い茂る道。


2日前に撮影した写真より



一昨日、ホテル方面に戻る際に使ったでこぼこ道。
しばらく走ったのち、あのとき通ったルートから離れ、川沿いの道を進んでゆく。

やがて舗装されたサイクリングロードへと道は繋がる。

多少のアップダウンを経ても、そのペースは一定のスピードを維持できている。
いい感じ。



エイドステーションで給水。
パワージェルの補給をする。バナナ味のジェルは、わりと美味。
ベタつく口の中を水でゆすぐように飲み、お礼を言って先を目指す。



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(2.9MB)



陽が徐々に傾いてきた。
けど体感温度はまだ、暑いと感じる。
心地よい暑さ。


橋をくぐり、直進する。
そのアップダウンを歩く選手、走る選手。
自分はまだ、走れている。


少し進み、また橋をくぐる。
おや、くぐったらこれをUターンするようだ。




急な坂を、さすがに歩いて登り、右折して橋を渡る。


その先、前から選手がこちらに向かってくる姿が見える。
周回コースに合流したようだ。


合流してすぐのところにあるエイドで軽く補給。
そしてお礼を言って、まずは周回開始地点を目指す。
ここまで来れば、あとは3km少々だ。


陽射しは下がりつつもまだ高く、選手の数も多く、賑やかだ。
行き交う選手それぞれがそれぞれのペースで残り距離を消化してゆく。

民族衣装を身にまとい、国の楽器を奏でる人々。ボランティアによる、民族舞踊での応援だ。
こういったイベントは少ないだけに、単調なフルマラソンの歩を進めるための催しはありがたい。



走ること約1.5km。辿り着くエイド。
あまり補給をし過ぎてもペースを崩すだけなので、ごく軽めの補給に留める。



公式Flickrより拝借



ボランティアに励まされ、お礼を言って、先へと進む。

あともう少し行けば、、、


見えた。周回開始地点だ。
周回の折り返し地点を少し直進すれば、スペシャルニーズバッグ受領テント。
受領の必要が無ければこのままUターンだ。

今回のレースでは、どちらかと言うと寒さ対策のグッズを預けた。
けど、まだ気温は問題無い。
1周目はスルーしていこう。






ここまでの距離、15.7km。
時間にして、およそ40分半。
アベレージは7分07秒。

早くは無いが、そう悪くもない。
ほとんど平地だったし、体力もまだまだいける。
それに、基本的にここまで歩いたり止まったりはしていない。

コンディション的には、やはりBIKEのヒザの痛みが影響しているのだろうか、若干その痛みが出てきているけど、無理しなければきっと大丈夫だろう。
エイド以外ではなるべく止まらないようにして、「走り続けた距離」の自己ベスト更新を目指そう。


そうそう、GARMINのGPS精度はどうだろう。
高い建物があるとヘンな場所を捕捉してしまったり、道なき道を突き進んだりしていることが多いけど、今のところ、公式の距離表示板とほぼ差が無いようだ。
普段の練習だと精度が甘くて、道をフラフラ捕捉するぶん、距離も多めにカウントしてしまう=実際よりも速いペースで走れているような数値が取れてしまうけど、さすがGuryeは田舎街ということもあってか、わりと正確に刻んでくれているらしい。
とは言え、表示されたペースに振り回され過ぎぬよう、あくまでも参考程度に留めつつ、このままラップを刻んでいこう。



2周目に入ってしばらく。
淡々と走るその選手たちの腕先を観察。
まだ周回リストバンドを受け取っていない選手も多いようだ。
そして、鮮やかな3色のバンドを巻いた選手の姿も多い。
速い選手はもう、これが最終周回というのが当たり前か。
全員が決してハワイを目指しているわけでは無いだろうけれど、今回のようなスピードコースの場合、RUNもキロ5分半は出さないときっと、出場権争いをすることすら出来ないのだろう。
フルマラソン単体でもようやくキロ6分を切ったばかり。
いったいどうすれば、こういったハイレベルな闘いの土俵に上がることが叶うだろうか。


陽がだいぶ傾いてきた。
息遣い、足音、ときどき飛び交うハングル語。

「さぁ、あともう少しだ!」

突然、鼓舞する日本語が耳に入る。
その声の主は、マウンテンバイクに乗ってセンターラインを走る大会関係者。

あっ!
日本語ブリーフィングの解説をしてくれたあの人だ!
どうやら仲間たちを鼓舞して走っているらしい。

さすがに自分の姿には気付かない、もしくは気付いたとしても、初めて走る姿を一瞬目撃した程度では判別つくはずも無く、走り去って行ってしまった。
けど、こうして母国語が聞けると、不思議と安心感を得ることができる。




淡々と走る。
エイドに辿り着く。
軽く補給をする。
また走り出す。
少し走って左折する。

そして、川沿いのサイクリングロードを目指す。





この近辺は、不思議と応援する人たちの姿が多い。
欧米人女性の「Good Job !」「Nice Run !」という声援や、地元住民と思われる家族連れの姿。おや、子供たちはとっくに飽きて、携帯ゲームをダラダラとプレーしているようだw

なんだかんだで応援されると嬉しい。
こればかりはやはり、普段の練習では決して味わえないシチュエーションだ。


川沿いに至り、右折してサイクリングロードを走る。

細い道を少し進み、河川敷の道へと下りる。
やや急なその坂道を、歩くのと同等のスピードで進み、ヒザを守る。
その脇で、欧米人ふうのギャラリーが声援を送っている。

「ファイティン!」
なるほど、分かりやすい現地語での応援だw
けど、それはそれで励みになる。



公式Flickrより拝借



河川敷の道を進む。
何もない道はなかなかその距離の消化を実感しにくいけれど、何もないわりに比較的変化に富んだコースゆえ、さほど飽きることも無い。

川で釣りをしている一般人が数名。
果たして釣れるのだろうか。


サイクリングロードに戻る、急な登り坂。
ここも歩く。
登りきったらすぐに走り出す。

ヒザが少し痛む。
ダメージも次第に蓄積されてきたようだ。


細い道を進む先、中学生か高校生くらいの男子2人組ボランティアが両手にエアーサロンパスを持ってアピールしている。

ありがたい。
ヒザを重点的にスプレーしてもらう。
言葉は通じないけど、目的はただひとつだから、簡単な身振り手振りで容易に伝わるw

「カムサハムニダ!」

お礼を言って、前に進む。



ごちゃごちゃした中、辿り着く2回目の分岐エリア。
指を2本立てたボランティアから2つめのリストバンドを受け取り、1つめとは反対側の手首に巻く。





中間地点。

ヒザは少し痛むけど、まだまだいける。
それに、ここまで明確に歩いたり完全停止はまだしていない。
佐渡アストロマンの「歩かない・止まらない」記録の更新は間違いない。
このまま、行けるところまで走り続けよう。


FINISHゾーンから聞こえる賑やかな声や音楽を背に、橋を渡り、残り21kmに挑む。




橋を渡った先、今度はスープをいただいてみる。
気温は下がりつつあるけど、まだ少し暑い。
そんな気温を意識してか、スープの温度は低めだ。人肌に温まったスープを口にして、、、なんか想像と違う味だなw
まぁ、これもお国柄。
お礼を言って、走り出す。


しばらく続く舗装されていない道、それはヒザにはかえって衝撃が抑えられるから都合がいい。
けどそれも短い時間。
舗装されたサイクリングロードへと入る。



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(2.8MB)



この時間帯ともなると、さすがに歩く選手の姿も目立つようになってきた。

上位選手はとうに完走を果たし、あとの選手はそのひとりひとりが、それぞれの夢や目標に向かって走ってゆく。
その走りの中に、そしてその行き着いた果てには、どんな世界が広がっているのだろうか。

そして自分もまた例外なく、その中の一人だ。
ロングのトライアスロン、そのRUNでどこまで「走り続ける」記録が伸ばせるか。

時間内完走はほぼ、問題無いだろう。
しかし総合記録はあまり意識していない。
最後まで走りきったその結果として、どれくらいのタイムが出ていたか。…を知るのは、楽しみだ。



痛むヒザは、まだ許容範囲内。
なるべくマイペースを維持しつつ、頑張る。

陽もだいぶ沈んできた。

肩にまくっていた袖を戻す。
たっぷり吸収・蓄積された汗の重みを感じる。
少し気持ち悪いけど、じき慣れるだろう。





橋をくぐるアップダウン、そして次の橋をぐるりと回って、川沿いの道から周回の合流地点へと進んでゆく。


まっすぐに伸びる道、行き交う選手たち。
この直線はどうも、延々と続くような錯覚があり、あまり好きじゃないな。
エイドに寄ったり、景色を眺めて気を紛らわせる。

ここまで走り続けてきて、さすがに少しずつベースダウン、、、というか、エイドで立ち止まっての補給が増えてきた。
「走り続ける」目標に対し、エイドは唯一、「堂々と停止できる」と自分に向かって言い訳ができるエリアだw
けど、それもあまり頻度が高くてはトータルアベレージを下げてしまう。
ヒザの痛みの増幅を避けることを最優先にしつつ、なるべく休み過ぎないよう気をつけよう。


お腹の調子は大丈夫そうだ。
トイレはもう少ししたら行っておこうかな。

こまめに補給をしては、軽くエアーサロンパスを吹き掛けて、前に進む。



無心に走る。
ギャラリーも少ない。
談笑する選手も少なく、各自がそれぞれのペースを守って、一歩一歩の距離を刻んでゆく。



公式Facebook動画より拝借



1周目の景色を思い返しつつ、折り返し地点までの残り距離をイメージする。

小学校、大きな俵、交差点、カーブ、トラクター。
脳内で景色をプレイバック。
そうそう。そういえば、そんな物もあったな。

流れてゆく景色が、意識と無意識の間をただただ過ぎてゆく。



と、その先に見覚えのあるエイドステーション、その手伝いをする子どもたちの姿が目に入る。
親に言われて、よく分からないままに手伝わされているのだろうか、それとも。
けど、少なくともボクら選手にとっては変わらない、ありがたい存在だ。

カムサハムニダー!

意識的に子どもたちから補給を受け取り、お礼を言う。
彼ら彼女らにとってこれが、少しでもよい思い出になるのであれば。





補給ののち、折り返し地点。
スペシャルニーズバッグ受領エリア。

さて、どうするか。

現時刻、18時半。
陽はまだ落ちきってはいない。
けど、もう1周する頃にはすっかり暗くなっているだろう。
夜は意外と寒かった。

となれば。。。


バッグを受け取り、タイツを腰に巻く。
アンダーシャツは、、、これも巻いては少し走りにくくなるから、ここで着てしまおう。

着た直後は少し暑いと感じるも、この後にかけてちょうど良くなっていくだろう。

バッグに同梱したジェルとアミノバイタルを口にしつつ、装備を固める。
トイレに寄って、体調も万端。

そして再びコースに戻ってゆく。


26.2km地点。
区間ペース、7分29秒。
全体アベレージ、7分15秒。

残り、15km。

さぁ、あとは会社帰りの通勤RUNと同じだ。
エントリーから10ヶ月。
積み重ねた鍛錬も、残すところ、あともうひと踏ん張りだ。




19時の少し前の時間帯。
日本と、東京と比べると多少、日の入りは遅いようだ。
けど、その明かりもだんだんと減衰してゆく。


淡々と走ること少し。

日本語で声援を送りながら拍手をする声が聞こえる。

あっ・・・!

あのCEEPOのお偉いさんだ。
路肩にロードバイクを置いて、応援をしてくれている。
一瞬、会話をしようかと思ったけど、BIKEの会釈事件w もあり、ここは素直に「あざーす!」と応えて走り去ることに。

あーでも、やっぱ何か声を掛けても良かったかもなぁ。
もし次の周、まだいてくれたら軽く話し掛けてみることにしよう。




気温が下がってきた。
けど、アンダーシャツを着たのでちょうど良い。
ふと、周りの選手を見回す。
そのほとんどは半袖シャツ。
中にはタンクトップの選手すらいる。

自分はそこまで寒がりではないものの、この気温でタンクトップはムリだなぁ。。。


ていうか、そのほとんどがBIKEジャージとレーサーパンツそのままの格好だ。
着替えをしない事は、トランジッションタイムの削減には大きな効果があるけれど、ロングでは多少のタイムロスをしてでもRUN用の格好に着替えたほうが、自分にとってはその後およそ5時間の闘いを、より良いコンディションで臨むことができると考えている。

けど、ここ最近の第2トランジッションはさすがに遅すぎる。
一度はBIKEジャージのまま走ってみることに挑戦してもいいかもしれない。



薄暗くなってきた道を、ただただ前へと進んでゆく。



公式Facebook動画より拝借



ヒザが痛む。
スピードを抑え、更なる悪化を防ぐ。


辿り着くエイド、そのエアーサロンパスを多めに使用する。
そして屈伸やストレッチをして、走り出す。

走り出して少しの間は痛みは和らいでいるが、またしばらくすると痛みが出てくるようになる。


思えば、今年の練習後半は20km程度でヒザが痛むことが増えた気がする。
一時的なものと思っていたけれど、果たしてその因果関係は、いったい。。。

ガマンの時間帯が続く。



川に向かって左折する、少し手前のエイド。
エアーサロンパスをじっくり。
アイアンマン北海道では在庫切れの多かったそれも、ここIRONMAN Guryeでは比較的潤沢のようだ。
財政の厳しかった北海道と比較しても、細かいところで今回は充実しているように感じた。

そういった小さな違いの蓄積が、70.3を含む北海道でのアイアンマン再開が承認されない原因になっているのだろうか。

ボクら選手はそんなバッググラウンドのことは分からない。
けど、運営側の苦労や努力のうえに、こういった大規模な大会が成り立っている。

スタッフ、ボランティア、インフラ。。。
あらゆるものに感謝の念を抱きつつ、今はFINISHラインを目指し、前に突き進むのみ。



薄暗い河川敷の道を進む。
歩く選手も多いけど、誘惑に負けじと走り続ける。

急な坂だけは、戦略的徒歩。
けどそれも過ぎればすぐ、走り始める。


坂を登り、サイクリングロードに戻る。
エイドで軽く補給をしながらエアーサロンパスをしっかり。

そしていよいよの分岐エリアは、、、念願の、3つめのリストバンドを受け取る。


残りあと、11km。






この5km区間のラップタイムはおよそ、8分半。
さすがに落ち過ぎたか。
攻めたい気持ちは相変わらずながら、ヒザの痛みがどこまで増大していくかが分からない。

今は「エイド以外は歩かない・止まらない」が持続できていることを良しとしよう。

FINISHゾーンの賑やかな音、そして光を背に、最後の1周に挑む。



橋を渡り、川の反対側を走る。
太陽が山の向こう側に沈み、急激に気温が下がる。
そして夜の世界が広がってゆく。


点在するライト、その薄明かりを頼りに走るサイクリングロード。

ほかの選手の表情が確認できないほどに、闇が広がってゆく。


そんな光景にあって、煌々と照らされた一角。
エイドステーション。

ボランティアから氷入りのコップを薦められる。
けど、冷たい飲み物はもう、いらないかな。
代わりに常温の紙コップをいただく。

補給食を口にしつつ、エアーサロンパスを借りる。



だいぶ疲れてきた。
けど、それもあともう少しの辛抱だ。
長かった一日も、あともう少しで終わる。

「カムサハムニダぁ〜!」

献身的にサポートをしてくれるボランティアにお礼を言う。

「イエ〜」
そう応えられる。


そういえば、だいたいのお礼の返す言葉は「イエ〜」と、語尾の上がる単語だな。
ハングル語もこの辺りは日本語と同じような感じなのかな?



真っ暗なサイクリングロード。
橋をくぐるアップダウンを徒歩でしのぎ、平地に戻ってまた頑張って走り出す。

不思議と、歩きたい衝動には駆られない。
それだけ今シーズンのトレーニングの成果が出たのか、それとも気持ちの問題か、それともここまで抑えたペースで走ってきたから、だろうか。



気温が下がる。
腰に巻いたタイツを履いて走ろうか。

どこで履こうかな。
次のエイドでトイレに寄って、そこで履けばいいか。


橋をくぐり、ぐるりと回って坂を登り、その橋を走る。
そういえば橋のすぐ隣は幹線道路だろうか。
車のヘッドライトが目立つ。
まぁ、夜だから当たり前だけど。


あ、たしかこの道は高速道路だったはず。
ということは、きっと日中のどこかでここをBIKEで疾走しているはず。

あれから数時間。
残りはあと、数十分。



橋を渡り、周回コースに合流する。
そのすぐ先のエイドステーションで補給食を口にしつつ、トイレに入る。

それまでの夜道から一転、明るい空間が広がる。

やや大きめのコンテナ、その中には小便器が2つに、個室が2つ。
日本のような個別の仮設トイレはほとんど見ない代わりに、この大きなコンテナをよく目にした。

たまたま混雑の印象がほとんど無かったこともあってか、なかなか使い勝手がいいね、コレ。


個室に入り、RUNパンを脱いで、タイツを履く。
そしてその上からRUNパンを履く。


着替え中もGARMINウォッチは走り続けたままだ。
どれだけのタイムをロスしているだろうか。
けど、ヒザの痛みをごまかす、いや、「結果的に止まって休憩をせざるを得ない状況になってしまっている」事の、自分へのごまかしが堂々とできる数少ない時間帯だから、こればかりは仕方ないw


着替えを済ませ、ついでに用を足して外に出る。

夜道をふたたび、走り出す。



まっすぐに続く道。
夜空に輝く星。

あれはオリオン座か。
冬の星座が、夏の終わりをそっと告げている。


行く選手も向かってくる選手も、だいぶ少なくなってきた。
路肩に四つん這いになって嘔吐している選手もいる。
満身創痍。
それだけベストを尽くしている、という裏返しだ。

そんな光景から感じた力の発揮状況、果たして自分は目一杯の力を出し切ることが出来ているだろうか?


・・・否。

残念ながら、答えはNO、だ。
理由はもちろん、ヒザの痛みを抑えた走りにある。
だから体力的にはまだいくぶん、余裕がある。

時間に追い詰められた佐渡アストロマンのように、必死になる必要も無いほど充分な制限時間。
けど、皆生で感じた不完全燃焼感をまさか、ここで味わうわけにはいかない。

だから最後くらいは、痛みを我慢してでも、ペースを上げよう。


どこからペースアップをするか。
折り返し地点を過ぎてから、だな。
もし痛みが増幅し過ぎたら、その時にまた考えよう。


心は決まった。
残りあと、7km。




3度目の、同じ景色。
けど闇夜にあって、その様相はこれまでとは一線を画す。
何度も走る周回コースゆえの飽きも、比較的新鮮な気持ちで臨むことができる。

気温の違いも大きいだろう。

アンダーシャツも、ましてやタイツを履いた選手など、ほかに一人もいない。
けどその肌触りひとつをとっても、残り距離と時間を刻むに、一定の安定感をもたらしてくれる存在だ。

人は人。自分は自分。
己の限界と対峙する時間帯。
ほかの誰でもない、自分にだけ与えられた、贅沢な時間。
長時間追い込み続けてようやく味わうことのできる、苦しくも至福の、わずかな時間帯。



まばらな足音、息遣い、
遠くに散らばる光の集まり。

なかなか近付かないその光も、無心で走るうちにやがて、目の前に広がってゆく。

エイドステーション、そして折り返し地点。





タイツの上から、念入りにエアーサロンパスを吹き掛ける。
補給食はもう、大丈夫だろう。
給水だけを軽く口にし、お礼を言って最後の距離を詰めてゆく。


5km区間のラップタイム、キロ9分22秒。
全体アベレージは7分44秒。

タイツ履き替えのタイムロス、そして毎回のエアーサロンパスに費やす時間の蓄積。

当初の目標だった全体アベレージ:7分30秒からはだいぶ遅れてしまった。

けど、ここまでの「道中は歩かない・止まらない」はまだ続いている。
体力的にも、最後まで走りきることは出来そうだ。


その最後の区間を、頑張ってペースアップする。

残り、あと5km。



真っ暗な道を進む。
暗さはときに、無心の走りを促すこともあるが、同時にその距離感覚、進んでいる実感が得にくくなることもある。

けど、この長時間。
今回のレースもまた、楽しかった。
やや余力を残し、安定した走りが最後までできた要因のひとつとして、今期のトレーニングの成果を意識してもバチは当たらないだろう。

様々な取り組みを思い起こしつつ、残り距離を詰めてゆく。


そういえばこの辺りはCEEPOのお偉いさんがいた場所だったっけかな。
さすがに暗くなったから、戻ったのかもしれない。



遠くのほうで、何やらキラキラ光っている。
闇夜を照らす、緑と青のまばゆい光。

歩を進めてゆくうちに、その正体が見えてきた。
救急車だ。

フラットメインのコースとは言え、なんだかんだでロングはキツい。
個々人の仕上がり状況にもよるけれど、もしヒザの痛みが無く、攻めの走りをし続けていたとしたら、あの救急車に運ばれていたのは自分自身だったかもしれない。

無事でありますように。



いくぶん騒がしい現場を通過し、FINISHゾーンを目指す。


直線道路、最後のエイドを通過する。
補給は、ほぼ無し。
あーでもトイレはちと、寄っていこう。


手早くこれを済ませ、もう一段階、ペースを上げる。

・・・なんだ、走れるんじゃん。



川沿いの道を走る。
下り坂を利用して、さらにもう一段階スピードアップ。

選手を次々と抜いてゆく。


なんだ。まだ元気じゃん。

予想以上の余力に対する若干の悔しさ、そして成果としての手応えを感じつつ、ハイペースのまま進んでゆく。



静寂の河川敷。
その少し先にある終着地から聞こえる、賑やかな響き。

あと少し。
あと少しであそこに飛び込める。




ゴールの瞬間は、果たしてどんな感情になるだろうか。

去年のさいたま国際マラソン完走後、理由も分からず流れた涙。
フルマラソンで初めて「歩かず・止まらず」を達成した事の嬉しさだったのだろうか。
それは今でも分からない。

でも、もしそれが理由だとしたならば、初のロングトライアスロン・RUNパートでの「歩かず・止まらず」を果たすことになる。
だからあのときと同じく、涙を流すのだろうか。



河川敷からサイクリングロードに上がる、登り坂。
力を振り絞り、これを駆け上がってゆく。

舗装されたサイクリングロードを、力いっぱいの気持ちを込めて駆け抜けてゆく。



FINISHゾーンから溢れる光。
暗闇に浮かぶ、無数の輝き、そして音楽、MCの軽快な声。

格別の瞬間、またその瞬間。
その一瞬一瞬の幸せを味わいつつ、終着点へと突き進んでゆく。




最後の分岐エリアをいよいよ右折し、栄光のFINISHゾーン、メインスタジアムへと向かってゆく。


長かった1日が、終わる。

陸上トラックのラインに沿い、弧を描いて走ってゆく。



最後の直線、
レッドカーペット。


圧倒的な光の世界。
色とりどりの、まばゆい光。

大音量のサウンド、ギャラリー、


FINISHゲート。


極上の、瞬間。。。




溢れる想い、その表情。


笑顔、笑顔、、、笑顔。。。










※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(11.1MB)







終わった。。。

今回も無事、完走を果たすことができた。



スタッフに導かれ、フィニッシャータオルとミネラルウォーターを受け取る。

「Congratulations !」

スタッフから声を掛けられる。
そしてこの後の動きの説明、すなわち、写真を撮って、完走証を受け取って、ストリートギアバッグを受け取って、食事をとって、、、という話をしてくれる。

どこかで見たなこのおっちゃん。
あっ、EXPOのときにインフォメーションブースにいた、丸メガネの人だ。

丁寧にレースコースの解説をしてくれたり、日本語ブリーフィング会場の場所を教えてくれたっけ。
あのときと同じように、手厚い案内をしてくれた。

カムサハムニダ〜!


案内の先に、行列になっている記念写真ブースに並ぶ。
そしてニッコリ、はいポーズ。







続いて大型の屋根の中、リカバリーエリアへと進み、完走証をその場でプリントアウトしてもらう。





記録はおおよそ、14時間ジャスト。
目標にしていた13時間30分には届かなかったけど、終始安定した走りで、今回ほど制限時間が気にならないレースは無かった。




奥に進み、朝の着替えグッズを入れたストリートギアバッグを受け取る。




パンパンに詰め込んだバッグから服を取り出し、その場でパパッと着替えてしまう。
このメインスタジアムの建物内にはシャワーもあって、もちろん使うことが出来るのだけれども、どうせまたホテルに戻って風呂に入るだろうから、今はいいや。


会場の様子を眺めながら着替えを済ませる。


オーロラビジョンには続々と完走を果たす選手たちの姿が映し出されている。

みんな、笑顔だ。




そのビジョンから目を少しそらす先には、マッサージブースが。
笑顔の後は、どっぷりと疲れたその身体をほぐしてもらう姿が並ぶ。



そしてその順番待ちも、多くの選手が並んでいるので、、、まぁ、自分の場合はまだ動けるから、今回もこれはパスでいいや。
ていうかレース後にマッサージを受けたことが無いな。
もっと早くゴールして、空いているときに受けたいものだ・・・けど、果たしてそれが叶うのはいつの日になることやら。


マッサージブースを背に、その広場のメインブースは無数に並んだテーブルと椅子。
そして無事に完走を果たした選手たちが談笑している。



テーブルには飲み物や軽食が並んでいる。


そうだ、小腹減ったな。
少しいただこう。






・・・といっても、あまり腹を満たすものは無さそうだけど(汗
でも散々、暴飲暴食をした今の胃にはこれくらいがちょうどいいかもしれない。



軽く腹を満たしたところで、、、
続々とフィニッシュする選手たちの姿を見に行こう。











みんな、笑顔がまぶしい。
照明もまぶしいw

MCも観客もテンションが高い。

これがロングレースならではの光景。
日中闘って、真っ暗になってからの完走。

やっぱ、、、いいなぁ・・・この雰囲気。。。



FINISH会場の様子を撮影した動画です。
※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(56.9MB)




しばし会場の雰囲気を楽しんだのち、そろそろBIKEとトランジッションバッグを回収しに行こう。


22:00発のJirisan Lake行きシャトルバスに乗車。
満席。




レースのことを思い返しつつ、また、撮ったばかりの写真を眺めつつしばしの乗車。







Jirisan Lake到着。

朝の騒がしさと正反対の、ひっそりとした空間。
静寂。

相棒はそこでひっそりと、待っていた。







BIKEと荷物をピックアップし、メインスタジアム方面に戻るバス停へ向かう。

ちなみにSandong Market方面は、ちゃんとした(?)ホテルが多いからか、バス待ちをする選手が結構いた。
そして到着したバスのトランクにBIKEを寝かせてそのまま載せようとしていたけれど、せいぜい2〜3台しか入らないだろこれ。


対して、メインスタジアムに戻るバスを待つ選手は、自分を含めて2人だけ。
もしトランクに載せられなかったら10kmを自走予定、、、というか、皆生がそうだったので、元々そのつもりだったけど、ちょっとは期待できそうだ。


バスが来るまでまだ少し時間がある。
そこで、勇気を出して話しかけてみた。

その人物は51歳のフランス人。BIBナンバー:1145。
ここ最近は中国で働いているらしい。ということは・・・3ヶ国語を使いこなすわけだ。
アイアンマンはホント、ワールドワイドで面白い。

記録は4時間10分で、自分とほぼ同じ。
いや、年齢が10歳も上だから、思い切り負けてることになるか。


と、談笑をしているうちにバスが来た。
乗客はゼロ。貸切状態。ある意味、寂れた側のホテルを取って正解かも。(何
2人とも運よく、トランクにBIKEを載せることができた。


バスに乗ってからも話を続ける。英語の勉強だ。頑張れ、俺w


話していて面白かったのが、今回は会社の「出張」扱いで、飛行機もホテルも会社が一部負担してくれたそうな。
なんとも良いご身分だことw

んで釜山空港からはバスを使ったけど、IRONMAN公式のバスでは無く、路線バスを使ったらしい。
公式バスなら片道40ドルに対し、路線バスは10,000ウォン。つまり片道4,400円ではなく1,000円で来れるんだと。。。
なんて安いんだ。

フランス人のおっちゃんも、その差額があればあれもこれも買えるよ。アイアンマンの組織がマージン取ってるから、高い!って言ってた。
自分は確実性をつい求めてしまうから、いきなりローカルバスはちょっと勇気が無いなぁ。
でも、それくらいやらないと海外では通用しないかな?
その代わり失敗したら長時間、待ちぼうけをする事になるかもしれんが。



楽しい、いや、英会話の頑張った時間も流れ、メインスタジアムに到着。

そしてそこからすぐにJirisan Information Center行きのバスに乗り換え。
23:00のバスにギリギリセーフ。
いや、ホントはちょっとオーバーしてたけど、運ちゃんに「BIKEをすぐに載せ替えるから、ちょっと待ってて」ってジェスチャーと強引な英語でアピールして、少し待ってもらったw

まぁ、べつに急がなくても、深夜1時くらいまで走ってるんだけど。
けど、明日も忙しい。
BIKE梱包をして、タクシーに乗って、10時の空港行きバスに乗るには、なるべく早く戻るに越したことは無い。

これまでロングレースの全てで、制限時間いっぱいまでその様子を眺めたり、最終走者を見届けたり、翌日は閉会式にも出ていたけれど、今回はちょっとその余裕が無いな。。。

いや、仕事の都合上、短めの休みでスケジュールを組んだだけだったけど、でもせっかくの海外だから、もう少しそのへんはゆっくりしても良かったかな。
次回以降、状況に応じてまた余裕のあるプランが立てられれば。



というわけでバス乗車。
もちろんフランス人のおっちゃんも一緒。

こちらのバスには少し乗客がいたけど、トランクはガラガラだったので、自分と2人分のBIKEをそのまま載せることが出来たので、幸いにも最後までラクに帰れることになった。


フランス人のおっちゃんに「どこのホテル?」って聞いたら、な、なんと同じホテルw
何階?って聞いたら、なんと同じ5階ww
世の中狭すぎwww



数分の乗車ののち、Jirisan Information Centerに到着。
バスからBIKEを取り出し、運ちゃんにお礼を言う。


戻ってきた。
19時間前と同じ、真っ暗な光景。
けど、今と全く異なる、心穏やかな、、、漆黒の世界。


帰り道は下り坂をサーッと走ってゆくだけだ。
けど、道は真っ暗。
幸い、フランス人のおっちゃんのヘッドライトが強力だったので、先導してもらう。
最後の最後までラクが出来た。



ホテルに到着。
ちょうど、フロントのおっちゃんが出てきたので、「完走できたよ〜」と、ジェスチャーで伝える。
おっちゃんはハングル語で「おめでとう」というような言葉を、きっと返してくれたと思う。

そういえば、なんとか宣言通りの「23時頃の戻り」も叶った。



エレベーターが狭いので、フランス人のおっちゃんに先に行ってもらう。
そして次のエレベーターで5階へ。

5階で待っていたおっちゃんと最後にメール交換して、「Take care.」と声を掛けてもらい、それぞれの部屋に戻る。
帰国して落ち着いたらメールしてみよう。

ちなみに、過去にこういったメール交換をした事は何度かあるけど、たいてい返事は来なかった。
今回は果たして。



風呂に入り、ウエットスーツを軽く洗って、荷物を軽く片付け、BIKEを途中までバラす。

何気に組み立てをするよりも、バラして、プチプチを巻いて、梱包するほうが時間が掛かる。
明日のバスは10時。
タクシーは9:10にロビーに来るので早めに起きる予定だけど、身体の動く今のうちに、なるべくやっておきたい。



・・・TVを垂れ流しつつ、うとうとしつつ作業をしていたら、なんとびっくり、2:30になってしまった。
さすがに寝よう。。。


むしろ、こんな時間まで作業できる体力が残っていたことに、力の全てを絞り出せなかった悔しさをちょっぴり感じる。

まぁ、それはまた後日、振り返ろう。。。














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