>> IRONMAN Gurye: Korea 2018 参戦記 <<
〜 出発 - 日本出国 / 韓国入り / ホテル到着 〜
2018年9月。
月日が経つのは早いものだ。
エントリーから10ヶ月。いよいよその日がやってくる。
普段の国内レースでは事前にBIKEや荷物を宅配便で送ってしまうのだが、今回は海外配送をするわけにもいかず、すべての荷物を自力で運ぶ必要がある。
BIKEを分解し、2012年の長崎大会以来となるハードケースに詰め込む。
また、空いたスペースにヘルメットやウエットスーツ、補給食など、詰められるだけ詰めておく。

しっかり閉じるのにやや苦労しつつ、あまりに無理矢理やるとホイールに負荷が掛かるので調整しつつ、なんとか作業完了。
残りの手荷物は登山用リュックサックに詰める。
結果的に、ハードケースは32kg、リュックは7kgになった。

9/5(水)、移動日当日。
飛行機は明日の9:15発の便。
自宅からこの時間に間に合わせるためには始発の電車に乗り、ローカル線を乗り継いで素早く移動する必要があるが、突然の遅延や運休のリスクに備え、今回は前日に成田空港内にあるカプセルホテルに泊まる作戦でいくことにした。
超事前予約&平日利用とあって、宿泊費は2,600円と、通常の半額近くで取ることができた。
チェックインは夜なので、夕方に出発すればいい。
そこで、朝はいつも通りに起きて、娘を保育園に送ったあと、その足で市民プールに向かう。
仕事の都合上、数ヶ月前から仕事帰りにプールに寄れなくなってしまったので、久しぶりのフォームチェックと、身体をほぐすことがその目的。
1時間ほど軽く泳ぎ、家に帰り、時間までダラダラ過ごす。
16時過ぎ。
いざ、出発。
さぁ、いよいよだ。
ハードケースをこうして運ぶのは初めてのことで、さすがに重いけど、駅までゆっくり15分も歩けば大丈夫だろう。
ふーむ、こうしてゴロゴロ鳴らしながら歩いていると、普段は平坦に思える地面も結構、ガタガタしているんだなぁ。
・・・などと思いながら歩くこと数分。
おや?
どうも進みが悪いな。
どんだけ道がガタついて、、、
!?
!!!!
タイヤが、、、粉砕しやがった!
な、なんだと・・・?!
外れたタイヤを拾う。
かなり熱くなっている。
重すぎたのか、劣化していたのか、それとも。。。
まさかこんなタイミングで?!
幸い、4つある車輪の、前側1つが壊れただけなので、少し傾けて運べばなんとか。。。
横断歩道を渡る。
進みにくい。。。
!!??!!
とっ、、、取れた・・・っ!?
無残にももう一方の前輪が破損。
ど、どうする・・・?


東京駅発の空港行きバスは18時00分発。
予約したとは言え、1,000円なので最悪は乗れなくても、さほど金銭的ダメージは大きくない。
が、もしかしたら同じ境遇の、スーツケースのタイヤが壊れた人向けの修理備品が空港にあるかもしれない。
幸い、後輪2つは構造がもう少ししっかりしているように見える。ハードケースを立てて、後輪を頼りに運べなくはない。
とりあえず、まずは東京駅に向かおう。。。
駅に着く。
エレベーターに乗ってホームに行く。
電車が来る。
一番後ろの、広めの空間にハードケースを置く。
やれやれ。。。どうしたものか。。。
あっ、東急ハンズならもしかしたら応急処置の部品があるかも。
と、ふと思い付いたものの、新宿駅、通過しちまった。。。
今年は厄年。
年の始めの頃に厄払いをしてもらったお陰か、ここまで比較的順調に来れていた。
けど、まさか移動日当日にこんな形で出てきたのか・・・?
東京駅に到着。
エレベーターを探しつつ、段差を乗り越えつつ、バス乗車エリアに向かう。
おっ、、、東京駅にも東急ハンズがあるのか。
バスの発車までは、あと30分ある。
店舗はビルの9階か・・・。高いな。。。でも駄目もとで行ってみるか。
1階入り口付近にハードケースを置き、急ぎエスカレーターを登る。
辿り着いた店の規模は、、、小さい。。。
店員に聞いてみるが、やはりそういった部品は、こんなシャレオツな街の店には置いてあるハズが無かった。
仕方ない。とりあえず空港に行くか。
いや、新宿かどこか、部品を置いていそうな街に戻って探してみるか・・・?
空港行きの電車には、今日の終電までに間に合えばいい。
…時間が無い。
判断は揺れたが、バスの時間も迫っている。
結局、予定通り空港行きのバスに乗ることにした。
10ヶ月積み重ねた鍛錬を、こんな事でフイにするわけにはいかない。
それに、まだ移動が出来なくなったわけでもない。
大丈夫。過去にも様々なトラブルに見舞われたけど、なんとか乗り越えてきたじゃないか。
だからきっと今回も。。。
バス乗り場に着く。定刻2分前。
平日だからと油断していたが、予想に反し、自由席のレーンは長蛇の列。
予約しておいてよかった。

心配の種のひとつ、大きいサイズのハードケースも無事載せることができて、ひと安心。
とりあえずバスに乗り込む。
ハードケースを縦にした運び方はだんだん分かってきた。
けど、それも後輪が生きていることが大前提。
これが長く続いたら、もしかするとこれも壊れるかもしれない。
そうなったらもう、、、32kgを手で持って運ぶことは現実的ではない。
空港で、どこか直せる店があることを願う。
バスが発車する。
すぐに高速道路に乗る。
渋滞もなく、スイスイ進む。
高い金を払ってリムジンバスに乗ったり、成田エクスプレスに乗るよりもリーズナブルに、快適に行くことができる。
ひとつの発見。
19:10、空港到着。
第2ターミナルで降りる。
飛行機の出発は第1ターミナルだが、カプセルホテルは第2ターミナルにある。
あまり全体像は把握出来ていないけど、時間はたっぷりあるから、いろいろ考えながら行動してみよう。
中に入ると、そこはチェックインフロアだった。
平日の夜とは言え、かなりガランとしている。

えぇと、、、まずは、、、そうだ、いつもは使わないカート、あれにハードケースを載せよう。
よっこらしょっと、と載せて、動かしてみる。
なんだ、この快適な物体は。
これをずっと借りて行ければいいのになぁ。

叶わぬ願いもそこそこに、まずはカプセルホテルにチェックインしておこう。
インフォメーションでホテルの場所を聞き、ひとまずそこに向かう。
ホテルは大きな荷物は預かれないので、別途空港の一時預かりを利用するように、との事前情報を得ていたので、ひとまずハードケースは隅に寄せて、リュックサックだけ背負って行く。
あれを盗むような人はそうそう、いないだろう。きっと。
ホテルを目指す道。
これが意外と遠い。

しばらく歩き、エスカレーターを降りて、降りて、ようやく辿り着く。

フロントでチェックインをする。
タブレットを駆使した作業に、時代を感じる。
中に入る。
未来の宇宙船のような、シンプルな、殺風景な内装。
リュックサックをロッカーにしまい、小物だけ持ってまた出ていく。

さて。。。
再びのインフォメーション。
肝心の「キャスター破損の修理ができる店」を聞いてみた。
が、残念ながらそのような店は無く、あるとしても靴の修理屋程度とのこと。
駄目もとでその店を探しに行ったが、あったのはごく普通の小さな、靴の修理屋。
しかもすでに閉店。
閉店越しに中を覗いてみたが、キャスターやその代用の出来そうな物も無く。
さすがに無理か。。。
とりあえず、ハードケースを一時預かりに出そう。
案内図を見て、店に行く。
明日は9:15発だから、余裕をみて7時前には回収したい。
が、店が開くのは7時とのこと。
まぁ大丈夫だとは思うけど、少しの不安のそぶりをしていると、「第1ターミナルにも荷物預かりはある。大きな荷物を運ぶわけだから、第1ターミナル側に預けては?」とのアドバイス。
なるほど、それもそうだ。
ハードケースを運び、連絡バス乗り場に向かう。

ガラガラの様相。
真っ暗な夜空と、空港の施設の灯りと、ときおり走る車のヘッドライト。
静まり返った、夜の空港。
なんだ、24時間稼働の空港でも、夜は静まり返っているんだな。
しばらく待ち、バス到着。
ガラガラ。

数分の乗車ののち、第1ターミナル到着。
荷物預かりのある1階から、出発ロビーのある4階に、ハードケースを持って上がる。
あわよくば、大韓航空に荷物をチェックインしてしまう作戦だ。
出発ロビーは、第2ターミナル以上に静まりかえっている。
なんだ、まだ20時過ぎなのにもう出発便は終わりなのか?
大韓航空ブースのオネーチャンに、荷物をチェックインできないか聞いてみた。
が、案の定NG。当日また持ってこい、だそうな。
仕方なく1階に戻り、一時預かりの店舗へ。

料金は1日820円。回収は明日だから1,640円。。。
まぁ、ヘンにケチって盗難や行方不明になるよりはマシか。
ちなみに受付は本来、20時までとのこと。
すでに20:30だったが、ちゃんと受け付けてくれた。
これでNG食らってたらもう、なんだかなーって感じだった。
保管の際、キャスターが破損していることを伝える。
すると、そこにガムテープを貼って構わないとの提案を受ける。
どれだけ使っても構いませんよ。と。
今後、役立つかもしれないと思い、むき出しの部品を思い切り覆い隠すよう、何重かにして貼る。
連絡バスに乗って第2ターミナルに戻る。
吉野家で牛丼をパパッと食べて、ホテルに戻る。

シャワーを浴びて、歯を磨いて、寝る。

疲れた。
まったく、何てことになってしまったんだ。
けど、ここからの行程、ハードケースは飛行機→バス→ホテルと、なんとか現地までは辿り着けそうだ。
その後のことはその時に考えよう。
今日は寝る。
9/6(木)。
6時過ぎ、起床。
改めて、今日は韓国に飛び立つ日だ。
殺風景なホテルのロッカールーム、人数こそ少なめだったが、ひとりひとりがそれぞれの目的をもって、各々の身支度をしている。
それに紛れて自分も手早く身支度。
チェックアウトをして、昨晩と同じルートを経て第1ターミナル行きのバス停へ。
さすがに昨晩と違い、活気に満ちた空気と喧騒感に包まれる。
行き交う車を眺めつつ、定刻通りに到着した連絡バスに乗る。
乗客も多い。昨晩とは大違いだ。ハードケースを第1ターミナルに預けておいてよかった。
数分の乗車のすえ、目的地に到着。
一時預かりの店に行き、ハードケースを回収。
エレベーターで4階・出国フロアに向かう。
出国ブース、そこは多くの人でざわざわしていた。
躍動感。
昨晩の、消沈した気持ちに加え、ガランとした静寂に包まれた雰囲気とは違う、生き生きとした空間。

平日の7時。
みんな、どうやってこの時間にここに辿り着いたんだろうか。
大韓航空のチェックインブースに向かう。
それなりにバラけているこのフロアにあって、なぜかこの大韓航空ブースだけ、長蛇の列。なんでやねん。
あー、なんだ、まだ受付時間前なのか。

ここまで来ればもう、全くもって急ぐ必要は無い。列に並び、受付開始時間を待つ。
と、なにやら係員のネーチャンがその列の人たちに向かって何か呼び掛けながら歩いてくる。
事前チェックインがお済みの方はいらっしゃいませんか?
あァ、そういえば今回初めて、公式Webサイトからそんな事を試してみていたな。
48時間前から受け付けるというサービス、これを利用すると現地がスムーズになるうえ、座席を任意に指定できるのだとか。
国内線や新幹線ではよく使っていたけど、国際線では初めてのチャレンジ。
それがここで発揮されるわけか。
呼び掛けに応じ、ネーチャンに着いて行く。
専用レーンに並ぶ。
大幅な順番待ちの短縮。
へぇえ、そんなこともあるのか。
そうこうしているうちにようやく受付開始。
少しの時間を待って、チェックインの順番に。
予約票とパスポート、それから巨大なハードケースとリュックサックを出す。
ハードケースの重量チェック。
31.8kg。
うっわホント規定上限の重量ギリギリ。(汗
大韓航空の規定サイズ、3辺の長さの和:277cmはクリア。
ただ重量は無料許容値:23kgをオーバーしているので、50ドルを追加チャージ・・・と思いきや、特に何も言われず。
自転車は「手荷物サイズオーバー」は問わない、と公式サイトに書いてあったけど、重量も特に制限無しなのかな?
いや、そんな事は無いと思うけど。。。
まぁ、いずれにしても無事預けることができたから、ひとまず安心。
ちなみにリュックサックは、預けたら有料だけど、手荷物として機内持ち込みすれば無料とのこと。
サイズも問題無しだったので、後者一択。
手続きは完了。
ただハードケースはこことは別の、大型荷物受付に行ってくれ、とのこと。
場所はすぐ近く。
そこに持参すると、係員は慣れた手付きで作業を進める。
そして、競技用自転車ならではなのだろうか、やはりCO2インフレーター(ボンベ)の同梱について確認をされた。
けどこれは、50g×4個までOKであることを事前に大韓航空に電話確認済み。実際は16g×2本。
その旨を伝えつつも、セキュリティのためかX線検査機に通したうえで、一度開いて現物チェックを受けることに。
そして現物を手渡し、その目視確認および、どこかに確認のために走って去って行った。
待つ間、ヒマそうにしていたほかの係員と雑談をしつつ、その帰りを待つ。
しばらくして、さっきの係員がまた走って戻ってきた。結果はもちろん問題無し。
航空会社によっては没収されることもあるけど、まぁ、万一そうなっても大して高いシロモノでは無い。また現地で買えばいいし。
ケースを閉めて、今度こそ完了。
さて、出発まで1時間半ほどある。
身軽になった状態でどうしようか。
そうだ、朝食をとろう。
久しぶりの成田空港を散歩しつつ、ファーストフードのサブウェイに決め。
これが出国前、最後の食事か。。。
などと冗談めいた思いを抱きつつ、ささっと食べる。

まだ少し時間がある。
展望台に行って軽く飛行機の様相を眺める。

少ししたのち、中に戻ってコンビニへ。
日持ちしそうな食べ物、、、そうだな、まんじゅうなんかが良さそうだ。
韓国に入って、食料確保に苦心する可能性は少なくない。
その時のことも考慮しつつ、小腹減りのときを考慮しつつ。
それからペットボトルのお茶を買ってレジに並ぶ。
先頭では外国人が、慣れない異国でのやり取りをして時間が掛かっているようだ。
数時間後にはそれが今度は自分の番になるんだろうなぁ。
程なくしてレジを通し、買い物完了。
さて、と。
さっさと出国手続きをしてしまうか。
数年前に通った光景を思い出しつつ、また、その間のリニューアルか、見慣れぬ光景も眺めつつの移動、そして手続き。
少しの行列に並び、手荷物検査を進める。
「こちら、没収になります。よろしいですか?」
と、ペットボトルに指摘が入る。
えっ?未開封でもダメなん?
まさかのペットボトル没収。せめて、少しくらい飲んでおけばよかった
orz
まぁいいや。
そういえば両替はどうしよう。
4階のメインフロア内の両替所は混んでいたのでスルーした。
たしか仁川空港にも両替所はあったはず。
それに、そもそも日本国内の交換レートは悪かったはず。
けど万一、現地に着いて時間に余裕が無い状態に陥らないとも限らない、、、って、どこまで慎重やねん。
神経すり減らして自滅するぞ。
なんて考えをしていたら、出国手続き後のフロアの片隅にガラガラの両替所があったので、ちゃちゃっと済ませて、くだらない心配事を消し去ることにした。
両替総額は5〜6万円ほどを想定。
そのうちここでは3万円を両替することにした。
戻ってきた金額は、26万ウォン(KRW)。
今のレートはたしか100円=995ウォンくらい、つまり10倍弱の数字だから、あれまぁ、3万円払って4,000円くらいの手数料を取られたのね。
まぁいいや。
長い廊下を歩きつつ、トイレに行きつつ、搭乗開始時間を待つ。
ふと、自販機が目に入る。
おや?
「この自販機の飲み物は機内に持ち込めます」だぁ?
ラインナップは全く変わらない。
どう違うんだ?
…まぁ、自販機まるごと、検査場をクリア済の商品、という事かもしれん。
とりあえず没収されたのと同様に、ペットボトルのお茶を買っておくか。
なんか悔しいけど。
近くの席に座り、これから乗る飛行機を眺めつつ、時間を待つ。

そして流れるアナウンス。
どうやら搭乗手続きが始まったようだ。
すぐに長蛇の列ができる。

それを眺めつつ、ほとんどその列が無くなったのを見計らって、これに加わる。
いつも思うけど、どうせ席は決まっているから、べつに早く並ぶ必要はまったく無い。
せいぜい、手荷物収納が埋まる可能性がある程度だけど、前に一度それを経験した際、客室乗務員が他の場所を探して入れてくれたから大丈夫だし。
むしろ、中途半端に早く並んで、前方の人が荷物収納に手間取って、狭い通路でじっと待たされたり、それが終わってもただでさえ狭い座席にわざわざ自分から拘束されるのもナンセンスだ。
あ、もちろんエコノミークラスだけどねw
というわけでほぼビリっけつのあたりで搭乗手続きをして機内に入る。

狭い通路を歩き、自分の座席を見つける。
そして案の定、荷物収納はギリギリのスペースしか無かったけど、無事入れることに成功。
事前予約した3列座席の、一番窓側に座る。
何度経験しても、上空からの眺めは好きなので、取れるならやはり窓側だ。
そういえば事前予約の際、取れる座席がかなり多かったので、てっきり平日の、夏休みの終わった朝の便ゆえガラガラだと思っていた。
でも実際は、たぶん満席。

「どれだけ格安でも、座席を埋めて飛ばしたほうが良い」、という業界の風習がすっかり定着したようだ。
だから、かつて経験した「911テロ後のニューヨーク行きの便がほとんどガラガラで、4列シートに横になって寝れる」、なぁんて光景はもう、よほどのことが無い限りは無理だろうなぁ。
そういえばあの時の経験をホームページに記録しておきたいと思い、今のWebサイトの構想をその機内で練ったんだった。
あれから17年。
月日が経つのは、、、早いものだ。
シートベルトをして、出発を待つ。
飛行機は移動を始め、ゆっくりと滑走路に向かう。
エンジン音が高まる。
離陸の時。
加速。
機首が傾き、空へと舞う。
いざ、出発。

空の旅はすっかり慣れたもので、かつてのようなワクワク感をそこまで得ることは無くなった。
けど今回は久しぶりの国際線。
大韓航空だけあって、客室乗務員も韓国人が多いようだ。
国際線と言えば、機内食や映画の上映など、国内線とはまた違ったオプションがある。
わずか2時間30分のフライトは国内線や新幹線とあまり変わらないけど、そのあたりの違いを楽しみつつ、これから始まるであろう異国の地での苦労に、気持ちを備えねば。
今回の機体は比較的大きいもののようで、モニターが1人1人の席に付いている。
しかも観たいジャンルやコンテンツを自由に選べるというシロモノだ。

テキトーにチャンネルを回していると、、、おや、スターウォーズのスピンオフ映画「ハンソロ」があるじゃん。
本編以外はべつに映画館に行ってまで観なくてもいいかなー、なんて思っていたから、ちょうどいい。
同じくスピンオフの「ローグワン」はレンタルで観たけどなかなか良かったので、こちらも軽い気持ちで観るにはちょうどいいかな。
ときどき機内アナウンスで強制中断されるのはご愛嬌w
映画を観ながら、間もなく飲み物サービス、それから機内食が運ばれてくる。
相変わらず、「ギューギューの座席に座らされた家畜がエサをもらっている」ような感覚になるのは、エコノミーにしか乗ったことの無い人間の偏った思い込みだろうかw
機内食プレートを受け取って、カムサハムニダ。
ハングル語の第一声。
レース目的とは言え、やっぱ外国旅行だから、出来るだけムリヤリにでも現地語を頑張るのがポリシー。
けど今回はたぶん、昔と違ってiPhone翻訳アプリに頼る事が多くなるかも。

まだ朝食を食べてそんなに時間が経っていないからそこまで空腹じゃなかったけど、ひと通り食べて、、、パンは袋に入ったままにして、また後で食べよう。
プレートを返して、映画を観つつ、上空からの景色、そして雲海を眺めては写真を撮る。
べつに珍しいものでは無いけれど、心躍らせるこの気持ちはいつまでも大切にしていたい。
映画も終盤に差し掛かった頃、間もなく着陸体制のアナウンス。
あれれ、もうそんなに経ったか。
映画、最後まで観れるかな。
次第に高度を下げ、地上が見えてきて、、、

車が右側を走っている。
フライト時間は国内とたいして変わらないながらも、こう、自国と違う文化に入りつつあることを少しずつ実感。
そして沸き起こる、不安。
なんだ、楽しい気持ちよりそっちが先行するのか。
相変わらずだな。。。
まぁ、それも含めて海外レースの、ひとつの経験ってやつだ。
機体は大地を捉え、そして振動、減速、身体に掛かるG。
仁川国際空港、到着。

ざわつく乗客。
そして自分は、、、映画のスタッフロールが最後まで止まらずに流れてくれるかなーと、相変わらずマイペースw
無事、ルーカスフィルムのロゴを見届けたところでシートベルト消灯の音が鳴る。
そしていっせいに動き出す乗客。
どうせ、われ先に出たところでぐるぐるターンテーブルの荷物待ちで待ちぼうけを食うだけなのにねぇ。
特に今回の自分は、大きなハードケースを受け取るのにまたきっと時間が掛かるだろうから。
ってことで、乗客のほとんどが出て行った頃にようやく荷物をまとめて歩き出す。
えぇと、、、懐かしい、のかな?
2006年、H.I.S.のツアーを利用して、特に目的も無く、なんとなく訪れたソウル個人旅行。
あのとき以来の仁川国際空港だ。

人の流れに沿って通路を進み、途中、トイレに寄りつつ、入国審査の列へ。
おや、そういえばみんな、手元にパスポートのほかに、何やら黄色い紙を持ってるな。
いつも機内で入国審査用紙が配られて、機内中でそれを書いていたけど、今回はそれを配っている様子は無かった。
なんか、「乗り継ぎのかた〜」と言って配っていた紙があった程度だ。
たぶん、この列のすぐそばにある記入台と用紙がそれだろう。
書く内容も簡単だ。名前とパスポート番号、それから現地滞在先とその電話番号。
ホテルの予約票を取り出して記入。
そして列に並ぶ。
並んでいる間に、ふとiPhoneを取り出す。
でもって、Wi-FiをONにしてみる。
おぉ、さすが空港。公衆Wi-Fiがしっかり提供されている。
つい2ヶ月前、MNPを利用しつつ、iPhoneも5sからSEに機種変更した。
替えたばかりの機種の海外紛失が怖かったのと、どうせSIMはここでは使えないうえ、SIMロック解除ももうしばらく出来ないので、今回はSIM無しの5sを持ってきた。
5sはSIMロック解除が出来ないので現地SIMを借りることも出来ないため、こういった公衆Wi-Fiが頼みの綱。
幸い、宿泊するホテルはもちろん、韓国はかなりその整備が進んでいると聞いていたから、ある程度は大丈夫と思うけど。
ま、ダメでも何とかなるさ。
列の進みは比較的早く、5分少々で入国審査の番。
アニョハセヨ。
特に問題もなく、スムーズに進み、審査完了。
カムサハムニダ。
さて。お次はターンテーブル。
と言ってもあの大型ハードケースは回らないだろうけど。
で、案の定、見慣れたハードケースがポツンと置かれていた。
それをカートに乗せて、さぁ持っていくか、と動き出したら、空港のオネーチャンが近付いてきて、ハングル語でなんか言ってる。
やっべ、当たり前だけど、いきなり何言ってんのか分かんねーw
当然それは向こうも心得たうえのようで、「こっちに付いて来い」と先導してくれる。
おや、何やらX線検査機があるな。
これにハードケースを通せとな。
これもセキュリティの一環かな。面倒な時代になったものだ。
しばらく待って、解放される。
あいやしまった、先導してくれたオネーチャンにカート、返しちゃった。
別のオネーチャンにカートちょうだいって身振り手振りで伝えて、持ってきてもらう。
カムサハムニダ。
カートを転がして、ゲートを出る。

韓国、入国。
さぁ、ここからが本番だ。
「スケジュール通り」に慣れ過ぎた日本人が抱く不安感
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まずはIRONMANシャトルバスの受付ブースを探すところからだ。
ちょうどインフォメーションがあったので、事前に配布された、極めて雑な(笑)案内図を見せて場所を聞く。

案内図を見て、英語での説明。
同じフロアの、少し歩いたところにある、とな。
カムサハムニダ。
カートを転がして、歩くこと30秒。
おっ、IRONMANロゴの入った横断幕みたいなものがブースに掛かってる。これか。

ん?そのロゴの隣には「FINISHER」って書いてあるな。
あァ、去年のか。。。
ん?2018?
あァ、早くもネタバレかw
と、それはさておき、ブースでヒマそうにしていたニーチャンに声を掛ける。
アニョハセヨ。
英語は堪能のようなので、予約したメールを印刷した紙を見せつつ、こちらはヘタクソな英語で手続きをしてもらう。
往路の乗車チケットと、復路の乗車チケットを受け取り、案内を受ける。

14時発のバスが、6番ゲートに来るのでそのへんで待っていて欲しい。けどバスが30分ほど遅れている、だそうな。
それと、 BIKEは別のトラックに積み込むから、とりあえずここに置いておけ、とのこと。
まぁ、今日の残りのミッションはホテルに辿り着くことだけ。
だから多少の遅れは構わない。
けど、やっぱりバスの遅れはちょっぴり心配。
心配の種は早くも復路のタイムテーブルに及ぶ。
定刻通りに動ける日本に慣れていると、こういった事例が気になり、復路のバスが必ずしも飛行機に間に合う時間に着くとは限らないのではないだろうか?という心配を誘う。
往路のソウル・仁川空港を利用。
復路は釜山・金海(Gimhae)空港から戻る。
ソウル・仁川空港〜求礼(Gurye)まで4〜5時間掛かるのに対し、復路の求礼(Gurye)〜釜山のほうが近く、3〜4時間とのことだったが、「現地10時発→空港13〜14時着→16時の飛行機」というタイムテーブルで、果たして間に合うだろうか。
国際便は2時間くらい前に空港着が推奨と言われるらしいから、ちとギリギリすぎたか。
まぁ最悪は、時間変更可能チケットだから振り替えられるとは思うが。
心配と言えばむしろ、求礼(Gurye)地区に入ってからの動きと、復路の乗車方法。
そのへんは事前に何の案内も無かった。
だから、頑張って英語で聞いてみる。
14時のバスに乗ったら、現地のどこで降ろされるんだ?
そこからホテルにはどう行けばいいのか?
それとも、ホテルまで送ってくれるのか?
復路の集合場所は?
それとも、自分の泊まるホテルにバスが来てくれるのか?
・・・しばらく考え込むニーチャン。
って、おい。。。
まさかのノープラン?
世界から1,500人が集まってくるのに?
とりあえず出た回答として、、、
往路は、いったん全員共通の場所で降ろされる。
そこから別の便で、それっぽいところまで連れて行ってくれるはず。
ホテルまでは、その時に聞いてくれ。
復路は、最終日の朝に、俺に連絡してくれ。
・・・。
不安、だ!
まぁ、とりあえずレースにさえ出られれば、とりあえずは構わないけど、果てさて、最終日の電話はどうしよう。
何?電話が使えない?LINEは?カカオトークは?
何?SIMが無いから使えない?
困ったな。。。
と、しばらく考え込む2人。
あ。
こちらからホテルの電話を使って連絡するよ。
ということで、ニーチャンの携帯番号を教えてもらって、ひとまず終了。

こういう時、SIMフリーの機種がきっと、役に立つんだろうなぁ。。。
いや、もっと流暢な英語力があるべき、だろうか。
一抹の不安を抱えたまま、とりあえずその場にハードケースを預け、空港を探索する。
あ、そうだ、両替しておこう。
って、なんか2店舗並んでるんですけど。
しかもレートが違う。
片方は928JPY、もう片方は933JPY。
相変わらずよく分からんな。
たぶんアレだ、「1万ウォン」という紙を買うのに、日本円でいくらいくら、って感じの表示なんだろう。
とすると、、、当然ながら928円のほうでw
金額は一瞬迷ったけど、2万円ぶんを両替。
185,600ウォン。
仁川空港:10,000JPY = 92,800KRW ≒ 9,280円
成田空港:10,000JPY = 86,000KRW ≒ 8,600円
日本のレート、悪かったな。。。
っていうか、あれ?933JPYの店舗のほうが、もしかしてレートが良かったのか?
まぁ・・・いいや。
合計5万円ぶんが日本円にして44,360円ぶんになったけど、とりあえず現金はこんなもんで。
足りなくなりそうだったらクレジットカードを使えばいいだろう。
コンビニに向かう。
とりあえずは今夜の晩ご飯と、明日の朝食と、あと菓子パンなどの軽食。
求礼(Gurye)は比較的寂れた地域なので、万一のことを考えて。
小さなセブンイレブン。

ラインナップは比較的、日本と同じだな。
って、日本語そのままのお菓子もあるしw

大きなのり巻きやサンドイッチ、それから菓子パンを買ってレジへ。

ジュセヨー(くださーい)
店員、何か言ってるな。
よく分からんというジェスチャーをしたら、、、んと、ビニール袋が20ウォンするという事らしい。
手元からビニール袋を取り出して、持ってるというアピールをしてみる。
べつに払っても何とも無いけど、なんかアクションしたかったのよね。
今回の荷物の中で、ビニール袋は大小様々なサイズをたくさん持ってきた。
一番大きいものは、雨天時のリュックサックのカバー代わり。
それから洗濯物。
それからレースに伴うアイテムの分別。
そのほか諸々。
こんへんは嫁さんが結構、用意周到で実際にいろいろ役立った経験から、少し多めに持つようにした。
使わなかった使わないで構わないし、たいした荷物でもないしね。
無事買い物終了。
フリーの席に座って、さっそくのり巻きを1本、頬張る。

頬張りながら空港の様子を眺める。
ガランとしている。夏休みシーズンの過ぎた、ただの平日だからだろうか。
公衆Wi-Fiを活用しつつ、今後の行程や現地の天気を確認する。
ちなみにたいていのデータは印刷して持ってきたが、デジタルデータはDropboxでダウンロードして、オフラインでも見られるように準備済み。
加えて地図もMaps.meという無料のオフライン世界地図をインストール済み。
GPSはWi-Fiが無くても使えるので、現地で迷う可能性はたぶん、低いと思われ。
いやはや、すっかりデジタルデバイス全盛だ。
ひと昔前まではとても、考えられなかった。
果たして今回の旅路ではどの程度、それを活用することになるだろう。
そしてどの程度、それに頼らずに済ますことが出来るだろう。
14時になった。
バスが遅れているとは聞いたけど、なんとなく、そわそわする。
IRONMANブースに戻って、でも他の選手のハードケースとともにまだ自分のハードケースはあるから、やっぱりまだバスは来ていないらしい。
普段、日本のキッチリしすぎた環境に慣れ過ぎているためか、こういう時にメンタルの弱さを実感する。
とりあえず、6番ゲートにバスが来ると言ってたのだから、そこで待つ。
20分経過。
まだ?
ゲートが開いて、人が入ってきては去ってゆく。それを見ては、あぁ、この人も違うか、と思ったり。
時々ゲートを出ては、それっぽいバスが来ていないか探してみたり。
ようするにアレだ、ヘタクソ英語耳でホントにちゃんとニーチャンの言った内容が正しく聴き取れたんだろうか?という不安があるわけで。
30分経過。
そわそわして、構内をのろのろ歩いていると、同じブースにいたパツキンのネーチャンが走ってきて、バスが来たことを教えてくれた。
んで、ハードケースを自分でバスまで持って行け、とな。
あれ?別のトラックで運ぶんじゃないの?
まぁ、とりあえずバスが来たからいいか。
乗客は自分のほか、欧米風の家族が1組だけ。
嫁さんと、あと子どもが3人か。

今回、我が家は自分だけの行動。
たたでさえ自分のことで精一杯で、しかも海外、しかも英語圏外、しかも田舎町とあって、家族連れで行くことを躊躇したぶん、なんとなく羨ましい。
バス乗り場に着く。
バスはバスでも、マイクロバスだなこりゃ。
ってかここ、6番じゃなくて5番ゲートだし。
まぁいいけど。
ん?なかなか乗らないな。
なんか運ちゃんとスタッフが話している。
まぁ、とりあえず安堵しつつもその緊張によるストレスからか、お腹が少し痛くなってきた。
手でさすっていると、スタッフのネーチャンが心配してくれて声を掛けてくれた。で、薬局に行くようなそぶりを見せたので、手持ちの常備薬を見せて、大丈夫だと伝える。
ハングル語ではなく英語での会話とは言え、うまく伝えられなかったので、実物を見せたほうが早いという考え。
ちなみにこの常備薬。
正露丸やかぜ薬のほか、タケキャブとストロカインという、腹痛に効く?薬を持ってきた。
1年ほど前、仕事が終わる頃合いにお腹がチクチクと痛くなってきたことがあった。
正露丸が効かないタイプの痛みながら、息をグッと止めてお腹に力を入れて我慢することで、しばらくすると収まる、という症状。
以前からこの症状は時々発症していたので、今回もそれと同じだろうと思い、今回も我慢していたものの、なぜか一向にそれが消えない。
むしろ、ますます痛むので病院の夜間受付で診てもらったものの、原因不明。
レントゲン程度では分からん、とな。
痛み止めの薬ももらったが効果無し。
翌日は仕事を休んで再度検査。
触診、エコー、血液。すべて正常。
別の病院に行き、CTスキャン、さらに後日の胃カメラ。すべて正常。
でも痛い。
いろいろ処方された薬のうち、どうやら遺産の分泌抑えるタケキャブという薬、そして胃腸の痛みを和らげるストロカインという薬が効いたのだろうか、なんとか痛みは収まっていった。
その時に処方された薬を、今回は念のため持ってきた。
いざとなったら躊躇なく飲むことにしよう。
しばらくして、バスに乗れ、と指示。
ネーチャンにお礼を言って、全員乗車。
外を見ると、何やら自分のハードケースをトランクに積み込んでいるらしき光景が見えた、気がする。
欧米人の BIKEケースはトランクに入らなかったらしく、バスの中に持ち込んできた。
まぁ乗客も少ないから、たいして邪魔にならないからいいけど。

バス出発。いよいよだ。
窓越しの光景を眺めつつ、道を進む。
それにしても、大きな空港だな。
世界のハブ空港と言われるだけの事はある。
走ること10数分。
どこかに寄るのか、いったん止まった。
おや?追加の乗客?
人数は8人くらいだろうか。
あ、もしや別ターミナル着の乗客かな?
どんだけデカいんだ、仁川国際空港。
欧米人の BIKEケースが降ろされ、代わりにその乗客が乗ってくる。
んで再度、出発。
満席ではないけど、賑やかになった。
ただの旅行客に囲まれていたさっきまでとは違い、いよいよレースを目的とした選手たちに囲まれて、求礼(Gurye)に向かって走り出す。

乗車時間は4〜5時間。距離的に、東京〜新潟くらいありそうだ。
高速道路のわりに揺れまくる路面、その追越車線らしきレーンを思い切り飛ばす運ちゃん。
制限速度は110km/h。
けど、明らかにそれよりは速そうだ。
道は比較的混んでいたけど、みんな飛ばしまくるから、よく流れている。

事前情報によれば、運転マナーは悪いとのこと。
そしてハングル語全開の道路標識。
たまにローマ字の併記された地域案内も、果たしてそれがどこを指しているかなんて、サッパリ分からない。
念のため国際免許証を取って持ってきたけど、仮にレンタカーを借りたとして、果たして自分でうまく運転することは出来ただろうか。
ウォークマンを聴きつつ、車窓を眺める。
その景色はほとんど、日本の郊外を走る高速道路からの眺め、そのものだ。

晴れた日差しのもと、自然いっぱいの景色をひたすら爆走する。
めっちゃ飛ばすからすんげー揺れるw
そういえば釜山旅行の際、空港から乗ったバスは運転席が巨大なサスペンションになっていたな。
このバスもきっと、似たような感じなんだろう。
激しい揺れも、昨今の疲れもあってか、ウトウトしてきた。
横になって寝ては、ふと目覚めて景色を眺めたり・・・を2時間ほど。
バスは速度を緩め、サービスエリアに入る。
トイレ休憩だ。

そういえば韓国でサービスエリアは初めてだな。
けど、その様相もまた、日本と大差無い。

トイレに行き、用を足す。
個室の空きが、緑ランプで明確に分かるのはなかなか面白い。

少しブラついて、コンビニのような店で食料の買い足しもしくは、今夜の晩ご飯の確保を模索する。

ちょうど、同じ乗客の家族連れがお菓子やら大きなミネラルウォーターペットボトルを数本買っていたので、自分も1Lペットボトルと、たい焼きらしき物体を購入。

おにぎりのような、腹に溜まる食べ物は残念ながら無かった。
まぁ、空港である程度買ってあるから、仮にホテルで食べれなくても今夜と明日の朝食くらいは何とかなるだろう。
しばらくして、バスに戻る。
乗客の数を数える運ちゃん。何か言ってる。
よく分からなかったけど、欧米人ふうの家族連れのオッチャンが英語で「誰かが帰ってくるのを待っている人はいるか?」とみんなに尋ねてくれた。
そして乗り遅れが無いことを確認して、出発。
オフライン地図にGPSを有効にして現在地を見てみる。
ちょうど半分くらいか。
とすると、やはりあと2時間くらいは掛かりそうだ。
今が17時くらいだから、到着は19時くらいかな。
東京より西に位置するから、陽が沈むのは少し遅いのかな?
けどそれも、もう少ししたら暗くなってゆくことだろう。
道をひたすら進み、しばらくしてまた減速。
どうやらガソリンスタンドで給油するらしい。

ハングル語記載しか無いけど、その仕組みはだいたい、似たようなものだろう。
パシャリと写真を撮っていると、ほかの乗客も真似してパシャパシャ。

きっと日本で普段、何気ない光景で暮らすボクらの傍ら、熱心に写真を撮る外国人観光客の心理はこんな感じなんだろう。
ひらがな、カタカナ、そして漢字。
文字ひとつにしても、世界にも珍しい国に見えるんだろうなぁ。
しばらくして、再度出発。
だいぶ薄暗くなってきた。
けど時間にして、あと1時間くらいかな?
しばらく走っているうち、ついに「Gurye」の標識が見えた。
高速道路を降りて、一般道を走る。
たまに、ほぼ完全停止してはガッタンと揺れ、そして再び速度を上げる。
あれか、スピード抑止のためのバンプ(起伏)か。
どうやら横断歩道を兼ねているみたいだけど、全部が全部、バンプがあるわけでは無いみたい。
地図を確認する。
事前に情報収集したエリアに入ったようだ。
とすると、もう間もなく、かな。
外の景色は、、、むかーしの中国映画に出てくるような、さびれた農村の店が並んでいる。
少し離れたところに、セブンイレブンをはじめ、ホテルらしき光が見える。
車窓から、公式サイトで斡旋のあった「K Family Hotel」の看板が見える。
数人がBIKEで流している。
本気モードの選手たちだろうか。やはり現地入りも早いんだな。
バスは細い坂道を登り、そして見知らぬホテル前に到着。
果てさて、このあとどんな動きをするんだろう。。。
乗客たちも、そのへんよく分かっていないようで、そのまま乗っていたり、降りていったりといろいろだ。
運ちゃんが外で作業をしているっぽいので、とりあえず降りて、なんとか聞いてみよう。
おや?見慣れたBIKEハードケースが置かれている。
俺のか。
どうやらこのマイクロバスに載せてもらっていたらしい。
乗客全員分のBIKEケースはさすがに載らないだろうけど、ここでハードケースもろとも降ろされるのは困るな。。。
というわけで運ちゃんに話し掛けてみる。
自分の泊まるホテルはこのSandong地区じゃなくて、Masan地区なんだ。
地図で言うと、ここなんだ。

・・・が。
英語が分からないのか、身振り手振りで「よく分からんがとりあえずここで降りろ、後のことはホテルに聞け。」的なことを言われたような感じになり。
あァ、空港でニーチャンが「このへんで乗り継ぐ」的な事を言ってたな。
けど、全員が全員、降りてはいない。
まだ乗っていたほうがいいんだろうか。
でもハードケース、降ろされちゃったからなぁ。。。
降りた乗客はこのホテルに入ってゆく。
だから自分もフロントで聞いてみよう。。。

と、そんな不安な思いを抱いた男を置き去りにして、マイクロバスは走り去っていった。
真っ暗な、静寂。
田舎だ。。。
寂れたロビー、そのフロントには空港でも見たIRONMANフィニッシャータオルが掲げられている。

フロントのスタッフと話す人たちの列が数名。
どうやら、ここにチェックインする宿泊客のようだ。
それとは別に、入り口で立つ男性。
乗り継ぎに関するスタッフか?
・・・話し掛けてみたが、どうやら単なる宿泊客らしい。
やはり、フロントで話を聞いてみよう。
チェックインする客の後ろで待つ。
どうやら英語が通じるようだ。
その列に並ぶは、さっきの欧米人ふうの家族連れ。どうやら彼らも、ここが宿泊するホテルのようだ。
しばらくして家族連れがチェックイン完了。
次。
「今夜の空きはないか。」「満室だ。」
そんなやり取りをしている。
いや、この人たちはまた、IRONMANとは別の旅行客っぽいな。
立ち去る旅行客。
そして自分の番。
「自分はここのホテルに泊まるんだ。」
と、地図を見せ、Masan地区を指し示す。
「いや、ここはそのホテルとは違う。」
まぁ、当然の答え。
「何かほかのバスに、ここで乗り換えるって聞いたんだけど。」
「いや、そんな事は聞いていない。」
・・・な、、、!
なんだとぉっ!!?
「いや、でも空港でスタッフがそう言ってて。。。」
「乗ってきたバスはどうしたんだ?」
「もう行ってしまった。。。」
マジか。
という表情で急いで外に出るスタッフ。
あぁ、、、困ったな。。。
そんな表情をするスタッフ。
考え込むスタッフ。
自分はただただ、ぼうぜんと立ち尽くすしかなく。
予想外の出来事に、思考が停止する。
と、さっきチェックインした欧米人ふうのオッチャンがロビーに戻ってきた。
「あれはお前のBIKEケースか?俺のBIKEが来ていないんだが、知らないか?」
「おぅ、、、あい どんと のー。」
それどころじゃない、というか、何が起きてるのかがイマイチ、分からない。
ふと、スタッフが声を掛けてくる。
「30分くらい待ってくれ。車を手配する。」
ほぇ?
・・・マジで?
何か、聴き取り間違いをしてないだろうか?
と、とりあえず30分ほど、待ってみるか。。。
ロビーをうろうろしたり、外に出たり入ったりして、、、気持ちが落ち着かない。
しばらくするとそこに、巨大なトラックが到着。
後部カバーが縦に開き、大量のBIKEケースを次々に降ろしていく。

その中に自分のBIKEケースを見つけたのか、欧米人ふうのオッチャンが回収しに歩いていった。
それと、最初乗り継ぎスタッフかと思った男性も回収していた。
なんだ、BIKE待ちだったのか。。。
いいなぁ。。。
トラックが去り、再びの静寂。
少し遠くに見えるネオンサイン。
どうやらこの辺りには比較的いろいろなお店があるようで、このSandong
Market地区が主要なホテルエリアなのかな?
自分もこのエリアに泊まるという選択肢はあったけど、Booking.comでその半額以下のホテルがMasan地区側で取れたし、ちゃんと定期シャトルバスのルートにもなっているから、なんか、そっちを冒険してみたかったとは言え、失敗したかなぁ。。。
ロビーで待っていると、またスタッフが寄ってくる。
椅子を持ってきてくれた。
まぁ、座って。あと10分くらい待ってくれ、と。
ちょっとだけ気がラクになり、ふと、iPhoneを取り出す。
公衆Wi-Fiが使える。
これに接続し、ヨメさんと娘にFaceTimeで電話を掛けてみる。
繋がった。。。Wi-Fiさまさまだ。
ことの経緯を話し、ビックリそして同情してくれるヨメさん。
しばし、その顔を見て緊張が和らぐ。
なるほど、テレビ電話はこういう異国の地でこそ、精神的に効果があるんだなぁ。。。
と、しばらく会話しているうち、スタッフに呼ばれた。
車に乗れ、とな。
ヨメさんに「ホテルに行けるかもしれない」と、いったんFaceTimeを切る。
そして車に向かう。
お腹の出たオッチャンが出迎えてくれる。
どうやらこの人が運転してくれるようだ。
このホテルのスタッフか?
見たところ私服のようだから、非番なのに出てきてくれた?
いや、このフロントのニーチャンも私服だったから、そうとは限らないか。
自分が泊まるホテルの予約票を印刷した紙を見せろ、と運ちゃん。
それを見て電話してくれている。
ハングル語全開ゆえ会話内容は分からないけど、少なくとも、今からそちらに向かうという事を言ってくれている、、、と思った。
ハードケースを載せ、準備完了。
乗車前に、手配をしてくれたこのホテルのスタッフに、いま自分が知っている英語の中から精一杯の感謝の言葉を、そしてジェスチャーを伝える。
感謝。
助手席にお邪魔する。
真っ暗な街を走る。
高速道路を走る。
どうやらこの辺は、いわゆるフリーウェイなのかな?
空港から来た時も、料金所らしきゲートが無かった。
追越車線をガンガン飛ばす。
みんな、せっかちだなw
でも今はなんだかとても、頼もしい。
小雨がパラついてきた。
未知の土地での絶望感から抜け出し、しばし、安堵の時を過ごす。
15分ほど走り、高速道路を降りる。
事前に情報収集したときに見た地図の、たぶんこのへんだろう、などと想像しつつ、ただ助手席から流れる夜の景色を眺める。
左折し、あとは一本道。
っと、、、登り坂なのか。。。
滞在中の行動に影響が無ければいいけど。。。
っていうか、ハードケースを押し歩くことも考えていたから、この坂道は誤算だったな。。。
山道を進むこと数分。
事前にGoogleマップで確認したホテルの姿が見えた。
ここだ。
着いた。。。
着いた。。。。。。
よかった。。。
運ちゃんがフロントのスタッフを呼びに行ってくれる。
そして、あとはよろしく、と去ってゆく運ちゃん。
何かチップでも払わないと。。。
と、身振り手振りと財布を見せながらその意思を伝えたけど、「いらんいらん。」というジェスチャー。
カムサハムニダ。
カムサハムニダ。
それしか言えないハングル語だったけど、とにかく、精一杯の感謝の気持ちを伝える。
ロビーに入る。
Booking.comで見たとおりの光景。
フロントと思っていた右手の扉は閉まったままで、奥の小さな扉から声がしたのでそちらに行き、チェックインの手続きをする。
スタッフは初老のオッチャン。
その奥には、ちゃぶ台とテレビとタンスなど、、、まるで民家の居間のようだ。
正面からは見えなかったけど、女性の話し声も聞こえる。
奥さんかな?
夫婦で経営しているホテルだろうか。
予約済み用紙を見せて、クレジットカード決済。18万ウォン。
日本円で約18,000円。4泊なので1泊4,500円。
よかった、海外サイトによる海外ホテル予約が本当にちゃんと受け入れられていたか、心配だったんだ。
10ヶ月も前の予約、おまけに日本国内の主要な予約サイトでは取り扱いをしていない地域ゆえ、これもひとつの冒険だったけど、なんとかこれもクリア。
まぁ、実は2週間ほど前にGoogle翻訳を使いながらメールで「日本語か英語を話せるスタッフはいるか?」「近くにおにぎりやパンを買える店はあるか?」「レース当日は早朝3〜4時くらいに出発するが、朝食を確保する手段はあるか?」等を確認していて、その返信メールにBooking.comの管理ID的なものが書いてあったから、たぶん大丈夫だろうとふんではいたけど。
手続きが終わり、502号室の鍵を渡されて、一緒に部屋まで案内。
エレベーターはハードケースを縦にして、なんとか人間1人が入れる程度の狭さ。
おっほ、大変だねぇ・・・なんて表情をするオッチャン。
鍵を開けて、中の説明をしてくれる。
オッチャンとの会話は事前のメール返信にあったとおり、ハングル語オンリーゆえ、お互いスマホの翻訳アプリを駆使w
こちらは日本語をiPhoneに語りかけ、音声認識したGoogle翻訳のハングル語の自動会話に加え、表示されたハングル文字を見せる。
向こうはハングル語でオッチャン自身のスマホに語りかけて、英語の文字を見せてもらい、会話のキャッチボールを何とかして繋げる。
ときどきヘンな翻訳もあったけど、言い直すことでおおよその事は伝わる。
以前のような、いちいち会話本を開いては単語を探すようなまどろっこしさは無い。
時代の進化に感謝。
部屋はこれでいいか。
掃除は毎日してほしいか?
といった事をひと通りやりとりした後、改めてメールで聞いた内容を再確認。
店やコンビニは4kmほど離れた場所にある。
ホテル併設のレストランは潰れた。
玄関はいつも空いている。
とのこと。
地図アプリを開き、コンビニの場所を教わったから、明日にでも探しに行ってみよう。
言葉の壁がありながらも、長時間こちらの質問に根気よく対応してくれたオッチャンに、感謝の意を伝え、チェックイン完了。

部屋に着いた。。。
やっと、部屋に着いた。。。
あ〜〜〜、
つかれたーーーー!!
でも、無事ここまで辿り着けて、ホントによかった。。。
荷物を軽く片付けて、ベッドに横たわる。
そうだ、ヨメさんに電話しよう。
再び、FaceTimeでテレビ電話。
無事辿り着けた報告をし、お互い安堵する。
そして娘に代わってもらい、いつもの保育園の他愛もない会話をする。

そういった日常の会話、それが今の自分にとっての平安。
また明日も連絡すると伝え、電話を切る。
SIM無しiPhoneかつ海外でも、Wi-Fiさえあればなんとかなる。
ありがたい世の中になったものだ。
もちろん、それに頼り切っては脳ミソがダメになるかもしれないけど、今はとにかく、こうして無事にここまで来れたことに、ただただ安堵。
通話やアプリ使用でバッテリーを消費したので、忘れないうちに充電をしておこう。
韓国はCタイプとSEタイプのコンセントがあり、今回その両方を持ってきたけど、どうやらここはSEタイプのようだ。

これを繋げて、iPhoneを充電。
よかった。無事充電が開始された。さすが国際規格。
風呂に入る。
少し大きめのユニットバス。
けど、浴槽を仕切るカーテンが無い。
韓国はそういう仕様なのかな?

湯船に浸かり、しばしボーッとする。
しばらくしてから身体を洗い流し、スッキリ。
さて。。。
少し体力も回復、いや、気力が回復したので、荷物の準備もしておくか。
ハングル語全開のテレビを垂れ流ししつつ、BIKE開梱と組み立て。

心配の種のひとつであるBIKEの状況。
今回はひとまず、どこも破損せず、無事のようだ。
明日試走して、微調整することにしよう。

寝る。
今日は疲れた。。。
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