>> JAL ホノルルマラソン2005 <<



遠い日の記憶


今から遡る事、約10年…
そのとき自分はラジオの深夜放送を聴いていた。

何のイベントだったかは忘れたが、ホノルルマラソンを走りながら電話でレポートするような内容だった。

そして放送時間ギリギリでゴールに間に合わなくて…
そしてその何かに感動を覚え、今は無理でも、きっといつか自分も走りたい、という思いを抱き続けて。。。




フルマラソンに向けて


2005年初春。

走り始めた動機はよく分からない。でも、一度はフルマラソンを走りたい、という気持ちがあったのは確かだった。
しかし、恥ずかしながら10年前の感動はこのとき完全に忘れていた。


走る動機付けのためにエントリーした10kmマラソン。
エントリーしてからトレーニングを開始するいつもの強引さ。

トレーニングをし始めた頃は案の定、5kmを走るのがやっとだった。
しかし、本番を走る頃には、かなりゆっくりながらも10kmを何とか走り切れるようになっていた。




2005年初夏。

何を狂ったか、皇居30kmマラソンにエントリー。
この頃、10km程度であれば比較的ラクに走れるようになってはいたものの、30kmは一見無謀とも言える挑戦だった。
しかし、作戦はあった。

それは、30kmを走り切る方法…ではなく、1周5kmという周回コースを利用した「20kmで途中棄権」という、後ろ向きな作戦だったのだ。
頭の中に、ハーフマラソンをイメージしていたのかもしれない。


しかし…



何を考えたか、やはり本番となると周囲の雰囲気に流されてしまうのだろうか、それとも周回ゆえの「常に周りに誰かがいる」という環境のせいか、30kmを完走してしまったのだ。

無論、代償が全く無かったわけではない。
15kmを過ぎる頃から痛くなった左膝を無理矢理ガマンして走ったために、以降、同じくらいの距離を走ると痛むようになってしまったのだ。。。




ホノルルマラソン2005


しかし考えてみれば、結果はどうあれ30kmは走れた。ということはあと10km少々走ればフルマラソンがイケるのでは?という甘い考えを抱いたのが全てだった。
そして月日が経つうちに、初フルマラソンならやはりホノルルマラソン!と思うようになっていき、、、この時ようやく10年前の想いを思い出したのだった。


単独参加ゆえH.I.S.のツアーを利用して…初ホノルルマラソンへの挑戦はこうして始まったのである。




正直、不安要素が無いわけではない。
数週間前に風邪をひき、調整として臨むつもりであったハーフマラソンも不参加という経緯があってのホノルル入り。
しかし、制限時間が無制限という好条件、そして何より「半分は初ハワイの観光♪」という気楽な考えがあってか、さほど緊張はしなかった。



そしていよいよレース当日。


10年前に想像した光景、それが今、目の前に広がる。それは間違いなく現実に広がる世界だった。








午前2時起床、軽く腹ごしらえをし着替えを済ませ、ホテルのロビーに3時に集合。





そしてスタート地点であるアラモアナ公園まで歩いて移動する。

気になる気温も、このとき既に20度を超えていたらしい。
自分にとっては寒い環境よりも暑いくらいのほうがエンジンが掛かるので、これは大歓迎であった。


歩きに歩くにつれ、徐々にいろいろな道からランナー集団が集まってくる。



自ずとテンションが上がっていく。





アラモアナ公園に到着すると、別のH.I.S.集団が既に到着し、ストレッチを始めていた。



その後ちょっと恥ずかしい決起会を経て(笑)、様々な記念撮影をしつつ、いよいよスタートライン、その遥か後方に並ぶ。



  

午前5時。

花火が打ち上げられ、夢の舞台がついに始まった!!!!





群集が進む。

進む…


進む…



・・・




…なかなかスタートラインに辿り着かない。(笑)



ところで今回の作戦というか主旨は、マラソンというよりは「イベントをとことん楽しむ!」というものだったので、カメラを持って走ることにしていた。

そしてとにかく事あるごとに撮りまくり…そしてそれは自分のまわりを走る人も同じだった。
ていうか綺麗なイルミネーションがあるとみんな同じように記念撮影していて…


「お前ら何やってんだよ!こんなのレースじゃねぇえええ!!!!(笑)」






などと思いつつも自分もちゃっかりパシャリ。

 

何でもアリだよなぁと思いながらも、これからの長丁場、この調子ならかなり楽しく行けそうだなとも思った。

また、実はスタートラインまで歩いている時に何故か腰が痛くなってしまい、早く走りたい衝動にかられた(同じ体勢でいるのが辛かったのかもしれない)のだが、実際走り出せば予想通りその痛みも消え、体調面としても万全に臨める体勢になっていた。



しかし…





腹が減った。。。(汗)




朝食が足りなかったのだろうか。
まぁ無理もない、朝2時起きで軽食を取った程度だったのだから。



幸い、ウエストポーチには食料が大量にある。それにこれらは水と一緒に食べるようなモノだったので、最初の給水ポイントで落ち着いてエネルギー補給をし、そしてダウンタウンをぐるりと回って再びアラモアナ公園に戻ってきた頃には空腹感は無くなっていた。





 
メイン通りに入った頃から、徐々に薄明るくなってきた。
そして陽の昇りと比例するように応援の人数も徐々に増えてきて、その声援、その雰囲気、そして何よりも中心街のど真ん中を堂々と走る事がとにかく楽しくて楽しくてたまらなかった。




それを更に盛り上げてくれたのが、他でもないH.I.S.応援団!



ハワイ出発前にH.I.S.から送られた品物の中にシールが2枚あるのだが、ここに名前やニックネームを書くとその名前で応援してくれるという仕掛け。最初は少し恥ずかしかったが、貼って大正解だった。

単独参加者にとって、クラブチームで盛り上がる周りの雰囲気が羨ましくてたまらなかったのだけど、自分の名前で応援してくれるという事が、あたかも自分が「H.I.S.」というチームに所属しているかのような感覚になれるのだ。
それがとにかく嬉しくてたまらなかった。







ゴール地点であるカピオラニ公園を横目にコースを進み、ダイヤモンドヘッドの脇の道をダラダラと登るルートへと入る。










最初のチェックポイントがあった。

ハワイは当然、日本とは違い距離表示も「マイル」。1マイル=1.6キロなので、走りながらの計算はキリの良い数字でしか出来なかったり。(笑)

しかし最初のチェックポイントは10「キロ」地点であった。これも参加者の多い日本人への配慮だろうか。


ちなみに時計表示は午前5時ジャストからの計測。そして自分はスタート地点に辿り着くのに約20分掛かったので、時計表示から20分を引いた時間が自分のタイムなのだ。(シューズにセンサーを取り付けて機械計測をしてくれるおかげで、スタートラインを横切った瞬間からの自分の正確なタイムを知ることが出来る仕組み。)



・・・・・・が、




10キロで1時間40分はいくらなんでも遅すぎだろ。(笑)


正直、そこまで時間が経っていたとは思わなかった。
しかしその分、むしろ時間を気にすること無くこのイベントを存分に楽しめそうだ、とニヤケる自分がそこにいた。


ところで、コース途中には準備よろしく仮設トイレが設置されているのだが、やはりそこには長蛇の列が。
しかし考えてみれば待ち時間をストレッチや休憩にあてることができるので、まだ尿意はそれほど無かったが、以後、必ず立ち寄るようにした。






ところでトイレ待ちの時間やストレッチのために立ち止まっていると、他のランナーはどんな格好や装備をしているのか、といったところに目がいくようになるのだが、多種多様な国籍に加え、思い思いのコスプレをしているランナーを見るのも楽しみのひとつ。

そんな中でとかく異彩を放っていたのが、このロボコップランナー!(笑)

 


なんか後ろからガシャンガシャンいわせながら音が近づいてくるなーと思っていたら、よりにもよっての全身コスプレとはこれまた凄い。しかも結構速くて、この時は自分も走ってはいたのだが、あっという間に抜かれてしまった。
しかし、一般的にコスプレランナーって結構速いですな。でも考えてみれば普通の格好よりも基本的に「走りにくい」格好でこなすわけだから、土台となるスタミナがあってのこそというのは当然といえば当然なのかもしれない。




 

そんなこんなでコースは進み、朝日の眩しいダラダラ坂を登っていく。



この道は中央をテープで仕切って、往路と復路として作られていたのだが、そのテープを持つのは他でもない、ボランティアの方々だった。


「Aloha!」
「Good Morning!」

陽気な声が飛び交う。これが外国人の明るさだよなぁ、などと思いながら自分も声を出しつつ、時折ハイタッチをしてはコースを進む。






前方で歓声があがった!

…何だ?



歓声が徐々に近づいてくる。。。


まさか…いや、でも時間的にも間違いない。



そう、トップ選手がもう戻ってきたのだ。




「Good Job! Good Job!」
そう応援する外国人ランナーの真似をして自分も声援を送る。
そして自分も必ず戻ってくるぞ、と心に決めて。

ところで上の写真、あとで気付いたのだが後ろの緑のウェアの女性選手、この選手が女子部門優勝のお方だったりする。何という偶然…








上り坂を抜け、そして下り坂に入る頃にはすっかり明るくなっていた。



また、この頃から一般ランナーの5時スタートより少し前にスタートしていた車椅子部門の選手も戻りつつあったのだが、彼らにも暖かい声援が贈られていたのも印象深かった。





ところで、ここまで給水ポイントは何箇所もあったけど、改めて激しく散らかっている紙コップを目の当たりに。
こりゃ片付けるのが大変だろうなと思っていたら、やはり何人かが既に清掃作業をしていた。いつ終わるとも分からない作業を…

 

「Thank you!」

後ろからそんな声が聞こえた。
そうだ、俺らが安心して走れるのも、給水ができるのもみな彼らボランティアの、無償の協力があってこそなんだよな。。。

そう思い、自分が清掃作業をするボランティアに声を掛けようとした時は既に通り過ぎてしまった後だったのだが、心の中で感謝し、そして次の給水ポイントからは「Thank you!」と言うことにした。








一般道を抜け、ハイウェイに入る。
ここからはコースの変化も少なく同じような景色が続くため、体力的にはもちろん、精神的にも少しキツくなる、らしい。

ちなみに自分はというと…このとき既に3時間近く経過していた。随分ゆっくり走ったもんだ。(笑)
しかしここまでで疲労感は全く無い。経過した時間さえも長いとは全く感じていなかった。

考えてみれば、何かと撮ってはそれをしまって、また取り出して撮っては…の繰り返し。そしてそのうちカメラの出し入れが面倒になり、カメラを持ったまま走るようになっていたっけ。


 


この地点から帰りの選手とまたすれ違うようになる。
恐らく真面目に「フルマラソン」をしている、目標4時間台のランナーたちだろう。

その一生懸命な姿を見ながら自分もまっすぐな道を進む、進む、進む。
それにしても高速道路を、片側とは言え全面封鎖して走れることに、何とも言えない嬉しさがあった。まぁ高速道路と言っても日本のように料金所があるわけでもないし、コースとして設定されているルートは高架橋の上を走るわけではなく、交差点もありすぐ隣に民家もありの“走りやすい一般道”といったほうが正確ではあるけれど。

 







そんなことを考えながら進んでいると、ふと、いつも違う距離表示が目に飛び込んできた。





「HALF」…

そうか…もう中間地点か。



ここまでの時間、3時間半少々。
しかし、やはりその時間を長いとは全く思わなかった。むしろ、こんなに楽しいイベントももう半分きてしまったんだな、というような寂しさを感じた。










一旦ハイウェイを抜け、ぐるりと回るコースに出る頃には気温もだいぶ高くなってきた。




ハワイ初日、コンベンションセンターで一目惚れして即買いした赤いサングラスがあった。買った後、ひょっとして外国人用サイズなので合わないんじゃ?とも思ったが、その心配は無用だった。そして現に今、こうしてジャストフィットしてこの眩しさを和らいでくれている。





ハワイカイと呼ばれる地域をぐるりと回る折り返しコースを進む。折り返しと言ってもかなり長い距離をぐる〜っと辿るルートなので、感覚的には「回る」とか「折り返す」というものではなく、やはり郊外の住宅街をただひたすらに走っている、というような感覚が正確なところだった。


 

天気が良かったこともあり、ここの景色はまた格別なものがあった。
っと、ここでもやはり走ることそっちのけで記念撮影をするランナー多数。お前ら少しは真面目に走れよ。(笑)
まぁ他ならぬ自分もまた、言い逃れ出来ないその一人だったりするんだけど。実際そのほうが楽しかったんだからしょうがないじゃん。(笑)

ちなみに気温が比較的高めだったのと、ここまで20km以上走って来たこともあり、そろそろ体調を悪く人も出てくる事を予測してか、赤い十字マークの救護班もしっかり準備万端。


 

またコース脇には普段の給水ポイントとは少し変わったものがあった。

この頃から水の中に氷を入れてもらえてたりしたのだが、その袋詰めされた氷が、そのまんま椅子のような形で置かれていたのだ。
ん〜、何とも横着。(笑)
でも座るとまた気持ち良いんだなこれが。







そして再びハイウェイへ。



数年前まで自分は自転車競技をしていた。
自転車競技は常に何かを食べながら長時間をこなす、過酷なスポーツのひとつ。
長年それをしてきただけあって、補給食を取るタイミングはもとより、熱中症や脱水症状の回避といった方法は自然と身に付いている。

そして体力的にも…いや、ここまでかなりゆっくりのペースだったのでそれほど疲れてはいなかったが、左足小指が少し痛かったので、ちょうど給水ポイントだったこともあり、念には念をいれてバンドエイドを貼りつつしばしの休憩。






カラッと晴れ渡った空、心地良い海風、風になびくヤシの木。
こうして見渡すと、改めて「ホノルルを走っている」という実感が湧く。

絶え間なく過ぎ去るランナーに、これから往路を折り返していくランナー。
さすがに自分より後方のランナーの数は少なくなってきたが、それでも自分の周りには常に誰かがいるという安心感で満たされていた。



そして再び走り始める。





最もキツいと言われる復路のハイウェイ、そして魔の30km地点。
しかし…自分には、あと10kmで終わってしまうという寂しさで一杯だった。





しかし、ふと考えてみれば、ここまでまともに走っていない。

せめて最後の10kmくらいはちゃんと走ろうと考え、歩きに歩く周りのランナーをごぼう抜く。






ハイウェイを抜け・・・



ヤシの木が並ぶ綺麗な直線道を抜け・・・



再びダイヤモンドヘッドのダラダラ坂を登る。

誰一人として走っていない。やはりさすがに疲れているのだろう。それに対し、ここまで相当ゆっくり走ってきただけあって自分にはそれほど疲れは無かった。
そして他のランナーをごぼう抜くことに快感を…感じることは無く、それどころか走れば走るほどに夢の終わりが近づいてくることを実感し、ただただ寂しくて寂しくてたまらなかった。。。












「おーーーい!!!おーーーーーーい!!!!!!!!」



誰だ?????




あっ…






あぁあああっっっ!!!!!!!






前日、「リムジンで巡るオアフ島一周」ツアーで出会った夫婦だ。
歳も近く、たった一日だったが単独参加の自分と親しく過ごしてくれた二人。


まさか3万人近い人間の中からたった一人を見つけ出すとは…






とにかく、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて…。

寂しさが一気に吹き飛んだ。




もう迷いは無い。

ゴール地点での再会を約束し、ノンストップで走り出す。












最後の瞬間が近付く。


FINISHの文字が見える。


こうして実際にゴールを見るとやっぱり寂しかったけど、それ以上に充実感で満たされていた。





笑顔、笑顔、笑顔。

笑顔が溢れるランナーにギャラリー。



そして自分も・・・素直な笑顔で最後の瞬間を・・・



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(5.3MB)








7時間2分55秒。


正直あっという間だった。
でも、この長丁場を一瞬も苦しみを感じること無く、生涯最高と言っても過言ではないくらいの充実した内容で終えられることができたのは、現地で出会うことのできた仲間、オプショナルツアーで出会えた仲間、、、そして共に走るランナーたち、ボランティア、H.I.S.の応援、沿道の声援・・・




Feel visible matter...
Feel invisible matter...
目に見えるものを感じなさい・・・
目に見えないものを感じなさい・・・



数え切れないほどの要素が自分を支えてくれていた事に今更ながらに気付く。
そう、その繋がりこそが人の生きる道、そして…






全ての人に



I am deeply grateful to you.

Nice to meet you...



Thank You!!!!!!!





 

 

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