>> 2016佐渡国際トライアスロン大会 A-TYPE完走の全記録 <<




3時00分。
無事起床。

睡眠の質は悪くなく、そこそこ寝ることができた。


「やろーども!起きるぞー!」なんて、自分への鼓舞も兼ねてみんなを起こす。
テンション高めにいかないと二度寝しそうだしw



3時20分。
宿の提供する弁当をいただきに参上する。

肝心の中身は・・・量がしっかりあって、ありがたや。

ってか、みんなこれを求めて待つ姿がなんか、ロシアの配給のようだw



当日の朝食確保はいつも心配の種で、特に北海道のそれは若干、入手に苦心したけど、今回は宿が提供してくれる。そしてその中身も、さすが毎年開催しているノウハウもあってか、内容は万全だった。

そしてがっつり食べてしっかり出す。
が、ちと急いで食べたせいか、やや腹の調子が悪くなる。


早い人はさっさと出発してゆく。お互いの健闘を誓う。


海パンを履く。
Powerジェル6個をボトルに入れて、水で薄める。
そしてこれをBIKEにセットする。
同時に、ミニフロアポンプで空気圧を100まで入れる。長崎大会、BIKE預託直前で発覚したスローパンクには、以来いつも気にしているけど、どうやら今回も大丈夫そうだ。

部屋に戻り、荷物を背負う。戦闘準備は万端だ。



4時15分、いざ出発。
同部屋の仲間のうち、40代のイケメンさんと69歳のじいちゃんの3人でスタート会場へ。

まだ真っ暗だ。気温はさほど寒くもなく、モワンとした熱気も無く。けど、予報では33度を超える暑さになるからレース中は気を付けねば。


会場に近付くにつれ、他の選手の姿も次第に見掛けるようになってきた。BIKEで移動する選手、徒歩で向かう選手。昨日までののんびりした空気と違って、徐々に緊張感に包まれてゆく。



4時30分、ひときわ明るく照らされた一帯、トランジッションエリアに到着。
仲間とはここでいったんお別れ。健闘を誓い合い、各々のバイクラックリアへと散ってゆく。




すでに多くの選手が各々の準備を進めている。
まだBIKEラックへの設置台数は全体の半分くらいか。時間は充分ある。けど、いつもダラダラして、なんだかんだでギリギリになってしまうから、テキパキとするに越した事はない。




BIKEをセットし、荷物を広げ、種目順にカゴに詰めていく。


あらかた準備をしたのち、会場の様子を少し歩いて見てまわり、そしてFINISHゲートをパシャリ。



制限時間内に必ず、ここに戻ってくることを誓って。



4時50分。
ボディマーキング会場となる体育館へ向かう。



って、最初間違って隣のレーンに並んでしまったw

まだガラガラだったので、落ち着いて正しいレーンに並んで、IDバンドに印字された2次元バーコードをスマホらしき機器で読み込んでもらう。
間違ったレーンでもスキャンして、正しいほうでスキャンしてもらったけど、果たして大丈夫だろうか?
まぁスキャンしたオッサン曰く「大丈夫でしょう」ってことだし、たいていこういうのって後から読み込んだほうが上書きされるから、たぶん大丈夫っしょ。


スキャンと同時に、両腕にボディマーキングをしてもらう。




それからアンクルバンドを受け取る。



はて、いつもどちらの足に付けていたっけかな?
いつもは利き足である右足だった気がするけど、今日はなんとなく左足がすんなり受け入れてくれそうだったので、こちらにしっかりと巻き付ける。


出口付近では何やら行列が。
その先には、、、あァ、なるほどトイレか。
朝食後にも行ったけど、まだ追加で大きいのは出なさそうなので今はパス。



5時00分。
バイクラックエリアに戻り、荷物セッティング、その最終チェック。

・・・SWIMから上がって、トランジッショングッズ、それからBIKE装備、戻って2ndトランジッション、そしてRUN。

大丈夫、大丈夫。
まぁ今回は全てのトランジッションが同じ場所なので、わりと気楽だ。迷ったらとりあえず全部持ってくればいいわけだし。



5時20分、トイレの列へ。



タイミング的にはまだ少し早いかな?でも、出ないことは無いようだったので、行列が短めのうちに並んでおく。

ストレッチしながら順番を待つ作戦も兼ねる。と言っても仮設トイレの数が多く、回転率は早めだった。出すものをしっかり出す。






5時40分。
何気に、もうあと20分でスタートだ。

多くの選手がウエットスーツを身にまとい、スタートエリアへと向かっている。


公式DVDより拝借


なんか今回もやっぱりギリギリ気味になってしまったなぁ。
けど、SWIMウォーミングアップは5分くらいあればいいと思っている。5時50分のアップ可能時間までまだ時間はあるから、落ち着いていこう。

朝食の早食いの影響がまだ若干残っていたので、正露丸を飲んでおく。そしてビニール手袋をしてワセリンを塗り、ウエットスーツを着る。

大丈夫。時間はしっかりある。焦らない、焦らない。


もう、大丈夫かな。
準備は全部できたはず。


いよいよキャップとゴーグルを持って、スイムチェックへ。



公式サイトより拝借


覚悟を決める。

いつもの「よろしくお願いします」の儀式をして、チェックラインを通過する。

もう、後には戻れない。






 7年振りの Welcome Back "SADO" 




5時50分。

佐渡の海に立つ。


・・・大海原を埋め尽くす選手たち!

水しぶきの音が、MCの軽快なアナウンスが。


ついに戻ってきた!



公式サイトより拝借


軽いウォーミングアップ。

海水は適温。けど、思ったほど透明度は無いかもしれないな。そして相変わらずしょっぱい。



予定通り5分ほどのアップを経て、MCに促され、全員が浜辺に上がる。

そしてスタートセレモニーを迎える。



公式サイトより拝借



戻ってきた。戻ってきた!戻ってきた!!


B-TYPE参戦から7年。

月日は巡り、ロングレース4大会の制覇実績を引っさげて、始まりの場に戻ってきた!!




公式サイトより拝借



いつものように、一切の緊張が吹き飛ぶ。
この場に立てた事に感謝し、気合いを入れる。


およそ1,000人の選手が一堂に会す。

そのひとりひとりがそれぞれの想いを胸に抱き、全員が同じ目的地を目指す。



スタート1分前。
MCが場を盛り上げ、そして浜辺から100m先のスタートラインへと向かってゆく。



公式サイトより拝借


事前情報に従い、集団のやや左外側に位置して海へと入ってゆく。


スタート30秒前。

ゆっくり、ゆっくりと集団が進んでゆく。


わずかの静寂の中、水をかき分ける音、選手の息づかいに包まれ、、、



号砲が鳴る!




公式サイトより拝借



15時間半に及ぶ闘いが、7年間の集大成となる一日がついに始まった!






 うねる波、翻弄される選手たち  〜 SWIM 3.8km 〜 




水しぶきがいっせいに上がる!

選手たちがいっせいに泳ぎ出す!



公式サイトより拝借



公式DVDより拝借



前の選手に続き、バトルに巻き込まれぬよう、集団やや外側から泳ぎ出す。

水面上ではライフセーバーが並び、コースを作っている。
その幅、いささか狭く感じる。
そのせいかバトルにも軽く巻き込まれ、しばらくペースが掴めない。けどそれもいつもの事なので、まぁ大丈夫だろう。


泳ぎ出して少し。どうも肩周りが少し重いか。これもいつもの事だから、じき慣れてくるだろう。

期待した海水は、、、思ったほど綺麗では無い、というのが率直な印象だ。7年前に初めて泳いだその海は、やはりそれまで関東近郊の汚れた海ばかりの経験した無かったというギャップもあって、記憶が美化されていたのかもしれない。
ただ周囲の選手の姿はよく見えて、ヘッドアップの回数が少なくて済むのは期待通りだ。


今回のコースは比較的単純で、往路900m、右折して150m、そして復路900m。
いったん岸に上がってこれをもう1周する、というものだ。





区間ごとの細かなタイム目標は設定していないけど、全体目標としては「100m2分ペース」の1時間16分。
だから1周は38分が目標だ。
ウエットスーツ着用、海水による浮力効果、そして選手たちによる“流れるプール”効果があれば充分期待に足る、現実的な目標と言えるだろう。



公式サイトより拝借



時々発生するバトルに巻き込まれる。
左右を塞がれる。前は詰まっている。

一瞬ペースを落として後ろに下がり、空いたスペースに回避する。
すると今度は進路が定まらなくなる。

空いていて泳ぎやすいかもしれないが、どうも集団から離れすぎているような懸念がある。

ヘッドアップして周囲の状況を確かめる。

大きくコースを外れてはいないようだが、進路がイマイチ定まらない。
900m地点に鎮座する、黄色い大きなブイはかろうじて見えるけど、まだ少し掛かりそうだ。
その間を繋ぐ小さなブイは、この短時間では見付けられない。


水中から他の選手の進路を確認し、集団に近付き、進路を示してもらう。

っと、ボーッとしていると手足が当たってゴーグルその他の装備が崩れそうになる。
適度に距離を確保しながら進んでゆく。

けど、コース幅が狭いせいなのか、やっぱりすぐにごちゃごちゃしてくる。


ペースも分からず、落ち着かないままに最初の大きなブイに到達。900m地点。


公式サイトより拝借


うっかり最短距離付近に位置していたので、もみくちゃになりながらもこれを右折し、そしてまた集団から少し離れて泳ぐ。

次のブイまでは150mと短い。
集団に翻弄されながらもこれを消化し、ブイを曲がって、スタート地点を目指す。

朝日が眩しい。その朝日に照らされた選手たちの姿が幻想的・・・などと7年前は思ったが、今回はあまりそういう余裕がないかもしれない。どうも眩しくて、ヘッドアップしてもコースが把握できない。

なのでしばらくヘッドアップせず、無心になってしばらく泳いでいると、、、


突然頭を軽く叩かれた。

上から下に動くのはキックくらいしかない。けどその当たりは柔らかい。


何だろう?

顔を上げる。


公式サイトより拝借


「右でーす!」
ライフセーバーにルートの修正を教えてもらう有り様。



集団を確認してそちらに近付き、適当な選手を見つけてはこれについて行き、軌道修正をしながら岸を目指す。

なんだか蛇行している気がするなぁ。ペースはどんなもんだろうか。
まぁ、1周したときに確認しよう。


そう、今回はウォッチをして泳ぐことにした。昨年のアイアンマン北海道ではウォッチが無くても大丈夫だろう、とタカをくくっていたものの、やはりペースが掴めず、その必要性を改めて感じたからだ。
かと言って水中では確認するほどではない。もう少し泳げば1周だ。そこで確認すればいい。



眩しい朝日、見えないコース、掴めないペースに苦心しつつも時々ヘッドアップしてスタート地点を探しては、なかなか縮まらない距離感にやきもきする。



公式DVDより拝借


図らずとも、まだ序盤を意識してのスローペース、けど、いつも案外速く進んでいるから今回もきっとそんな感じでいけるだろう。
焦らない、焦らない。


周りの選手と、海底を見つつも無心で泳いでいるうちに、その海底が平原から波消しブロックへと変わり、そして岩場となる。

ふと顔を上げると、身体を水面から上げて歩く選手たちの姿が飛び込んできた。
ようやく1周のようだ。

海底の砂地がだんだんと近付き、立てる深さになったところで身を起こす。


そこから見えた周りの光景。
なんとなく、みんなのんびりしているな。気のせいだろうか。


陸に上がって、大きなコーンを廻る。



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その折り返し地点には特にタイム表示板は設けられていなかった。ウォッチを付けて泳いだのは正解だ。



さて、肝心のタイムは・・・45分。

45分?
う、う〜ん、ちと遅いか。


そういえば復路は少し波があったような気がする。選手たちの泳ぎによって造られた波では無く、潮の流れによるものだったのかもしれないな。
「流れるプール状態」もあまり感じることが無く、「実は意外と速く泳げていた」なんて淡い期待は持てなそうだ。



公式サイトより拝借



給水をして、再び海に入ってゆく。


隣の選手が「何分ですか?」と聞いてきたので、その時間を伝える。

「よしよしよし。時間通り。」
どうやらこの選手にとっては目標タイムぴったりらしい。

自分にとっては、ちと遅い。今シーズンは練習量こそ少なめだったものの、その質と結果にはそこそこ期待が持てそうなものだっただけに、いきなり冒頭から目標タイムを追い掛ける展開になろうとは、ちと油断していたか。

ここからタイムを取り戻す、、、というよりは、ペースの落ちる後半戦をどの程度維持できるだろうか。
とはいえ、まだ始まったばかり。落ち着いて2周目に臨もう。



公式サイトより拝借



1周目、スタートの時と同じように歩けるところまで進んで、海面が胸のあたりまで来た頃合いで泳ぎ出す。

選手の数はさすがにバラついてきているので、1周目よりかは多少、マイペースで泳げそうだ。
けど、このままいつものように省エネ泳法でのんびり泳いで大丈夫だろうか。
さすがに少しはタイムを縮める努力をしたほうがいいのではないか。

そこで、手頃なベースの選手を見つけ、これに付いて行く作戦、それをより積極的、より接近して行くことにした。


と、さっそく適度に速い選手が抜いていったので、これにピッタリ付いてゆく。
陸上だとイヤがられるかもだけど、水中なら分からんしね、何度も接触しない限りは大丈夫だろう。

決して良いとは言えない視界を、キックによる泡を頼りに、離されないよう、近付きすぎないよう、これに付いてゆく。

ただひたすら、無心で付いてゆく。



たいてい、2周目はその前半がちょっと「メンドクサイ」という思考に陥りがちだけど、真後ろをひたすら付いてゆくという事に集中しているおかげで、良い感じで進めている気がする。

どうやら対象選手の選択は正解だったようで、周りの選手をけっこう追い抜いてゆく。しかもそれは、決して疲れ過ぎないという絶妙なペースだ。
たまに集団に遭遇してはぐれても、そう遠くには行っていないはずなので、周りを見渡したり、集団を頑張って抜いて、少し先に進めばまたこれに付いて行くことができる。



2周目にあって、朝日の影響からか海中がよく見えるようになってきた。
岩場には小魚の群れがいる。やはり平坦な場所よりも岩場の方が身を隠すには都合が良いのかもしれない。

なんて事をたまに考えつつも前の選手をひたすら追い掛けているうちに、気付けば900m地点のブイに到達。気分的にもだいぶラクをさせてもらった。




公式DVDより拝借


ブイを右折し、150mを進んで次のブイを右折。


少し疲れてきたけど、このまま最後まで行けるかな?と思ったものの、どうもこの選手も疲れてきたようで、平泳ぎが増えてきたようだ。

少しの間、それでもその選手のペースに合わせて粘ってみたけど、休憩タイムなのか、本格的にゆっくりになってしまったので、さすがにこのまま付いて行くわけにはいかなそうだ。
なので他の適当な選手を見付けては乗り換えて、を繰り返すような泳ぎに変更。


相変わらず朝日が眩しく、ヘッドアップしても状況がよく分からない。単独で泳ぐには、水中での進行方向があやふや。
となるとやはり、他の選手にここは頼るしかない。
もっとも、その選手が間違った方向に進んでいたらそれはそれで困るけど。

ただ、ここまでたぶん良いペースで来れたと思うから、前半より後半の方がタイム的に期待できるかもしれない。

…しかし、ラスト900mを引っ張ってくれる選手がなかなか定まらない。良さげな選手に付いていって、少し遅いかな?と思ってこれを抜こうとしても、結局同じようなペース。なので、どうせ同じなら後ろに付いたほうが体力を温存できる、、、そして手頃な速さの選手を見付けては乗り換えて、、、なんてことの繰り返しで、なかなかどうして微妙。

で、こういう時って、現状に甘んじていると意外とタイム的に遅くなるから、ちょっぴり心配になってくる。



公式サイトより拝借


時々のヘッドアップをしても、見える岸はまだ遠い。ゴールはまだもう少し先になりそうだ。

というか、どうも波が少し高くなってきているようだ。泳いでいる時の、ゆらゆらと翻弄させる感覚はそれほど多くはないものの、ヘッドアップした時はやはりその視界が定まらず、前進している実感もイマイチ得られない。

特に独りで泳いでいると、「その進まない感」をより強く感じてしまい、必然的に?他の選手に付いて行くことになってしまう。
加えてこの復路は目標となる選手がなかなか定まらず、乗り換えを繰り返しては右にふらふら、左にふらふらしてしまい、明らかに無駄な距離を泳いでしまっている。

陽の光もだいぶ明るくなってきて、海中の様子はだいぶ良く見えるようになってきたけど、かえってそのぶん他の選手に付いて行くための蛇行を発生させてしまっているのかもしれない。



そうこうしているうちに、腕もだいぶ疲れてきてしまった。
2周目前半をちょい頑張った影響が出てきたか。でも、BIKE中に少しダラーンとさせておけば、まだ回復できる範疇だろう。

そういえば気温も上がってきたようだ。さすがにまだ「暑くてタマらない」と感じるまでは至らないけど、この時間で早くも暑さを感じ、この先の長丁場の影響に思いを巡らせる。



選手に付いたり、単独で泳いだり。

左端のライフセーバーに接近しすぎて軌道修正したら今度はセンターラインを区切る右端の小さなブイや、それを繋ぐロープに引っ掛かる。
けど、文字通り右往左往しつつも、だいぶ距離は稼げてきたようだ。

なんだかんだでSWIMは3種目中、競技時間が一番短い。タイムを常にチェックする事はできないけど、ロングレースのSWIMはだいたいいつも同じくらいのタイムで泳げている。
だから今のペースでもきっと大丈夫だろう。



ペース掴みに苦心しつつも、ようやくその終わりが見えてきた。

海底の姿が波消しブロック、そして岩場と移り変わり、待望の砂地になったところで前方を見渡す。


スタートエリアが見える。

青いキャップをかぶった多くの選手たちがスタンバっている。


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もうB-TYPEスタートの頃合いか。7年前はあちら側に立って、赤いキャップの選手たちの勇姿を眺めていたっけ。

と、あまりそれ以上のことを考えている余裕が無さそうだ。
泳ぎを終え、身を上げてSWIM FINISHラインを目指す。




画像提供:佐渡の旅館 ご縁の宿伊藤屋




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公式DVDより拝借



SWIMアップエリアに設けられた電光掲示板が指し示す時刻は・・・7時30分。


SWIM:1時間30分。
1周目と同じペースだったか。2周目往路が良かっただけに少し期待したけど、さすがにタイムは縮まなかったか。。。


SWIM目標は1時間16分。

7時30分にはすでにBIKEをスタートしている目標設定だったけど、現実はまだこんなところにいる。
ちとヤバいか。

いつも目標タイムにアドバンテージをもって進むことが出来ていたレースが多かったのに反し、今回はこれを追う展開になる。


けど全体からすれば、まだ充分リカバリーの利く範疇のはず。
長崎大会のときだって、追う展開から始まったじゃないか。

だからきっと、大丈夫。






 1st Transition 




砂浜を歩きながらウェットスーツの上半分を脱ぎ、そしてシャワーエリアで残りを脱ぐ。



公式DVDより拝借


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画像提供:佐渡の旅館 ご縁の宿伊藤屋



真水のシャワーで軽くウェットスーツと、そして身体を洗い、足早に先に進む。




画像提供:佐渡の旅館 ご縁の宿伊藤屋



トランジッションは焦らず、ダラダラせず。



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身体を拭いて着替えをし、補給食を口にしつつ日焼け止めを塗る。

っと、左足モモ付近が若干、痙攣した?幸いすぐに収まったけど、こんなのは初めてだ。気を付けていこう。

足首まわりのファイテンシールは、過去のレースでSWIM中に剥がれた経験もあり、このトランジッション中に付ける予定だった。けど、シワシワな足の水分がどうも拭き取れず、結局これは貼らずに行くことにした。

まぁ本当に必要なのはRUNの時なので、今はまだ無くても大丈夫。


ヘルメットをかぶり、BIKE装備をチェック。
心配のパンクは、無い。

再度、忘れ物をしていないかを確認し、サイクルコンピュータのスイッチを入れ、いざ出発。



公式DVDより拝借


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足早にBIKEを押し、乗車ラインを超えて、走りながらまたがる。


これより、国内最長:190kmの長丁場へと向かってゆく。






 最高気温33.6度、灼熱の長丁場  〜 BIKE 190km 〜 




海岸線を走る。

みんなガンガン飛ばしてゆく。
それに吊られて若干ペースが速くなる。といってもせいぜい30km/hオーバー。

このくらいであれば、遅れを取り戻すには許容範囲だろう。この後調節していこう。


前日にたまたま走った序盤10kmを駆け抜ける。
チンタラ走った昨日と違ってレースペースだとさすがに速い。アップダウンを経て、わりと早い段階で昨日試走したパートを抜けてゆく。



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気温は、この時間にしてはやや暑いが、まだ大丈夫。
まずはこのまま最初のチェックポイント:43km地点まで行って、目標タイム差が少しでも縮まっていることを期待したい。



快晴、青い海、序盤ゆえの調子の良さ。
走っていて気持ちいい。
もちろんそれは最初ならではの余裕に過ぎないけど、メンタル的な余裕も重要だ。この後どれくらいこの調子で行けるだろうか。



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コースは島の海岸線をぐるりと1周する、分かりやすいものだ。
だから海風の逆風を警戒していたけど、今のところは大した風は無い。けど、意外とアップダウンがある。





さすがに島の端っこを走るコースだからそれほど大きな坂は無いけど、細かく登ったり下ったりをしているから、若干の誤算かな?
まだアベレージ速度にはさほど影響が無さそうなので大丈夫そうだけど、果たしてこの先どうなるか。


調子は必ずしも良くは無いが、かと言って悪くも無い。
今シーズンは平地メインのスピード練をしてきたから、それが発揮されるとよいのだが。

ペースをコントロールしつつも、快晴の大海原、共に走る選手たち、そして人々の声援に自然と笑みがこぼれる。
大舞台に立てる幸せ、声援に囲まれる幸せ、、、純粋に「走れる」ことの幸せ。




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最初の指標となる43km地点に到達。

気になるタイム差は、、、7分。
よかった、縮まっている。


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ここまでの区間目標ペースは27km/h算出。そして、序盤こそ30km/hペースだったけど、アップダウンの影響もあるうえ、この後の事を考えてやや抑えた。だから実際のアベレージもだいたい28km/h程度に落ち着いたから、さすがに一発で吸収は出来なかったか。

ただ、この後コースを進むにつれて、当然ながらペース低下に伴う目標タイムも甘くしているので、次のチェックポイントに期待しよう。


ボランティアが一列になり、水やコーラ、アクエリアスを差し出してくれている。
加えて、バナナやおにぎり、オレンジと、補給食も充実。



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ロングレースではすっかりお馴染みとなったこの光景、しかしいつ見てもそれは励みになる。

レースはまだ序盤。手持ちの水も補給食もたんまりある。
ここは素通りし、次のエイド:56km地点のウォーターステーション、そして次の目標時刻を設定した72km地点を目指す。



海岸線を走る。海岸はものすごく綺麗だ。
初日のフェリーで一緒になった女性選手の情報によると、こちら側は外海に面しているからSWIM会場よりもさらに綺麗で、水深20mくらいは透き通っているらしい。

前を走る選手がスマホを取り出して写真を撮っている。
うんうん。分かる分かるその気持ち。7年前、Bタイプの選手説明会で「デジカメ持って走ってもよいか」と聞いた際、レースに不要なものの持参はNGとの回答だったが、一応、時代は進んで今は緊急連絡用のケータイ持参を推奨している。だから“たまたまその機材に写真機能が付いていただけ”だよねw

もっとも、自分は軽量化そして汗による浸水を恐れて持つことはしないけど。
ホントは写真撮りながら走りたいけどね。A-TYPEではその余裕は無さそうだ。



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空を仰ぐ。快晴。暑い。果たしてこの後どれくらい気温が上がるだろうか。

汗が流れる。水を頭からかけて、体温を下げるよう努める。
そして早め早めの補給食。

暑さでバテると胃が受け付けなくなるから、腹が減っていなくても、食べられるうちに少しずつ食べておくのが鉄則だ。
幸い、短いトンネルも多く、その中の気温はグッと低い。この間に頭から水をかけておくと、体感的にもだいぶ体温が下がったように感じられる。

今のところはイイ感じで走れているようだ。



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沿道の応援もまばらながら予想以上に多く、時々これに応える。
応えられているうちは、まだ大丈夫。

コバルトブルーの絶景もまだ、楽しめている精神的余裕もある。



そして迎えた56kmのウォーターステーション。Z坂手前4km地点。
ここでの目標タイムは算出していないからタイム差は正確には分からないけど、平均時速は目標設定と同程度だから、たぶん、許容範囲内で走れているはずだ。


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ボランティアに差し出された水を2本受け取る。
1本は水が尽きかけたメインのボトルに、中身だけ移し替える。

それからサドル後ろのボトルケージ、ここは最初から1本分空けてあるので、もう1本をここに差し込む。



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そう、ついに佐渡ボトルを取り戻した。

4年前、長崎大会でボトルキャッチャーに破棄した佐渡ボトル。
かつてのB-TYPE参戦時よりももっと昔、近郊のアクアスロン大会のじゃんけん大会で入手したボトルだ。しかし、ロゴこそは同じ佐渡大会のものなれど、自ら出場してこれを入手したわけではない。

正直なところ、B-TYPE参戦時は疫病の影響で公式ボトルを貰えなかった事もあり、破棄することに若干の抵抗があったのも事実。
でも、あのとき誓った「いつかこの手で必ず取り返しに行く」という明確な目的が高いモチベーション維持の動機付けのひとつとなり、そしてこれをついに果たすことができた。


暑さ対策もうまくいってる。
念願のボトルも手に入れた。
この先の気温上昇や距離そのものに対する不安要素は大きいけど、まだまだ巻き返せる範疇だ。



向かい風が出てきた。
そしてアップダウンはそれなりにキツく、加えてだいぶ暑くなってきた。

空を見上げる。
雲ひとつ無い青空。陽射しを遮ってくれるものは何も無い。

唯一の救いは、コース中に時々あるトンネル、それも長めのトンネルが結構あることだ。


今回の暑さから思い起こされるのは皆生のレース。
ボトル2本の水をもらい、1本は身体に掛けて体温を下げるというものだ。そのぶん消費は早いため、エイドの数と場所がカギになるけど、幸い今回は補給食のあるエイドステーションのほか、飲料メインのウォーターステーションも数多く設置されている。

手元にメモったポイントはメインのエイドだけで、残量管理もその距離間を意識しているけど、仮にウォーターステーションの時点で水が足りていなかったら、そこで追加する事もできる。
おかげで体温調整は今のところうまくいっている。



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そしてこの長いトンネル。これを利用して、胃が受け付けなくなる前の「今のうち」の補給食摂取のほか、かなり念入りに水を身体中に掛けて体温低下を目論む。
トンネル内は大抵が平坦だから、両手を駆使し、落ち着いて体温低下策と補給を進めることができる。

その効果か、トンネルを出たときの体感温度はだいぶ“モワッ”とくるけど、それは体温低下がうまく果たせた証拠でもある。



風は向かい風になびき、なかなか思うようにスピードが乗らなくなってきた。疲労も少しずつ出てきた。
けど、ペースはまずまずだ。
前半は粘って、後半、目標アベレージが下がったところで巻き返しを図りたい。


声援を送ってくれる人々のうち、地元の住民はやはりお年寄りが多い。

いつぞやのTVで限界集落に関する取材番組があったのを見たけど、やはり人が集まるのは港のあたりに集中するようだ。
けど、椅子や地べたに座りながらも、思い思いの方法で、それこそ延々と応援をしてくれるのが嬉しい。



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ハンカチやうちわを振ってくれたり、太鼓や鍋を叩いてくれたり。
中でも、金属の棒か何かで、街灯のポールを叩くというのは、もの凄く省エネかつ効果は抜群。なかなか面白いアイディアだ。





60km地点、いよいよ迎えた噂のZ坂。



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遠くから見ると、確かに綺麗にZの形をしている。そして、デカい。


他の選手も、そのデカさと長さを警戒してゆっくりゆっくり進んでいる。
が、いざ登ってみれば、思ったほど大した事は無い。傾斜もさほどキツくない。長くもない。



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もちろん、この後の事を考え、最低ギアでチンタラ登るけど、それは他の選手たちも同じようだ。果敢に攻めてゆく選手は少なく、みんながそれぞれのマイペースを守って、じわりじわりと登ってゆく。



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眼下に広がる、澄み切った青い海、緑豊かな佐渡の自然。


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すがすがしい。

こんな島の端のほうまでも、まばらながらも応援する人たちが来ている。
そのほとんどは仲間の選手を待つ人々のようだけど、坂の中腹、トンネル工事の関係者たちからも声援が飛んで、なんだか嬉しくなった。



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工事中のトンネルを抜けて少し進むと、Z坂はもう終わりのようだ。
なんだ、意外とあっけなかったな。

いや、むしろ終わった後の坂がけっこう長い。事前に地形はあまり詳しく調べていなかったけど、高低差図では比較的大きな山が2つ示されている。



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という事はこの後もまだ登り坂がある、ということか。


向かい風も続く。林間にあってその影響は小さく済んでいるのが救いだ。



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コースマップを確認する。この先、最北端を抜けて南下する。そうすれば追い風になるだろうか。





登坂が終わり、下り坂を迎える。

突然視界が開ける。


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大海原に飛び込んでゆくかのような、絶景。

あたかもジェットコースターのような下り坂を、それまでのスローペースを吹き飛ばすかのごとく、一気に駆け抜ける。

登りが短めだったぶん、下りも短めだが、視界全体に広がる大自然にしばし、心酔。
その光景は、溜まる一方の疲労感を少しの間だけ忘れさせてくれる。

どこまでも続く、青い海。堅い岩盤。海風。大自然そのままのアップダウン。



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辿り着いた76km地点、島の最北端を過ぎた最初のエイドステーション。



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ここから平地・追い風が期待できるとは言え、ここまでの登坂・向かい風を受け続けた影響か、さすがに少し疲れてきた。



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気になるタイム差は、、、10分。
少し離されたか。

Z坂エリアの区間目標タイムは、その登坂を意識して多少甘めに設定したけど、それでも吸収できないほどにペースが遅かったということか。もしろ手応えとしては、それほど遅くなっていないつもりだったけど、なかなか追い付けないな。

一向に縮まらないタイム差に、「まだ大丈夫」という思いと「この先さらに厳しくなるから大丈夫だろうか」という思いが錯綜する。
そして徐々に焦りの気持ちが芽生えてくる。

やはり、上昇する一方の気温にこの先の行程を考えると、、、そんな弱気思考が少しずつ生まれては、メンタルを徐々に蝕んでゆく。


ひとまず、ここは落ち着いて補給、そして給水。



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っと、やはりこの暑さのせいか、エイドの供給量が選手の消費量に追い付いていないらしい。けど、どうしても給水をしたかったので、ポリバケツいっぱいの水そのものを手持ちのボトルに入れてしまうことにした。

何気にその機転が良い方に利いてくれたらしく、溶けかけた氷が大量に入ったためボトルでもらうよりも圧倒的に冷えた水を入手することができた。
道中、特に身体に掛けるほうの水は出来る限り冷たいほうがいい。
これは良いことに気付いた。

ちなみにこれを口にすると、もれなくスポンジの味が付いてくるw



雄大な海岸沿い、その道をひたすら走る。

アップダウンを経て、開けた視界の先に平地を期待するものの、これがまだまだ続くようだ。
登りは省エネ走行、そして下りで一気に飛ばし、しばしその加速したスピードを維持すべく、粘る。

どうやら進行方向的に南下し始めたためか、幸いにも風は緩やかになってきた。
果たしてタイム差は少しは縮められただろうか、それとも離れているのだろうか。

予想以上のアップダウンゆえアベレージ速度が上げられない。
これ以上離されるのは、さすがにヤバい。。。


なぜか今回はレース前から弱気思考に苛まれていた。
普段の練習時はむしろ攻め姿勢で行けるのでは、というほどの意気込みが反転したのは、台風の発生や気温情報を耳にしたあたりから、だろうか。
幸い、台風は大きく逸れて、心配だった波や風の影響はそれほど大きくは感じずに済んだ。

けど、こうして開いたままのタイム差、予想以上のアップダウンの数、そして暑さ。
BIKEフィニッシュ目標が、RUNに6時間30分は残すタイム設定なので最悪でもこれを30分オーバーまでに抑えて、せめて6時間は残しておきたいけれど、弱気思考からなかなか抜け出せずにいる。。。

弱気になると、不思議と力も入らなくなってゆく。みるみる力が抜ける。



ここままでいいのか?!

いいわけがない!

ここままだと落とすぞ!
こちとら7年間やってきたんだ。その集大成を見せてみやがれ!


気合いを入れる。



気温はまだまだ上がる。
氷入りのボトルは早い段階で無くなってゆく。

手元のボトルが尽きたら、サドル後方のボトルと入れ替える。
こちらのボトルにも氷を入れていたが、その暑さからか、入れ替えた時点ですっかり溶けてしまっていた。
走行中の熱波の影響で溶けるのは分かるけど、自分の身体のすぐ後ろに挿していたから、その風除け効果でそこまで溶けないと思っていたのだが。

暑さを実感する。
けど、常に水分補給や体温調整ができているおかげか、練習時のような「暑さに負けてバテるような、どうしようもない状況」にはならずに済んでいるのは、数少ないポジティブ要素だ。身体とBIKEはズブ濡れだけどw


絶え間なく流れる汗。
その影響で、ブリーズライトが剥がれてしまう。予備は2枚持っていたので、鼻の汗をできるだけ水で拭き取って、また貼り付ける。

ファイテンシールもヒザまわりが少しカブレてきて痒くなるので、それを感じたら惜しげもなく都度剥がすようにしている。



大自然を走り抜ける。喫茶店の旗が強くなびいている。

ありがたい。追い風だ。
そういえばすっかり風を感じなくなった。

民家が少しずつ増える。アップダウンも無くなってゆく。
先を目指し、ただひたすらに突き進む。




公式サイトより拝借





86km地点、ウォーターステーション。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


Powerジェルボトルが尽きたためボトルキャッチャーへ投入。そのボトルは北海道のEXPOでもらった、ベンツのロゴが入ったもの。
手持ちのボトルの中で最も新しいものだったけど、惜しげも無く投入w
そして空いたボトルケージにアクエリアス入りボトルを入れる。

それからいつものように給水を2本。
一度に3本のやりくりはさすがに走りながらではキツいので、完全停止して、落ち着いてやりくりをする。


それと暑さ対策に、スポンジにたっぷり含まれた冷水を頭から掛ける。
これが実に気持ちいい。


公式サイトより拝借


ボランティアにお礼を言って、先を目指す。
どんな状況にあっても、せめてエイドのボランティアには礼を言うのが自分なりのルールだ。



ペースを上げる。
疲労は溜まる一方だけど、走りながらのストレッチや景色の移り変わりを見ながらこれを紛らわせる。

前後の選手はだいぶ少なくなってきたようだ。
こちらが抜く選手は少なく、たいていは抜かれてしまう。30km/hを切らないよう粘りながら走っているものの、それでも遅いようだ。果たしてこのままのペースで大丈夫だろうか。






10kmごとに設けられた距離表示板。
ここには佐渡島のイラスト地図が描かれており、そこにスタート位置と、現在地が明記されている。

今どのあたりを走っているか、というのはこの長丁場に於いて気晴らしになる要素のひとつだ。
場合によっては、まだこんなところか、、、とか、まだこんなに残っているのか、、、と思ってしまう事もあるけど。

そしてその距離計測そのものは、手元のサイクルコンピュータと比較しても、割と正確。
せいぜい500mズレている程度で、BIKEとしてみれば誤差の範囲内。
ということは今回も、「実は190kmより短かった」なんて甘いことにはならなそうだ。

国内最長となる190kmという距離、けど、練習では幾度となくこれをクリアしてきた。
ここまで予想以上にアップダウンはあったけど、そのいずれもが短めのため、北海道と比べればだいぶマシなはず。



市街地を走る。
声援を送ってくれる観光客、そして島民の人たち。



公式サイトより拝借



走り抜けるその街は次第に店舗も増えてきて、交差点を左折、そして右折してゆく。

道路表示版に踊る、両津港の文字。
そうか、もうここまで来たか。

おそらくは今、最も活気のあるエリアを、その多くの声援を受けながら突き進んでゆく。

時々これに応えながら走った効果か、少しばかり元気になる。



B-TYPEの距離表示板を目にするようになってきた。
どうやらコースが合流したようだ。

7年前の面影、記憶が部分部分で蘇る。
この先は平坦な道が多かった気がする。

果たしてここから先、どれくらいのパフォーマンスを発揮できるだろうか。




そして105km地点のエイド到達。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


7年前はまだスタートわずかタイミングでのエイドだったからほぼ素通りだったけど、今回は全行程のおよそ半分消化したあたり。
タイム差はさらに広がっているが、トイレのタイミングとしてはガマンせず、ここで行くのが良さそうだ。



公式サイトより拝借


BIKEを降りて、用を足す。

補給食を口にしながら軽くストレッチ。

後ろからどんどん選手が通過してゆく。
途中、選手の数が少なくなって不安にもなったけど、なんだ、まだまだこんなにたくさんいるじゃん。少し安心。


そして戦闘再開。



幸い、B-TYPE合流以降のコースは風向きが進行方向バッチリの追い風だったようで、安定して30km/hオーバーで走ることが出来た。
けど、全体平均は26.4km/hまで回復したものの、肝心の目標タイム差がなかなか縮まらない。。。

次の目標時刻が迫る。
けど、その距離はまだずいぶん先だ。このまま30km/hペースで行ったとしても、タイム差は縮まらないかもしれない。

そんな弱気思考か現れては、追い風による高速走でなんとか払拭する。



公式DVDより拝借



Excel関数をふんだんに活用し、少しばかりの攻め姿勢、けど比較的現実的な目標タイムを設定してきた。
それは決して「策に溺れた」わけではない。
むしろ、それ位のペースで走らないと完走できない事の裏返しでもあるのだ。

だからもしそれすら出来ないのであれば、すなわち実力そのものが足りていない挑戦、ということになる。

弱気思考は一向に払拭できないが、幸いこの追い風そして平地メインに助けられ、なんとかモチベーションを維持したまま進むことができている。


ちなみにタイム差が縮まらない要因に、エイドでの完全停止を考慮していないことも挙げられるだろう。
さすがに皆生の時のようにダラダラしていては間に合わないけど、給水はもちろん、補給食もしっかり摂らないとこの先が持たないから、その時間は短いながらも、どうしても完全停止が必要となっている。



公式サイトより拝借


見慣れた光景、記憶から薄れた光景、懐かしい光景が流れてゆく。
青く澄みきった海を、空を、大地を身体全体で受けながら、ひたすら続く海岸線の道を突き進む。




トンネル手前で「欲しいものありますかー?」と聞いてくるボランティアがいる。
ということは・・・

トンネルを抜けたすぐ直後にエイドがあった。
123km地点。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA



公式サイトより拝借


エイド入り口ではボランティアだけでなく、なぜか警察官までもが給水を手伝ってた。
選手の「水あります?」に対して「もう少し先にあります」とか、普通にエイドの仕事をこなす姿になんか笑ってしまった。

そしてそのボランティアが差し出すボトル、その中身だけを自前のボトルに入れたかった、、、というかポリバケツの水で構わなかったんだけど、ボランティアがわざわざ差し出したボトルを開けて注いでくれた。

選手の足止めをしまいと、急いで入れてくれる高校生ボランティア。
「大丈夫。焦らなくていいよ。」
そう伝える気持ちのどこかに、きっと自分自身に向けた想いもあるのだろうと思いつつ、給水を進めてゆく。



肝心の目標タイム差。それは縮まるどころか、むしろさらに10分も広がっている。

おかしい。Excel計算式を間違えたか?!


ヤバい。

今回は本当に、このままではマズい。もしかしたらこのレース、ホントに落とすかもしれない。。。

次の目標設定エイドは25km先。
けど、その時刻にはどう考えても間に合いそうもない。

だが、これ以上遅れるわけにはいかない。


疲労感は相変わらずだが、後半が平地メインかつ追い風だからか、幸いにも北海道の時のように「大の字になって戦略的3分休憩」をせずに済んでいる。
もっとも、とてもそんな悠長なことをしている余裕は無いのだが。


どこまでも続く道。遠く、海の彼方には陸地が見える。あれは本州だろうか。



公式DVDより拝借



かなり先には選手がポツンと走っている。その距離を詰めるべく、頑張る。

思えば前後ともに、選手がだいぶ少なくなったように感じる。

沿道の応援も、選手が接近するたびに楽器や鍋なんかをカンカン叩いて声援を飛ばしてくれて、選手が連続して通過しているときはその音がずっと鳴っているんだけど、この辺りでは自分が通り抜けるとその音も止んでしまうので、いっそう選手間の開きを感じるのだ。



公式DVDより拝借



弱気思考は相変わらずだが、むしろ一定の速度でただひたすらに走り続けているうち、無心でいられる時間が増えてきた。





148km地点のエイド到達。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA



公式サイトより拝借


目標タイム差は横ばい。

ここのエイドでは特におばちゃん軍団による補給食の充実っぷりが目立った。

エイド入り口でコーラをもらい、それを飲みながら補給食を口にしていたら、エイド終わりのあたりでコーラがかなり減っていたり。もともとコーラはボトル半分くらいしか入っていない。満タンに入れられてたらゴクゴク飲んでしまって、お腹が緩くなってしまうのでそれはそれでちょうど良い量なんだけど、エイド終了時点でこの残量はどうだろう?
一瞬、おかわりをもらいに行こうか迷ったけど、まぁ、水もボトル2本分あるし、大丈夫だろう。



細かなアップダウン、島の人たちの声援、暑さ。
そんな中でも、7年前の記憶が蘇りながらも初めての感覚を肌で感じながら、ただただ前に進む。

次のエイドまでは僅か13km。
そしてその先には小木坂の登坂が待ち構えている。

160km走ってきてこの坂はキツいかもしれないが、最低ギアでチンタラ登ればクリアできるだろう。
それを抜ければ、ゴールが見えてくる。

目標タイムに遅れっぱなしではあるけれど、この長丁場ももうひと踏ん張り、もうふた踏ん張りだ。

追い風の平地、ラクをできるのもあと僅かの時間。
飛ばし過ぎぬよう調節しながらも、風に乗って遅れを取り戻すべく、ひたすら疾走してゆく。



公式サイトより拝借





30km/h平均で踏ん張り続け、いよいよ小木坂手前のエイドに到達。
161km地点。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA



公式サイトより拝借


目標タイム差はやはり、横ばいだ。


相変わらずのポリバケツから氷ごと給水をしてると、ボランティアのオッサンに「お腹壊すぞー」と茶化される。
「死にゃしないっしょ」と茶化し返せるあたり、メンタル的にはまだ大丈夫そうだ。

補給食そして給水をして、登坂に備える。



ここからダラダラ坂が3つ。
7年前の記憶は、それなりにキツいものだったが、登ってみれば、チンタラ行けばそれほどでもない。
って、39×28とかいうデカいギアだけど。



公式サイトより拝借


そういえばここまでのクセで、ボトル3本を完全装備してしまっている。
わずか8km先、登りきったあたりにエイドがあるから、決してフル装備でいる必要は無い。

そこで必要な量を計算し、分量を減らして軽量化を図る。


このあたりからB-TYPEの選手を見掛けるようになってきた。
そして自転車を降りて、押して歩く選手は、、、あらま、だいぶお年を召した方だこと。


「ファイトっ!」と声を掛ける。

「ウィ〜」と返ってくる。

疲れ切った声だが、まだいける。そんな声だった。
あんなに高齢なのにこんなに頑張っている。若いボクらはもっと頑張らねば。



ここまでで比べれば長い登坂、けど、過去のレースに比べれば、そして練習してきた山々に比べればたいした事はない。
そしてその斜度も、最低ギアで走るぶんにはそれほど問題なさそうだ。


それまでの高速走行から一変、10km/h前後の低速走行。
無風ゆえの、流れ続ける汗。
けど、日陰もあり、ボトルに入れた水もたっぷりある。次のエイドも近い。
やや多めに水を身体に掛けて、ボトルの更なる軽量化と体温低下の一石二鳥を目論む。

そして点在する人々の声援に後押しされながら、その頂きを目指す。


しばし走り続けるうちにその傾斜は緩やかになり、平地になり、また細かなアップダウンを経る。


公式サイトより拝借





そして辿り着いた169km地点。
終盤の難所、小木坂エリアを通過してのエイド到達。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA



公式サイトより拝借



給水をして、先を目指す。


この先は念願の下り坂だ。登りきった山を、そのふもとまで下ってゆく。

が、気持ち良く下っても、大きな山を登ってきたわけではないのですぐに終わってしまう。
そして平地と、細かなアップダウンがまだまだ続いている。



残り20km。

コース的にも、これまでの方角から90度曲がるような格好になったためか、風向きも変わって、やや向かい風になってきた。

あとどれくらいだろう。B-TYPEの距離表示板も点在しているが、A-TYPEと並列ではなく、それぞれ部門別の距離を表示しているようだ。とすると、こちらの表示からも残り距離を推測できるはずだったけど、、、B-TYPEの全行程って、何キロだっけ?105km?こちらもちゃんとチェックしておけばよかったかなぁ。

サイクルコンピュータを見れば済むことではあるけれど、何かの外部要因に心の拠り所を見出そうとしていたのかもしれない。


平均速度がついに26.0km/hを割り込んでしまった。
我慢、ガマン。


公式サイトより拝借



細かなアップダウン、その中でも意外と長いものもある。
頂上までは、あとどれくらいだろうか。7年前に走った記憶なんざ、すっかり飛んでしまっている。
過去の記憶より、今、目の前にある登り。これをひとつひとつクリアしていくしかない。


バスが交通規制を受け、ボクらが過ぎ去るのを待ってくれている。
早く行きたいけど、なかなか身体が付いてこない。

そしてなかなか残り距離が消化できないような錯覚が、メンタルをさらに揺さぶってくる。





残り10km。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


時刻はすでに14時50分。

目標タイムテーブルではすでにBIKE FINISHを果たしているはずの時間だ。


だいぶ疲れてしまった。この調子で、この後のRUNは果たして6時間でいけるだろうか。
出来るだけ飛ばしてRUN時間を少しでも稼ぎたい気持ちと、軽く漕いで体力を回復させたい気持ちが錯綜する。



公式サイトより拝借


かつて宮古島・長崎で感じた「持てる力を総動員して、未知なる世界に立ち向かってゆく」感覚が、距離の短めな皆生や制限時間の長い北海道がそれなりに余力を残せたこともあってか“あの”感覚を感じることが出来ず、ごく若干の物足りなさを感じた。

そして国内最長とは言え平地メインの佐渡に当初、むしろ記録を意識した走りを多少はできるかもしれないと思ったが、フタを開ければなんのその。出だしからつまずき、アップダウンと暑さに苛まれ、いまだ制限時間の波に脅かされる状況を脱することのできないギリギリの現状。


それは図らずとも、持てる力を、過去7年間の鍛錬と経験をひとつ残らず総動員して挑まなければならなくなっている。



海岸線を走る。

向かい風がややキツい。
風の影響もあってか、なかなか残りわずかの距離が縮まらない。


公式サイトより拝借


満身創痍のなか、しかしこの後に控えるフルマラソンのことを想像しつつ、残された時間を疲労一杯のアタマで計算しつつ、今はひたすらBIKEゴールを目指す。




そしてようやくいよいよ市街地に入る。
あと2〜3kmだ。


B-TYPEの選手の数も少しずつ増えてきた。

コースが赤いコーンで仕切られ、RUN選手と併走する。
往路だけでなく、復路もひっきりなしに選手が行き交ってゆく。

この時間帯で復路の段階だったら、ラクだろうなぁ。自分も早くその段階まで辿り着きたい。


老若男女の声援はこのあたりは活況だ。

長かったBIKEもあと僅か。
蓄積された疲労を少しでも軽減するため、軽くストレッチをしながらBIKE FINISHへと向かってゆく。



ラスト直前の商店街。

両サイドのアーケード間に色とりどりの国旗が装飾され、ギャラリーで盛り上がる中を駆け抜ける。

そうだ。7年前もたしかこんな感じだったな。懐かしい。
それまで淋しかった光景から一気に活気ある世界に戻ってきたからか、元気が出てくる。

そして声援に応え、声援に励まされつつ、これを突き抜けてゆく。



そしてようやくBIKE FINISH。

目標:14時50分に対し、15時15分。

だいぶ遅れてしまった。
でもまだ、なんとかなる範疇だ。

降車ラインを超え、急ぎ足でトランジッションエリアへとなだれ込んでゆく。



公式DVDより拝借




 2nd Transition 



いつものようにダラダラしてられない。せめてRUNに6時間は残したいので、最低でも15時30分には出たい。


炎天下。陽射しを遮るものは何も無い。

ストレッチもそこそこに、やや急ぎで着替え、補給食を口にしながら足首まわりにファイテンシールを貼る。

そしてビニール手袋をしてワセリンを塗る。
って、ものすごく液化してるな。暑さで溶けるとこんなふうになるのか。


ブリーズライトはBIKE道中で何度も剥がれ、都度付け替えたけどRUN用にも別途枚数を確保している。けど、貼るのは鼻のアタマの汗をできるだけ拭き取ってからにしたい。
ボトルの水はちょうど尽きてしまったので、エイドの水でこれを拭いてから付けよう。


トイレに行く。大便は出ないようだ。けど念のため正露丸を飲んでおこう。

疲労色の濃い選手たちがゆっくりめに進んでゆく中、自分もそうしたい誘惑を振り切り、審判員に誘導されるままに急ぎ足でトランジッションエリアを抜ける。

そしてRUNスタートラインを切る。



厳しい展開が続く闘いは、いよいよここから正念場を迎える事となる。






 迫る制限時間、休まらぬ心  〜 RUN 42.2km 〜 




スタートライン直後のエイド。最後のステージに備え、補給食を口にしつつ、ブリーズライトを付ける。
普段ならゆっくり落ち着いてから進むけど、今回はそうも言ってられない。急ぎ足で補給を済ませ、走り出す。



公式サイトより拝借



出だしのコース、なんとなく見覚えがある。7年前ときっと同じ設定なのだろう。
しかしあの時は21.1km。今日はその倍を走らねば。





身体は、、、やや重いか。
そして暑い。

加えて、困ったことにふくらはぎと太ももが少し痛い。


スタート間もなくの市街地の歩道をしばらく走り、様子をみてみたものの、なかなか消滅してくれない。
なので商店街に入る前、コース脇に外れてファイテンシールを貼る。

そしてのろのろと走り出す。


今シーズンはカカトの痛みが顕著に出てしまい、中盤から終盤に掛けて満足のいく練習が出来ず、その練習量にやや不安がある。
そのためもちろん、カカトにもファイテンシールを貼ったが、果たしてその痛みはどの程度出てきてしまうか。。。

心配の種は尽きない。

商店街すぐの私設エイド。スタート直後に補給をしたので、これはスルー。
皆生のようにダラけていたら、きっと寄ってただろうなw


一番の盛り上がりをみせるこの商店街、声援に励まされ、県道を進んでゆく。
やはり盛り上がっているのは商店街近辺に集中しており、すぐに静かな街並みを走ることになったけど、まだまだ往路そして復路を行く選手やその応援の人々は多く、これからの長丁場に立ち向かうための勇気を保ち続けることができる。

と、なぜかみんな歩道ではなく道路の脇を走っている。RUNに限らず、原則として大会による車両通行止めはしていない。
そして車両の数は少なめなものの、ゼロではない。ただ、行き交う車両は毎年の事というわけなのだろうか、選手を優先してくれている。

なので自分も車道に出てみる。
…なるほど、確かにこちらのほうが平坦で走りやすい。今日ばかりは少しのワガママを許してもらおう。





民家から延びるホースの水、それが噴水状に撒かれている。加えて希望者には、その住人だろうか、お姉さんが直接これを身体に掛けてくれる。
皆生を彷彿とさせる。

自分はシューズが濡れるのがイヤだったので、スルーさせてもらうことに。


けど、体温は上がっている。噴き出す汗も止まらない。少しは掛けてもらったほうがよかったかな。。。
と、未練を残しつつ先に進むと、都合良く他の民家でも同様のおもてなしをしてくれていたので、今度はこれにあやかる。



公式サイトより拝借


そしてお礼を言って、先に進む。


そういえばここまで距離表示板が無い。まぁ、エイドかその先のキリのいいところに表示板がきっとあるだろう。
まずはそこまで止まらずに進んで、どれ位のタイムが刻めるかを確認しよう。


時刻は15:30を過ぎた頃だが、まだ陽射しは強く、無意識に日陰を探す動きを取る。
しかしこの役目を果たしてくれる民家や樹木はそうそう無く、真正面からこの気候に立ち向かってゆかざるを得ない状況が続く。


汗が流れ続ける。Tシャツの肩をまくる。
容赦無く照り付ける、夏の陽射し。
しかし9月の大地を照らすその光は、まだ真夏のそれよりかは幾分、和らぎのあるものだった。
そのおかげもあり、BIKE直後の「超スローペースでいたい」という誘惑になんとか負けずに進むことができている。




県道を左折し、学校脇に設けられたエイドに到達。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


距離表示は3.4km。この区間のタイムを換算すると、、、1km8分。

…遅い。しかもここまで頑張って歩かずに来ているのに、だ。まぁスタート直後のエイドや、ファイテンシールを貼る時間も考えればまだ辛うじて許容範囲内、と言えなくもないか。。。

この後気温が下がって、少し走りやすくなってタイムが縮まる事を期待したいところだが。。。

が、設定した目標タイムは最初のハーフを1km7分30秒。
我ながらややチャレンジャブルな設定だけど、本当にそれ位のペースで行かないと間に合わないかもしれない。
いつものレースだと、後半を甘く設定して、最後は1km10分の安全策を取っているけど、今回は2周目の前半を8分、そして最後の復路ですら8.5〜9分の設定だ。
そこまでやって、制限時間50分前のゴール。
その許された「50分」のうち、すでに20分をSWIM・BIKEで消費してしまっている。。。
これは最低でもハーフまでは歩かずに行かなければ。でも、過去のロングレースでそれが出来た試しは無い。

BIKE後半、追い風に乗った高速走で払拭しかけた弱気思考が、ここにきてまた追い掛けてくる。。。


エイドの補給もそこそこに、歩を進める。

しばし路地を走る。
その路地には、なぜかクリスマスツリーが電飾スタンバイ。あァ、今日はクリスマスだった。などと独り言を言いながら自分ツッコミして気を紛らわせる。

狭い路地を、ボランティアに誘導させるままに右折。
その先すぐの所にも私設エイドがあった。けど、補給はしたばかりなので軽くお世話になって、すぐに先を目指す。あまり止まってばかりだと皆生ばりに遅くなるからね。


路地を抜け、雑草生い茂る中の道を少し進むと幹線道路に出た。
一面に広がる田園の風景。黄金に輝く稲穂の一帯。



公式サイトより拝借



幹線道路に沿って走る。

ボランティアに誘導されるがままに反対側車線に移動し、道をひたすらに進んでゆく。


往路、復路、行き交う選手たち。
陽射しを遮るものは何も無い。
表情は一様に、みな暑さと疲労で険しくなっている。


何かの工場だろうか、大きな煙突を構えた建物が見える。
…見覚えがある。7年前も、この辺りを走ったのだろう。
毎年かどうか分からないが、少なからずコース変更をしているような印象があったけど、主要なルートは辿るらしい。

懐かしい。

あの時も暑かったな。けど、あの時と今回とでは疲労度も段違いだ。
果たしてこの後、どのくらい粘れるだろうか。


地元企業の駐車場で談笑をしながらも、選手を応援してくれるオッサンたち。
ところどころに点在する、地元住民や選手の仲間たちによる声援。
広大に広がる自然の中、こうして鼓舞してくれるのはありがたい限りだ。


コースは橋を越え、さらに先へと続く。



公式サイトより拝借


その欄干あたりには、地元の子供たちの手によって描かれた横長のぼんぼりが並ぶ。
7年前のレース後、届いた写真集に載っていた幻想的な写真。陽が沈み、夜に差し掛かろうとする時間帯を走る選手、その足元にぼんやりと輝く光はこれだったのか。
光が灯されるのはきっと2周目の往路あたりだろうか。


コースは田園地帯から住宅街に入る。
その面影は7年前のそれとは異なる。
やはり少しコースは違うのだろう。

しかし、それにしても5km表示板が、無い。行けども行けども、無い。


このカーブの先に・・・?


…無い。


すでに40分を過ぎている。
「5km」表示を目にする事を切望しつつも、それと同時に、このペースでまだ5kmしか走れていないのだとしたら、、、タイム的にもヤバい。



公式サイトより拝借




やや焦りつつ歩を進めゆく先、ようやく2つ目のエイドに辿り着いた。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


記載された距離表示を確認。

5.4km地点。
1km8分を辛うじて死守、か。
ちょっとした登りこそ歩いたけど、それ以外は全て走っている。

少しホッとしたものの、ここまで頑張って、これか。。。


ボランティアからスポンジをもらう。この暑さにあって、その手は常に冷水に晒され、白くふやけていた。
ボクらが精一杯闘えるよう、ボランティアも精一杯頑張ってくれている。

スポンジたっぷりに含まれた水を頭から何回もかぶり、アクエリアスを飲みながら手持ちのアミノバイタル、それからエイドのオレンジ、バナナ、梅干しを手当たり次第に口にしてゆく。



公式サイトより拝借


そしてエイドの出口付近で水をもらい、手を洗う。
最後に感謝の言葉を絞り出し、先を目指す。




住宅街の道はしばらく続く。

炎天下は相変わらずだが、わずかの街路樹がわずかの日陰を作り出している。
ちょうど陽射し的に、この往路側がその恩恵をわずかに得られているが、中には復路の選手がこれを求めて、往路側を走ってくることもある。
まぁ、べつに中央に仕分けのコーンがあるわけじゃないし、記録は計測チップがちゃんと測っているし、自分も反対側のエイドのお世話になることもあるしで、別にどうってことは無いが、それだけこの暑さはコタえる、というわけだ。


!!

瞬間、声を掛けられる。


あっ!


同じ部屋の仲間、40代のイケメンさんじゃないか。

復路をすれ違いざまに気付いてくれた。
SWIMが得意、BIKEもT.T.バイクとあって、その装備に見合った順調なタイムを刻めているようだ。
この時間帯で復路なら、だいぶ余裕がありそうだな。
自分も早くそこまで辿り着きたい。



住宅街を進み、交差点を右折する。
その先には広大な田園風景が、一気にその視界を広げさせる。




公式DVDより拝借



コメどころ、新潟。
一面に広がる、黄金の稲穂の絨毯。
遮るものの無い、大パノラマ。

そのど真ん中の道を、多くの選手が行き交ってゆく。


復路を来る頃には、太陽はあの山に沈んでゆくだろうか。
まだしばらくはこの暑さは続きそうだ。

一向に緩まない、強い西陽。一切の逃げ場の無いことを正面から受け止め、ただただその道を進んでゆく。
その歩を緩めることは決して、許されない。




公式サイトより拝借



左足裏に違和感。
早くも靴擦れか?エイドで水が掛かったせいだろうか。たしか皆生のときも中盤あたりで発症したけど、わりと最後のほうまで後を引くことになった。
これ以上進行しないよう、エイドでは気を付けよう。

屁が出る。走るリズムに合わせてブッブッブッ。
屁が出るうちはまだ、お腹が正常機能している証拠、、、だと勝手に自己診断。
屁が出るかな?と思って中身が出そうな気配がしたり、うまく出ていってくれなかったら、ちと怪しい。

なんだかんだでエイドの補給は、量こそ少なめとは言え暴飲暴食に近いものがある。
過去にレース中にもよおした事はないけど、今回ほど時間に追われ、休まらない走りを続けた事もない。
だからそのあたりも気を付けねば。




公式サイトより拝借


田んぼの中、一本道を進む。

往路、復路を絶え間なく選手が黙々と走り続ける。

そんな勇姿を上空から捉えるは、昨今流行りのドローンだ。結構な音がするから、その存在は気付きやすい。
そういえばレースダイジェストDVDを申し込んだんだっけ。
きっと上空からの光景も流れることだろう。
楽しみだ。

けど、それには何としてでもやはり、完走しなければ。


だだっ広い田園はずっと続き、西陽を遮るものは無く、容赦なくボクらを照りつける。
普段だったらその光景に滅入って歩を緩めたり、歩いたりしているはずだ。
けど不思議と、そういった誘惑を我慢できている。もちろん時々は歩こうと思うこともあるけど、粘れている。
きっと、そうしなければ間に合わないという追い詰められた状況、そして最後の1秒まで絶対に諦めないという、昨今まれに見る強い意志が、その歩に力を与えてくれているんだと思う。

意志が備わっているうちはまだ、大丈夫。
まだ何とかいけそうだ。



公式サイトより拝借



ひたすらに続く田園風景に、住宅街の風景が徐々にまぎれてきたあたり、エイドが設置されていた。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


その距離、8.9km地点。
回らない頭を必死に回転させ、ペースを算出する。

…だいたい、キロ7分40秒くらいで走れているかのかな?
よしよし、歩かずに頑張ってきた成果が見えてきた。それでも本来の目標:キロ7分30秒よりは遅いのだけれども。
やはり最低限、ハーフポイントまでは歩かずにいかないとならなそうだ。


スポンジの水を頭からかぶる。
冷たくて気持ちいい。
そして手持ちのアミノバイタルを口にしつつ、コーラを片手に補給食を放り込む。
そして水をもらって手を洗う。
それからエアーサロンパスがあったので、これを吹き掛ける。

ボランティアに激励され、礼を言って先を目指す。


もうあと2kmもしないうちに、折り返し地点に辿り着ける。
そこである程度正確なラップが分かるだろう。
それに、気分的にもだいぶラクになるはずだ。




公式DVDより拝借




田園地帯の先、交差点を左折。

徐々に市街地の様相を呈してくる。



公式サイトより拝借


おや、この風景、、、何となく見覚えがある。7年前のコースに合流したようだ。
いや、「合流」なのかどうかはすっかり忘れてしまったけど。

とすると、、、この先にアップダウンがあったっけ。


記憶を巡らせながら、他の選手にならって車道の端っこを走る。
車の往来はあるけど、その量は少なく、特に家族連れの場合は子どもたちが声援を送ってくれることもある。


正面から受けていた陽射しは背中からとなり、そして陽の傾き、住宅、街路樹の効果もあり、だいぶラクになってきた。

軽い登り坂。
ここにきての登りはなかなかキツいものがある。が、いつもなら歩くかもしれないその傾斜は決して走れないほどのモノではない。スピードは落としつつも、ここは頑張って、走る。


本日休業の札を掛けた温泉施設。
そういえば選手受付の書類一式の中にいくつか割引券があったけど、その対象施設にこれがあったような、無いような。
なんか、ボクらレースのために休業にさせてしまって悪いね。。。


沿道の応援は少しずつ増えてきたようだ。

コースは一直線に伸び、下の先に交差点、そして登り坂が見える。
その傾斜はそれなりにキツそうだけど、選手を励ます応援の人々の姿もその坂に沿って多くいるようだ。


道を下って、交差点を通過してその坂に差し掛かる。
遠くから見えた傾斜よりは、目の錯覚からそこまでひどくは無かったけど、かと言って走るほど余裕は無さそうだ。恐らくは、コース一番の斜度を無理せず歩いて進む。
沿道の人々の中にはベビーカー連れの人もいて、そのメーカーはウチのと同じもののようだ。
ヨメさんと娘は今頃、何をしているだろう。

しばし、長めのこの坂を歩く。
歩くだけでもなかなかキツい。ハーフポイントまでをキロ7分30秒で走らなければならない状況にあって、この坂はなかなか厳しいものがある。。。
いったいどれくらいの距離があるだろうか。さすがにこのままずっと歩き続けるわけにはいかない。。。


車のディーラー屋さんの脇で無邪気に遊ぶ子どもたち。
そしてその先に、何やら応援の立て看板が。

「この坂の先にエイドと新しい自分が待っている。登り150m、エイドまで500m」

思わず笑ってしまった。
こういうシャレの効いた応援メッセージもまた、気分転換になってありがたい。

あと150mか。
もう50mを歩いたら、そこから走ろう。

幸い、次第に傾斜も緩くなり、ようやくこれを登りきる。


そこから先、あと350mは短いようで意外と距離があり、なかなか折り返し地点に辿り着かない。
けど、この一帯の中ではそこそこ店舗が連なる市街地のようで、声援も多く、励みになる。





前方で、誘導員が左折を促している姿が見える。
どうやらあそこが折り返し地点のようだ。

やっと辿り着いた。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


誘導されるがままに左折すると、そこにはひときわ開けた空間と、エイドで賑わう光景が広がっていた。

ふぅ。ひとまず着いたか。


距離表示板を見つける。その距離、10.5km・・・ではなく10km?!



公式サイトより拝借


まじか。
スタートからだいたい81分。という事は、キロ8分ペースか。。。

折り返しコーンをぐるりと囲うように、エイドのテントが並んでいる。
いつものように、手持ちのアミノバイタルを口にしてアクエリアスで流し込み、それからオレンジ、レモン、バナナ、スイカ、梅干しを手当たり次第に放り込む。
それから塩の山に小さいおにぎりをたっぷりまぶして口にして、、、って、これはさすがに塩を付け過ぎたかw



公式サイトより拝借


水をもらって口の中の調整をして、手を洗って。
それから鼻のブリーズライトが剥がれかけていたので、ここで貼り替える。
エアーサロンパスの在庫がまだあったので、これを念入りに吹き掛ける。

トイレはどうだろう?
トイレはまだ、大丈夫そうだ。

お礼を言って、復路を目指す。



さて、ここまでのコースを振り返って、その印象はどうだろう。

序盤は平地の市街地、それから田園地帯、住宅街を走り、再びの田園地帯をひたすら進む。
それが終わったら市街地の軽いアップダウン。最後にキツい登りがあって、少し走れば中間地点だ。

基本、登りは歩きだけど、ラスト以外は比較的短め。
だからここまで普段はあまり見せない「走り続ける」が出来ているけど、ラストの坂が復路は下りになるぶん、まだ何とかこれを維持できるかもしれない。
制限タイムも差し迫ってきている。実際に設定された関門時間の波に追われるのは2周目に入ってからだけど、復路の目標ペースが依然、キロ7分30秒である限り、むしろ歩かずに走り続けることが最低限必要なペースのようだ。。。



市街地を走り、もと来た道を巻き戻してゆく。

すれ違う選手、その表情はみなキツそうだ。



公式サイトより拝借


傾斜キツめの下り坂、これを重力に任せて走るとヒザに負担が掛かり過ぎるので、やや抑え気味に進む。
往路を苦しめられたこの坂も、復路であれば唯一のアドバンテージとなる。その差は微々たるものとは思うけど、タイム短縮にわずかな期待を寄せてしまうのは、それだけ余裕が無いことの裏返しと言えよう。


下りきって、また少し登って。
7年前のB-TYPE参戦時、折り返し地点直前で再会した相部屋仲間に触発され、最後まで頑張って走りきったっけ。
あの時の復路の登りもキツく感じたけど、それよりも強い意思を備えてこれを乗り切った。

あの時は暑かった。
けど、楽しかった。

今はあの時ほど速くは走れないし、時間的余裕も無い。
けど、今はあの時の自分の背中を追い掛けるように、先を目指してただ突き進むだけだ。


ひたすら長く感じた往路と違って、不思議と復路は短く感じることはよくある事だけど、今回は果たしてどうだろうか。
とりあえずの市街地は抜け、これを右折。
カーブはできるだけ最短距離を走る。1分1秒が惜しい。



田園地帯まで戻ってきた。

おや。往路側の角の民家に、スイカが切って置かれている。きっと家主が提供してくれているのだろう。
けど、本人がいないためか、無断で食べるわけにはいかないと遠慮しているのか、誰も食べていかないようだ。
まぁエイドも近いせいもあるかもね。

その気持ちだけありがたくいただいて、今は復路を突き進むことだけに集中する。




そして間もなくのエイド到着。その距離表示は、、、13.4km?もうそんなに来たか?



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やはり、折り返し地点は10kmよりももう少しある気がする。
いずれにせよ、もし13.4km表示が正しいのではあれば、キロ8分よりは若干マシなはず。
だから、まだ望みはある。

いつもの補給のほか、エアーサロンパスをかなりしっかりと塗布する。ヒザ裏あたりが少し痛み出したけど、ファイテンシールを貼るタイミングを逸したので、エアーサロンパスで代用。各エイドの在庫もまずまずで、とりあえず今の所はこれで凌げそうだ。

多くのレースでは、たいてい自分が来る頃には在庫切れになっている事が多い。これも、スポンサーの多い佐渡大会ならではの効果か。ありがたや。


手短に補給を済ませ、前に進む。

広大に広がる田園風景、これをただただ前進あるのみ。




公式DVDより拝借



往路で見掛けたドローンはもういない。場所を移したか、それともこのエリアは撤収なのだろうか。

交通整理の誘導員に従い、右折してゆく。



陽は次第に傾き、遠くの山の陰に少しずつ、落ちてゆく。

日差しが徐々に和らいでくる。
この後、気温はどれくらい下がるだろうか。
下がるのは歓迎だけど、下がり過ぎて寒さを感じるのは、それはそれであまり好ましくない。あの皆生ですら、終盤やや寒さを感じることもあったくらいだ。幸い、それは一時的な感覚だったけど。

ただ今回ばかりは、まだまだ夏の季節なのだろうか、もうしばらくは明るさと暑さを保っていそうな雰囲気だ。


肩、背中、ヒザ、ふくらはぎに貼ったニューハレVテープ。
そのうち肩のそれが剥がれてきてしまった。
まくったTシャツの肩の部分に剥がれた箇所を入れて抑える。
もしそれでもダメだったら、途中で剥がしてしまおう。


身体の節々が痛む。

娘をあやす言葉を真似て「いたいのいたいのお空に飛んでけ〜」とおまじないをすると、不思議と?痛みが和らぐ気がする。
疲れが溜まって、脳みそも3歳児化しているらしい。


暑いし痛いし苦しいし、でも歩いている余裕が無い。もうやめたい?200km以上走ってきて、いや今年1年掛けて、どれだけ走ってきたと思ってるんだ?あとたった30km弱じゃないか。

今、何をしたい?冷たいプールに入りたい?ベッドに横たわりたい?アイスを食べたい?
もう少しガマンして、そのあと好きなだけやればいいじゃないか。今この瞬間をラクしたいからそういう思考になるだけで、終わったら終わったで100%「またやりたい」って思うのだから、今は我慢しろ。

最後の最後まで絶対に諦めない。諦めたくない。ここまで来たんだ。また1年練習して、エントリーして、宿の争奪戦をして、たくさんお金を掛けて、、、ヨメさんや娘と遊ぶ時間を削って、また最初に戻されてやり直すなんて事はごめんだ。

そうだ、もしまた走るとしたら、程良い長さの皆生に、今度はヨメさんと娘を連れて行きたいな。観光地もいろいろあるから、北海道のときのように退屈させずに済むだろうし、今度こそ記録を意識した走りをしたいし、まだ3人でゴールする夢を叶えていないし。

そのためにも、このレース絶対に落とすわけにはいかない!


自分を鼓舞しながら田園地帯を走り続けてゆく。



公式DVDより拝借



広大な田園地帯を、手頃な選手をペースメーカーにひたすら走り続ける。
RUNスタートから走り続けただけに、さすがに復路は歩きたくなる誘惑に駆られるけど、そこはペースメーカーの背中だけを見て、なんとか頑張る。



しばらく続けているうちに、またそのペースで走り続けられるようになり、歩かずに踏ん張ることができる。
気温が下がってきたことも大きい。汗はとどまること無く流れ続けるけど、歩の進みを妨げる暑さはだいぶ和らいだ。



田園風景の先に民家が現れ、その先の交差点を左折する。
そのカーブ、最短距離をゆく。



公式サイトより拝借


そしてくねくねした道をひとつ、ふたつ行くと、、、


エイドだ。距離にして16kmジャスト。



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コーラもしくはアクエリアスを片手にバナナやオレンジやレモン、それからスイカ、あと梅干と、時々おにぎりを少量ずつ。
それから手を洗い流したり、手持ちのアミノバイタルを飲むために水をもらう。

すっかりルーチンワーク化した感があるけど、それ以外のパターンがあまり無い、というだけの事かもしれない。

そういえば、けっこう水分を摂っている割に、トイレはまだ大丈夫だ。
そしてここでもエアーサロンパスのお世話になる。スプレー缶の残量は少ないながらも、都度補充してくれているのかもしれない。

頼れるものは何でも利用して、力の限り前に進む。最後まで諦めない、最後まで油断しない。

お礼を言って、先を目指す。


ハーフポイントまであと、5km。



くねくね道を進み、ぼんぼりの置かれた橋へと戻ってくる。
往路はまだ明るかったためその灯は消えていたが、復路にきて、ぼんやりと光を放つようになった。

橋の登りは短いが、やや傾斜がある。
傾斜を理由に、ちょっとだけ歩く。

そして登りきるあたり、「よし、歩いた」とけじめを付けて、すぐに走りを再開する。


若干の交通量のある幹線道路を誘導員が交通整理し、選手を導いてくれる。
その誘導に沿って道を右折し、歩道を走る。


大きな工場、その近辺に点在する施設。
その駐車場でなにやら審判員とその仲間たちが談笑している。
レースチームのうち何人かが参加し、何人かが審判員、そしてそれ以外のメンバーは選手の応援、といったところだろうか。


今シーズン初め、自分も3級審判員の資格を取得した。
筆記試験は特に無く、講習を受ければほとんど自動的に取れる、というものだ。
資格そのものへの興味もさることながら、審判員としての目線からレースがどう見えるか。そして何かレースに役立つことがあるだろうか。そう思っての受講だったが、さすがにこれだけ大小のレースに参加しているだけに、それほど大きな収穫は無かった。

ただ、いかに選手が安全に、公平・公正に、気持ちよく参加してもらえるか。そしてボランティアや声援を送る人たちにも、いかに楽しんでもらえるか。

そして何より、審判員その人自身も紛れも無くこの競技が好きで、自主的に審判員として参加しているかが少し分かった気がする。
オフィシャルシャツにキャップだけでなく、IDカードホルダーや笛といった小物まで全てが自腹による購入。

レースによってはわずかの日当や宿泊支援があるが、基本的には弁当が支給される程度で、そのほとんどはボランティアとなんら変わらない処遇だ。
それでも多くの審判員が集い、笑顔でボクらの安全を支えてくれている。

やはり、講習会に参加してよかった。


いつかは支える側に立ってみるのも悪くない。
そう思いつつ、今は目の前のレースを完走すべく、必死に前に進む。



歩く選手、追い抜いてゆく選手。

その数はまばらだけど、周回コースということもあって、前後にはまだまだいる。
タイムに追われつつも、まだ冷静でいられるのはそういった安心感によるものもあるのかもしれない。


幹線道路をしばし直進、そして左折して路地へと入ってゆく。
ここまで戻ってくれば、あとは何となく距離感が分かる。



公式サイトより拝借


狭い路地を選手が行き交う。
その脇には小さなライトが連なっている。すぐ脇が畑の段差だから、選手の安全を考え、もう少し暗くなったら点灯するのだろう。
選手の安全といえば、暗くなったら反射タスキを渡させるらしい。皆生でもそうだったけど、果たして今回はどの辺りで受け取ることになるだろうか。


路地から民家の道へと続き、私設エイドを経てクリスマスツリーの電飾路を走る。
電飾はまだ点いていなかったけど、2周目の往復路いずれかでそのイルミネーションを見られることだろう。




その先を右折して間もなく。
小学校前のエイドまで戻ってきた。



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その距離表示は、、、18.3km。イヤミkmか。覚えやすいな。おフランス帰りザンスね。
制限時刻の記載もある。

21時10分。
レースリミット、21時30分。

2周目復路にして、残り3km弱を20分で走るのはかなりキツい。だから、どんなに遅くてもここに21時ジャストまでには辿り着いておきたい。


手早く補給、そしてエアーサロンパスを吹き掛け、1周目のゴールを目指す。



市街地を走る。ほぼ一直線の道を、これから2周目に挑む選手たちとすれ違ってゆく。

肩のニューハレVテープの剥がれっぷりはそろそろ限界か。
ちょうどゴミ箱付近に、選手が捨てていったスポンジやら何やらがまとめられていたので、思い切ってこれを剥がして捨てることに。

沿道の声援が増えてくる。
時おり抜かれる車両に気を付けつつ、車道の脇を走る。


意外とこの直線、長い。
けど、登り以外を歩かずに頑張ったおかげで、ハーフ地点までは何とか1km8分切りができそうだ。



遠く、ひときわ賑やかな声が聞こえてきた。

スピーカーから流れる音楽と実況のそれは、商店街の有志が、オフィシャルの実況とはまた違った盛り上げをしているようだ。
そう言えば7年前もそうだったっけかな。
やはり賑やかななのは、良い。


実況席は商店街の入り口にあったようだ。そのおにーさんに「1周目?2周目?」と聞かれる。ここは元気良く、自分を鼓舞する意味でも元気良く周回数を伝える。

激励の言葉をもらい、商店街を抜けて、いよいよハーフ地点へ向かう。


その狭い道、すでに完走した選手が引き揚げてゆく。そのうち何人から激励の言葉を掛けてもらう。

すぐ左隣には栄光のフィニッシュエリア。
華やかな光景、賑やかなMCと音楽、光り輝くライトに照らされ、一人、また一人フィニッシュを迎える選手の姿をそのフェンス越しに目撃する。


自分もあと3時間強。あと3時間ちょい頑張れば、念願を果たすことができる。

まだ時間はある。必ずやり遂げる!



強い決意を胸に、まずはハーフ計測ラインを通過してゆく。



(C)Geoscience, NTT DATA, RESTEC /Included(C)JAXA


時刻、18時06分。
ペース、1km8分弱。

意外と早く戻ってくる事ができた。


ロングレースでここまでを基本、歩かずに走れた自分を褒めつつもしかし、本来はこの後のペースが1km8分設定だし、さすがにこのまま2周目も歩かずに行く自信は無い。

意外と頑張れた1周目に安堵しつつも、引き続き厳しい闘いが続くことには変わらない。



回らないアタマで必死に計算する。

1km9分ペースで21時15分のゴール。
わずかに15分前というのはギリギリ過ぎるけど、先の見えなかった1周目と違って、ようやく完走が見えてきた。

いや、むしろ「完走は絶対条件」だ。
それよりも、1周目がいつものようにダレていたら、それすら叶わなかったかもしれないという事実に、やや焦る。

高いカネを払って、宿の争奪戦をして、、、いや、7年間掛けて挑むその集大成を落とすなんてことは、死んでも許されない。

あと3時間頑張るのか、それともまた7年間の月日を掛けるのか、どちらがいいか選ぶとしたら、、、答えは明白だ。


無い知恵を絞って、現実的なペースを算出して、、、そして許された時間を目いっぱい使って、絶対に完走を、する!




2周目。


陽はすっかり落ち、気温もだいぶ和らいだ。けど、汗が止まることは無い。Tシャツタイプではなくタンクトップにすればよかったか。
けど、当初はむしろ寒さを警戒していたくらいだし、肩をまくってもそんなに苦にならないから、ひとまずこの判断は大丈夫そうだ。

屈伸やアキレス腱伸ばし等のストレッチは、何となくしないようにしている。たぶん身体的にはやったほうが間違いなく良いんだろうけど、それをすることで部分部分の痛みや疲労が身体全体に広がるような気がしたから、もうしばらくの時間、身体をダマすためにも、現状維持で。


ハーフポイントのエイドを済ませる。

先を急ぎたいが、トイレには寄っておく。



さぁ、2周目頑張ろう。


1周目に通った道と同じところをまた走るのは、精神的にも若干キツいものがある。
けど、夕暮れの景色がそこそこ新鮮で、そこそこ気分転換になる。



公式DVDより拝借



それに気温が下がってきてくれたのはかなり大きい。
疲労による歩きは増えるだろうけど、暑さによるペースダウンと差し引けば、そこまで大きくは崩れないはずだ。

ただ、過去のレースではたいてい、どこかしらで「あとは全部歩いてもゴールできる」と確信できるタイミングを迎えることができていたけど、さすがに今回はそれはかなり厳しいかもしれない。

ペースはもちろんだけど、ここまで大人しくしてくれていたヒザやカカトの痛みがこの後どう爆発するか、まったく読めないからだ。
だから、仮に安全圏内にまで行けたとしても、決して最後まで油断はできない。



2周目、商店街までの最初の道。
先行きに不安を感じた1周目とはまた違った境遇にあるけど、1周目よりは身体が動くようだ。
そのペースは比較してどうかは定かでは無いけれど、走れる限りは走れるところまで走り続けてみよう。


商店街に入り、私設エイドで水だけを軽く頂戴する。

賑やかな商店街を抜け、まずは小学校までの直線を進んでゆく。

1周目で目にした光景が飛び込んできては、これを通過してゆく。
けど、そのスピードは遅い。
もうそろそろあのポイントを過ぎるだろう、と予想をしてから実際に通過するまでの時間が、長い。

やはりペースは落ちているのだろう。

具体的なペースは、次のエイドで確かめてみよう。


夕暮れの街並み、選手の足音と息遣いだけが聞こえる中を、往路、復路の選手がそれぞれの目的地を目指して邁進する。



しばらく走り続け、ようやく前方に左折を促す交通整理の誘導員の姿が見えてきた。
手持ちの赤ランプ、その光が遠くから見えるぶん、やはりそこに辿り着くまで時間が掛かる気がしてしまう。


左折して小学校前のエイド。
おや、校庭に設置されたイルミネーションが光ってる。
その光とともに、エイドのテントも自家発電で賑やかに光っている。

軽く補給。陽はほとんど暮れたが、まだまだ暑い。
さすがに頭から水を掛けなくても済むようになってきたけど、水分補給はしっかりしておいたほうが良さそうだ。


そして路地を進む。

左折して民家の道をゆく。

クリスマスツリーのイルミネーションが光る。


今と真反対の季節、その頃になったら娘を連れてまたスキーに行きたいな。
その格好、その寒さは今のこの状況からは想像も付かない別世界だけど、気分的に少しラクな感じになった。


しかしそれも一瞬のこと、すぐに現実に対峙する。

私設エイドでキュウリをかじって、先を目指す。


その歩は徐々に重くなり、歩く頻度も増えてきた。さすがにここまで来て、この先も走り続けるのは厳しくなってきたか。。。


狭い路地を照らす小さな灯りに導かれ、右折、左折を経て幹線道路に出る。


ひとつめの田園地帯そして、巨大な煙突を構える工場を目指す。


ここから先はまだまだ長い。



公式DVDより拝借



ここからのプランはどうしようか。

気温が下がってきて、アタマも少しずつ回るようになってきた。

1周目のペースはなんとなく分かった。だから、そのペースにプラスして「10km区間で10分ぶんを余計に歩ける≒1km9分ペース」という考え方はどうだろう。
1km平均にすれば1分多く費やせる。

ただ、できればラスト10kmはトラブルに備えて、1km10分ペースを残したい。
そのためには、折り返しポイントには19時30分には着いておきたい。


プランは決まった。
あとはここから逆算しながら、少し歩く頻度を増やしつつ。けど少し歩いたらまたすぐ走り出して、まずは折り返し地点、いや、次のエイドを目指す。



時々あるアップダウンも、登りを堂々と歩く。そして登りきったら1周目と同じく「よし、歩いた」と言って、自分を走らせる。


街灯が灯る。スズムシの奏でる音がよく聴こえる。

かなり暗くなってきた。ふと見ると、往路・復路ともに反射タスキを掛ける選手の姿を多く目にするようになってきた。
たぶん次のエイドあたりで渡されるのかな・・・などと思っていたら、この幹線道路の途中で審判員からこれを渡された。

激励の言葉を掛けてもらい、お礼を言いつつ、これをタスキ掛けする。

その掛け方はもちろん、皆生の時と同じく、ゼッケンが写真撮影用に隠れないように取り付けるw
っと、その端っこはマジックテープ式では無く、しっかり縫われているようだ。
なので歩を緩めつつ、ゼッケンの安全ピンを一部外し、その裏側を通してまた安全ピンを取り付ける。

これでバッチリw



目印の煙突工場を過ぎ、橋を渡る。


島のみんなが作ってくれたぼんぼりに灯りがともる。



公式DVDより拝借


7年前のレース後に届いた公式写真集に載っていた、トワイライトの田園を走る一人の選手、その足元にひっそりと輝くぼんぼり。
日中のレースに終始したB-TYPEからは想像も付かなかった、幻想的な夕闇の世界。


その空には星が輝き出し、その大地を一歩一歩、確実に踏み進む。



住宅街に入る。

街灯があまり無い、暗い道。
1周目のような暑さと、1周目のような多くの選手の喧騒は無い。

静かな闇をひたすら、次のエイドが目に飛び込んでくるのをひたすら期待しつつ、歩を進める。



くねくね曲がる道。
あのカーブの先に。
あの輝く光がきっと。

…しかし、その期待とは裏腹に、お目当ての光景はなかなかやってこない。


この先か?…いや、これも違った。。。
あのエイドは何キロ地点だったっけ…。

タイムは、ペースは大丈夫だろうか。
1周目よりも徒歩頻度は上がっているけど、作戦を立てたその許容範囲から大きくは外れていないはず。
けど、さすがにそろそろ辿り着かないとマズいかもしれない。。。


あ、あった。距離にして5.4km地点か。。。

タイムは、、、あれ、ホントに1km9分ペースか。そこまで歩いていないつもりだったけど、そもそもの走るスピード自体が遅かったか?
ここまで同じくらいの選手をペースメーカーにして走ることもあったけど、むしろ遅い方に引っ張られていたのかもしれない。
まだまだ全然安心できない、、、というか、なかなかピンチから脱出できない。


すっかり暗くなった夜道に煌々と輝く、憩いのひととき。
いつもの組み合わせで腹ごしらえをし、エアーサロンパスを丹念に吹き掛けて。

そしてお礼を言って先を目指す。



残り距離は15kmほど。

仕事終わりの通勤RUNは今年はあまりできなかったけど、距離はあれとだいたい同じくらいだ。
けど、この後の田園地帯、市街地、登り坂を思い返すと、どうしても「あと15km」ではなく「まだ15kmも」と感じてしまう。


根性根性ド根性。娘が実写版ド根性ガエルが好きで、昨年シャンプー嫌いに陥った時期も自分で「きいろいカエルさんだから、どこんじょうでがんばった」なんて事を言っていた。
それを真似しながら、おとーちゃんも根性で頑張る。



広大な田園地帯、星降る空、そして輝く三日月に照らされ、田舎道をただひたすらに走り続ける。

気温は落ち、だいぶ走りやすくなった。
心配だった寒さも無い。むしろ汗がしたたり落ち続けている。

ここまで、袖をまくって走り続けてきたが、これをいったん戻してみる。

…汗で重い。
まぁ、べつに寒くもなんともないので、また元に戻す。


相部屋の阿部寛似のおっさん、この辺りは真っ暗で淋しい、なんて事を言っていた。

けど、去年の北海道の湖畔ほどでは無い。
それに開けた空間そして往復コースゆえ、その数は少ないながらも、まだまだ周りには選手がたくさんいる。
だから淋しさは微塵も感じることは無く、むしろ静寂な空間にあって、輝く星空に心を踊らせるような感覚さえあった。



わずかな街灯、自家発電のライトに導かれ、道を右へ、左へ。
その灯りに群がる、おびただしい数の虫。まるでその一帯だけが雨に降られているかのような、大群。


交通規制のボランディアが進むべき道を導く。


1周目にドローンが飛んでいたエリア。
さすがにこの暗さでの空撮はもう無理か。



静寂。



そこにあるは、大地の恵みを受けた稲穂、選手を照らす月と星、そして最も原始的な手段で、本能の赴くままに前進するアスリート。



無心。


行けども行けども同じ光景の広がる闇の世界を突き進むうちに至る、無心の境地。


ふとその視界に宿る、ぼんやりとした光の集まり。

次第にその光は大きくなり、長い長い旅路を経てきた選手を優しく迎え入れる。


8.9km地点、エイドステーション。
ふと、息をはく。


安堵。


広大な田んぼの真っ只中にあって、その補給食はまだまだ多く振る舞われている。
ありがたいこと、この上ない。

軽く会話を交わしつつ、必要なぶんだけを口にする。




公式DVDより拝借




少しトイレに行きたくなってきたか。お腹の調子がちょっと怪しいようだ。
ただ、残念ながらここにはトイレが無い。

けど、まだ大丈夫そうだ。たしか折り返し地点にあったから、そこまで頑張ろう。

ボランティアにお礼を言って、次を目指す。



エイド少し先の交差点。
その手前の民家に置かれたスイカは、どうもあまり消費されていないようだ。
いや、入れ替えたりしているのかな?
ただ、人の気配は無さそうだ。



交差点を最短距離で左折し、一直線の道を進む。

ほとんどの選手が車道の脇を走る。
歩道は意外とデコボコしていたり、段差があるからこの暗さではかえって危ないかもしれない。
時折追い抜いてゆく車のヘッドライトに道を照らしてもらいながら、その重い歩を少しずつ前に運んでゆく。


前方からのハイビームが眩しい。

対向車からの光がゆっくりと近付き、そして通り過ぎてゆく。

その後に訪れる、闇。



ふと空を見上げる。


満天の星空。

その数はむしろ、田園地帯よりも多く、高く、広く。


不思議だ。
広大な田園地帯では意外と、地上の光が周囲から周囲へと拡散しているのかもしれない。
左右を民家が連ねているとはいえ、灯らぬ明かりのおかげで、こちらのほうが夜空をよりはっきり観ることができるのだろうか。


人類が文明を営むその遥かな太古より、永遠ともいえる輝きを放つ無数の星々。

それが帯のように集まり、いっそうの輝きをみせる天空の大河。



天の川。



かつて毎年のように訪れた、夏の富士山麓、家族旅行。

深い森から見上げる広大な空、星の数々、そして天の川。


小学生の脳裏に強烈に刻まれた光景、記憶、想い出と邂逅する、30年の月日。


画像提供:佐渡の旅館 ご縁の宿伊藤屋




歳と場所と時空を超えて再び繋がるその空をしばし見上げながら、現行世界の目的地を目指し、邁進する。


2周目ハーフポイントまであと、もう少し。




走りと徒歩を繰り返しつつも、ようやく“あの”登り坂までやってきた。

ここはさすがに1周目と同じく、歩いて登る。


車のディーラー屋はまだ灯りが点いているものの、さすがに子供たちは飽きたのか、そこに姿は無かった。

そしてその先の、例の看板周りにも人影は無かったけど、そのメッセージは相変わらずニヤリとしてしまう。

言葉の後押しを受け、登りきる少し手前でまた走り出す。

折り返し地点まであと、500m。



すっかり人影の落ち着いた市街地。
わずかな人々と、交通整理のボランティアに見守られながら、黙々と距離を消化する。


坂を登りきってから折り返し地点までか、やはり距離を感じてしまう。
目標の19時30分はどうやらオーバーしてしまいそうだ。
けど、このまま行けば35分頃には辿り着けそうだから、無理に飛ばす必要も無さそうだ。


ウオッチとややにらめっこをしつつも、しばし走り続けた先に、ようやく赤いランプを灯す誘導員の姿が見えてきた。

安心したのか、ペースがやや緩む。


促されるままに左折、計測ライン通過、ようやくの折り返し地点到達。

19時35分。
なんとか許容範囲の走りができた。


椅子に座らせてもらい、エアーサロンパスを念入りに吹き掛ける。


ふと、隣のテントに目をやる。
選手が横たわっている。

…熱中症だろうか。
そういえば時々、救急車のサイレンが聞こえたけど、あれはやはり選手の応対をするための音だったのだろうか。


みんな、限界ギリギリの世界で闘っている。

願わくば、一人でも多くの選手に完走を果たしてもらいたい。



気温はだいぶ下がったけど、まだまだ暑い。
汗は留まることが無い。
人の心配をするほどの余裕はあまり無いが、反面教師にして水分補給と体温管理は最後まで油断しないようにしなければ。


アクエリアスを片手に、各種フルーツを少しずつ、しかし手当たり次第に口に放り込む。
それから小さなおにぎりを、塩をたっぷり付けて食べる。




公式DVDより拝借




…もう1個いける?もう1個いこうか。
梅干と一緒にこれをいただく。


コメどころ、新潟の米はきっと美味しいのだろう。
けど、とてもその味を楽しむ余裕と味覚が無い。


「胃薬あります?」と尋ねる隣の選手。残念ながらその用意は無かったようだ。
個人的に正露丸は常備していたけど、なるほど確かにこれだけの闘いを繰り広げるにあたって、胃薬の準備もしておいたほうが良さそうだ。
次のレースではそのあたりの準備もすることにしよう。


と、先のことよりも、今。
トイレはどうしようか。

出そうと思えば出るし、ガマンできなくもない。
仮設トイレは3基あったけど、たまたま全部埋まっていたのもあり、とりあえずスルーすることにしてみよう。


最後にエイドの水をもらって口をゆすぎ、手を洗って、最後の復路に備える。


残り、10km少々。
残された時間、1時間50分。

キロ10分でも、辛うじて完走できそうだ。
ただ、2周目はエイドごとに関門が設けられている。
ギリギリの走りではうっかり足をすくわれるかもしれない。

復路の関門時間は手持ちの用紙にメモってあるけど、キロ何分で行けば通過できるか、なんて計算はアタマが回らなくて出来ない。
それよりも、最後まで走れる限り、走り続けよう。


長かった闘いも残すことろ、あと10kmと少し。


さぁ、帰ろう、ゴールまで!




市街地を走り、坂道を下ってゆく。

星空に見守られながら、元来た道を戻ってゆく。


走っては歩き、けどその時間もわずかに抑え、またすぐに走り出す。


ふと、道路脇で座り込んで、ボランティアか地元住民かに話しかけられている選手の姿が目に入る。
もしこれが2周目なら、まだ間に合う。

せっかく13時間以上掛けて、ここまで辿り着いたんだ。
最後まで諦めずに、お互い頑張りたい。


前後そして往路をゆく選手の数は少ないながらも、みな必死にそれぞれの目的地を目指して走り、そして歩いている。
その足取りはみな、重い。

自分も歩く頻度はだいぶ増えてきたけど、それでも過去のロングレースのどれよりもその徒歩時間は短いはずだ。

けど、手応えに反し、なかなかタイムが付いてきてくれない。
残り10kmにきてようやく、キロ10分ペースが許される範疇に入ってきたとはいえ、そのペースに甘んじると、もし不測の事態が起きたとき、これをカバーするのは難しいだろう。
だから時間に追われる感覚からの脱出は最後のほうまでおあずけになりそうだ。


身体も満身創痍だ。そしてヒザやカカトが痛む。
が、ここは「いたいのいたいのお空に飛んでけ〜」作戦で頑張る。



交差点を誘導するボランティア、その最短距離を通って右折。田園地帯に入る。

そして間もなくのエイド、その往路側ではタイムを示す電光掲示板カーやオフィシャル審判らがスタンバっている。




公式DVDより拝借



徐々に制限時間の波が迫ってきている。
自分はようやく、そこそこ安全な時間帯まで逃げることが出来てきたけど、まだまだギリギリで闘っている選手は多いことだろう。


かつてTV番組で「あれっ?」というタイミングで関門に阻まれた選手の姿を目にした。
あの光景だけはなんとしても避けなければ。

このままあと1時間と少し、このままもう少し、頑張ってくれ、俺の身体っ…!


補給とエアーサロンパス塗布を済ませ、ボランティアにお礼を言って、真っ暗な田園地帯を突き進む。



まだ選手は前後にパラパラといるので、その速さを観察しつつ、抜いていった選手にめぼしを付け、しばらく追い掛けてみる。

速すぎず、遅すぎることもない。
この人ならペースメーカーにして大丈夫だろう。


景色も何もない中、何も考えずに走れるのは心強い。
ただただ前の選手を頼りに、暗闇を走ってゆく。


と、残念ながら足が少し痛みだしてきた。
ここは無理せずに離脱、そしてしばし歩く。

だいぶ稼げたと思うから、焦らなくて大丈夫。


そしてまた手頃な選手が見つかるまで、ひとり走り続ける。



前方に、何やら緑色の発光物体がフラフラ飛んでいる。

近付くと、、、すでに完走した選手か、もしくは選手の仲間らしき人物がBIKEに乗って、復路を進む選手と並走している。
光源は、そのBIKEに取り付けられたライトによるもののようだ。

仲間と走ることであの選手の気は紛れるだろうけど、もしかすると気を張り詰めて頑張っているのかもしれない。
併走することで、その緊張がどこかで切れないだろうか、などと勝手に心配する。


淡く光る緑のライトはこの暗闇にあって、かなり目立つ存在だ。ただ暗いとは言っても、北海道のときのような漆黒の闇、というわけでもない。

木々に覆われた洞爺湖の湖畔、ぼんやりと光る赤い三角コーン、足元すらロクに見えない闇夜と違ってこちらは、開かれた田園風景、輝く月と星の輝き、遠くの街並み、自家発電機の灯り。

行く先の道が見渡せることが、その距離の長さを感じさせることもあるけれど、2周目復路ともなれば、あともう少しの辛抱で念願の場に辿り着ける、という気持ちの方が勝(まさ)っている。



往来する選手たちのシルエット、その往路を来る選手の姿は見えなくなった。いよいよ制限時間の波に飲まれたか。
ひしひしと迫り来る関門の存在を再認識しつつ、けどこのままのペースで行ければ間に合う、という確信と自信を伴って、小さな歩、その一歩一歩を積み重ねてゆく。


交通整理のボランティア、この復路にあって、警察官に役割が交代していたようだ。
見守られつつ、これを右折してゆく。


あれほど暑く、明るかった1周目往路とは違い、暗い夜道をひたすら道なりに進んでゆく。

あのカーブを曲がれば、あともう少しでくねくね道の住宅街に戻るはず。
そこにはエイドがあるから、そこまで歩かずに頑張ろう。


目標ポイントを細かく刻んでは、走る動機付けを探し、これを実行する。

けど、疲労に負けて歩くこともしばしば。
でも大丈夫。キロ10分さえ超えなければ、今のペースならいけるはずだ。



走りと歩きを繰り返しつつ、田園地帯を抜け、住宅街へと入ってゆく。

交差点を最短距離で左折し、少し行くと、、、見えた。エイドステーションだ。

その光景を見て気が緩み、歩きそうになるけど、「あのテントに辿り着けば止まれるから、あそこまで歩かずに頑張れ!」と、自分に発破を掛ける。



そして到着。

時刻、20時20分。




公式DVDより拝借



あと5.6km。
21時30分の制限時刻まで70分残すことができた。
ここにきて、ようやく少しばかりの安堵。


補給を進めているうち、隣の選手がボランティアに「今何時ですか?」と尋ねていたので、自分がこれを即答。そして1km10分で間に合うことも伝える。

その伝えるテンション、なぜか高め。
たぶん、その言葉は自分にも向けたものだったのだろう。


健闘を誓い合い、出発。




公式DVDより拝借




残りの距離を詰めてゆく。
あとたったの5kmだ。軽〜く練習する程度の距離だ。

このままいけば絶対に完走できる!けど、最後の最後まで油断はできない。歩く頻度は増えつつも、決して歩き続けることはせず、歩を刻んでゆく。


くねくね道を行き、淡く光るぼんぼりを備える橋を渡り、大きな煙突の工場を抜けてゆく。

前方に選手が2人、並んで走っている。
そのペースは自分より少し遅い。
こちらも遅いけど、あの2人よりは速そうだ。
少しずつ距離を詰めて、抜き去る。

が、少ししたら足が痛くなったので止まって軽くマッサージ。
その間に抜かれてゆく。



幹線道路、1周目で談笑していた人たちの姿はさすがにもう、無くなった。

歩道をしばし、無心で直進。

その距離はそこそこ長く感じたけど、前方に路地へと入ってゆく選手の姿が見えたから、ここは少しの辛抱だ。


そして間もなく、自分も路地へと入ってゆく。

選手を誘導する小さな光、そしてボランティア。
こんな淋しいところでいつまでもボクら選手を導いてくれて、ありがたい限りだ。

北海道、小雨降りしきる闇夜を、雨ガッパひとつでいつまでも誘導してくれたボランティアをふと、思い出す。



路地を進み、左折して民家の道へと進む。
小さな交差点をボランティアが2人、誘導する。

その先の私設エイド、さすがに店じまいのようだったけど、「おかえりなさーい」と声援を受ける。
そうか。もう「お帰りなさい」を言われる頃合いだったっけかな。ずっと時間に追われて、忘れてた。

あともうひと息、ふた息だ。


交差点を左折、電飾きらびやかなクリスマスツリーを抜ける。

近隣のおばちゃんから祝辞の言葉をもらう。


突き当たりを右折し、小学校前の、最後のエイドに辿り着く。




公式DVDより拝借




ようやくここまで戻ってこれた。


安堵の気持ちを胸に、最後の補給をする。

満身創痍のボクらをもてなしてくれるのは、高校生の若人たち。
他のエイドでも高校生だけでなく、小学生から老若男女問わずボクらをもてなしてくれたけど、復路の時間帯はさすがに夜も遅いからか、高校生以下の姿は見なくなった。
けど、ここはどうやら最後まで彼らによるボランティアが続くようだ。
その献身的な支えには本当に頭が下がる。

こうして早朝から丸一日、島を借りきって、安心して3種目に挑めるのは彼らをはじめ、島の人たちの理解と支えによるものだ。
改めて、骨身にしみわたる謝意が自然と湧き上がる。

せめてものお返しに、しっかりと補給をして、最後のお礼を言って。


そして最終目的地を目指し、夜の市街地を進んでゆく。




公式DVDより拝借




部屋の仲間の誰かが言っていた。「42.2kmの、最後の2.2kmってウザいですよねぇ」。
そのとき自分はこう答えた。「いやぁ、ほとんどウイニングランですよ。」

終始追われる展開が続いた一日を経ても、その回答は間違ってはいないけど、さすがにこの2.2kmは長く感じる。


念願のゴール、その手前の商店街、、、その光と歓声はまだもう少しだけ先のようだ。



残りわずかの距離、これを全部歩いても、ようやく全部歩いても完走できるところまで戻ってきた。
けどもちろん、最後の最後まで、走れる限り走り続ける。


すっかり静かになった市街地、その沿道からちらほらと、声援を送ってくれる人たちもいる。
ようやく声に出してそれに応えられるようになった。


感謝。


道を進む。

民家のテレビから、レース実況の声が聞こえる。
どこかの関門の様子を伝えているようだ。

自分の遥か後方、、、いや、わずか数十分後方で関門が次々に閉じてゆく。

間に合って、よかった。




前方に光の一帯が見えてきた。


そして賑やかな声、音楽、、、歓声。

永遠とも思える闇夜を、目に見える手助けと、目に見えぬ手助けをふんだんに受けて走り続ける。
そしてその先に現れた、光の世界。


あらゆる疲労はどこかへ消えゆき、その光に吸い込まれてゆく。


道の両端のアーケードを様々な国旗の旗が色とりどりに交差し、その先には真っ暗な空と月が輝いている。

7年前のあの日見た、快晴の青空と太陽の輝きとは正反対の世界。
しかし、あの時と同じ道を突き進むボクらを、商店街のみんなはずっと、ずっと待っていてくれた。


実況がゼッケンを見て名前を呼んでくれる。

地元民や完走を果たした選手、その仲間たちが声援を送ってくれる。
そして幾重にも手が伸びる。

そうだ、あの時と同じ光景だ。
手を伸ばし、ハイタッチの波を進んでゆく。



幸せだ。



溢れんばかりの笑顔。それを包み隠すことも無く、感情いっぱいに解放してゆく。



天を仰ぐ。

ウイニングランを噛み締めながら、最後の楽園へと昇りつめてゆく。



フィニッシュエリアへと向かう道を、完走を果たした選手たちが引き揚げてゆく。

ときおり掛けられる声援に応え、これをゆっくり、ゆっくりと進んでゆく。


ちょうど21時を少しまわったところだ。ライブ中継でヨメさんと娘は見てくれているだろうか。




ギャラリーに囲まれ、最後のカーブを曲がる。

その先には煌々と輝く、栄光のフィニッシュゲートが待っている。





公式DVDより拝借




光に包まれた楽園、現世の天国。


笑顔が溢れる。

身体の芯から、歓喜の想いが無限に湧き上がる!




必ず帰ってくると誓った、15時間前。

ロングレースへの夢を馳せた、7年前。。。


いつしか夢は具体的な目標へと成長を遂げ、宮古島・長崎・皆生そして北海道を経て、ふたたびこの大地へと還ってきた。



幾多の困難に立ち向かい、そして乗り越えた先に邂逅する最後の舞台、はじまりの地、佐渡。そのフィニッシュゲート。

7年前に見たその姿はなお変わらず、終着点に辿り着く旅人たちを優しく迎え入れる。。。



国内最難関の名にふさわしい、猛烈な暑さと休みどころの無い展開に最後まで苦しめられながらも、ついに国内5大大会の完全制覇という生涯目標を・・・成し遂げた。。。









※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(9.8MB)






闘いは終わった。


15時間03分01秒。

制限時間まで残り、わずか27分。


完走できて、よかった。。。




完走メダルを掛けてもらい、バスタオル、そしてフィニッシャーシャツを受け取る。







補給食エリアで軽く口にし、しばしたたずんだのち、、、

トランジッションエリアに戻り、荷物からスマホを取り出す。







娘のメッセージ写真が届いていた。





皆生の時ももらったけど、たった2年で大きくなったものだ。



そのままヨメさんに電話。

無事、完走の報告をし、そして祝辞の言葉を掛けてもらう。
どうやら娘もまだギリギリ起きていて、ちょうどライブ中継を見てくれていたようだ。

積もる話を少しばかり。
それから娘に代わってもらう。

「おめでとう」「お花買ったよ」「スリッパ用意しておくね」

3歳にしてはしっかり話せるな。
可愛らしくて、とろけてしまいそうだ。(親バカw)
前日の電話が良い練習になったかな?


そろそろ寝かし付けの時間ということで、電話を切る。

みやげ話は、また後日にでも。




軽く荷物をまとめ、それからデジカメを持ってフィニッシュゲートに戻る。
そう、最終走者を迎える、恒例の時間帯だ。





いつも制限時間ギリギリだったから、今回は少しは攻めてみよう。そして早くゴールできたらいったん宿に戻り、それからまた引き返してこよう。

…なんて事もレース前は思ったりしてたけど、実際はなんのその。
5大会の中で最も遅い、それこそ完走すら危ぶまれる展開になってしまった。


けど、それも5大会最後を締めくくるにふさわしい舞台だったのではないだろうか。
まぁ、それもこれも、完走できたから言えることだけど。


フィニッシュゲートに向かう。





次々に入ってくる選手たち。
その表情はみな笑顔で溢れている。


その選手…仲間たちは、ひとり残らず、戦友そのものだ。




花道に移動し、手を差し伸ばす。





ハイタッチ。



まだまだ、選手がやってくる。





おや、栄光の瞬間をしっかり撮ってもらおうと、順番待ちができている。





レース後方での走りをしていたけど、意外と今回は自分と同じか、それよりも遅い選手が多かったようだ。
それだけ今回のレースは厳しかった、ということかもしれない。




続々とやってくる選手、しかし残された時間も、あとわずか。



公式DVDより拝借



制限時間30秒前。

最後の選手が完走を果たす。





その後は、、、さすがにもう来ないか。



あと20秒、10秒。。。


カウントダウンが始まる。



5、4、3、2、1、、、





公式DVDより拝借





21時30分00秒。


フィニッシュゲートの照明が全て消え、BGMが流れ出す。



そして花火が打ち上がる。。。











制限時間4分前〜最終走者〜打ち上げ花火〜閉会の挨拶を撮影した動画です。
※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(148MB)




長く、暑く、厳しかったレースも、その全てが報われる。

そんなねぎらいを掛けてくれるかのような色とりどりの光を放つ花火。
一切の疲労と痛みが解放される、祝福の輝き。


時間内に完走して、笑顔で花火を見上げる。

7年前はTV越しに眺めていたその光景。
長い時を経て、ようやくこの場に立つことができた。。。




花火が終わる。

司会者やアストロガールたちがメインステージに集う。






長い一日を締めくくる、最後の言葉。


そして、また来年。。。



公式サイトより拝借





公式サイトより拝借




また来年…か。
長崎の時も同じようなシチュエーションがあったけど、あの時と違って5大会を制した今、目指すべき次のステージは果たして、どのようなものだろうか。

まぁ、それはまたゆっくり考えよう。





舞台が閉幕する。


取り巻く選手たちは、お互いの健闘を讃え合ったり集合写真を撮ったりと、まだまだ賑やかだ。
















余韻を楽しみながらも、トランジッションエリアに戻り、荷物を背負い、BIKEに乗って、会場を後にする。













華やかな世界が次第に遠ざかり、再び静寂の夜道を走る。




画像提供:佐渡の旅館 ご縁の宿伊藤屋




満天の星空。



疲れた。。。


でも完走できて、本当に、、、よかった。。。











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