>> アイアンマン・ジャパン北海道2015参戦記 <<

〜 プロローグ - あらゆる鍛錬は“アイアンマン”の称号を手にするために〜



「死ぬまでにロングディスタンス トライアスロンを完走する。」

2010年、宮古島大会の制覇をもって叶えた長年の夢・目標はいつしか、「国内4大大会の制覇」へと成長してゆく。
2012年、長崎大会にて2度目のロングディスタンスを完走したが、そこで得た称号は「アイアンマン」ではなく「バラモンキング」であった。
称号の変遷は大人の事情によるもののため、それは仕方の無いことだが、それよりもアイアンマンと全く同じ距離、難度の当大会を完走したことに、心の底から喜びを実感した。
が、時が経つにつれて改めて感じたのは、やはり「アイアンマン」の称号が欲しい、という正直な想いだった。

しょせん、それはただの名称でありブランド名に過ぎない、といえばそれまでの事になってしまうが、けど、このロングディスタンス トライアスロン界の最高峰として君臨する「アイアンマン」の称号獲得を切に願い、努力を重ね、これに挑まんとする動機・想いは決して自分を否定する必要の無い、確固たる目標にふさわしいものとして、自分を奮い立たせ続けていた。



2014年、国内ロング3大会目である皆生大会を制覇。
幸いにもこの前年から復活した北海道アイアンマン大会により、「国内【5大】大会の制覇」へと成長した目標は、その折り返し地点を迎える。





2010年、2012年、2014年と2年おきに参加・制覇してきたロング大会。

次は2016年になるだろうか、と予想はしつつも、それまでの“恐る恐る”だった2010年・2012年大会と違って何かしらの手応えを得た2014年大会の制覇により、わざわざ2年の周期を刻む必要は無く、きちんとトレーニングを重ねれば2015年度の「アイアンマン」挑戦は決して無謀なものではない、という想いが強くなっていった。




アイアンマン。

制限時間:17時間。

SWIM:3.8km / BIKE:180.2km / RUN:42.2km。





ロング大会最高峰であるこのレースも、長崎大会にて同距離の完走、しかもアイアンマンより2時間も制限時間の短い15時間という制約の中での完走という実績が、その強き想いの根底を支えている。



他大会のほぼ倍となる、およそ8万円のエントリー代。
今までの自分であれば「もっと鍛錬を重ねて、100%確実な状態でなければ」と尻込みするに足り得る関門だったが、3大会を制覇した段階に於いてはこれさえも、「最高峰に挑むのだから、それくらいハードルがあっていい」と思えるほどになっていた。

こうして2015年初頭、ついに出場を決意。
エントリーも先着順とあって、気持ちがブレないうちにオンラインエントリーを進めてゆく。




エントリー時に選択するウェルカムパーティ、アワードパーティ、写真、動画等々の事前申し込み。

写真と動画については、エントリー時のみ有効な割引額とはいえ、完走できなければ無残なリザルトとともに無残な記憶とデータが残ってしまう。だから何としても完走して、楽しい思い出とともにこれを手に入れたい。

そしてパーティについては選手自身はもちろんエントリー代に含まれているが、その家族や友人の参加には別途申し込みが必要。そしてパーティ当日券は売り切れる可能性もある、との脅し文句から、家族分を申し込む。
そう、皆生大会では単独参加となっただけに、今回は娘も2歳になり、少しはおとーちゃんのやっている事が理解できるだろう、ということで、ヨメさんと娘の3人で夢を実らせたいと思ったのだ。
ロング大会完走の生涯目標、それと同列の目標であった「家族3人でゴールする」の実現。それをこの最高峰のレースで叶えたかったのだ。

のちに「アイアンマン」の競技規則で、同伴フィニッシュはできないということを知り、これはまた次の大会への楽しみと引き継がれることになったのだが、いずれにしてもおとーちゃんの生涯目標、その最高峰の達成を家族と一緒に分かち合いたいキモチから、今回は北海道への3人での挑戦を、自分からヨメさんにその同行をお願いしたほどだった。


8/20(木) 東京〜北海道〜洞爺湖。
8/21(金) 選手説明会、エントリー、ウェルカムパーティ。
8/22(土) BIKE預託。
8/23(日) レース当日。
8/24(月) アワードパーティ、東京戻り。


日程は決まった。
さぁ、あとはこれに向けてひたすら邁進するだけだ。




宿・飛行機・移動手段の手配



エントリーが無事完了し、お次はヨメさんと2歳児の娘をできるだけ不自由なく連れて行けるような宿・飛行機そして移動手段の手配。

宿についてはオフィシャルプランのほか、個別で各予約サイトで探す方法があったが、そのいずれもこの時期は狙い澄ましたかのように値段が、高い。それに競争率も高い。
ただ、宮古島の時のように、マジで取り辛いというほどではなく、とりあえずオフィシャルプランでおさえておき、その後個別に予約サイトでいくつか確保し、最終的に絞ってゆく、という方法が可能だった。



具体的には、本大会の会場である洞爺湖温泉街のうち、オフィシャルプランで最も安いプラン「湖畔の宿 洞爺かわなみ」を確保。
しかしこれはスタート会場に最も遠く、シャトルバスがあらかじめ用意されているとはいえ、諸々の行動の足かせとなりそうだ、という想いがあった。
ただ、個別予約サイトの申込可能時期がオープンになるまでの期間で最も安いのはここしか無かったため、仕方なくこれをひとまず確保。
金額はおよそ11万円。


次に、近畿日本ツーリストのサイトで洞爺湖温泉街にある、ゴール会場にほど近い「洞爺山水ホテル和風」を確保。
加えて、連泊割引が付いておよそ8万6千円。
余談だが、ヨメさんが昔、北海道旅行に行った際に宿泊した宿、とのことだった。


最後にJTBのサイトで、スタート会場に圧倒的に近い「北海ホテル」を確保。
値段は「和風」とほぼ変わらなかったが、過去のレース経験上、やはり当日の朝の時間はとても貴重なので、いろいろ迷い、熟考し、最終的にここに確定した。

加えてオフィシャルプランとは違い、細かなカスタマイズが出来たのも大きかった。
オフィシャルプランではレース当日、早朝の朝食を準備してくれるが、こちらはそういったサービスが無いので洞爺湖入りしてから奔走する必要があるというデメリットはあったが、ウェルカムパーティによる8/21(金)の夕食、およびレース当日の、選手の朝食と夕食は実質不要になる。これを、JTBと直接交渉することで削ることができた。
結果、お値段ほぼジャスト8万まで削減することができた。



宿の手配と同時進行で、東京〜北海道の移動手段、そして北海道内での移動手段を検討。

飛行機については、LCCという選択肢もあったが家族3人、おまけに1人は幼児ということで選択肢が絞られ、最終的に「2歳まで無料」で一番安かったAirDoを利用することに確定。お値段6万5千円。

ちなみに最寄の新千歳空港のほか、少し離れた函館空港を駆使する案や、無謀にも船便を使用する案も少し検討したが、やはり往復ともAirDoで新千歳を利用するのがシンプルで安くて安定するので、他の選択肢は却下。


そして現地での移動手段。
空港からJR特急、そして洞爺駅から路線バスorタクシーを考え、時刻表や各連絡先番号も控えていたが、実はレンタカーがとても安い事に気付く。
20日〜24日の長期間使用ですら、20,540円。もちろん高速道路やガソリン代は掛かるが、時間や時刻表に右往左往される電車やバスと比較してもほとんど値段は変わらない。
それに、レース当日までの空いた時間で、BIKEコースの下見に行けるかもしれない。
何よりも、広大な北海道を自分の運転で移動してみたい。

そんな想いから、レースわずか数週間前にこちらに変更・予約することにした。




補給食の購入額はおよそ8,000円



現地での足と宿が決まり、これでレース準備に集中できる。

荷物の準備はわりとスムーズ。過去3大会出場の経験が活きたようだ。

まずは補給食。
レース中の展開をイメージしたうえで必要な補給食をメモし、新宿Victoriaに赴き、買い物カゴにひたすら突っ込んでゆく。
そしてそれを机の上にいったん広げ、レース順に並べ、あーでもないこーでもないと熟考しては出し入れをし、最終的に決めた内容が…



お値段およそ8,000円!
果たしてこれ全部使うかどうかは分からないが、ケチって空腹になるよりは、余らせるくらいの状態のほうがマシだ。


ちなみにその内訳としては、、、



まず1stトランジッション。SWIM後の腹ごなしに軽く腹に入れつつ、着替えをする。
おそらく日焼け止めが必要になることは無いと思うが、念のためこれもバッグに入れておく。
また、過去大会で必要性を感じた足拭きタオル。これを今大会でようやく同梱。


次にBIKE。



フレームに取り付けるBento Box、それに入りきらなかったものはサドル後部のボトルへ。
なお電解質タブレットは小分けして小さいビニール袋に入れる作戦。





小ボトルには、初ロングの宮古島大会の頃から採用し続けている作戦を今回も実行。
すなわち、Powerジェル6袋をボトルに入れ、水であらかじめ溶かしておく方法だ。
だいたい100km地点で空になるので、そのあたりのエイドステーションでスポーツドリンクボトルに差し替える作戦。加えて、これにより大会オフィシャルのロゴ入りボトルに差し替えての、一石二鳥作戦w





98km地点で回収するスペシャルニーズバッグ。
分量は多そうだが、実際は小さい錠剤のミネラルタブレットと2つの液状補給食をはじめ、いくつかをその場で使用する予定なので、ここまでの行程での消費分の補給と考えると、そう大した量にはならない。





2ndトランジッションの分量は少なめだが、この直後にエイドステーションがあるので、そちらメインで。
なおワセリンはSWIM前とこのRUN用とで、2個準備してある。
これも過去大会参加の際に実感した、経験から得た配分だ。





最後に、レース前夜にミネラルタブレット、それからすっかりお世話になっている大量のファイテンシール、それからニューハレVテープ。
特にファイテンシールはおよそ50枚超と、かなり潤沢に用意した。
レース前夜だけでなく、レース中に剥がれた部分への追加といった目的で、各バッグやポケットに入れておく目的もある。

これらシールやテープをきっちり貼るために必要なスネ毛剃り。
これに意外と時間が掛かるので、今回は実際にはレース前夜ではなく、北海道への移動前日に剃っておくことにした。




装備品の準備



補給食の確保が固まったところで、実際の装備品に振り分けて、これを準備してゆく。

ただ、今回は雨と寒さ対策に苦心。さすがに雨は天気予報次第だが、過去大会の情報を収集する限り、北海道という土地柄、寒さ対策だけはどうしても避けられない。





BIKE中の降雨については、当日の朝から雨であれば最初から、そうでなければ雨ガッパをスペシャルニーズバッグに入れ、途中でこれを回収し、ビニールテープでBIKEフレームに巻き付けておき、必要に応じてこれを取り出して着込む作戦。





RUN用は、ヨメさんが東京マラソンでもらった薄手のカッパを、これまたスペシャルニーズバッグに入れておく。


寒さ対策としては、BIKEはアームウォーマーを背中のポケットに入れておく。
レッグウォーマーは一応持って行くが、使わない予定。
SWIM直後による朝の寒さ対策としては、アンダーシャツをビニールテープでDHバーの裏側に巻き付けておく。

RUNは長袖のアンダーシャツをトランジッションバッグに入れて、スタート時から腰に巻いておく。
スペシャルニーズバッグは約30km地点。到着はおそらく20時頃になるだろう。軽量化重視でそこまで我慢する、というのはキツそうだ。
他の作戦として、半袖のアンダーシャツを長崎大会のように最初から着ることも考えたが、暑くて脱いだ場合に邪魔になってしまう。
長崎大会は3往復コースだったため、沿道に置くことが出来たが今回は後半までほとんど一直線だからそうもいかなそうだ。だからスタート時の装備は長袖アンダーシャツでいくことにした。

加えてスペシャルニーズバッグに、別途アンダーシャツとジャージ下を入れておく。これについては、不要なら着なければいいだけ。
特にジャージは、たぶん格好悪いだろうから出来れば使いたくない。けど、仮に使ったとしても、ゴール直前で脱げばゴールシーンの写真や動画は大丈夫だろうw


そしてその他の装備品を、過去大会の自分の参戦記を参考に、詳細を詰めてゆく。





SWIMについては、ワセリン塗布用にビニール手袋を準備。
ちなみにゴーグルのプラスチック部分は新品に交換した。





BIKEについては、長崎大会の時から採用している、各チェックポイントでの関門や標高差マップ、そして全体マップを縮小コピーしてBento Boxに詰め込む。
予備チューブはサドル後部のボトルと、工具バッグ内とで2本準備。
少し重くなるけど、メカトラブルによる影響はやはり最小限に留めておきたい。

ちなみにもちろんCO2ボンベも2本装備。
今回は久しぶりとあって、事前に練習もして、そのついでで中のチューブを前後とも新品に交換しておいた。
タイヤについては、前輪に少し亀裂があったので交換しておいたが、後輪はそれほどダメージも無いし、それほど古くないので(前回の交換は去年の皆生大会前)そのままとした。





RUNについては、前述のアンダーシャツやジャージに加え、小さいウエストポーチを準備。おそらくRUNコースが単調で応援ギャラリーも少ないだろう、という予測からウォークマンも同梱。





けど、のちに届いた競技規則に明記のあった「イヤホン禁止」に従ってこれは廃止。いやむしろ、RUNパンの小さいポケットに入る程度の分量に必要装備を最低限に抑え、これを詰め込むことでウエストポーチ自体を無くすことにした。もちろん、BIKEと同じく各チェックポイントごとの関門縮小メモもしっかり同梱。
本当はiPhoneなんかを持って、ヨメさんに現在位置を伝えつつ走りたかったんだけど、42kmの長丁場の重装備は避けたいし、宿泊ホテル前を通るコースになっているから、おおよその通過時間を伝えておき、あとはひたすら待ってもらうことで何とかなる、だろうという予測からこれは却下することとした。





“カネに糸目は付けない”



今回、特に意識したのが「最高峰に挑むために、最高の状態で臨みたい」というもの。
そのため、仮にトレーニング不足であったり、自己の実力不足が敗因だったのであればまだ納得できるけど、メカトラブル系で完走を果たせない、などということはどうしても避けたかった。

けど、ロング4大会目となると、長年のメカ酷使もあいまって、いろいろとヘタってくるのも事実。
そこで、、、


まずウエットスーツ。



通常4年程度が限度と言われるウエットスーツは、フルオーダーという特性上、安くても4〜5万円もしてしまうため、どうしても買い換えを躊躇してしまう。
かれこれ7年も使い続けている先代のウエットスーツの修理なり、上下パーツのうち片方だけを購入する、という選択肢もあったけど、レース自体は今大会だけでなく今後も参加することを考えると、その場しのぎの応急対策ではなく、長い目で見る必要と判断。

幸いにも、リピーター割引によるジャスト4万円という金額に加え、先代の「新古品」と違って今回は正真正銘のフルオーダーのため、着心地はカンペキ。
そこで思い切って買い換えることにした。

数回参加した練習会や海でのオープンウォータースイミング大会でのタイム面からも、その効果は歴然。
もちろん本番は省エネ泳法メインだけど、これは期待できる。
値段は安くはなかったが、満足のいく買い物ができた。


次にBIKEコンポーネント。



かれこれ15年の付き合いになるこの愛車は少しずつ部品の換装をしていたが、以前から練習中のメカトラのたびに、今や製造中止となった8段仕様のコンポーネントの在庫品・代替品確保に苦労していた。
そこで思い切ってこれを現在の主流:10段に換装することにした。
最新の11段にすると、後輪そのものを買い換える必要があったうえ、「これだけ普及した10段がそう簡単に消えることは無い」というなるしま店員の言葉を信じ、129,400円でフル換装。
肝心のフレームそのものの耐久性が、15年という月日および、若かりし頃の無茶な使い方による劣化を心配したけど、「カーボンはさほど経年劣化しない」という店員の言葉を信じ、この装備で臨むことに。

フル換装後の練習時の実感としては、、、実はあまりよく分からなかったけど、ガッチリして安心感がある。

果たしてあと何レース、共に闘うことができるだろうか。




最も過酷なBIKEコースの誕生



メカに装備品に補給食と、取り巻きに関しては準備ができた。

しかし肝心なのはその練習の質と量。
ただ、今回は過去大会のどれにも増して、それなりにこなせたという実感があった。



・ SWIM 5km ×2回 (3/08、5/10)
・ BIKE 180kmまたは獲得標高1,900m ×6回 (4/18、5/01、6/07、7/19、7/27、8/08)
・ そのうち200km超 ×2回 (5/01、8/08)
・ RUN 30km ×5回 (3/12、3/29、5/05、6/14、8/02)
・ そのうち40km超 ×2回 (5/05、8/02)
・ 通勤 or 帰宅後RUN 15km以上 ×9回 (4/15、5/21、5/26、6/01、6/04、6/22、6/30、7/13、7/22)
・ BIKE 約100km&RUN 約20km複合 ×6回 (5/17、7/11、7/19、7/27、8/08、8/12)
・ 6月中に辰巳ウエットスーツ練習会に最低1回参加 (6/11)
・ 7/4土 鎌倉OWS 3km ※ウエットスーツ着用で (7/04)



仕事や家庭の都合で練習時間の確保が制限されるのは仕方ないとして、その中で出来得る工夫をいろいろと施した。

特に今回初めて購入した通勤用バッグのおかげで、全体的に練習量に不安があったRUNも仕事帰り15km練習の積み重ねに加え、最後のほうで大江戸線のライン上をトレースする自己フルマラソン練習が完走出来たのは大きな自信に繋がった。


BIKEについては、アイアンマン前回大会の「獲得標高:1,800m、180km」という距離を強く意識して練習した。
ただ、ド肝を抜かれたのが、レースわずか3週間前に突然発表されたコース変更、それも「獲得標高:2,355m」という難関設定!



ピンク色が前回大会の標高、そして水色が今回大会の標高。
その差は歴然としており、鎮座する巨大な山がその圧倒的なスケールを物語る。

当然、その救済措置などは無く、むしろ「このコースを走りきると、ひと回り高い達成感が得られる」というオフィシャルガイドのお言葉。
まぁそりゃ確かにそうだけど、レース直前にきてトンデモナイ内容になったものだ。。。

後に、アイアンマン世界大会のうち、斜度ではフランスに次ぐ世界2位の難度、そして全体的なコースとしては世界最高難度のBIKEコースに成長してしまったことを知るが、けどそれを理由に、今まで積み重ねてきた時間・トレーニングそしておカネを無駄にすることだけはしたくない。


そこで急遽、レース2週間前の練習で裏ヤビツ→表ヤビツで「走行距離200km、獲得標高:2,500m」練習を敢行。



レース直前ということもあり、そのレース展開も強く意識したうえでの走りで、裏ヤビツ終了時点:103km地点での疲労感と、その後の表ヤビツ以降のペースを身体に染み込ませる。
そして比較的納得のゆくペースと疲労感でこれを走破できたことから、この世界最高のコースに対する大きな自信が生まれた。



反面、BIKEとRUNの複合練はあまりできなかった、というかあまりに暑くて何度も自分に負けた。
けど、「160km後の15km」や「180km後の10km」といった具合で、“どんなに休憩しても、どんなに遅くてもいいからとにかく走る/歩く”を実践。
あまりの暑さに、いったん水浴びをしたり、アイスを食べたり、休憩したりしても、とにかくそのあと動くことで、“BIKE直後の身体の重さ”を身に染みさせた。

それらの成果か、レース前、最後の練習になるBIKE100km後のRUN20kmは1キロ6分弱で走ることができ、すっかりスローペースに甘んじているRUNの中でも、比較的納得のゆくペースで、その手応えを感じた。




しかしそれにしても、いくら練習しても足りない、という感覚がある。

が、例年に比べて量・質ともに出来ているハズ。
文字通り最大の山場であるBIKEさえ突破すれば、あとはRUNの防寒対策さえ失敗しなければ何とかなりそうだ、という所まで手応えを持ってくることができている。
その根拠はやはり、裏表ヤビツの獲得標高2,500m走破によるところが大きい。

だからきっと大丈夫。





肝心のレースタイムテーブル、その情報収集、配分、目標、作戦。

公式サイトの情報をもとにルートラボで描いて分析したり、先人たちのブログを参考にして作り上げる。


特に今回は制限時間が長いこともあり、BIKE制限時間:16時30分を仮にギリギリで突破したとしても、レース制限時間:23時まで6時間30分もある。
どんなに遅くても6時間あれば走れるハズだから、実質BIKEの、特に山岳地帯の時間比率を多めに確保するような調整をすることで、大きなトラブルさえ無ければ充分実現可能な、比較的余裕をもったプランを作り上げることができた。







そしてこれを印刷・縮小コピーして各パート種目時に常に身に付けておく。





BIKE輸送手段。

当初検討していた「Bipota」。レース参加用の装備“そのままの状態”でトラックで運んでくれて、そのまま参加して、“そのままの状態”で返送してくれるサービス。
ただ3万円という高額から一度これを選択肢から却下。

が、通常の輸送手段と比較しても実質1万円程度の加算で
「メカトラブル回避率が極めて高い」
「分解と組立2セットの手間が省ける」
「安心料」
と考えればそう悪くない手段と考えを改め、これを利用することにした。

預託場所も千駄ヶ谷と、そう遠くなく、





これを預けた瞬間から本番へのカウントダウン開始を実感することとなった。




身体のケア。

実は2010年、宮古島大会数ヶ月前に、絶望の淵に追い込まれる起因となった右ヒザ裏に違和感が再発した。
慌てて新橋・慈恵医大のスポーツ外来に再び赴くも、診断では単なる練習のし過ぎと、ストレッチ不足とのことだった。

せっかくなので湿布を多めにもらうことにした。

が、湿布をしたまま何度か実施したBIKE練が仇になり、その湿布の副作用である光線過敏症が発症してしまう。
同湿布の使用およびその練習は今回に限ったことではないし、いつも大丈夫だったのに、どうしてか今回に限って大きな水ぶくれのような症状が発生してしまい、それからおよそ1ヶ月、極力屋外での練習は避けざるを得ない状況になってしまった。

幸いその期間は天候不順で屋外に出たくても出られない状況が続き、SWIMを中心とした室内での練習に集中することが出来た。




鍼治療。

皆生大会前の治療による効果、その成功体験からげん担ぎでもあるらしいが、加齢およびハードな練習もあり、1回あたり平均5,000円の治療を4回。
そのうち最後の治療はおよそ1万円も掛かったが、全幅の信頼をもって処置をしてもらう。




実はレースわずか1週間前から足の裏の痛みが発生していた。なんか毎回何かしらトラブルに見舞われているな。
けど、毎回それを乗り越えているから、今回もきっと大丈夫だ。



鍼の同じ先生に超音波治療とテーピングを施していただき、応急処置をしてもらう。
防水仕様なので2日間は外さないように、とのことなので、律儀に守ることにしよう。




そしてなんと、、、

数週間前に、娘のシャンプー嫌いが発生。
頭を洗おうとしても必死になって泣いて拒む。

けどこれも頑張って慣れさせて、少しずつ克服。
ついでに銭湯にも行き、滞在先での環境の練習もしてみたり。

おかげで、なんとか許容範囲まで戻すことができた。
あとは滞在中、特にレース前日の晩、しっかり寝てくれるかどうか。





さて、そんな山あり谷ありな準備期間を過ごしてきたけど、「やることリスト」・「トレーニング最低基準」をiPhoneメモに入れて常に持ち歩き、事あるごとにそれをチェック、ノルマ達成の動きを続けることで、最終的にほぼクリアすることができた。

荷物も手配作業も練習も、わりとしっかり準備できたという手応え。

BIKEコース変更の事もあり、不安こそ尽きないが例年と違って今回は不思議と負ける気がしない。





娘のお気に入り:TVドラマ「ド根性ガエル」の「ド根性」という言葉。
平成の世の中になって久しく、こういった泥臭い言葉が聞かれなくなってきたが、やはり最後の砦は自分自身だ。
そこで勝つも負けるも、自分の気持ち次第。

そこで必要なのは


「ド根性」。




言葉。
コトバのチカラ。


かつて災難に見舞われ、幾度となく窮地に立たされつつも這い上がり、ことごとく夢を現実に変え、実現を果たしてきたコトバ。


「大丈夫。すべてはきっと、うまくいく。」


そして積み重ねてきた練習量と質と、経験。




時に、男38歳。

長年待ち望んだ称号獲得への挑戦が、始まる。



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