>> アイアンマン・ジャパン北海道2015参戦記 <<



3時20分。目覚ましが鳴る。
続けざまに電話機の自動モーニングコール、そしてTVタイマーが起動。

最後の不安材料、早起きは無事成功。

睡眠の質は良いようで、6時間は寝れたようだ。





外はまだ真っ暗だ。

けど、部屋から見えるスタート会場を観察すると、早くも人々が動く姿がちらほらと。




天気予報は天候・気温ともに問題無さそうだ。




目覚まし代わりのTVは、ちょうど27時間テレビをやっていた。
それを見ながら朝食、そしてボトルの準備。


がっつり食べてしっかり出すのはロング大会の朝のお決まりだ。

ボトルの水は、今回はさほど気温も高くないし、エイドもあるので7分目くらいで大丈夫だろう。
もちろん、Powerジェル ×6袋を溶かし入れる小ボトルは水量満タンで。



海パンをはいて、SWIM用バッグを持って、いざ出陣。

さすがに娘はまだ寝ているのでベビーカーに乗せる。



次第に明るくなってきた。
薄明かりの中、選手たちが続々と集まってくる。

 

それは昨日までののんびりとした雰囲気とはやはりどこか違う、良い意味での緊張感で溢れていた。



さぁ、いよいよ現場の準備だ。


周りの緊張感に影響され、こちらも緊張してきてしまったが、スタート地点に最も近いホテルに泊まれただけあって、時間的に余裕があるだけに、いくぶん余裕がある。
さすがロング4回目ともなれば、この緊張感を少なからず楽しめているようだ。


まずはBIKE用スペシャルニーズバッグ、そしてRUN用ニーズバッグを、各ナンバーごとに分類された箱に突っ込む。

 

これらと再び対面できるのは、何時間後になることだろうか。
そこまで無事に辿り着けますように。



娘が起きたようだ。



眠い目をこすりながら、現状を飲み込めないままにお茶入りペットボトルをひとくち。

そうね、こんな朝からつき合わせちゃって、わけわからんよね。
まぁ眠かったらまた寝るだろう、ということでここはヨメさんにお任せする。


BIKEラックエリアに入る。



すでに多くの選手でごった返していた。

果たして自分のBIKEは無事に待っていてくれただろうか。。。



ん。大丈夫だ。
心配のタネのひとつ、サドルのズレも無い。

ただ、風の影響か、カバーが前半分開いていた。
雨は降らなかったが、DHパッドが少し湿っていてちょっぴり失敗。次は洗濯バサミとかで止めるようにしよう。


ボトルをセットし、サイクルコンピュータの動作確認をし、空気を「100」まで入れる。
パンク無し。

ギアの噛み合わせ、補給食の装着、各パーツの緩みの無いことの確認をして、万全の体制でBIKEラックエリアを出る。



そういえばボディマーキング、どこだ?
たいていのロング大会の場合、スタート会場の入り口付近でやってるんだけど。。。

周囲の選手を観察していると、誰もまだマーキングされていない。
となると、この先か。


人の波に流されて先に進むと、、、、



おっ、あったあった。

列に並び、ボランティアにマーキングしてもらう。
ウェットスーツはフルスーツなので、肩ではなく手の甲に。



ちなみに前回もしくは前々回大会はゼッケンタトゥーだったようだが、今回はいつものマジックインキ。
ちょっぴり期待したんだけどね、まぁ、慣れている環境で出来るってことで。

どうせ、泳ぎ終わった頃には擦れてほとんど見えなくなっているしw









行き交う選手たち。
談笑、気合、準備作業と、各々がそれぞれの目標を胸に、着々と刻まれるスタートまでの時間を費やす。




そろそろトイレへ。
ウエットスーツを着ながら、バナナを食べがら、ストレッチをしながらその列に並ぶ。

行列は公園備え付けのトイレのほうが短かったが、回転スピードは併設されている仮設トイレのほうが速いようだ。
なのでこちらに並ぶ。



そしてしっかり出す。

出るものは少ないけど、松岡修造の言う、不安材料を出し去るための儀式でもある。
まぁ実際、SWIM中はトイレに行けないからね、その間のぶんもしっかり出しておかないと。


トイレから戻り、あらゆる準備を済ませ、娘と記念撮影。



おとーちゃん、頑張るよ。


手荷物を預けて、、、



あ、チタンネックスを着けたままだ。
それにウォッチもしたままだ。

ウォッチは着けたまま泳いでもいいし、過去に経験があるからどちらでもよかったけど、チタンネックレスは何となく、スレて痛くなることを心配していつも外した状態で泳いでいる。

いつもはBIKEバッグもしくはBIKEそのものにセットしていたんだけど、うっかり忘れていた。


なのでBIKEラックまで走って戻る。
まだ時間は少しある。
軽いウォーミングアップにもなるだろうし、不安材料は全部摘んでおきたい。


さすがにこの時間帯になるとBIKEラックエリアはほとんど選手がいない。

急ぎ足でネックレスをBIKEに軽く巻き付けて、、、
それからBIKEバッグテントに戻って、ウォッチを入れておく。

ウォッチは迷ったが、ごく僅かな重量の軽量化にもなるし、防水とは言えすっかり古くなってきただけに万一浸水して壊れたらイヤだったので。

ちょっと神経質すぎるかな?でも、少しでも自分が不安に思っているなら、それを回避する行動をするに越したことは無い。



そして駆け足でスタート地点に戻る。


試泳タイムはすでに過ぎているけど、スタートエリアの少し手前で、多くの選手が入水してウォーミングアップしているので、自分もこれに続く。



ウエットの首周りを広げて水を入れる。
やや冷たい。気が引き締まる。



スタート時刻が近付く。

まずは6時ジャストにプロカテゴリの選手がスタート。
その後は年代別に5つのカテゴリに別れ、3分おきのウェーブスタートだ。

そして自分は年代別の最初のウェーブ。スタート時刻は6時10分だ。




すでにカテゴリごとに選手がスタンバっている。自分はその先頭ウェーブだ。

あと5分。急げ急げ。


公式Facebookより拝借



ファンファーレが鳴り、MCが会場を盛り上げる。

そして6時ジャスト、ついにプロカテゴリの選手がスタート!




その興奮冷めやらぬうちに、いよいよ次は自分たちの番だ。


今回は完全に入水してのフローティングスタート。
もとよりこれが苦手な自分は、一番後ろのほうでスタンバる。


と、そこで思い出したかのように、いったん陸に上がる。
そう、前日の試泳で撮影したSTARTゲート、これをくぐるためだ。



ゲート前に立ち、深々とおじぎをする。

「今日一日、よろしくお願いします。」

ロング初回から欠かさぬ、自分なりの儀式だ。



そういえば入水チェックのようなセンサーゲートが無かったな。大丈夫だろうか。
大丈夫だろうけど、ちょっぴり心配。



いつもと違って、今回は入水直前まで緊張している。
ギリギリになってあたふたしたからだろうか。

でも、無事間に合った。


入水してしまうと、不思議と緊張感から解き放たれる。

解き放たれ過ぎて、これからロングトライアスロンをやるという実感がなぜか、あまり無い。あたかも、せいぜい鎌倉のオープンウォータースイミング大会に参加している程度の落ち着きようだ。
本番のように練習し、練習のように本番を迎える、というのはこういう事かもしれない。

そのような境地になれて嬉しい反面、湧き出るような高揚感をあまり感じられず、それはそれでちょっぴり残念だったかな。



ぐるりと周囲を見渡し、ヨメさんと娘の姿を探す。

…さすがにこの人数では見つけられないか。
まぁきっとどこかで見てくれているだろう。




公式Facebookより拝借



スタートまで、あと1分。



「みんな〜ッ!アイアンマンになるぞ〜〜!!」


「おお〜ッ!!!!!」



すぐ隣の選手が鼓舞し、全員がこれに呼応する!


みんな、何かに対して雄叫びを上げたかったらしい。
過去のどの大会でもMCがこの役をやっていたのだけど、今回はそれが無かった。
だからここぞとばかりに皆、力の入った叫びで発奮する。


気合、入った!




そしてついにスタートホーンが鳴り響く!


最高峰を目指して5年、夢を抱いて16年。

夢を掴むための長い一日が今、始まる!



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(27.5MB)







 淡水の湖に身をゆだね 〜SWIM 3.8km〜 




水温、問題ない。
水深、やはり、あまり良く見えない。

ポジション、集団後方のやや外側。バトルの心配は無い。いや、ときどきぶつかるな。
ただ水が綺麗だから周りの選手がよく見えるので、自分から集団に突っ込んでいかない限りはポジションをキープして泳げそうだ。


公式movieより拝借


泳ぎ出しはいつもペースが掴めなかったり、呼吸がし辛かったりするけど、スピードの速い選手は集団前方、遅い選手は後方で、だいたい同じようなペースが形成される。加えて周囲が見やすいので今回はいつもと比べて比較的早い段階でマイペースで泳げるようになった。

加えてこの日に備えて新調したウエットスーツ、その装着感はバツグン。もちろん「大幅にスピードが上がる」というほどのモノでは無いけれど、いつもの海水と違って淡水の洞爺湖はその浮力が当然ながら低い。そんな状況下にあって、最新の性能に対する安心感がある。


スタートして間もない頃は、「数十分泳ぎ続けなければ陸に上がることができない」という不安感に襲われることもある。
もちろんそれは今回も無いわけではないけれど、そんな時は周りの選手の様子を見たり、タイムを計算したり、とかく別のことを考えることでこれを紛らわせることができる。

かと言って考え過ぎると、泳ぎがおろそかになるので、そんな時は無心で他の選手に付いていく作戦。
って、これが不思議と遅く感じるもの。
けど、それが選手後方にピッタリくっ付くことによるアドバンテージなのか、それとも本当に遅いのかがイマイチ分からない。

そこで、いったん離れて一人で泳いでみる。

…どうやら、わりと同じようなペースっぽい。
なので再び選手の後ろに付いて体力温存w



などと余裕こいてると、隣の選手の手がぶつかってゴーグルがずれる。

なんか毎度のことだな。
加えて今回は海と違って浮力も無くてちょっぴり焦ったけど、何度か経験しているので、落ち着いてこれを再装着。

淡水ゆえ、水がまだゴーグルの中に残っていたとしても塩分で痛くなる心配が無いのは救いかな。



ヘッドアップをしつつ、周囲の状況やブイを確認しつつ、マイペースで前に進む。

前例通り、たしかにブイは少ない。一番遠くに見えるメインブイがかすかに見える程度だ。
これが思いのほかハッキリ見えるし、見えないとしても集団に付いていけば大丈夫。
ただこれがいかんせん遠いので距離の縮まる感が無く、あまり進んでいる実感が無い。

ウォッチを付けたままにすればよかったかな。
ペースも分からないのでじれったかったが、体感的に遅いペースでは無さそうなので、とりあえずこのままでいってみよう。



水が綺麗なのでヘッドアップは少なくて済む。
が、たまにしないと前の選手と一緒にヘンな方向に進んでいたり。


水中から周りを見渡す。
どうやらこちらと向こうとで、集団が大きく2列に別れて出来ている。どちらがいいのかな?


などと考えていたら、、、


その合間をぬって、もう次のウェーブの選手が突っ込んできた。


公式movieより拝借


これに付いていく、という事も一瞬頭をよぎったけど、むしろ上位集団の邪魔をして押しのけられるのが目に見えているので、今のままで。お先にドゾー。

そう、今回はウェーブスタートゆえ、後方でスタートして安心していても、後ろのウェーブから速い選手にひっきりなしに翻弄されるのだ。
そういう意味では一斉スタートのほうが性に合ってる、かな。



ある程度抜かれたあたりで、ちょうど1,000m地点、黄色い巨大なブイが見える。

ここを鋭角にぐいっと曲がってゆくわけだが、まぁバトル必至なわけで。
後ろのウェーブもガンガン来てて、ガシガシぶつかられる。こりゃいつものように落ち着いて泳ぐことは出来ないかもしれん。



太陽が姿を見せ、水面をキラキラさせる。早朝スタートのロングレースならではの光景。
初めて体感したのは2009年、佐渡大会でのこと。
あの幻想的な光景はいつ体感しても、気持ちのいいものだ。


ふと顔を上げると、岸にSWIMゴールのバルーンが見える。
けどまだ1周目。その手前に備え付けられたコーナーを曲がって、スタート地点に戻らねば。






今回のコースは、三角形を1周と3分の2を泳ぐ、変則的なコース。
一見分かりづらそうだけど、

・ スタートから1,000mの直線を泳ぐ
・ 第1コーナーを曲がって500m
・ 第2コーナーからスタート地点へ800m戻る
・ 2周目、また1,000m泳ぐ
・ ラスト500m泳ぐ

という考え方をすればわりとシンプル。

だからやっぱり、ポイントごとにウォッチでペース、計ればよかったなぁ。(まだ言うかw)



ここまで来るといろんな色=ウェーブのSWIMキャップが交じってくる。
ただ、そんな状況下にあってもほとんど消耗無しに第2コーナー到達。その白いブイにはレッドブルのロゴが描かれている。
これで1,500mだ。

ここから800mを戻れば1周。
1周到達地点ではいったん陸に上がるので、そこでタイムを確認しよう。



そんな復路は意外と早く感じた。比較的落ち着いて、無心で泳げたからかな?

スタート地点到達時のタイムを計算しながらの省エネ泳。
SWIM目標タイムが90分。100mをだいたい2分20秒目標だから、2,300mで46分+460秒。つまり46分+7分+40秒なので54分くらい。
6:10スタートだから時刻的に7:05くらいには辿り着いていたいな。

などと、泳ぎながらのアタマの中だけの計算は、わりと何度も検算w


そろそろ1周かな?と思ったその少し前で、選手が復路を進んでいくのが見える。
そして前に、立ち上がってゆく選手が見える。

折り返し地点のバルーンアーチが見えた。
よし、第1ラウンド終了だ。



公式Facebookより拝借


いったん上陸してのチェックポイント。
あてにしていたタイム表示は残念ながら無かった。

それからヨメさんと娘の姿も探したけど、やはり見つけられず。
今頃はホテルで朝ご飯を食べているかな?

ていうかこの折り返しポイント、なんか狭いな。
計測ラインらしきものも無いし、給水も無い。まぁ淡水だから必要無いけど。

皆生のような折り返しポイントを想像していたから、そのあまりの「何も無さ」に、「あ、そう、無いのね」的な想いを胸に、これをぐるりと周る。


その間、ややフラついたり。久しぶりだな。大丈夫かな?
でもすぐ落ち着いたから、大丈夫だろう。




そして再びの洞爺湖へ。

2周目も目標時刻を計算しながら泳ぐ。1周目が分からなかったのは誤算だけど、同じウェーブの選手がまだまだいっぱい折り返し地点にやって来るのを見ると、たぶん、大丈夫なんじゃないかな。


相変わらず他の選手の後ろで泳いでるけど、なんか物足りない。

そこで試しに一人で泳いでみたら、やっぱり離される。
なので適当な速さの選手を見つけては、これに付いてゆく。

そして中盤までずーっと同じ選手にくっ付く。たまに平泳ぎして蹴られそうになるので、そこだけ注意しつつ。



公式movieより拝借


第1コーナー再び。
よぉし、あと500mだ。ここからペースアップ、、、はしない。

ただ、残り少しという想いが皆一緒なのか、心なしかペースが上がったような気がしないでもない。
自分もときどき速い選手に乗り換えてみて、離されて、んでまた他の選手に乗り換えたら、実は元の見覚えのあるウエットスーツだったりとかしつつ、残り距離を縮めてゆく。



そして辿り着いた白いレッドブルブイ。
これを横目に、今度は真っ直ぐに進む。

前方に、賑やかな音楽やMCが聴こえる。けど、なかなか着かない。

まぁ、なかなか着かないのもいつものこと。
焦らず、同じペースで進んでゆく。

とは言ってもやっぱりヘッドアップ回数は増えがちなんだけどw




そしてついにゴールバルーンアーチを目前にする。

けど、足は着かない。水深はこの近距離にあって、まだ深いようだ。その代わり、ゴールのスロープが水深少し先まで延びている。
これをしっかり全身で捉え、両手両足で立ち上がる。

ようやくスイムアップだ。




気になるタイムは、、、1時間18分。

目標タイム:1時間30分は少し甘い設定だけど、それより10分くらい速いとあれば良いタイムだ。
ウォッチが無くてペースが少し心配だったが、だいたい目標通り泳げていたようだ。





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<SWIM記録>
タイム  :  1時間18分43秒
ペース  :   2分4秒 / 100m
総合順位  : 673位 / 1438人
男性順位  : 625位 / 1257人
年代別順位  : 092位 / 0206人






 トランジッション #1 




ゴールアーチをくぐると、すぐ脇に仮設トイレがあった。
一瞬行くかどうか迷ったけど、まだ大丈夫そうなので素通り。
あーでも、やっぱ行けばよかったかなぁ。

BIKEバッグ回収テントへ走る。
娘のお絵描き付きバッグを手にし、更衣室へ。

更衣室内はみんな大忙し。

自分はシミュレーション通り、ゼリーを食べながら身体をタオルで軽く拭き、SWIM装備を脱ぐ。
ウエットスーツその他の水濡れグッズはビニール袋に入れて、バッグにしまう。

足の裏のファイテンシールは、SWIM中に剥がれるのを経験済みだったからここで貼る作戦。
けど、全然くっつかない。
まぁいいや。付けずにいく。


息を整えつつ、ゆっくり、しかしテキパキと着替え。

アンダーシャツとレッグウォーマーは、今回はパス。
グローブとアームウォーマーは移動しながら装着しよう。

ヘルメットをかぶり、BIKEバッグの中の忘れ物が無いことを確認し、いざ外へ。


更衣室の外でスタンバるバッグ預託ボランティアに荷物を預ける。

そしてBIKEトランジッションエリアへ。

パンクチェック、大丈夫。
メーターのスイッチ、オン。
ラックから相棒をおろし、脇の通路へ走る。

っとここで審判に声を掛けられ、ヘルメットのストラップ緩みを指摘される。
よく見てるなぁ。


ところで指定されたBIKE設置ラックは手前から5列目なので距離的アドバンテージを感じたものの、出口は一番向こうなのでどの選手にとっても移動距離は平等。
これをぐるーっと回って外へ出て、また脇の道をBIKEを押して走る。

それにしてもヨメさんと娘は、どこだ…?


と、乗車ライン少し手前で公園備え付けのトイレ行列を見掛け、これに並ぶ。
トイレに行けなかったのを若干後悔しかけたが、ここで見つけたら行かねばw

並びながらジェルを飲んだりグローブをはめたりストレッチをするのは皆生と同じパターンだ。
少しタイムロスだけど、この先の長丁場を考えればまだまだ誤差の範囲内。


無事トイレを終え、BIKEを押して乗車ラインへと向かう。




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乗車ラインを越えたちょうどその位置でついにヨメさんと娘を発見!手を振る。

娘はヨメさんに肩車されていたけど、少し暴れ気味でヨメさんの顔を触ったりしていて、どうもおとーちゃんには気付いていないようだ。




「行ってくるね!」

声は届いただろうか。
けど、サングラス越しに眼と眼は合ったから、大丈夫だろう。

さぁ、行こう。







<Transit #1 記録>
タイム : 14分19秒






 獲得標高2,355m! 〜BIKE 180.2km〜 




湖畔沿いの石畳の道を少し走り、すぐにメイン通りに出る。
さすがにこの辺りはギャラリーが多い。


公式movieより拝借


温泉街のメイン通り。
けどそれもすぐに終わり、コースは周遊道路へ。

ギャラリーもすぐにいなくなるw
いるのは観光客や地元住民らしき面々と、交通誘導のボランティアがたまにいるだけ。
まだ朝も早いから、その交通誘導の必要も無くヒマそうだw



全長180.2km。そのうち平地区間はこの序盤25kmのみ。
あとはひたすらアップダウンが続き、そしてその中盤、100km地点付近から本大会最大のヒルクライムが待ち構えている。







なのでこの序盤は時速27〜28km/h目標で抑えるつもりだったけど、まぁ予想通り周囲のペースに影響されて30km/hオーバー。
まぁ、それはいつものことだから大丈夫だろう。


他の選手と会話を軽く交わす。
「気持ちいい〜」だって。

「この後大変っすよー」って言ったら、「言わないで〜」だって。

みんな、まだこの時点では余裕しゃくしゃく。



ペースを抑えているのでガンガン抜かれ、けど、そこそこ抜く。

抜きつ抜かれつする選手の背中やゼッケンベルトに付けられたゼッケンナンバーには、国籍を示す国旗が描かれている。
アジア、ヨーロッパ、アメリカと国籍も豊かだ。
さすが世界に展開するアイアンマン。なんか嬉しい。


林のトンネル道、コテージの点在する田舎道。
すがすがしい。
まだ道は始まったばかりだけど、こうした自然の風景が、先行きの不安を和らげてくれる。

早朝の湖畔周遊道路を占有するも、さすがに交通量は少ない。
交通規制の中、反対車線を自分と同じ方向に車が走ってゆく。
その中に耕運機も走っていたのでこれを抜こうと思いきや、ちょうど上り坂だったので抜けず。
耕運機はそのうち脇道に逸れていった。


反対車線を抜いてゆく車両の中に、審判オートバイが。
と、過ぎ行く際、こちらをまじまじ見ている。
なんだろう。思い当たるフシと言えば…ちょうど鼻水を飛ばしたっけ(汗

その飛ばした鼻水がもしや審判に当たったかな?
審判への侮辱行為としてペナルティになってないかと、早くも心配。



気温、体感温度ともに問題無し。
アンダーシャツを着るほどでは無いが、若干冷えるのでアームウォーマーはしばらく着けたままにしよう。


10kmごとに距離表示板。
サイクルコンピュータとのズレは400〜500m程度だから、比較的その設置された距離表示は正確のようだ。


公園にトイレ。
先人のブログに、「BIKE序盤のトイレに行った」というシーンがあったたけど、それはここの事かな。
スピードに乗っている時に立ち寄るトイレより、走り出す前のトイレのほうがタイムロスは少ない。
やはり、トランジッション中に行っておいてよかった。



「間もなくエイド看板」???
早いな。

あ、RUN用のか。たしかRUN15km付近から湖畔沿いを走る。
果たしてここにRUNパートで無事戻って来られるだろうか。





湖畔沿いはアップダウンもほぼ無く快適。
飛ばす選手、長丁場を前に温存する選手。もちろん自分は後者。


そしていよいよ25km地点。
そろそろ湖畔沿いの道、そして平地は終わりか。
目標到達時刻:8時50分に対し、30分も早い。



湖畔のキャンプ場らしき道を抜け、最初のエイド。
道は狭いがギャラリーは多い。応援もしてくれる。
嬉しい。

エイドは、まだぜんぜん消費してないのでスルー。
アイアンマンボトルゲットのチャンスはこの先まだいくらでもあるから焦らない。


そして迎えた、ややキツめの登坂。
いよいよ始まったか。みんなもペースを抑えているようだ。


公式movieより拝借



標高マップによると、ここから8km登って8km下る。それを抜けた40km地点の目標は9時29分の到達だ。


登坂をやってると体温が上がる。
アームウォーマーを脱ごうか迷ったけど、まだいいか。




ペースを温存しながらしばらく走っていると、「あと100m!」との沿道からの声。
お、もう頂上か。意外と早かったな。
体力の消耗も、さすがにまだたいした事は無い。


交通規制をする警官の姿。
あ、ここレンタカーで走った国道230号線だ。何となく見覚えがある。

交差点を超えて田舎道に突き進む。


チームエイブルの女性選手を抜く。芸能人もメンバーにいるらしいけど、あまり興味無しw

ってか、なんか狭い中の直角カーブが多いな。安全に、しかしスピードを落とし過ぎないよう。


広大な畑を突き進む。補給食を口に入れつつ、マップと次の自己チェックポイントまでの距離・目標到達時刻を確認。
まだまだ気持ちには余裕がある。



公式movieより拝借


そうしているうちに公道に出て、下り坂へ。
集団はここで少しダンゴになってたけど、バラけてくる。


と、このダウンヒル、意外と傾斜はあったようで、気付けば70km/hも出ていた。


公式movieより拝借


となると、、、またどこかでこのレベルの登坂があるのだろうか。(汗


様々な国旗を模したゼッケンの中に、ドイツ国旗に加え、金色に輝くマークを模したゼッケンを付けた女性選手を見掛ける。
世界各地で開催されるアイアンマン大会、その上位に食い込んでポイントを獲得し続けた選手に与えられるゴールドの証し。
でも、意外とそこまで速くない。むしろ抜いたり。抑えてるのかな?


気温が上がってきたのでアームウォーマーを外す。
けど完全には外さず、手首のところにまとめておく。下りはやや寒いから、また着けるときにこのほうがやりやすいので。

ちなみに今まで練習中も含め、このやり方はした事が無い。本番中に自然と編み出したテクニックだ。(何




そうこうして辿り着いた小学校脇の道で最初のエイド。41km地点だ。
けど、まだ手持ちのボトルは充分だったので、ここもスルー。
しかしアイアンマンボトル、たくさん捨てられてるな。次のエイドで1個もらおうかな。



タイム計測については、ウオッチのラップを取ろうか、それとも自己チェックポイントで取ろうか迷ったけど、後者で。
でも後から考えると、やや距離感が曖昧の自己チェックポイントより、明確に距離が判明している給水ポイントで取ったほうがよかったかなー、なんて思ったり。
ていうか自己チェックポイントの40km地点、過ぎてるし。

どちらにしても、9時29分の目標到達時刻に対し、まだ30分ほど余裕がある。
良い感じだ。


次の自己チェックポイントは25km先。
この区間は平均1.5%の登りだけど、実際は細かなアップダウンを積み重ねつつ、徐々に登ってゆくのだろう。



50km地点でブリーズライト付け忘れに気付く。(汗
鼻を水ですすいで貼り付け。
ちなみに前回:皆生大会の反省で、今回は安モノではなく正規品をしっかり持ってきた。
その後しばらく走って、汗もかいたけどちゃんと剥がれずに付いている。
さすが正規品。


向かい風が少しある。けど、気温は良い感じに高めだ。
予定通り、下りが長いところはアームウォーマーを付けて、上りや平地はこれを手首側に下ろす。
けど、だいぶ気温も上がってきたからしばらく外してしまって大丈夫そうだ。
というわけで、背中のポケットにしまう。


…疲労感が出てきた。
50kmを越えたあたりでそう感じるのはロングレースの毎回の事だけど、今回も一緒か。
前半は調子が良いからついつい飛ばしがちなんだよね。

マイペースを意識して、体力を温存しながら行こう。


っと、ここで例のゴールド称号のドイツ人女性選手にスパーンと抜かれる。
やっぱり違うなぁ。



田舎道から住宅街に出て、ギャラリーが少し増える。
応援に応えつつ、ちょっぴりペースを上げるw
ていうか直角カーブ、ここも多いな。事前情報通りだ。


公式movieより拝借


62km地点、住宅街のエイド。
補給食を口にしつつ、最初から空けていたボトルケージに、水入りのアイアンマンボトルを差し込む。
コレクション確保、まず1個目。



それから少し走った65km地点、自己チェックポイントに到達。
目標時刻:10時47分に対し、アドバンテージは20分ほどに減ってきた。
けどまだ大丈夫。



次の自己チェックポイントは、節目となる100km。
到達目標は11時50分。
そこまでの区間は基本、下り基調だが途中にアップダウンが多くあるので油断はできない。


遠くに、山を切り開いたスキー場らしきコースが見える。あれが今回の目玉のニセコかな?それともルスツだろうか。

田んぼメインの道を、ボランティアに誘導されるがままにコースをひたすら進む。
風は弱め。天候は晴れ。
やや汗ばむ程度で、疲労も少し感じつつも、まだ気持ち良く走れている。



直進、程良い下り坂で飛ばす飛ばす。


公式Facebookより拝借


…と思ったら左折。
その反対側車線は選手が戻ってくる。

あァ、ここが「ぐるーっと大きく1周するコース設定にぽつんと存在している、短い相互通行区間か。



放牧された牛がのんびりとひなたぼっこしている牧場の横を行き交うかう選手たち。
牧場の看板はあるけど、関東近県のように観光地化されているわけでは無いようだ。
北海道の牧場の大部分はそんな感じなのかな。

けっこう下って、登って、また下って。
さぁ飛ばすぞ、と思ったら「SLOW DOWN!」と叫ぶボランティア。
そのすぐ先に折り返しコーン。

うわ、狭いな。
ぐるりと回って、今来た道を登る。


大会のおよそ半年前、予期せぬ突然の橋の崩落、アイアンマンブランドの水準に適う代替コース設定…。
なんか、直前のコース変更に伴って「頑張って180.2kmの規定距離に合わせました」感ただよう、苦心のコース設定といった内部事情をひしひしと感じる。


この相互通行区間の距離自体はそんなに長く無かったけど、下り基調だったので復路は当然…登り基調。

ゆっくりの復路において、往路を走る反対車線の選手がひっきりなしに来る。
まだまだ後ろにも選手がたくさんいる、と少し安心。


ようやく元の道に戻って、また直線を飛ばす。
下り基調で気持ちいい。




市街地に出て、また少しギャラリーが増える。やっぱギャラリーがいないとね。

そして84km地点のエイドに到達。
水入りボトルをボトルキャッチャーに投げ入れ、代わりにスポドリをもらおうとした…が、なんと品切れ。
またもや水入りボトルをもらう。



マップを見つつ、羊蹄山をぐるりと回りつつあることを実感。
ん〜、それにしても良い天気だ。


ときおり点在する少しの登りもみなゆっくりペース。
体力温存巡行は考える事は一緒のようだ。

ここらにも牧場がたくさんある。
ひと目で牛舎と分かるその姿に北海道っぽさを何となく感じつつ、けど人の姿がほとんど無い直線をひたすらに進む。




河川敷に入る。
なんかデコボコだな。もうすぐスペシャルニーズバッグ提供のエイドだ。
周りの選手もひと段落、という感じでどこかペースがゆっくりだ。

そして辿り着いた98kmのエイド。


公式Facebookより拝借



予定通りパワージェルボトルを飲み干してボトルキャッチャーに投げ入れ、アイアンマンボトルに差し替える。
コレクション確保、これで2個目w


アンダーシャツは結局不要だっな。なんか、使わずにここまで運んできただけ、のような感じになってしまった。
まぁそんなに重くなかったし、邪魔にならない位置に取り付けられたので、備えあれば何とやら、かな。

スペシャルニーズバッグを受け取り、アンダーシャツをこれに入れる。
ついでにアイアンマンボトルのうち1本を空にしてSPバッグに入れて、これをボランティアに預ける。
廃棄されずに回収できれば、アイアンマンボトルコレクションは1個多く確保できることになる。

使わなかったSPバッグは、他のレースでは廃棄される事が多い。
実際、長崎大会では雨ガッパを入れたSPバッグ、これを結局使わずに受け取らなかったので廃棄になった。
けど、今回はボランティアにSPバッグを預けるとき、もとのゼッケン分けされた箱に入れてもらうよう場所を促したら、「回収用はこっちなんですー」と、どうも回収用ボックスが別にあるらしい。
ということは、廃棄されずに手元に戻ってくる可能性は高そうだ。


BIKEを降りて5分ほど、しっかり休憩。
ほかの選手も皆、同じ考えのようだ。補給食を口にしてひたすら「うめ〜!」を連呼する選手もw

トイレもしっかり行く。
少し順番待ちがあったので、ストレッチしつつ休憩。
ここを立って待つ選手が多かったけど、自分は座りつつの体力回復をはかる。

スマホから音楽を流しながら通過してゆく外国人選手。
なんか、なんでもアリだなw


準備を整え、リスタート。
結局12分も休んでしまった。

さぁ、いよいよここからが正念場だ。頑張ろう。


河川敷の道は次第に悪路になってゆく。
堤防の道に登るところなんか、舗装も無く、傾斜も急なのでみんなBIKEから降りて、これを押して歩いている。

その直後の追い越し禁止ゾーン:「グリーンゾーン」もちと怖い。
未舗装の道に素材を入れて押し固めた、との説明だったけど、砂利道には変わらないので落車やパンクを警戒して、みなゆっくり走っている。
橋の崩落によるコース変更の余波はここにも。
本当、苦肉のコース設定。。。


ようやく悪路を抜け、市街地を走り、観光客に応援されつつ、辿り着いた100km地点。
しかしついにアドバンテージが無くなる。
さすがにSPエイドで休みすぎたか?

ここからの最大の山場、ニセコのヒルクライム時の想定平均速度は11km/h。
果たしてこの先大丈夫だろうか。


ちなみにサイクルコンピューターと設置距離表示板とのズレも、相変わらず400〜500m程度。
皆生大会のように、「5kmほど短くて済む」というような事は今回は無さそうだ。



公式movieより拝借


ヒルクライムの入り口っぽいところにBIKEスタンド常設の喫茶店がある。
普段は登坂練習客の溜まり場なのだろうか。


本格的な登坂を前にして、少しの登り坂も、まるで整列しているかのようにみんなゆっくり抑えて走っている。



少し暑くなってきたか?
酷暑下の練習を思い出す。
けど、少しずつ曇っていき、気温も下がってきた。登坂にはちょうど良さそうだ。


オートバイのスタッフに抜かれる。
審判かと思いきや、どうやら救護巡回スタッフのようだ。
万全の体制で臨むのは選手だけでは無く、スタッフも一丸となってこの大会を成功させるべく、頑張ってくれている。


ちょっと登って、少し下って、また登って…を繰り返しているうちに、開けた場所に出た。
どうやらこの辺りがニセコスキー場らしい。
気になって少し観察してみると…「花園エリア」かな?
いつか冬のシーズンで来れるといいな。


それにしても道が広い。
冬はこの辺りは車で行列するのだろうか。

空気は少し冷たいが、日差しがあるのでちょうど良い。
快晴のもと、ヒンヤリした空気が気分を爽快にしてくれる。


すがすがしい道から細い道へと進んでゆくあたりで、「ここから気力だ!」というギャラリーのプラカードを見る。
背中を押される気持ちになる。
けど、何気にまだまだ体力は大丈夫。




さぁ、いよいよ本格的な登坂が始まる。

道は狭く、スピードは出ない。

いつもダラダラ登って、ガンガン抜かれるのが練習中の常で、いくばくか情けなさを感じていたけど、ここではほとんどの選手がそんなペースだ。むしろ自分が抜く方が多いかも?


ヒルクライム全体の登坂距離は15km程度。
けど本格的な登坂はせいぜい5kmくらいとの事前情報を得ただけに、どうペース配分すればいいかも何となく体得している。
まぁ基本はひたすらゆっくり、ゆっくりなんだけど。(汗


ひたすらゆっくりペースで走っているうち、「残り2kmくらいですかねぇ?」という会話をしている選手を耳にする。
「いやいや、まだ4kmあるのよん」と心でつぶやく。


曇ってきた。
8月とは言え、さすがに北の大地の高い標高。ちと寒いかな?


EXPOで見たシマノのサポートカーに助けられている選手の姿を見掛ける。
パンクかな?落車かな?
無事最後まで走りきれますように。
共に走る選手はライバルではなく、仲間のような存在でもある。




我慢、ガマン。

なんだかんだで、しょっちゅう練習した大垂水峠と同じ程度の距離だ。

傾斜も思ったほどキツくは無い。平均4%くらいか?キツいところもせいぜい9%程度。
たしかに平地のような踊り場は無いものの、途中でBIKEを降りて休憩したくなるほどのドギついパーセンテージというわけでもない。
せいぜい裏ヤビツ程度だ。

いける、いける。



少し開けたところに出た。これがニセコの山かな?
ここらは傾斜も緩いのでひと段落、といった気分になる。

パッと見、ここからはゲレンデやリフトは見えそうも無い。ちょっぴり残念。


天気は曇りがちで標高も高く、気温もやや低めだったけど、まだ寒いと感じる程までは行かなかいのが救いか。



緩い傾斜になってペースが少し上がり、道を進んでいくと・・・

おや?
前方にどこかで見た看板が見える。


あァ、Googleストリートビューで見た光景だ。
ということは、、、あれ、もう頂上か。
13時17分着目標に対し、10分ほどアドバンテージが出来た。
意外とやるじゃん、俺。



というわけでまたもやBIKEから降りて休憩。
紙コップのレッドブルは3杯も飲んでしまった。
ただ。水の補給が尽きたようだ。(汗
まぁこの先のエイドでもらえばいいか。

ついでにトイレ休憩も。
98kmのエイドでも行ったけど、登坂の疲労回復も兼ねて、少し休みたかったらしい。

上位選手だったら止まらずに行くんだろうなぁ。
なんか休んでばかりだけど、まだ先は長いから、許容範囲内でしっかり休んでおきたい。





トイレを終えて、いざリスタート。

下りながらアームウォーマーを装着。
タイム削減のため、と思っての作戦だけど、トイレ待ちのときに着けておけばよかったな。

長いトンネルを走る。豪雪地帯ならではの雪除けかな?
いつかスキーやスノボで来たいな。


風はやや冷たいけど、ウインドブレーカーを着るほどのモノでは無い。
もし雨だったらそうはいかなかったかも。スピードも抑えるだろう。
登坂で費やしたタイムアドバンテージの回復にも影響がある。

天候に、感謝。



下り側は道幅が広い。2車線で、観光客も多い。
けど、スピードがかなり出ているので、応援には応えられず。


安全運転を促すボランティアや看板。ここで調子に乗ってコケては元も子もない。
せっかく最大の山場が突破できて、あとはいつも通り頑張るだけだから、ここでミスすることだけは避けねば。

とは言え自分の中での安全圏内で、最大限に攻める。
ガンガン抜く。
景色が気持ちいい。
やっぱ下り、大好き。


公式movieより拝借


もしかして同距離の長崎大会の頃よりも強くなった?
ここまで120km走って、おまけに巨大な山も登って、それでも体力・気力ともまだ余裕がある。
…いやいや、まだ残り60kmある。油断大敵だ。


反対側車線を並走する一般車をガンガン抜く。
なんか気持ちいいのでちょっとオーバーペース。

とかやっているうちに下りはおしまい。
やっぱり、当然ながら登りに比べて下りはあっという間だ。



コテージの街並みを走って、少しキツめの登りをゆっくり登る。
このへんもスキー場併設の宿舎なのかな?

なんか、ちょっと疲れてきちゃったかな。
わかっちゃいるけど、下りがまたもやオーバーペースだったか。


けどこの登りも少しの距離で終わり、また田舎道を下りまくる。
基本、次のエイドのある143km地点までは下りメイン。
調子に乗って飛ばし過ぎて体力消耗をしない程度に、タイムを稼いでおきたいところ。


さすがに前後の選手はバラけてきた。
自分のアベレージ速度が遅いからかな?
けど、計算は間違っていないはずだからこのままキープで頑張ろう。



なんか路面が濡れてるな。雨でも降ったかな?
…と思っていたら、残念、雨が降ってきた。

一度はすぐ止んだけど、また降ってきて、、、今度はなかなか止まない。

交通誘導の警官、やけのやんぱちでテンション高いw



しばらくガマンして走っていたら、ようやく雨が止んでくれた。
よかった。
気温も下がってきたな。時刻は13時だから今の時間帯がだいたい、一日で一番気温の上がる頃合いか。
となるとこの後の気温上昇は望めないかも。




疲労感の蓄積を感じつつ辿り着いた143km地点のエイド。



やはり目に見えて出てきた疲労感、、、下りを飛ばし過ぎたかなぁ?
いや、あの山を登りきった嬉しさと、下りの楽しさでテンションが上がってたものが落ち着いて、単にここまでの疲労感を実感しただけかもしれん。

ただいずれにしても「長崎の頃より強くなった」、なんてのはやっぱり調子が良過ぎたか。



延々続く、ダラダラ登り。
標高マップや先人ブログ情報からも警戒していたけど、これに寒さも加わって、みるみる体力を奪ってゆく。
速度もどんどん下がって、15km/hくらいしか出せていない。

ここまで好調を維持してきたトータル平均速度もガリガリ削られる。
目標タイム的にはまだ大丈夫だけど、このままだと先は分からない。

まだ我慢できる寒さだけど、ここからさらに雨に降られたなら、ちとキツいかも。




ボトル2本ともに多めに残っていた水。
低い気温にあって、これはあまり消費しないだろう。
1本を完全に空にして、もう片方は半分くらいに減らして軽量化。
もし足りなければ20km先のエイドでもらえばいい。



かなりキツい。
疲労は溜まる一方。次のエイドではしっかり休むことにしよう。

次のエイド、次のエイド。。。
それだけが今の心の拠り所。



疲労と寒さに翻弄されつつも、なんとか辿り着いた160kmエイド。



完全停止。

ちょうど、BIKEから降りて休んでいる選手がいたので自分も真似をして、いや、それ以上に戦略的「歩道で大の字になる」作戦発動。
大の字になりすぎて、過ぎゆく選手から「大丈夫ですか〜!?」と声を掛けられる有り様。
けどここは「大丈夫で〜す!」と、元気に応える。


3分間、集中して休む。

ガンガン抜かれる。
けど、焦りよりも「まだ自分の周りにはこれだけの選手がいる」という安心感のほうが大きかった。


そして3分経過。
自分で決めたルール。いざ、レース再開。


と、そこから先は下り基調のせいもあるだろうけど、明らかにラクになった。
積極的全力休憩はどうやら大正解のようだ。

曇りがちだが雨に降られることも無く、残り距離を詰めてゆく。



狭い林道、最後の登り。

他の選手と団子状態になる。その中の一人と言葉を交わす。
「最後にこの登りとかって、マゾですよねぇ。」だって。
けど、言われるほどには意外とキツくない。それは、まだ体力的に負けていない証拠だ。

「残り7時間ありゃあ、いけるっしょ!」
そんな会話もあって、元気も出てきた。



これを登りきって、最後の下り坂を飛ばす。
いよいよゴール間近だ!


市街地に出て、沿道のカメラマンを見つけ、手を振る。





前方に、すでにRUNに入っている選手の姿が目に入る。

そしてその手前を左折し、トランジッションエリアの小学校へ。


鬼門のBIKEを無事突破できて、ものすごく嬉しかった。





※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(2.9MB)





目標到達時刻:15時56分より10分以上アドバンテージが作れた。

15時56分ですら、かなりの安全圏内での目標設定。
だからこの後が大きく崩れさえしなければ、絶対に完走できるぞ!


<BIKE記録>
タイム  :  8時01分11秒
ペース  :   22.44km/h
総合順位  : 886位 / 1438人
男性順位  : 820位 / 1257人
年代別順位  : 123位 / 0206人







 トランジッション #2 




ちょっとした坂道になっている小学校の入り口を登り、降車ラインへ。
そしてライン手前で降りて、BIKEを押し歩く。


ボランティアに促されるままに進む、進む…。
なんか、置き場はずいぶんと奥のほうだな。


BIKEこちらでーす、とのボランティアに案内されるがままに、ようやく指定されたバイクラック地点に到着。


公式Facebookより拝借


どうやら奥から順にBIKEをセットさせているようだ。
そうか、この後大型トラックでBIKEをスタートエリアまで輸送するから、ラックのセット場所はべつにゼッケンナンバー順である必要は無いわけだ。


ルールを守って、BIKEをセットしてから最後にヘルメットを脱ぐ。
べつに誰も見ていないけど、なんとなく律儀に守ってみた。どちらかというとたぶん、蓄積された疲労を紛らわせようとする想いからきた“平常の”行動なのだろう。


トイレに寄ってから、トランジッションバッグをピックアップ。
娘のお絵描き付きのバッグは無事そこに待っていた。



着替えエリアに向かう途中、ホワイトボードにペナルティ対象者のゼッケンナンバーが掲示されていた。

BIKE序盤、洞爺湖の周遊道路で鼻水を飛ばした際、オートバイ審判に当たったかなぁ…?という心当たりがあったので、気になって確認したところ、、、
ナンバー表示は無く。

またドラフティングペナルティも無いようだった。
よかった。



賑やかなレッドブルカーのBGMを耳にしながら、寝っころがりながら、補給しながらワセリン、着替え、そしてセルフマッサージ。

BIKEジャージとシューズを脱ぎ、ゆったりしたRUNシャツに着替えたときの解放感。
長丁場のさなかにあって、唯一感じるいっときの達成感。
けどもちろん、レースのゴールはまだ42.2kmの先だ。


解放感ついでにBIKE3分横たわり作戦大成功にかまけてここでもやろうとしたけど、準備しながらの横たわりだけで大丈夫そうだ。



足の裏の痛みはファイテンシールで保護。
SWIMアップ後のときとは違って今度はしっかり貼れた。


準備を進めるさなか、「荷物の取り違いがけっこうある」というボランティアのやりとりを耳にする。
当初からその対策で娘の描いた塗り絵をバッグに貼ったけど、実際はあまり目立たなかったかな?
けど、万一取り違えそうになった人が違和感を感じてくれたなら、それで目的は果たされているはず。


と、ペナルティボックスという名のパイプ椅子に座らされる選手を見る。
なるほど、ああやって5分ペナルティが取られるのか。


後からきた選手がパパッと着替えて、走ってゆく。
自分はと言うと、、、制限まではまだ40分以上アドバンテージがあるが、あまりのんびりし過ぎてもいられない。
ってすでに他の選手と比べて、圧倒的にのんびりしているだろうけど。
でもこの後の長丁場を考えればきっと、活きてくるはず。それにタイムスケジュールも想定通りだ。

だから自分のペースで大丈夫。



ブリーズライトを貼り替え、シューズを履き、薄手の長袖アンダーシャツを腰に巻き、トランジッションバッグをまとめて、いざ出発。

装備に迷ったウエストポーチは、今回はロングレース初めて「無し」で。
その代わり、RUNパンツの小さいポケットに詰め込む。どうせいつもたいして使わないから、アミノバイタル6本、予備のブリーズライト数枚、バンドエイド数枚、葛根湯顆粒タイプを1袋、そして肝心の制限時間メモをA6サイズのビニール袋に入れて突っ込むだけ。

ホントはiPhoneを持って、ヨメさんと娘に現在位置を知らせながら走りたかったけど、この後の長時間を考えて、これも「無し」に。
コースは宿泊ホテル前を通るので、きっとそのあたりで会えるだろう。



バッグを回収ケージに入れる。


公式Facebookより拝借



RUNスタートラインを越える。


いよいよ、最後の試練へと挑んでゆく。




※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(4.1MB)




<Transit #2 記録>
タイム : 18分48秒







 確固たる意思 〜RUN 42.2km〜 




RUNパートに入ってすぐ、最初のエイドがそのスタートラインを超えたすぐの所にある。

SAVASゼリーにVAAMにレッドブル、それから種類少なめの果物類。
ボランティアが少ないためなのだろうか、他のレースと違って今大会は市販の補給食がそのままで置かれている。せいぜいバナナが小さめに切られているくらいか。
給水もポカリスエットやアクエリアスではなくVAAMウォーターやレッドブルなので、なんか新鮮。


公式Facebookより拝借


軽く補給をし、お礼を言って、今度こそRUNスタート。


走り出しは…軽い!過去に無かったことだ。BIKE160kmや200km練習のあと、5kmでも10kmでも、どんなに遅くてもどんなに歩いても、ムリヤリ歩を進めた経験が活きたようだ。なんか嬉しい。
心配の種である肌寒さも、まだTシャツ1枚で大丈夫そうだ。寒くなったら腰に巻いているアンダーシャツを着ればいい。


今回は初めての北海道でのレースとあって、防寒対策に四苦八苦した。スペシャルニーズバッグにアンダーシャツを預け、そこまでこれを使わない、という選択肢もあったけど、回収できるのは遥か30kmの先。きっとその頃は真っ暗で、湖畔の風もあって寒いだろう。だから最初から腰巻きできる、長袖アンダーシャツを装備していく事にした。


制限時間、残り7時間。これがどんなペースなのか。
初フルマラソンである2005年、ホノルルマラソン。あの時はしょっちゅう写真を撮ったり座って休憩したり、とにかく楽しい時間だった。そして最後の10kmをしっかり走って、7時間2分。あれよりも少し早い程度でいい。あのような劇遅なタイムでさえも、今大会の残り時間に対する具体的な最低ラインとして役に立っている。






そしてコース始まっていきなりの登りは、、、歩くw

おぉ、ここってBIKEで走ったところじゃないか。まだまだ序盤で、ペースを抑えて走っていた頃に見た光景。何となく見覚えがある。

ふと、道の脇に控えるは、西濃運輸かどこかの巨大なトラックが数台待機しているのを目にする。そうか、BIKE関門が過ぎたらこれでスタート地点まで運ぶのか。他のロングレースはBIKEフィニッシュ地点とレースフィニッシュ地点が同じか近いものが多い。けど今回は大きく離れているから、こういった作業が必要になるわけだ。

そういえばBIKE預託時、審判と選手との会話で「BIKEの当日返却の希望者用に、とにかく大急ぎでピストン輸送するんですよ」というような会話を耳にした。自分は多くの人と同じように明日の回収だけど、いやはや、裏方もいろいろ大変そうだ。。。



細かなアップダウン。談笑しながら自分をどんどん抜いてゆく選手だけでなく、自分に抜かれる選手も少しいる。けどやはり、RUNが強いのは羨ましい。鉄人を称するのであれば、やっぱりこうじゃなきゃなぁ。。。


コースはしばらくBIKEコースをトレースした後、誘導員に導かれるまま主要道路を離れ、そして砂利道へと進んでゆく。


公式movieより拝借


これが噂の悪路か。。。
コース変更に伴い、どうしてもこのコース設定をせざるを得なかったという苦心の砂利道、その前評判は決して良くは無い。
果たして。



砂利道に入って少しして4kmを示す距離表示板、そしてRUN最初のエイドがあった。




エイドについては少し前に補給したばかりだから、まだそれほど欲してはいなかったけど、何があるか見てみたところ、、、なんと水が無いという。。。
まぁ自分は大丈夫だけど、他の選手の「BIKEの時はスポーツドリンクが無くて、RUNでは水が無いのかぁ」という声が妙に印象的だった。
もちろん、選手たちも「ボランティアが悪いわけでは無い」という理解はしているので大きなトラブルにはならなかったけど、ほんと、なんかいろいろとタイヘンそうだ。。。


公式movieより拝借


補給食を片手に、せっかくなのでトイレの列へ。RUNトランジッションでは行かなかったしね。
と、1基しかない仮設トイレ、その待ち人数は3人程度だったけど、意外と待つことに。まだ行かなくても大丈夫だったかな…?
ここまでのペースも遅めだったから、この待ち時間を少し心配したけど、まぁ完走目的のペース配分をしているから大丈夫だろう。


「長くなりました〜。」と、前の選手が出てくる。
「大丈夫ですよ〜。」と返し、ささっと用を足す。

そして砂利道に向かって走り出す。



車の往来で出来た2本の轍(わだち)。

そのどちらが速くてどちらが遅い、というような棲み分けは特に無いけれど、みんな綺麗にこのいずれかに入って走っている。
そして自分も同じく。


公式movieより拝借


ときおり、轍からそれて草の上を走ってみる。地面が柔らかいからヒザへの負担が軽減するかな?というのがその動機。
けどあまりラクでは無かったというか、むしろ走りづらかったので、すぐに元の轍に戻るw

少しの登りになって、前の選手が歩いていたので、「登りは歩く」作戦発動中の自分も、その選手がいる側の轍に移動して走ってみる。
なんとなく、ね。
そのうちその選手に追い付く。タンクトップが印象的な女子選手だ。自分と同じように、平地は走り、登りは歩く。話せば、やはりそういう作戦らしいw

タンクトップだけで寒くありません?と聞いてみたけど、なんでもこの選手は30km地点のスペシャルニーズバッグに上着を入れているとのこと。元気だな。
たぶん自分はその頃は寒くなっているだろうから、今から腰に巻いているんですよ〜、なんて会話をしながらしばし並走。



そして噂の劇坂。
なんというか、ほとんどトレイルラン状態。いきなりキツいなこれは。先を走っていった選手も、見ればみんな歩いている。

そういえば事前の情報収集で、このキツい登りもそんなに長くない、って書いてあったな。
少し我慢すれば終わるか…?と思いつつ、まるでけもの道のように、森の奥に進んでゆくかのようなその道は、まだまだ続いている。。。
先をゆく選手を観察しても、どうもまだしばらくはこれが続きそうだ。。。

「太朗最悪w」とはタンクトップの女子選手による談笑の言葉。
白戸太朗実行委員長を揶揄するのも、半ばこの状況を楽しんでいる証拠でもある。ある意味、お互い自分の“ペース”には自信があるようだw

そのうち少しだけ自分が先行するようになり、「お先どうぞー」と促され、健闘を誓い合い、先に進む。



森の中を進む限りだったその光景もようやく開けてきて、前をゆく選手が走り出している。
キツかったトレイルはようやく終了のようだ。


これまでの景色とは一転、広大な畑が広がる。
そしてそのすぐ先に2回目のエイドがあった。けど、ここは1回目の反省をふまえ、短めに補給。そして先へと進む。

それにしても、登りは歩く作戦は相変わらずだけど、思っていた以上に長かったな。


というか、距離表示板が無い。もしかしてまだ5kmになっていないのだろうか。
1回目のエイドが4kmだったから、まさかそんな事は無いと思うけど、ひょっとするとトレイルラン地帯が実は体力を消耗するだけで、実に短い距離しか過ぎていないのかもしれない。
もしそうだとしたら、さすがにこのペースではあまりにも遅い。
いくらトレイル全歩きを前提としたタイムを組んでいる、とは言ってもだ。

せっかく苦難のBIKEを抜けたのに、ここでレースを落としたら泣くに泣けない。このままダラダラしたペースだとマジで落とすぞ!気を抜くな!


と、そんなときに足の裏に違和感が。ファイテンシールが剥がれたかな?
コース脇に座って靴を脱ぎ、これを剥がしてまた走り出してみる。
…けど、変わらない。
もう一度靴を脱いで、靴を逆さにしてトントンしてみる。どうやら砂利が入り込んだだけだったようだ。ファイテンシール、剥がして失敗だったかな。。。けど、また貼るために靴を脱ぐのはさすがに時間がもったいない。
一瞬迷ったけど、べつに今これが痛いわけでも無い。このままの状態で行こう。

そんなこんなをしている間に、例の女子選手が抜いていった。追い付こうか(ペースメーカーにしようか)とも思ったけど、やはり平地では彼女のほうが早いようだ。自分は自分のペースでいこう。



広大な畑ゾーンを進む。
トラクターや農作業車を誘導するためだろうか、ポツンと立つ警備員の応援を受け、まっすぐの道を進む。

このあたりも意外と細かなアップダウンがある。トレイルラン地帯を過ぎればもうあとは平地と下りだけだと思ったけど、案外そうでは無かったな。


道はT字路に続き、その一帯で応援するギャラリーたちに背を押されながらこれを右折し、先へと進む。


時間に対する心配を抱きながら、けどペースは崩さないように走ることしばらく。ようやくの距離表示板を発見。
その距離は…5kmではなく、7kmだった。よかった。。。



ウォッチを確認する。
7kmでこの位のタイムであれば、目標よりもだいたい15分ほど早い。でも全体を考えれば、今から45分ほど後ろに関門が迫ってきている。。こぇえええ。
目標タイム設定は比較的安全圏内で作っているけど、やはり高低差や実際の疲労感を伴わない机上の空論と現実とでは違う。
ちょっと油断してたかもしれないな。今のペースならばまだ大丈夫だけど、もう少し危機感を持って走ろう。。。


公式movieより拝借


距離表示板に続く、ちょっとキツめの登り坂を抜けると、前方にボランティアが右折を促している。なんでも、歩道を走ってください、とな。

そして車道2車線の大きな道に出る。
前の選手に続き、歩道を走る。
行き交う車から時おり、声援を受ける。嬉しい。


ていうかここもアップダウンが微妙にある。
道を登って、雄大な景色をちょっぴり感じて、道なりにこれを下る。
風通しが良いからこの辺りは少し、風が吹いている。


下ったその先で、ボランティアが車の往来をみて、タイミングを図って交通規制、選手に道を横断させている。
…っと、選手が続くとそれを優先させるため、しばらく車を止めて、、、やや渋滞気味だ。けど、そんな車の中からも声援が飛ぶ。ありがたい。


ボランティアに促され、車道を横切り、また畑の道へと進む。
っと、ここもいきなりの登りが。
登りは、歩く。
またもや抜かれまくるけど、大丈夫。



公式movieより拝借


広大に広がる、陽の暮れ始めた畑を進むことしばらく。
ようやくの10km表示板、そしてそのすぐ手前に3回目のエイドステーションに到達。



VAAMとレッドブルを1個ずつ差し出す2人のボランティア女子高生。
どっちにしようかな…こっち。と、レッドブルを取ったら「いぇ〜い。勝ち〜。」だって。
ボランティアにとっても長丁場にあって、それぞれが思い思いの楽しみ方をしているようだ。

お礼を言って先を目指す。



10km表示板の真横でようやく、ウォッチのラップを刻む。
ここまで1時間31分=キロ9分はさすがにちょっと遅過ぎか。けど、トレイル地帯を考慮すれば許容範囲だし、目標ペースに対してもまだアドバンテージがあるから、このままペースを刻めればきっと大丈夫だろう。

ここからもう少しすると強烈な下り坂があるはずだ。それを抜ければいよいよ洞爺湖の湖畔沿いコース。
そこまで行けば14km。残り30kmを切って、気分も変わるだろう。



少しずつ陽が沈み、気温が下がってきた。けど、アンダーシャツを着るにはまだ大丈夫そうだ。


ずっとずっと広がる畑、そして牧場沿いの道を進み、車道沿いの歩道へとコースは続く。

車道の交差点を警官が交通規制して、ボクらの道を作ってくれる。
そしてその先、長い下り道にようやく辿り着いた。


下りの傾斜はそこそこあるようだ。そしてこれがずっと続いている。
ついついスピードが上がるけど、中には歩いている選手もいる。それを見て、まだ先は長いことを思い出し、ときおり意図的に時々歩くようにする。下りの膝への負担は意外と大きいからね。

タンクトップの外国人選手に抜かれる。よく寒くないな。まだ軽く汗ばむ気温だけど、この先はだいぶ下がるだろうから…などと思っているとガンガン抜かれるので、少し走るようにしたw


ブッブッ、と屁が出る。
昔から不思議とRUN中によく屁をこくんだけど、身体がお腹の調子を整えてくれているのかな?

と、ふと後方から屁をこく音が。これは俺の屁じゃないからw




下り坂の景色の切れ間から洞爺湖と、その中央に構える中島の姿が見える。
いよいよ帰ってきたか。
そういえば何となく、この風景やカーブの感触に憶えがある。もしかしたらBIKE序盤の、最初の登坂がここかもしれない。
とすると、、、下りはまだもう少しありそうだ。


下り坂でスピードを軽く出しつつ、同時にこれを抑えながら少しずつ標高を下げてゆく。

ふと、こちらが歩いているときに抜いていったカップル選手。夫婦だろうか。
そういえば車道を横断するあたりで抜いたっけかな。だいたい同じようなペースのようだから、この後も抜きつ抜かれつになるのかも。



前方に、なにやら見慣れた看板が見える。14kmを示す、距離表示板だ。とすると湖畔まではあと、もう少し。

ていうかラップ、刻みづらいな。ここまでの表示板は1・4・7・10・14kmと、、、どんな法則だ?マイルでも無さそうだし。BIKEの表示板はかなりキッチリしていたのに。それに、この辺りにエイドがあるハズだけどそれも無い。なんかいろいろフランク(テキトーw)だな。

ひとまずウォッチのラップはそのまま回し続けることに。全体的にフランクだと感じるのも、むしろ日本の他の大会が恵まれ過ぎているからかな?などと思いながらも、15kmや20kmもしくはハーフポイントあたりに表示板があることを願いつつ、歩を進める。



一気に坂道を下り、上空から望む洞爺湖への視点がどんどん低くなってゆくことを実感する。

看板や自販機、公共施設に民家。人の生息する、文明圏へと近付くことを実感する。


そしてついに下り坂の終点を示す、青い道路案内板に到達。
草木溢れる大自然から人々が息づく大地へと、舞台は次のステージへ突入する。

道路案内板、そのT字路に描かれた右手の先に、最終目的地がある。
けど、まずはこれを左折してしばらく進み、折り返し地点を目指す。



公式movieより拝借


この辺りはさすがに、沿道の声援やボランティアが多い。そしてここからはずっと平坦だ。ペースも掴みやすいだろう。


道路脇の歩道を進む。観光客の姿もそこそこある。ひょっとすると、BIKE最初のエイドはこのあたりだったのかもしれない。
応援の声が、これまた新鮮で嬉しくなる。

そういえばトランジッションで貼り替えたブリーズライトはまだくっ付いている。さすがは正規品だ。最後まで持つかな?


歩道を走ること数分。
ボランティアに案内されるがまま、湖畔沿いへと向かってゆく。


公式movieより拝借


そしてその曲がり角すぐに設置されたエイドのお世話になる。



公式movieより拝借


ていうかエイドのにーちゃん、テンション高w

ひょっとするとボランティアの従事も少なからず「キツい」と感じることもあるのでは?と勝手に心配したりしただけに、こうして楽しんでくれている姿を見て、なんかホッとしたり。

にーちゃんオススメのスポーツようかんを頬張り、VAAMを口にする。
冷たいスポンジも用意されていたけど、さすがにそれは寒いかな。

お礼を言って、道を進む。



コースは湖畔沿いの遊歩道へ。
遊歩道に入ってすぐ、その脇で公式カメラマンが走りゆく選手の姿を撮影している。どうやら、折り返し地点を戻ってくる選手に照準を合わせているようだ。
陽はほとんど沈み、闇を迎えるまでの、ひとときの夕暮れ。果たして暗くなる前までに復路の撮影をしてもらえるだろうか。


心配していた湖畔沿いの、湖からの風は今のところ寒くは無い。アンダーシャツを着るにもまだ早そうだ。

往路、復路を行き交う選手たち。ここまであまり周囲に選手がいない状態での走りだっただけに、人が多いと何となく安心感を抱くものだ。



遊歩道が終わり、洞爺湖の車道…周遊道路に出る。
そこから見た光景、それはBIKE序盤で目にしたRUNコースそのものだ。
ようやくここまで戻ってこれた。

折り返し地点まではどれ位の距離があるだろうか。
往路の、自分の先をゆく選手を観察しながらしばらく走ってみたものの、その選手たちはなかなか戻ってこない。意外と距離がありそうだ。

行き交う選手たち、その表情はみなそれぞれだけど、この時間帯はまだ制限時間に余裕があり、かと言って上位を狙うには程遠い。だからか、各々の自己目標に向けて「無理せず完走する」という雰囲気が何となく感じ取れた。いや、単に自分がそういう心境だからかな?

ペースは悪くない。身体の調子や、心配の種であるカカトの裏の痛みも大丈夫そうだ。
たまにピクッと痛みを感じる事もあるので、そんな時は無理せず歩くようにしている。


往路の反対側である復路のほうを向いて、距離表示板が設置されている。
振り返ってその距離を確認。16kmだ。という事はまたもやキリのいい距離でのラップは刻めそうも無いな。。。


裏返しの16km表示板から少し先にようやく、折り返し地点が見えてきた。
その場所はBIKE序盤でも見かけた、あの公園だ。



計測ラインも、ちょうど折り返す箇所に設置されている。
それにしてもずいぶんとこぢんまりしているな。他のレースではよく設置されているタイム表示も、ここには無いし、距離表示板も無いので正確な距離もよく分からない。
ただ、ペースは悪くない。キリのいい距離表示板が無かったから詳しいペースは分からないけど、ふだん走っているノロノロペースとだいたい同じだろう。
すっかりタイムを意識した、速いペースでの練習をしなくなったけど、この長丁場にあって、だいたい普段と同じ感覚なら良い感じだ。


公園備え付けのトイレに寄る。
こちらはガラガラ。さほど尿意は無かったけど、行けるときに行っておくに越したことは無い。

手を洗って、建物から出るときに他の選手とすれ違う。考える事はみんな一緒だなw



コースに戻り、折り返しコースを戻ってゆく。

そして間もなく16km表示板を通過。
ウォッチを確認し、ランパンツのポケットにしのばせた目標タイムメモと照らし合わせる。
ざっくりだけど、おおよその目標設定タイムよりもだいたい15分くらいアドバンテージはありそうだ。
そもそもその目標設定が、毎度のことながらかなり甘い、安全圏の設定をしている。
予想以上のアップダウンに翻弄された前半と違って、ここから先はほとんど平坦な道だからベースも刻みやすいだろう。


長い下り坂で抜かれたカップルを抜く。

往路からは、まだまだ多くの選手がこちらに走って来る。
安心感。



黙々と走ることしばし。
もう遊歩道に戻ってきた。これに限った事じゃ無いけど、不思議と帰り道は早く感じる。

湖畔沿いの道を走る。
湖の波は静かで、風も穏やかで。
夕方と夜の間の薄暗い時間帯、それぞれの目標に向かって黙々と走る選手たちを優しく見守っている。


エイド近くまで戻ってきた。
往路で見掛けたカメラマンを見付ける。
薄暗い中、うまく撮ってもらえただろうか。




そしてエイド到着。
VAAMゼリーとレッドブル入りの紙コップを手に、近くのベンチに座って少しだけ小休止。

皆生大会では、多くのエイドで休み過ぎたから予想よりタイムがかさんでしまった。まぁあれは暑さゆえの水分補給→トイレ回数が多かったせいもあるけど。
なので今回はあまり休み過ぎないようにしたい。


休憩を早めに切り上げ、T字路の道路案内板を越えて、いよいよゴールの方角に向かって走ってゆく。

ガランとした歩道、スローベースで走る選手たち。
陽の沈みきった空は夜の訪れを少しずつ迎え、湖からの冷たい風はしかし、まだ体温を奪うほどでも無く、やや汗ばんだ身体を心地よく通り過ぎてゆく。


ガランとした湖畔、点在する観光客、そしてボランティア、、、辿り着いたエイドステーション。
軽めに補給をして、先を目指す。

エイド脇に設置されたベンチに腰掛ける選手もいる。そしてその労をねぎらうボランティアの姿。


まっすぐに続く車道のコースはやがて道をそれ、細い林間の道へと舞台を移す。
それはセンターラインも無い、湖畔沿いの遊歩道だった。



大会プログラムによるとここは、木々に囲まれたトンネルのような道で、涼しく走りやすいのとことだけど、それも昼間の事だろう。
夜を迎えつつある時間帯に於いてはむしろその木々は、湖からの風を緩和する役目を果たしてくれることを期待する存在だ。


すっかり暗くなった。
けどその道には街灯も無く、およそ50mおきに設置された自家発電の灯りと、赤い三角コーンがぼんやりと光るだけ。
点在する心細いこの灯りだけがその道しるべとなり、孤独な選手たちのゆく道を示している。

事前の情報収集では、ここから先は夜になると選手お互いの顔も分からないほど暗いとのことだったけど、なるほど確かにこの暗さでは、それも決して誇張では無さそうだ。


穏やかな波の音、時々ざわめく木の葉の音だけが聞こえる、不思議な空間。
周辺住民や観光客はおろか、ボランティアさえもいない暗い道を、選手ひとりひとりが、それぞれの足音を刻みながら、それぞれが同じ目的地を目指す。


辛うじて木々の輪郭が見えていたその風景もいよいよ真っ暗闇になる。
もともり若干の暗所恐怖症。
自宅近所にある、木々の生い茂る公園を夜ひとりで走る練習も少ししたけれど、同じ闇でも不思議とこちらは恐怖心が微塵も無く。


道は意外とくねくねとしている。
しかも暗い割りに、湖にむき出しの崖のような状態になっているところもあるのでボーッとしていると危ないかもしれない。

そんな木々の切れ端、湖から望む光景の遠い先に、点々と光り輝く一帯が見える。きっとあれが温泉街、ボクらの最終目的地なのだろう。
車で下見で走ったときはあっという間だった湖畔沿いの道も、今走っている最もローテクな移動手段では遥か遠くに感じる。


気温もだいぶ下がってきた。
腰に巻いていた長袖アンダーシャツを着込む。
30km地点のスペシャルニーズバッグまではまだ遠い。やはり腰に巻いておいてよかった。

トレイルランでしばらく一緒だったあの女性選手は、今頃どのあたりまで進んだだろうか。
寒さに震えてなければいいけれど。


木々に囲まれたトンネル。
その枝葉が、月の明かりさえも遮り、漆黒の世界を作り出す。
その中でポツンと灯る明かりを頼りに、少しずつ、少しずつその小さな歩を進めてゆく。

その暗さは、「進んでいる」という実感をも感じさせないほどの、闇。


そんな静寂の夜道にあって、前方にひときわ輝く光、そして話し声が聞こえてくる。
エイドステーションだ。
無意識にも、これに吸い寄せられてゆく。あたかもそれが、心の拠り所であるかのように。


久しぶりにも感じる、ボランティアとの触れ合い。
補給をしながらの、しばしの休憩。
わずかばかりの安息。

休憩をしているうちにも選手が来ては、進んでゆく。
その表情はやはり「ようやく一息つける」という、ある種の安堵感が見られる。

補給しながら地面に座ってストレッチをする選手もいる。
かなり辛そうだ。けど、制限時間まではまだまだ余裕がある。
一人でも多くの戦友が完走できますように。


エイドでのグッズに、カラフルに光るライトの棒が何本か用意されていた。
なるほど、選手同士ぶつからないための目印みたいなものか。
少し迷ったけど、どうもモノを持ちながら走るのは苦手だ。特に必須というわけでも無いようなので、ここは辞退。

そして先へと進む。



しばらく進むと、距離表示板が設置されていた。果たして何km地点だろうか…。
おっ、もう25kmまで来ていたのか。10km表示板以来、やっとマトモなところでウォッチのラップを刻める。



この15km区間を約2時間6分。5kmにして42分か。
小さな明かりに目標タイムメモを照らして、自己設定ペースを確認する。
相変わらず、湖畔に着いた頃から一緒で15分前後のアドバンテージがあるままのペースだ。

終盤に近付くにつれて甘いタイム設定にしているので、普段ならアドバンテージが広がっていくんだけど、今回はどうも勝手が違うようだ。
ただ今回は序盤の登坂にかなり余裕を持たせたぶん、後半は甘くし過ぎない設定にしたから、まぁだいたいこれ位なのだろう。それよりも、いつもの「制限時間の波に追いかけられるような焦燥感」はあまり感じない。


気温が程よく低めなので発汗も少なめで、ここまでの体力消耗は思ったほどでは無い。けど、カカトの痛みやヒザの痛みを少しでも感じたら大事をとって少しだけ歩くようにしている。だから、真っ暗闇にあって先行きの不安を完全払拭はできないながらも、不思議と落ち着いている。


黙々と走る選手たち。だいたいペースは同じ程度なので、自分が抜いて、しばらくして少し歩いているとまた抜かれたり、さっき自分を抜いていった選手が気付けば歩いていてまた追い抜いたり、といった具合だ。


そうこうしているうちに雨が降ってきた。できれば止んでもらいたいところだ。。。

願いが叶ったのか一度は止んだ雨も、その雨足は微弱ながらも降り続く。


やや気持ちが萎えつつもしばらく走ると、ぼんやりと光る大きな三角コーンが見えてきた。
ゴールエリアの温泉街から戻ってくる選手たちの、最後の折り返し地点だ。
それまでずっと同じ方向を向いて黙々と走ってきただけに、正面から絶え間なくやってくる選手たちを見ると、やはり安心感が芽生えるものだ。
想像を遥かに超えた真っ暗闇にあって、また少し元気になる。


カラフルに光るライトを持って走る選手もそこそこ多い。
中には自前のヘッドライトを付けて走る外国人選手もいる。なんて用意周到なんだw


折り返し地点を過ぎて少しの場所に37kmを示す距離表示板。
この先のゴール地点まで行って、そこで栄光のフィニッシュエリアを横目に引き返して、またここまで戻って来た選手に対する距離表示だ。
今この折り返し地点を回る選手たちにとって、残り5km。羨ましい。
自分も必ずやこの距離を…刻みたい。


距離表示板のすぐそばにエイドステーション。
そこでは暖かいオニオンスープが振舞われていた。いや、少しぬるくなっていたか。けど、低い気温と小雨に降られてきた身体にこれはありがたい。
他の選手も「どの補給食よりも一番美味しい」と言ってたけど、ホントその通りだ。

ところでエイドの机の上には、ほのかな灯りを輝かせるランタンも置かれている。真っ暗な中、ほんとりとした灯りにともされてホットスープを飲んでいると、なんだかキャンプにでも来たような気になる。
明かりの確保をはじめとしたインフラはどうしても限界があるけど、これはこれで楽しい。


スープを飲んで、隣に設置された仮設トイレへ。
扉を閉めると真っ暗になるので、少し開けたまま用を足す。

そして再出発。



静寂に囲まれた自然のトンネルを、多くの足音が行き交う。
雨は残念ながら止みそうもないけれど、枝葉が若干、雨除けの屋根になっている、かな?


道沿いにバンガローや小屋、それから店舗らしき建物が点在する。
企業の保養所もあるようだ。
少しずつ、人の息吹を感じながら温泉街を目指す。



前方がやや騒がしい。

進むにつれ、車が水しぶきを上げて走る音だと分かる。
どうやら車道に出るようだ。

国道230号。BIKEコース下見に行こうと、何回か車で走ったところに出てきた。
その光景の記憶は昼間のものだけど、なんとなく見覚えがある。とすると・・・残り距離もなんとなく想像がつく。
温泉街まで、あともう少し。


車道の歩道を走る。
狭い歩道をさらに往復コースとして、センターライン代わりの三角コーンがずらりと立ち並ぶものだから、2列に並んで走るというか、抜いたり抜かれたりするのでやっとの幅だ。
特に前方からこちらに来るほうのコースの一部は車道側を走るんだけど、さすがに夜とはいえ国道を大幅に交通規制できないためか、そちらは一列で走る程度の幅しか確保されていない。
そのくせ車はけっこうなスピードを出しているので、ちょっぴり怖いかも。


歩道側のフェンスには赤・緑・青といった色とりどりの小さな明かりがキラキラと光っている。
そしてこれがずらーーーっと並んでいて、その光で明るさを確保する…つもりだろうけど、どうも目がチカチカしてしまう。
それに肝心の光が弱く、明るさを確保するだけの明るさには程遠い。
加えて足元の路面状況や段差把握ははっきり言って全く見えないので、これもちと怖い。。。

そのためか、意外とこのエリアはボランティアが点在していて、足元を取られそうな段差付近で注意を促している。
小雨とはいえ、「段差ありま〜す。注意してくださ〜い」と、暗く寒い中数時間も言い続けるのはしんどいだろう。。。

ボクらが安心して走れるようにと、運営側も頑張ってくれている。




暗さと狭さと眩しさと。
環境は決して良いとは言えないけど、ここまでの漆黒の闇から賑やかな世界に出てきたようで、気分転換になる。
周りのペースにも引っ張られるように、良い感じでテンポを刻めている。


そして見えてきた、見覚えのある青い道路案内板。
ここを右折すれば高速道路に乗れる、T字路の案内板だ。
初日、レンタカーを借りてここから来たときは、「いよいよ辿り着いた」という気持ちで感無量だった。
そして今、違った感触でこの感無量を味わっている。

まだゴールまで15kmくらいあるけれど、よく知っている場所に戻ってくる事ができて、嬉しさもひとしおだった。
ここからあと少しで、レーススタート地点の有珠山噴火公園に辿り着ける。


さすが公園近辺になると、ギャラリーも増えてくる。
そして遠くのほうで、流れる賑やかな音楽が聞こえる。

公園入り口の少し手前に設置された40km表示板を過ぎて、いよいよ公園に入ってゆく。


小さな白いランタンが公園内の歩道、その両サイドをずらりと照らしている。
早朝、SWIMスタートエリアに移動するときに見た光景、そこを今走っている。
かれこれ10数時間も前のことだ。
あのときは目の前の準備で精一杯だったけど、同じ光景を異なる時間帯、異なる境遇で体感するのはなんとも不思議な感じがする。


公園に入って、ありがたいことに雨が止んでいた。

賑やかな音楽はどんどん近付いてきて、、、そしてBIKEラックエリアの前にスペシャルニーズバッグの置かれたエイドに辿り着く。
ここらはすっかり賑やかで、明るくて、活気に満ちている。


ゼッケンナンバーをボランティアに伝え、SPバッグを受け取る。
えぇと、何を預けていたっけ。。。あァそうだ、アンダーシャツをもう一枚、念のため入れてたっけかな。

これを取り出し、着込む。
バッグには他にもジャージズボンと、ビニール雨ガッパも入れていた。けど、ズボンを履くほどの寒さでは無いからこれはそのままでいいか。
特に、長崎大会と違ってバッグをまたボランティアに預け戻すことができるし、基本的に廃棄もされないらしいので、これは今回は使わずに済みそうだ。



そういえば走っているうちに剥がれかけてきたブリーズライト。
雨も降ってるし、この先も大丈夫そうだろう、ということで剥がす。

予備は持っているけど、このままでもいけそうだ。


懐かしい光景を横目に、先に進む。
と、その途中にペナルティ対象ナンバーが書かれたホワイトボードを目にする。
BIKE〜RUNトランジッションで見たものと同じ内容だ。こんなところにまであるとは思わなかった。
念のため番号を確認したけど、幸いにも自分の番号の掲載は無かった。トランジッションでペナルティタイムを受けなかった選手用、かな?



そして洞爺湖畔の遊歩道へ。

その入り口付近、宿泊ホテル前で見慣れた2人の姿を目にする。


ヨメさんと娘がいる!


ずっと待っていてくれたようだ。
嬉しくて、嬉しくて。。。
レースも忘れて、その邂逅の幸せをしばし噛みしめる。

ヨメさんと言葉を交わし、そして娘には「大きくなったら一緒に走ろうね」と言って、わけも分からず「うん」と言わせたり。

将来・・・本当に一緒に走れるようなことがあったら。。。
お父ちゃんとして、これほど嬉しいことはない。


ヨメさんとの談笑もそこそこに、次の折り返し予想時間、そして完走の予想時間を伝えて先に進むことに。



明るくて、賑やかで賑やかで、ギャラリーも多くて、とにかく楽しい。


初日、花火を見るために歩いた夜の遊歩道。
そこをトレースするように軽快な歩を進めてゆく。




そして30kmの距離表示板を目にする。

ここまでの5km区間、そのタイムは40分ちょうど。目標ペース通りだ。
30kmポイントでの目標到達タイムに対しても、相変わらず15分程度の前倒しのままで来れている。


遊覧船の乗船場所を通る。
20時45分から打ち上げられる花火を遊覧船から鑑賞するツアーへの参加は残念ながら叶わなかった。

遊覧船に乗るための乗客が、スタッフに誘導されて、キリのいいタイミングでダッシュでコースを横切る。
なんか急かせて悪いね。。。。けど、ボクら選手通過待ち状態の観光客からも「頑張れ〜」と声援を受けたのは嬉しかった。
都合よく花火をバックにゴールするにはあと1時間以上早い必要があるけど、この後のコースのどこかで聞こえる花火の音はきっと、漆黒の闇夜の良いアクセントになることだろう。



賑やかな音楽が一帯に流れている。どうやらその音源は他でもない、栄光のフィニッシュエリアからのもののようだ。

すでに完走した選手たち、その仲間たちが沿道にずらりと並んで、まだ見ぬ「完走」を目指して歩を進める選手たちを鼓舞してくれる。
とにかく、嬉しくて楽しくて仕方ない。


そしていよいよの折り返し地点。




フィニッシュエリア直前での、まるで追い返されるかのようなその場所には、ここもやはりタイム表示板のようなものは無く、いつもの赤い三角コーンが置かれて、審判員が誘導しているだけだった。

っと、何となく前の選手につられて、折り返しラインを少しオーバーにまわってしまったw
まぁショートカットよりはマシかと思って。




※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(3.5MB)





折り返しての遊歩道は、沿道のギャラリーがいる側を走る。ということはもちろん…彼ら彼女らとハイタッチラッシュw



遊歩道を進む。
賑やかな音と光が少しずつ、少しずつ遠ざかることに若干の寂しさを覚える。
けどそれは、「必ずここにまた戻ってくる!」という確固たる意思となって、力強くその歩を進めてゆく。



温泉街の端に位置する宿泊ホテル前まで戻ってくる。

そこでヨメさんと娘に再び会う。


ゴール予定はあと80〜90分くらいかな?
なのでその頃を見計らって、フィニッシュエリアまで移動しておいてもらうよう伝え、、、ふたたび暗闇に向かって突き進む。

ここから6km戻って、折り返して、また6km走れば栄光のフィニッシュだ。



スペシャルニーズバッグ受領ポイント再び。
雨はまた少し降ってきたけどその雨足は弱く、ほかに受け取る物も無いのでここはそのまま通過。


公園を出て、国道230号線を走る。
今度は車道側を走るからちょっぴり怖い。

暗く狭い道、ほとんど見えない路面をときどき往来する車のヘッドライトに明るく照らしてもらいつつ、まずは湖畔の遊歩道を目指す。


「この辺は雨が止んでるんですね。」
復路を戻って来る選手の会話。
とすると、、、この先はまた雨が降っているんだろうか。


色とりどりの小さな明かりを頼りに、道を進む。


水しぶきの音をあげながら走って来る車、黙々と走る選手たち、誘導するボランティア。
歩く選手、最後とばかりにペースを上げて抜いてゆく選手。
自分もときどき歩きつつも、この一帯は歩くと他の選手の邪魔になりがちなので、出来るだけ走るように心掛ける。


そしてコースはふたたび遊歩道にそれてゆく。
ここから先はまた静寂の世界だ。


小雨だった雨足がまた少し強くなってきた。
上部を覆う木の葉を傘替わりに、その下を意識して走る。
といってもほとんど気休め程度にしかならないけど。


遠く、後方で花火が打ち上げられる音が聴こえる。
20時45分になったか。

その方角に目をやるも、雨雲りのせいでここからはぼんやりとしか見えない。
けどそのぶん、音は良く聴こえる。
21時05分に終了だから、これが終わって1時間くらい走ればゴールできそうだ。


放たれた光が、薄暗い雲の輪郭を色とりどりに浮かび上がらせる。
初日と2日目に見た花火、それがどれくらいの間隔、リズムで打ち上げられるかは何となく把握している。

ここまで頑張ってきた選手を祝福するかのような、けどゆっくりした間隔での花火の音に後押しされながら、闇を進んでゆく。



それにしても雨が止まない。
せっかくスペシャルニーズバッグにカッパを入れておいたのに、どうして使わなかったんだろう、、、と若干の後悔。
けどまぁ、特段寒くもないし、雨足も弱いほうだ。あと1時間くらいならいけるだろう。


折り返しまでの中間あたりにあるエイド。
「もうバナナ最後で〜す」と、ボランティア。なんでも途中で尽きて、どこかから補充してきたけど、それももう最後らしい。
それと、数本あるエアーサロンパスのスプレー缶もほとんど空っぽだ。

なんか今回のエイドは終始、何かと足りない感じがしたな。けど自分にとっての必要な補給食は問題無かった。

いろいろな境遇にある選手に、足りない環境下で精一杯奉仕しようと苦心してくれたボランティアに、感謝。
小さく切られたバナナをひとつ、頬張って前に進む。



往復コースの最初のときは、2周目の選手を羨ましく思っていたけど、今や自分がその距離まで来ている。
1周目に見た光景を再び巻き戻しながら、折り返し地点を目指す。


RUN中盤、長い下り坂から洞爺湖畔に出てからの片道2kmの往復コース、その復路は短く感じたけど、こちらの片道6kmの往復コースはやや長く感じる。
やはり真っ暗な道だから景色が全く見えないし、飽きてきているのかもしれない。
見えるのは自家発電の灯り、選手のカラフル棒の灯り。

折り返し地点でぼんやりと光る、ひときわ大きな赤い三角コーンが目に入ってくるのを目指しながら、暗闇をかき分けて進んでゆく。



身体はすっかり雨に濡れてしまった。
けどズブ濡れという状態ではないし、靴も水をさほど含んでいないので、走るたびにグジュッグジュッとするあの気持ち悪さも無い。
若干の肌寒さはあり、雨ガッパを着なかった後悔も多少する事はあれど、この程度であれば最後までこのままいけそうだ。


反対側のコースを、あのカップル選手が走ってゆく。
やはり向こうのほうが速かったか。
けど、それほどペースに差は無さそうだから、折り返し地点はもうそろそろ…かな?



何となく見覚えのある光景、、、エイドの明かりが見えてきた。
ということは折り返し地点までは、あともう少しだ。


軽くエイドで補給して、ストレッチして、お礼を言って、前を目指す。
往復コースのそれぞれにエイドがあるので、必然的に明るく、賑やかになる。
漆黒の世界にあって、活気があるのはありがたい事だ。



センターライン代わりに小さな三角コーンがずらりと並び、間もなくの折り返し地点の接近を示してくれている。


そしてようやく辿り着いた赤い三角コーンの折り返し。
ボランティアや審判員にねぎらいの言葉を掛けてもらいつつ、これをぐるりと回る。


そしてその先の37km表示板を過ぎてゆく。





1周目のエイドでお世話になったホットスープ、これは2周目も健在だった。どうやらお湯が湧きたてだったらしく、アツアツだったけど冷え込んだ身体にこれはありがたい。
ヤケドしないよう少しずつこれをいただいて、そしてお礼を言って前に進む。


ここまで来ればもう、ほぼ完走は確実だ。
残り5kmを全部歩いても完走できる。もちろん、走れる限りは走るけど。
実際、今は時々歩く程度で、基本走り続けることができている。

気持ちはもう、いつものように「ゴールの瞬間をどういうタイミングで入って、どう写真を撮ってもらうか」という思考ばかりを巡らせているw



思えば初めてのロング完走を果たした宮古島大会、そして初めてのアイアンマンディスタンスを完走し、ヨメさんと一緒にゴールした長崎大会を最後に、心底完走の喜びを爆発させるような感覚にまでは到達していないような気がする。

ロング3大会目だった皆生大会はその総距離がやや短いこともあってか、タイム的に比較的余裕のある完走だった。
準備に準備を重ねて、こうしてタイム的に余裕をもって完走しようとしている今回の大会も・・・「アイアンマン」の称号獲得を渇望しているとは言え、レース自体はBIKEのヒルクライムを突破したあたりから気持ちにだいぶ余裕を持てていた。
まぁRUN序盤の難度の高さに若干不安になった時もあったけど。

なんというか、未知の世界に挑むときの、ギリギリの戦いをしていた頃とは違って、全体像をなんとなく「知ってしまっている」今の自分にとって、本当に心から満足できるのはどんな時なんだろう。。。

老人が若人に向けての「君たちは良いね、知らないことがまだまだ沢山あって」という逸話があるけど、「知ってしまっている」ということは、経験という名のチカラになる事もあるけれど、喜びの感情には直結しないある種の寂しさがある。。。

だとしたら今の自分を満足させるのは、もっとタイムを狙って、知られざる上位の世界で闘い、その目標を達成することになるのだろうか。

それがアイアンマン・ハワイ・ワールドチャンピオンシップの出場権獲得のための熾烈な闘いだとしたならば・・・それはきっとこれまでとは違った喜びを感じるに違いない。

そんな日が来ることを夢見つつ、まずは目の前に迫る夢を掴むべく、前へと進む。




暗闇での最後のエイドステーション、その補給もそこそこに、目指すべき地へと歩を進める。
エイドのボランティアも、その裏で早くも片付けを始めている。
制限時間を過ぎて、完全に選手が去るのは23時頃になることだろう。それから撤収して帰路につくとなると、帰宅はだいぶ遅くなるだろう。

他のロング大会と違ってアイアンマンレースの制限時間は17時間。
長時間に及ぶ闘いは選手だけでなく、ボランティアにとっても長い長い闘いだ。だから特にボランティアと触れ合う機会の多いRUNエイドでは出来るだけ、お礼を言うようにしている。



2周目の闇の道もだいぶ進んできた。もうしばらくすると国道に出る頃か。

すれ違う選手の数、その人数も幾分減ってきたようだ。
途中関門に設けられた制限時間の波に飲まれつつあるのかもしれない。
一人でも多く、完走できますよう。



前方から水しぶきをあげながら走る車の音が聞こえる。国道230号線との合流だ。

カラフルにチカチカと光るライトが、1周目と変わらずボクらの道しるべとなって、一直線にその道を示している。


降りしきる小雨の中、ただ黙々と前に進む。
すでに経験済みのそのコースは、やはり不思議とその距離を短く感じさせてくれる。


気付けばもう、高速道路に向かうT字路の案内板にまで戻ってきた。
そしてこのあたりからギャラリーやボランティアが徐々に増えてくる。



40kmの距離表示板を過ぎる。
早朝から始まった長い長い旅路も、残すところあと僅かだ。


公園に入る。
立ち並ぶランタンに照らされた道で、今から2周目に向かう選手とすれ違う。
そのすれ違う頻度もだいぶ減ってきた。今から残り10kmを走るとなると…制限時間との闘いはいささか厳しい頃合いに入ってきたか。

完走を目指して10数時間もここまで闘ってきたんだ。最後まで諦めず、頑張ってほしい。


不思議と、公園に入ると雨が小降りになる。
完全に止むことは無かったけど、いずれにしても雨が緩和されるのはありがたい。



スペシャルニーズバッグ受領エイドへ。
「おつかれさま〜!」
ねぎらいの言葉を受けつつ、SPバッグを受け取る。
べつに今受け取らなくても、明日これを回収できるらしいけど、せっかく宿泊ホテルの目の前を通るから、回収してその近辺にでも置いておいて、ホテルに戻った後にこれをピックアップすればいいかな、などという作戦。

完走の喜びを目の前にしてなぜかこのへん、冷静w




ここから後はもう、ほとんどウイニングランだ。
みんな「お帰り〜!」「アイアンマン!」と祝福してくれる。


宿泊ホテル前を通る。
コースを少しだけ離脱して、回収したSPバッグをホテル前の花壇に置いてから再び、コースに戻る。

ヨメさんと娘の姿は無い。おそらくフィニッシュエリアの万世閣ホテルに行ってくれていることだろう。


湖畔の遊歩道は相変わらずギャラリーは少ないけど、前方の遠くから聞こえる賑やかな音は健在だ。
夜も静まりつつある22時、しかし今日だけはその華やかな光と音に包まれ続けている。


遊覧船の乗船場を過ぎる。
さすがにこの時間は閉まっている。沿道のギャラリーも少ない。


1周目で折り返したコーンを横目に、今度こそこれを直進する。

賑やかな音楽とともに、完走を祝福するMCの声が次第にはっきりと聞こえるようになってきた。



ギャラリーが増え、祝福の声を受けながら、次第にその旅の終着点が近付いてくることを実感する。

自然と笑みがこぼれてくる。





そして、、、

設定されたコース、そのすぐそばに、フィニッシュゲートへと続く栄光の花道が見える。

しかしコースはこれを直進し、わずかの距離の折り返し地点を目指す。


まばゆく輝く世界。
その世界の中心で、長い長い闘いを繰り広げてきた選手をねぎらうように、フィニッシュゲートが暖かく迎え入れている。

その光景に目をやりつつも、渇望し続けてきた称号の獲得をついに目前に控え、気持ちはいよいよ昂(たか)ぶってゆく。


感無量な気持ちを抱くかたわら、フィニッシュの写真や動画をバッチリ撮ってもらうために、前後の選手の距離を確認・調整することは怠らないw




最後の折り返しを、審判員に祝福されつつぐるりと回る。

そしてゆっくりと、、、フィニッシュゲートへと向かってゆく。





光り輝く、栄光の花道。
威風堂々と構えるフィニッシュゲート。

ウェルカムパーティのとき、「これをくぐるのはレースで完走したときだけだ」と、ゲン担ぎでわざわざ柵を乗り越えて横にそれていった、ひとすじの道。

その約束を果たし、今度はまっすぐに、堂々と、ゆっくりと進んでゆく。



公式Facebookより拝借


賑やかな音楽、眩しく光り輝く照明、完走を祝福するMCの声に包まれる、至福のとき。

花道の左右から掛けられる祝福の声に応え、伸ばされた手に応え、両手でタッチしながら、その短い花道を進んでゆく。



天に昇ってゆくかのような、幸せな気持ち。

疲労や寒さをめいっぱい蓄積した肉体は、その全てから解き放たれ、ただただ優しい気持ちで、最後の瞬間へと誘(いざな)われてゆく。






最高峰を目指して5年、夢を抱いて16年。


レース参戦を決めた冬、トレーニングに明け暮れた春と夏。
ギアを新調し、機材と身体のメンテナンスに神経を研ぎ澄ませ、万全の体制で整えてきた準備。

レース直前に発表されたBIKEコースの変更、ド肝を抜かれた山岳コース、そしてトレイルラン。


その道のりは長く、険しく、そして実に・・・

楽しかった。。。

















※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(14.3MB)








フィニッシュゲートを越え、闘いは終わった。

完走メダルを首に掛けてもらい、足首の計測チップが外され、レースは終わった。。。



ゲートに向けて頭を下げ、ホッとした後、どこかで見覚えのある人物から握手を求められた。
瞬間、誰だか分からなかったけど、どこかで見たことのある人。

握手をし、感謝の意を伝えたとき、思い出した。


大会実行委員長、白戸太朗氏だ。
どうやらこのフィニッシュエリアでずっと、雨にも降られながらもずーっと、選手の還りつくその一人一人を迎え入れていたらしい。


握手をして、そして初めて本当にレースがこれで終わったんだ、と実感した。


渇望せし「アイアンマン」の称号。
これをようやく手中に収めた。

その気持ちは達成感かそれ以上に、安堵の気持ちでいっぱいだった。




フィニッシュエリアを出て、外からレースの様子を俯瞰する初めての瞬間。
栄光の姿をカメラに収めんと、オフィシャルカメラマンが少し高い位置に陣取るその周りに、仲間の完走を待ちわびる選手やその友人・家族たちの姿。

煌々と、色とりどりに光るライト、賑やかな音楽、ノリノリのMC。
巨大なオーロラビジョンには次々と入ってくる選手たちの姿が映し出される。


そんな、疲労感に包まれながらも幸せなひとときを感じていると・・・

「おつかれ〜!」


ヨメさんが駆け寄ってきてくれた。

そしてハグ。

長崎大会のときのように同伴フィニッシュは出来なかったけど、こうしてゴール会場に来てくれて、嬉しかった。
さすがに夜も遅いためか、2歳の娘は寝てしまったとのことだけど、娘を含めた同伴フィニッシュはまた次の機会に楽しみとして取っておこう。



ハグしている姿を見てか、オフィシャルカメラマンが記念写真を撮ってくれた。
長崎大会の時はまさしくそのハグの姿を撮られたけど(笑)、今回はふたりでハイ、チーズ。






少しふたりでその余韻を楽しんだあと、ゴール会場の様子を見たり、荷物を回収したり、少し腹ごしらえをしてまわることにした。




エイドでレッドブルにバナナをいただき、それをほおばりながら、、、




フィニッシュエリア用に預託した荷物をボランティアから受け取る。




その隣では、フィニッシャーTシャツが配られている。
サイズはアメリカンサイズ準拠らしく、その場で少しフィット感を試してから渡してくれたけど、自分はいつものようにLサイズでちょうど良さそうだ。

ちなみにそのテントに貼ってあったのが「完走証はWebサイトで」ってことは・・・これはセルフサービスか?w



歩を進めて奥のほうに行くと・・・




ウェルカムパーティのときにもあった大きなテント、数々のテーブルと座席、そして料理がそのままのレイアウトで展開されていた。
料理は主にフルーツをいただく。固形物はやっぱりちょっと胃が受け付けにくいらしいので。




その奥ではマッサージなんぞをやっていた。
ただ自分の場合、マッサージを受けるというよりは、ひとまず着替えて、ホテルの中で座りたい、というのが正直な気持ちのようだった。




フィニッシュエリアに戻る。




降りしきる雨の中、オフィシャルカメラマンが頑張って撮影してくれている。
果たしてうまく撮ってくれたかな?
今回は先に代金を払っているので、あとはキッチリ撮ってくれたことを願うだけ。





それからその脇で、アイアンマンロゴをバックに撮影会をやっていたので・・・





近くの選手にお願いしてこちらもばっちり、ハイ、チーズ。




ホテルのロビーに入る。




ヨメさんはすっかり疲れてしまったようだ。
さすがに早朝から丸一日、ちっちゃい子どもを相手させつつ、おとーちゃんの趣味に付き合わせてしまったから、疲労も溜まったことだろう。



廊下の奥のほうでササッと着替えを済ませた後、ヨメさんにもう少しこの場に留まりたい旨を伝え、その間休んでいるよう伝える。

「最後まで見てきていいよ。」

との言葉。時間も、、、あと30分もすれば全ての制限時間が終わりそうだ。
宮古島・長崎・皆生と、そのいずれの大会も最終走者を見届けたから、今回もそうすることにしよう。




ロビーから出て、フィニッシュを果たす選手を迎え入れる。



両手でタッチをしつつ、栄光の花道を走るあの喜び。
その嬉しそうな選手の姿を今度はそのタッチを求める側から眺めることに。






ゴールの瞬間はやはり、その何者にも代えがたい格別の、、、瞬間だ。



と、迎え入れる選手をひときわクローズアップするMC。




どうやら今大会、最年少の女性選手が完走を果たしたようだ。



※再生ボタンをクリックすると動画を再生できます。右クリックでダウンロードも可能です。(51.2MB)





御年、19歳。

…19歳か。。。
自分がその歳だった頃、いったい何をやっていただろう。
大学の自転車部に所属するものの、ロクに練習もせず、テキトーにやってたっけかな。

けど卒業間際になって急に競技が恋しくなったんだっけ。
たぶん、、、その「やり残した感」が今に繋がっているのかも…しれない。

そして今、こうしてアイアンマンの称号を手にした自分が思うのは、やはり「娘が19歳になった頃も、一緒に走っていたい」というものだった。
勝手に、この選手に娘と自分の願望を重ね合わせていたのかもしれない。

娘、2歳。
父、38歳。

その日が果たして来ることがあるだろうか?
その日が来ることを夢見つつ、、、今は偉業を成し遂げた彼女に祝福の拍手を送ってあげよう。





制限時間も残り少なくなってきた。





ゴールする選手の人数もまばらになってきた。

あと数分。
あと何人の選手がその夢を果たせるだろう。


そして残り…1分を切った。
MCが盛り立てる。

いよいよ会場が盛り上がってゆく。

しかし、さすがにこの時間帯、最高年齢層のウェーブの制限時間帯ともなると、その姿を期待することはいささか難しいか。。。



いや!


MCのテンションが上がる!


戻って来た!!

残り30秒!
果たして間に合うか???

皆生のときのように、制限時間4秒オーバーなんてのはもういらない。
ここまできたら何としても時間内完走を果たしてもらいたいっ…!



そして・・・








わずか制限時間20秒前にして、最後のアイアンウーマン、そしてアイアンマンが誕生!




そしてカウントダウンが始まる。。。




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17時間22分00秒。

すべてのウェーブが制限時間を迎えた。
1600人あまりの選手が、それぞれの夢を抱き、それぞれの目標に向かって邁進した、長くて、長くて短い、圧倒的な密度に凝縮された…17時間。

ある者は夢を叶え、ある者は雪辱の糧となり、そしてある者は次なる目標へと向かってゆく。。。


すべての選手、そして支えてくれたボランティアに祝福を。。。







MC陣、ボランティアスタッフの長い長い闘いも、ようやく終結したようだ。

乾杯の姿にその団結力の高さを垣間見る。


いつか自分も・・・ボランティアとして携わってみたい。。。
選手としての闘いだけでなく、その下支えとなる活動も…。









おつかれさま。

そして、ありがとう。











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