>> ニューヨーク << |
2001年12月
明確な目的はないが、以前からニューヨークには行きたかった。それは漠然とした単なる願望のひとつに過ぎなかったのだが、そのときは全ての環境が揃っていた。目的がないときの異常なまでの出不精なこの性格、しかし一旦重い腰を上げるといくらでも進むことができる。独り旅は国内旅行に関してはある程度行っていたので国内ならばもはやどこへでも行けるようになっていたが、海外となると話は別。言葉の問題、治安の問題、その他諸々。特に最大の不安要素、それは中学生レベルの英語力。そんな不安材料が重い腰をさらに重くしていたのだが、誰が背中を押してくれるわけでもなく。自分で自分の背中を、そう、蹴飛ばす勢いで予約を取ってしまう。
井の中の蛙、大海を、知る。
予定は8日。12月5日出国、13日帰国。往復の飛行機に加え、とりあえず初日のホテルのみを予約。
本屋に行き、ガイドブックを一冊購入。衣類圧縮袋を一枚購入。トラベラーズチェックとドル札現金を少々両替。3日分の着替えをデイパックに詰め込む。引出しからカメラとサングラス、それからパスポートを取り出す。これで準備は整った。両手を自由に、気兼ねなくどこへでも行ける。
不安材料は尽きることがない。しかも寒い時期の旅行は初めての経験だけに、荷物もかさばるため、必要最小限に留めなければならない。まぁ、キャッシュとクレジットカードがあれば大丈夫だろう。そうこうしているうちに期日は迫り、いよいよ出国。
オフシーズンもあるが、さきのテロ事件の影響もあって成田空港はガラガラ。機内も空席が目立つ。だが、そんなことは問題ではない。むしろ、この時期だからこそ、そこに行く必要が自分にはあるのだ。
窮屈な12時間を経て、JFK空港に到着。ついに…本当に来てしまった。。。第一印象。
入国手続きの列に並ぶ。実質これが最初となる、決して避けられぬ英会話が果たしてうまくいくだろうか…不安は尽きない。しかも自分を助けとなるような物・人がいるわけでもなく、まさしく自分一人で切り抜けなければならないのだ…
いよいよ自分の番になった。おや、何故か2人いる。白人のオバハンと黒人の青年。担当は黒人の彼。こちらの動作もおぼつかないが、なんだか彼もおぼつかない。どうやら新人研修中か何からしい。なんだ、むこうも不安材料を抱えての初仕事じゃないか。緊張が少し和らいだ。「さいとしーいんぐ・えいとでいず」お決まりのセリフを吐いてこれでパス…と思いきや、なかなか作業が進んでいない。どうやら、出入国カードの滞在先住所を記入していなかったことが問題だったらしい。とりあえず日本でホテルを予約したときに教えてもらった住所を伝える。白人のオバハンが念入りに記入している。…しかし、予定ではそこのホテルには今夜一泊しかしないつもりだ。果たして何かあったときに、君たちは俺の足取りを掴むことができるかな?と、何故だか得意気。まぁ、そんなこんなで少し時間は掛かったが、無事アメリカ合衆国への入国を果たす。
さて、手荷物はこの背負っているバッグひとつだったため、ほぼ一番乗りで空港を出る。出口には、出迎えの人だかりが。しかし、残念ながらというか、当然ながら自分を待つ者はいない。さて、これからどうするか。とウロウロしていると、早速やってくるは白タクの仲間らしき男。マンハッタンまで平均30ドルかかるシャトルバスやイエローキャブ(タクシー)に比べ、空港と地下鉄を結ぶ無料バスを使って地下鉄を利用する場合、わずか1.5ドル。男にその旨を伝え、いそいそと空港を後にする。
他力本願による移動は、無料バスをHoward Beach駅で降ろされた時点で終わる。ここからはまさしく自力で前進しなければならない。まずは、駅構内に入る方法を探す。うまいこと、自分の前を歩いていた黒人のネーチャンがメトロカードを購入していたので、自分もそれに習う。このカード、地下鉄はもちろんバスも乗ることができる。料金は距離・手段に関わらず全て一律で1.5ドル。しかも残り金額が減ったら、同じカードに再度金額を追加できるというスグレモノ。以後、これはまさしく自分の足となり、支えとなるのである。
というわけで、タッチパネル式の画面を押し、乏しい知識ながらも表示されている英語を理解、そして20ドル分のカードを購入することに成功。さて次は改札の通り方だ。これも周りの人間に習う。なるほど、カードをスライドさせればロックが外れるのか。さっそくやってみる。スッ、ガチャン。回転棒を押し、無事構内に入る。
電車が来た。きっ、きたねぇなぁ。座席はツルツルで滑るし。まぁ、しょうがない。1.5ドルで移動できるのだから。しかし、当たり前だが周りは全員ガイジン。いや、ここでは俺がガイジンか。しかし、まだ彼らの国のルールが全くわからん。とりあえず人と目を合わさないようにし、かと言って眠るわけにもいかず。ビビりっぱなしの1時間強のガマンが続く。
ところで。初日の宿の最寄で降りても芸がない。そこで、目的地の少し手前であるセントラルパーク付近で下車。地上へ。
ついに、ついに来た。アメリカ。ニューヨーク。マンハッタン。往来する車、羽ばたく鳥、立ち並ぶビル、溢れるアルファベット、そして行き交う人々。その街をこうして独りで歩いている。以前のシスコ・ロスとはまた違う感触をしばし味わう。
近くの出店でミネラルウォーターを購入し、ブロードウェイを歩き、さらに実感を深める。
しかしそうこうしているうちにもすっかり暗くなる。そして時をほぼ同じくして宿に到着。チェックインに関しては予約を取っている分、比較的スムーズにことは運び、部屋に入る。うわ、ダサッ。トイレ風呂共同で98ドルかよ。高ぇなぁ。まぁでも、安全地帯にようやく到着したことでひと安心。
しばらく休憩したあと、食事に出る。今回は「いかにもニューヨーク!」という食べ物を食べ尽くしたかったので、まずはピザから始める。で、でけぇ。一切れで十分だ。ちなみに飲み物もデカい。ただ料金は日本と大して変わらない。
時間も結構遅くなったので、街の姿が変わる前に宿に戻る。
さぁて、果たしてこれから独りでやっていけるだろうか。期待と不安が入り混じった旅はまだ始まったばかりである。
タイムズスクウェア |
マンハッタン島の中心部であり、しかもまさしくど真ん中に位置するタイムズスクウェア。なるほど、格子状に走る単純な道路で構成されるこの街をブロードウェイが斜めに貫いているから栄えているわけか。駅、警察、ミュージカル、ステーキハウス、ヴァージンメガストア、トイザらス、ティケッツ、映画館、群がる色とりどりの人種、世界各国からの観光客、そして溢れんばかりのカラフルなネオン。これこそ俺の求めていた「いかにも!」だ。こりゃぁいい。都心にはつきものの大渋滞、交通整理のおっちゃん、例え信号が赤でも、例えポリスが見ていようとも堂々と無視して往来する人々。自分も彼らに混じって同じように堂々と信号を無視していくうちに、なんだかネイティブになっている錯覚をおぼえる。ごみごみした街、細い歩道を溢れんばかりの人々が途切れることなく行き交う。…ん〜ニューヨーク。またこの辺りは手頃なホテルも多く、主要観光地へのアクセスも歩ける距離にある。とにかく、街全体がひとつの観光地であり、活気に満ちているこの地を以後、何かとたびたび訪れることになるのだった。
さて、そんなある日、映画を見ることにした。当然、日本語字幕はなく、英語を理解できるほどの知識はない。ただ、その雰囲気を楽しみたかった。選んだ映画は「SPY GAME」。事前知識は皆無だったが、アクションものなら多少理解できるだろう、という考えがそこにあった。だが…甘かった。。。スパイの名がつくだけに、アクションらしいアクションはオープニング程度で、あとは会議室の攻防、終始の回想シーン。もちろん内容が全く理解できない。そしてようやく捕らわれのブラピが救出された、と思ったらスタッフロール。立ち去る観客。…内容が分からない映画がこれほどまでにつまらないものだとは夢にも思わず、少し失敗した感は否めない。・・・ちなみに数ヵ月後、念願でもあった日本語字幕付きでビデオを見た。感想は…大満足。。。あのシーンのあのセリフが…ってな感じでむしろ感動(爆)。作品そのものの出来よりも、その思い入れのいきさつが強く評価に影響しているらしい(苦笑)。
ところでこの時期の上映作品はシュレックやハリーポッター、オーシャンズ11にモンスターズ・インク。そして「近日上映」と期待を膨らませるロード・オブ・ザ・リング。数ヵ月後に日本でも大ヒットを飛ばす作品がすでに目白押しであった。まぁ、どちらにせよ見たところで理解できない英語に苦しむだけのことは目に見えているので、映画はとりあえずその1本に抑えておいた。ポケモンなんぞがやってたら見てもよかったが(爆)。あっそれからスターウォーズ エピソードIIを何気に期待していたのだが、そのスの字も見当たらない。でも、ほかにも何か少しくらいは触れられているものがあるのではないか、と期待を込めて探したものの、関連する映像も書籍も皆無だったのが少し残念だった。
ロックフェラーセンター |
”都市の中の都市”と言われる多機能コンプレックス、ロックフェラーセンター。ここに向かって街を練り歩いていると、だんだん人の数が増えてくる。そしてまず目についたのは左写真のセントパブリック大聖堂。ビルに囲まれたこの大きな建造物全体を撮影するにはそれなりに離れなければならない。案の定自分も思いっきりはみ出た写真しかとれていない(汗)。まぁ、これはついでに見つけたからとりあえず撮っておいた、といった程度の抑え方だったのでそれ自体に関しては大した問題ではない。あーでもせっかくだから中にも入っておけばよかったかな〜。まぁ仕方ない。それにしても、何といっても訪れたのは運の良いことに12月。そう、期待通り巨大なクリスマスツリーが立っていた♪しかも夜のライトアップも期待通り。こいつぁ綺麗だ。 ビルの谷間に出来ている空間にはスケートリンクが張られており、クリスマス商戦も重なった、ちょうど訪れた日曜日の昼は親子連れと観光客で賑わっていたが、夜もまた電飾されたクリスマスツリーを一目見ようと、多くの人で賑わっていた。もちろんこれにあやかる多くの出店?も出ており、中には似顔絵を書く、なんて商売もあったのだが、これがまた上手い。ん〜やっぱりこれもせっかくだから書いてもらってもよかったかも。でも日本に帰ったらきっと、置き場所に困ったりして邪魔になるんだろうなー。それ以前に滞在中の荷物になる。(爆) ん〜、それにしても、寒い。ただでさえこれからどんどん寒くなるというのに、目の前にはスケートリンク。この日に限ったことではないが、空は厚い雲に覆われている。やはり写真ってのは天気が良くないとあまりうまく撮れないものだ。…しかし、ニューヨークの写真、全体的にピントがボケ気味。壊れたか?一度別の部分の故障で修理に出したのだが、やっぱり9800円カメラじゃダメか?ちゃんとしたのを買ったほうがいいのかなー。しかしやっぱりそれ以前に撮り手の腕が…なんか、縦長写真を取るときって、どういうわけか左に寄ってしまって…ヘタクソやのぉ…(シクシク) |
エンパイアステートビル |
感覚的に、マンハッタン島のちょうど中心部にある103階建ての、世界一ののっぽビル。1977年にワールドトレードセンターに抜かれたものの、2001年9月11日のテロ事件によるビル崩壊により、図らずとも世界一に返り咲く。事件後のピリピリした空気もあるが、入り口では身分証明の提示を求められ、ビル内で行われる厳重な荷物検査を通過してようやくチケット売り場に行くことができる。売り場は予想に反して大行列。寒い季節もジグザクに並ぶ順番待ちの列ではものともせず。むしろ扇風機回ってるし。
つたない英語でチケットを購入。入場料9ドルにプラスして8ドル払うとNewYork Sky Rideなるちょっとしたアトラクションに乗ることができる。実はこの順番待ちの際に流れるナレーションと映像、当然英語なのだが、何故か日本語解説もある。しかも映像が日本語解説に合わせた動きをするもんだから、思わず笑ってしまう。周りは、何を笑っているのか、という顔をする。でも、本当になんで日本語なんだろう。ほかにドイツ語とかフランス語とか、いくらでも選択肢はあるのに。
右に左にさんざん揺らされたあと、いよいよエレベーターに乗って展望台に向かう。「コンニチワ。」と係員のおっちゃん。あれま。金髪に染めた頭とラフな格好をして極力現地人のフリをしていたのに、やっぱりわかるもんなんだなぁ。ここでニーハオとかアニョハセオでないことが、なるほど、先のアトラクションが何故日本語なのかが少し分かった気がした。ちなみにエレベーター内ではWelcomeの各国語の音声が流れるのだが、日本語の「ヨウコソ、イラッシャイマシタ」のヘンな発音が妙にツボにハマってしまい、こぼれる笑い顔をこらえるのが大変だった。
エレベーターを乗り継ぎ、ようやく到着。おぉっ。これは確かに凄いかも。見渡す限りのビル、そしてビル。ここまでアップタウンとミッドタウンをある程度歩いてきたのだが、なるほど上から見ると自分がどんな風に歩いていたのかが少し理解できると同時に、これ以降のダウンタウン散策の全体的なイメージが掴むことができるわけだ。というわけで天気の良いミッドタウンをカメラに収める。うむむ、とても1枚には収まらん。とその時、ふとアイディアが浮かぶ。同じ場所から水平に保ったまま、アングルを変えて撮影すれば擬似パノラマ写真の出来上がり。それが上の写真。ちなみに壁紙コーナーでダウンロードできるのでご参考までに。
ぐるりと回ってダウンタウンを一望する。逆光の景色の先にあるものは、島の最南端、ウォール街のビル群。なるほど、ミッドタウンに比べてダウンタウンは高い建物が少ないのか。いやそれにしても、やはりあるべきものが、無い。世界一の高さを誇るツインタワー。パンフレットに載っていた左写真と、今回撮ってきた右写真を見比べれば一目瞭然。……本当に無くなってしまったんだなぁと少し実感。そして、このことが自分よりもはるかに身近な存在であるアメリカ人観光客のすすり泣く姿が少なからず目についた。
後日、夜景を見ようと、もう一度ここを訪れる。おっ、チケット売り場、今度は比較的すいている。今度は入場料のみのチケットを買う。ん〜売り場のネーチャン、相変わらず無愛想やのぉ。などと考えつつも、2度目だけあって迷うことなく展望台に上がることができた。 さてと、、、おぉっ!これは凄い!摩天楼!100万ドルの夜景とは言うが、ここまで凄いとはっ! |
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ワールドトレードセンター跡地 |
図らずとも世界一有名な観光地となってしまったワールドトレードセンター周辺はやはり、誰もがその姿を一目見ようと、非常に混んでいた。付近の道路は渋滞し、路線バスは途中でコースを変え、最南端まで乗ることができない。ビル街はホコリと工事用水で汚れている上に、更なる連鎖倒壊の予防のためだろうか、補強工事がされていてゴミゴミしている。本当にここが世界一の経済の街なのだろうか。かつて日本のそういった街で働いていた経験から、あの景色がこんなになったら、と考えるとゾッとしてしまう。いや、想像もつかないのが現実のところか。
さて、”観光客”の一人としてひと目見ようということで、地下鉄で最南端のバッテリーパーク付近から跡地の西側に歩き、通り抜けが出来ないことから、引き返すかたちでぐるりと東側にまわるように見ていったのだが、最初の西側、ワールドフィナンシャルセンターのある側は、写真やテレビで見るような、整然として美しいイメージから遠くかけ離れていた。数人の観光客とTVクルー、それから警備の警察官がいる程度で閑散としている。まさにゴーストタウンであった。特にこの付近には右写真のアトリウムがあるのもそうだが、「緑の似合う美しい高層ビル群」のイメージが自分にとって比較的強くあった分だけに、この光景は少なからずショックだった。きっと、倒壊前のまだ整然とした景色のある時に訪問していたら、そのショックは更に強いものであっただろう。無くなるはずのないものが忽然と無くなっている。赤の他人で無関係であるはずの自分ですらこれほどの衝撃を受けたのに、こんなことが目の前で実際に起こった地元の人たちの心境は計り知れないものだろう。
補強されたビルの谷間を歩き、冒頭で述べた、向かって左側に出る。急に人だかりが現れ、ただでさえ混乱している交通網にテレビの中継車が駐車していて道は渋滞し、そして、まぁそれなりに活気に満ちている。警察官が厳しい目で見張り、そしてシャッターを切る観光客の姿が多く目につく。その人だかりの中に、探し人の張り紙があり、寄せ書きがあり、そして千羽鶴なんてものもあった。これらには何と書いてあるのかほとんど読むことができなかったが、そんな中で小さな女の子が寄せ書きをする姿をの傍ら、すすり泣く人の姿がここでも数多く見られた。
英語が読めないので、というわけでもないが、日本語を探してみた。しかし…探しが足りなかったのかもしれないが、ここでは見つけることができなかった。邦人被害者が、まぁ間違いなくいるだろうけど、全体的な割合としては少ないのは多少はマシかもしれないが、やはりそれでは対岸の火事に過ぎない。かと言って自分及び自分の近くの人間が被害に合って平気なのかと言われると、もちろんそんなことはないけれど、自分とは直接関係無いからといって済む問題ではないと思うのである。(とは言え、傍から見ればそんな自分こそが最も偽善ぶっているのかもしれないが。)
セントラルパーク |
マンハッタン島の中心に位置する巨大な公園、セントラルパーク。名は体を表す。そんでもってリスなどの小動物が普通に生息している。が、公園とは言えあまりの広大さゆえに2車線ほどの道路があり、乗用車もタクシーもパトカーも走っている。また脇には自転車専用スペースが確保されており、そこをマウンテンバイクやロードレーサーに混じってローラーブレードやランニングする人々がしきりに通過していく。あっ自転車といえば自分、かつてメッセンジャーとして東京を駆け巡っただけあって、発祥の地ニューヨークのメッセンジャーを見かけるとやはり目が追いかけてしまう。しかもその人数の多いこと!歩けば必ずと言っていいほど目にする。でも自分たちと違うのは、誰一人として全力で走っていないってこと。しかも中にはホットドッグを食べながらのんびり走っている姿も目にする。おいおい、その背中にしょってる荷物はお急ぎじゃないのかい?そんなことじゃバイク便に…と思ったが、そういえばオートバイの姿、本当に見ない。原付を数えるほどしか見なかったなぁ。
話が脱線してしまったので軌道修正。朝早めにチェックアウトをし、歯ごたえのあるベーグルを食べてたあとにこの公園を縦断したのが朝9時頃。この時間帯、とにかくランニングする姿が数多く見られた。東京でも皇居周辺をランニングする人の数は多いが、ここは公園内なだけあって空気が綺麗そうで羨ましい。
歩くこと数十分、シープ・メドウに来た。映画「ウォール街」のラストなんかで登場する原っぱだ。とくに夏は日光浴をする人が多いそうだが、冬は新芽を育てるためだろうか、残念ながら立ち入り禁止になっていた。
南下しているうちに、騎馬警官なるものを初めて目にする。とにかく馬がでかい。おまけに乗っている女性警官が美人ときたもんだ。写真撮っておけばよかった。そういえば騎馬警官といえば、その後街中でも時々目にしたのだが、普通の道路を車に混じって歩いているから驚いた。さすがに渋滞するような場所では見なかったが、なんか、本当に何でもアリな国だなぁと思った。
自由の女神 |
ニューヨークの、いやアメリカのシンボル、自由の女神。マンハッタン島の最南端に位置するバッテリーパークから自由の女神の立つリバティー島行きのフェリーが出ている。王冠部まで上ることができるが、定員は30人程度ということもあり、非常に混むという。そこで、平日の朝一番を狙ってバッテリーパークに向かった。
公園に到着し、チケット売り場に足早で向かう。長い列を予想しつつ向かった先で目にしたのは…あれ、ガラガラやん。しかもなんか様子がおかしい。えーとなになに、現在フェリーは出ていないぃ?冬は休館しているのだろうか。いや、どうやら例のテロ事件の影響があって、しばらく中止になっているようだ。うーん残念。結構楽しみのひとつになっていたのになぁ。まぁ、これ以上アメリカのシンボルを壊されちゃぁたまったもんじゃないからね。こればっかりは諦めるしかない。と思いながらホットプレッツェルを食つつ、はるか彼方の自由の女神の姿を望むのであった。む。これチーズをつけて食べると結構おいしいじゃん。
サークルライン |
自由の女神に要する時間が余ったから、というわけではなく当初の予定に込まれていたのであるが、別の日、サークルラインという、マンハッタン島を約3時間かけて一周するツアーに参加した。ガイドブックによると、2階席の後方左側デッキが隠れたベストポジションということで、それに習って座ったのだが、いかんせん寒い。まぁ、まだ我慢できる程度だったので、ホットコーヒーを飲みながら景色を楽しんだ。
このツアー、添乗員の解説付きで意外と飽きないのだが、当然英語。多少は言っていることはわかるが、ヤッパリ俺にはサッパリ。
ツアーは島の真中を西に行った港、ピア83を出て、エンパイアステートビル、ワールドトレードセンター跡地、自由の女神とハドソン川を南下する。さきのフェリー出航中止の影響でリバティー島上陸はできなかったが、このツアーでかなり近くまで接近できたのでまぁよしとしよう。
船はここで方向転換し、島の東側イーストリバーを北上する。のだが、その途端猛烈な風が吹いてきた。さ、寒っ。ただでさえ曇っているのにこの風は耐えらん。なるほど、これまでデッキで我慢できていたのは追い風だったからか、と思いながらもこれ以上そこにいるのは限界。中に入って窓越しに景色を眺めることにするしかない。それにしてもこっちは暖かい。そろそろ腹も減ってきたのでバカでかいサンドイッチを食す。ベーグルと同様、なかなか歯ごたえがあって1個で十分だった。
ブルックリンブリッジ、マンハッタンブリッジを抜け、国連本部を左手に望み、ブロンクスのヤンキースタジアムを右手に望んだあとは少しばかり退屈になってきた。少しウトウトしながらも船は島の最北端を回り、再びハドソン川を南下する。風もなくなり、雲の切れ目からときどき太陽が顔を覗かせることもあり、暖かく感じるうちにも南下してからは早いもので、あっという間にピア83に到着してしまった。
ということでこのツアー、時間と英語力のある人にとっては結構楽しめると思います。
国際連合本部 |
国連本部の地下にはレアもの切手のある郵便局や世界各地の土産品売り場があり、確固たる目的は無いながらもほとんどそれ(土産屋)目当てで行ったのだが、ここも当然ながらテロ事件の影響を受けていて、1番街を数ブロックにわたって封鎖し、立ち並ぶ世界の国旗も全部降ろされていた。また、自分がしょっているデイパックサイズの荷物でも預かり所に預けなければならず、入り口の厳重なセキュリティーチェックは、通常は建物の中で行うのだが、このときは仮設テントが設けられていて、そこでチェックを受けた。この金属探知機、かなり敏感で、空港では引っかからなかったカメラやサイフなどの金属にも反応する。土埃舞うウォール街中心の証券取引所や、マシンガンを構えて警備する、観光客には近寄り難いニューヨーク市警といったピリピリした場所もそうだったが、実感として特にここはピリピリしていた気がする。
ガラガラの内部でまず目につくものは、世界平和を願う世界各地の子どもたちが書いた絵が展示されていた。そういえば自分も小さい頃、こういうものを書いたような気がしれない。一生懸命記憶を遡るのだが、確かに書いたことがあるという記憶以外、どうしてもどんなところでどんな絵を書いたのか、全く思い出すことができなかった。
地下に下り、土産屋に入る。おぉ、確かに世界各地のものがある。なるほど土産を見るだけでも、その国の特徴を知る手がかりになるもんだなぁ、と感じる。ちなみに日本のお土産は、確か着物を着た人形だったかな。
チャイナタウン |
ニューヨークの異国、チャイナタウン。一歩ここに踏み入ると、今までの欧米の感覚はどこへやら、突然ごみごみとした喧騒漂うアジアがそこに広がる。漢字、漢字が街を覆い尽くし、歩く人は見慣れたアジアの顔立ちばかり。道路はゴツゴツしていて渋滞も激しく(まぁ、ここに限ったことではないが)、おまけに信号まで「WALK」「DON'T WALK」から、それぞれ「人の歩く姿」「手」に変わっている。サンフランシスコのそれもそうだったが、中国人って本当にその独自のパワーで世界のどこでも生活していけるんだなぁと感じた。しかしどうも自分は彼らの威圧感あるパワーが苦手である。こりゃ一度アジアに行って慣れておかないとなぁ。
スタテン島 |
ニューヨーク州は、マンハッタン・ブロンクス・クイーンズ・ブルックリンそしてスタテン島の5区から成っているのだが、このスタテン島へは24時間稼動している無料フェリーで行き来することができる。またその航路でリバティー島近くを通るので、何気にお金のかからない観光手段だったりする。
20分程度だろうか、船に揺られて到着した後は皆、目的地に向かって真っ直ぐに歩いていく。目的地のない自分は…とりあえずガイドブックを見ながら地図を確認。しかし…たいしたものはないなこりゃ。しばらくブラブラしたら戻ることにするか。
船着場を出ると、それまでの高層ビルに囲まれた大都会から一変、のどかな田舎街のような風景が広がる。悪く言えば寂れているんだけど。でも、わずかな時間で都会とベッドタウンを往来することができるのは結構羨ましい。
それにしても、何もない。ケンタッキーフライドチキンとタコスの店が目につく他は特に何もなさそうだ。途中、金貸してくれ男にからまれるものの、あいきゃんとあんだーすたんどいんぐりっしゅ攻撃で難なく逃れる。そして道なりに歩いていくうちに、住宅街に迷い込んだようだ。テレビや映画で見るような光景が広がり、平日の昼ということもあって静かである。でもかえってこういう場所が危ないのかもしれない、と、気だけは引き締めておく。
それからまたしばらく徘徊していたが、目的地もなくただ散歩するのにはさすがに飽きてきたので、近くの駅から船着場に戻ることにした。おっ、ここ、改札とか無くてそのままホームに入れるのか。料金一律のメリットはこういう所にもあるんだなぁ。
同じくホームで待つ男がジロジロとこちらを見ているが、極力関わらないように、ガイドブックなんぞを読みふけるフリをしてその場をやり過ごす。電車乗り、船着場に戻り、軽く腹ごしらえをして、再びマンハッタンに戻るのであった。
ブルックリンブリッジ |
ニューヨーク州を構成する5つの区のひとつ、ブルックリンとマンハッタン島を結ぶ橋、それがこのブルックリンブリッジ。特に夕焼けのマンハッタンの景色は感動するらしい。残念ながら天候が一向に良くならないのもあるが、自分の場合はとっとと昼に行ってしまった。地下鉄に乗り、ブルックリン側に出て、そこから橋を渡って戻ってくるルートで歩いてみた。このほうがマンハッタンのビルの姿がよく見られるからね。
この橋は数少ない、人が歩いて通れる橋なだけあり、観光客はもとよりランニングする姿やサイクリングする人もちょくちょく目にする。一段下の層は自動車道路になっていて…はて、故障でもしたのだろうか、立ち往生する一台の車のせいで大渋滞している。なお、歩行者用道路の途中にはベンチが備え付けられていて、歩き疲れるとここで一休みできるのだが、やはり目に付くは落書き。そして相合傘に名前を刻むは日本語…。まぁ、裏通りの壁や地下鉄など、落書きなどどこにもあることなので別に偽善ぶるつもりはないが、どうも…ねぇ。
クイーンズ |
ニューヨーク州を構成する5つの区のひとつ、クイーンズ。観光名所は巨大な鋼鉄製の地球儀。ガイドブックやテレビなどで目にする機会は多かったが実はあまり興味はなかった。だが自由の女神に費やすはずの時間が余ってしまった関係もあり、せっかくだから、ということで行ってしまった。
新旧混じる地下鉄車両の中でもひときわオンボロの地下鉄7線に乗ること数十分。途中混んできて、はて、こういうときは席を譲るべきか、いかんせんそのへんがわからないのでここはひとつ、日本人お得意の必殺寝たふり攻撃で目的地に着くまで我慢する。などとアホなことを考えていたがすぐにまたガラガラになってきて…ふと外を見ると、見えた!確かに巨大だ。次で降りるか。いや、終点はその次だし、せっかくだからそこまで行ってしまえ。…ということで特に意味なく終点で降りる。あれ、ここもチャイナタウンなの?また漢字が溢れてる。へんなの。
さて、そこから歩くことまた数十分、ようやく目的地のフラッシング・メドウズ・コロナ・パークに到着。おっ、道の反対側にでかい野球場がある。そして公園内に入るとこれまた巨大なテニスコロシアムがある。なるほど、これがよく耳にする全米オープンの会場なのか。そしてその反対側に巨大な地球儀。ん〜デカイ。でもそれだけ。他に何もない。近場に駅はあるだろうか。困ったことにガイドブックにはクイーンズの地図がない。ヘタに歩いて迷ってはキビシいので、今来た道をそのまま引き返し、野球場に隣接する駅から街に戻るのであった。
NHL & NBA |
以前アメリカに行ったときに果たせなかったこと、それはプロスポーツ観戦であったのだが、それを今回はしっかり見ることができた。マディソンスクウェアガーデン(MSG)を本拠地にしている、アイスホッケーのNHLはN.Y. RANGERS 対 TORONTO MAPLE LEAFS戦と、それから誰もが知っているバスケットのNBAはN.Y. KNICKS 対 INDIANA PACERS戦を観戦することに。
さて、見るためにはまずチケットを入手しなければならない。というわけで当日券売り場に行くわけだが、入り口では金属探知機を持ったゴツい男がセキュリティーチェックを行っていた。まぁ当然ながら後ろめたいことは無いのでチェックをパスし、売り場に並ぶ。え〜っと、ガイドブックによると、安い席では5ドルから購入可能、と。にゃるほど。こりゃ安い。
試合開始まではまだあと3時間以上ある。それでも順番待ちは結構あったが、しばらく待つうちにようやく自分の番になった。なんかこう、ガラス越しだとただでさえ英語がキビシいのに、余計意思の疎通が難しくなる気がする。しかし、せっかく長い列を並んだのだから、何としてもチケットを購入せねば。一番安い席を買いたい旨を伝える。まずは当日券のNHL。なになに、46どるぅ?たっ、高い・・・あいにくポケットにはあまり多くの現金が無いので、クレジットで購入。さすがはカード社会アメリカ。これに関しては難なくことが進む。で、それから後日のNBAを買う。えっと、これも一番安くて同じ位する。しかも席は一番上の端っこの、出入り口のそばという…それでこの値段かよ?!まぁ、仕方ない。それにせっかくだから、ということでもう少し近くなる65ドルの席を購入することにした。ちなみに全席指定席である。
試合開始までの数時間を別の観光地で過ごし、開始30分程度前に再びMSGに戻る。今度は、おぉ。混んでる混んでる。早めに買っておいて正解だったわい。それにしても小さな子どもからゴッついオッサンまで、多種多様なファンがいるのは世界共通か、と思いながら中に入る。エスカレーターを乗り継ぐこと4〜5回。ようやく辿り着いた試合会場。おぉっ!こりゃいい。最近スポーツ観戦なんかほとんどしていなかっただけに、この目の前に広がる光景はなんとも言いがたい興奮がある♪
まずは席の位置を確認。えーっと、この列の、えーっと…あれ、一番上か。しかも出入り口の隣。ここから見るリンクは、ちょっと遠いがまぁ、選手はそれなりに見えるからよしとするか。それにしても、アイスホッケーだけあって、会場は寒い。厚着をしてきてよかったわい。
席を確認したところで次は腹ごしらえ。ホットドッグとドリンクと…って、でかっ!値段も大して日本と変わらないが、相変わらず飲み物だけはビッグサイズだなぁ。
いよいよ試合開始時間。まずは全員起立、国家斉唱。どこかの有名どころの歌手なのだろうか、リンクの真中で歌っている。O say, can you see, by the dawn's early light… 自分も真似して胸に手を当てたりしてみる。ん〜似非ニューヨーカー(爆)。そして拍手喝采。そしていよいよ、試合開始である。
実際のところ、まともにアイスホッケーを見たことがなかったのでイマイチルールが分からない。でもスポーツは言葉の壁なんか関係ないから見てるだけで周りの雰囲気にのまれてアツくなってくる。もちろん自分はひいきのチームなんてないので、とりあえずHomeGameであるRANGERSを応援することにした。
試合時間は20分ハーフが3ピリオド。なんだ、結構短いんだ、と思っていたが、ファールがあるとその都度時間が止まり、しかも頻繁にファールがあるので実質観戦時間は2時間を超える。そして期待通り?乱闘も多い。1ピリオドにつき2回くらいあるんじゃないかな。
試合中はもとより、ハーフタイムも観客を飽きさせない。リンク一周競走あり、シュートコンテストあり。しかもこれ、一番多くゴールが決まった人に車が当たるという、なんとも豪華な内容。
さてさて、試合は前半はRANGERSがリードしていたものの、TORONTOも負けてはいない。後半、あれよあれよという間に同点、そして逆転。ファンももちろんだが選手もヒートアップ。そしてまた乱闘。おっと?今度の乱闘は結構長いぞ。やべぇ、グローブ外して本気で殴ってやがる。そして観客はさらにヒートアップ。
しかし、残念ながらRANGERSは負けてしまった。でもみんな満足そうだった。帰り道、その日のホテルがあるタイムズスクウェアまでは歩ける距離にあるが、ガイドブックによるとたとえ2〜3分の距離でもタクシーを使うべき、とある。しかしそんな危険はどこ吹く風、試合観戦を終えたファンに混じって道を歩いていく。信号待ちをしている車が窓を開けて、見ず知らずのファンと何やら大声で喋り合っている。どうやら、俺はTORONTOファンだ、負けて残念だったな、らしき事を言ってるらしい。ところがそれが険悪ムードではなく、むしろお互いにこやかに罵声を飛ばしあっていた。なるほど、ゲームの楽しみ方を知っている。こういう時ほど英語が喋れたらもっと楽しいだろうに、と思うことはないのである。
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さぁ、いよいよお次は待ちに待ったNBA観戦。今度はアイスホッケーと違ってそれなりにルールも分かる。ということでいつも以上に楽しみにしていた。しかし、別の観光地に要した時間が思った以上に長くかかり、こともあろうに20分程度遅れてしまった。急いで会場に向かう。おや、すでに試合は始まっているというのに、同じように遅れて来たファンが結構多いもんだなぁ。しかもみんな急ぐ様子もないではないか。なるほど、自分にとってはそれなりに特別な体験も、彼らにとっては日常の出来事だからなぁ。と考えつつもやっぱり足早に席を目指す。
エスカレーターを、これまた何度も乗り継いで到着。おぉっ!!!NBAだ!(ぉ
何はともあれ、席を探す。今度はちょっぴり奮発したから少しはマシだろう、と思いきや、これまた遠い。ただでさえコートが小さいだけに、こりゃ遠い。しかも土曜日なだけあって超満員。いやー前売り券を買っておいて正解だった。相変わらずバスケは人気が高いなぁ。値段も高いが(笑)。で、どっちを応援するかだが、もちろんひいきチームはないので地元のKNICKSを応援することに。いやーしかしテレビで見てた映像が目の前にあるってのはシアワセ。など感じながら、彼らのスーパープレーを…遠くてよく見えねぇ。
さて、こちらもハーフタイムのファンサービスは欠かさず、ダンスありの子どもたちのミニ試合ありの、やはりこれも観客を飽きさせない。しかも観客もキッズのプレーに、本試合と何ら変わらない、心からの声援と拍手を送っていたのに感心した。また、ビジョンに観客が映るのは日本のプロ野球なんかでもよくあることだが、こちらのハーフタイム中はとにかく!観客が完全に主役なのである。ダンスやチームのテーマソングなど数種類あるのだが、それをひとりの観客にスポットを当て続けて延々そのパフォーマンスを楽しむ、なんてものがあるのだ!また、周りの観客もその場所を発見するや、走っていって一緒に騒ぐ騒ぐ!たまたま自分の座席から見える位置でそれを見つけたのだが、それはもう、皆の表情が豊かで、これも試合観戦の楽しみのひとつに十分数えられるだろう。いやーしかし、万に一つの可能性で自分にスポットが当たらなくて、よかったよかった。だってイキナリそんなことになったって、何すりゃいいのかわからないもの。
さて、試合のほうはシーソーゲームで、観客は一喜一憂。バスケはアイスホッケー同様かそれ以上にHomeGameに地元ファンが多く、たとえそれが相手のフリースローであろうと、会場全体からブーイングが必ず起こり、こちらのゴールには拍手喝采。しかもゲーム展開が残りわずかのところで逆転3ポイントシュートが決まるとなればもう、会場は興奮のるつぼと化すのであった。
いやー興奮しちゃったよー
メトロポリタン美術館 & 近代美術館 |
世界4大美術館のひとつ、メトロポリタン美術館。4大の名に恥じぬその巨大な建物の内部はこれまたデカい。ブロックごとに各々の文明や文化の美術・骨董品?が展示されていて、日本語のパンフレットも常備されてはいるのだが、途中何度も迷ってしまった。
自分の場合、美術にそれほど興味はないのだが、そんな中でも風景画と、それとエジプト文明や中南米の文明の展示に関しては興味深く見ることができた。また、どこに位置するのかわからないような小さな島の独特の文明を築いているであろう、原住民のオブジェには特に興味を惹かれた。木で人の顔をかたどっているだけなのだが、なんというか、その表情が、こう、何とも言えない恐ろしさを感じてしまい、、、彼らに捕らえられたらやっぱり火あぶりされたり食われたりするんだろうか、などと思い描いてしまう。
館内をぐるりと巡って、武器・防具の展示コーナーにやってきた。これまた世界各地のものが展示されているのだが、乗馬するローマ騎士の、あの全身鎧兜が騎兵槍を持つ姿はなかなか格好良かった。しかし実際にこんな奴らが殺し合った事を考えると、これまた痛々しく、恐ろしい。体を守る鎧は本当に良くできている、いや、良くできていなければならないんだろうと感じた。さてさて、んでもって、隣の部屋には我らが日本の鎧兜に、各種戦闘道具の展示。やっぱり日本刀はええわなぁ。斬られるのはイヤだけどね。
しかしそれにしても広すぎる。あっという間に時間が経ってしまう。ちなみにここに要する時間は3時間もあれば十分すぎるくらいだろう、とタカをくくっていたのだが、これがものの見事に予定をオーバーしてしまい、この後観戦するNBAの試合にこともあろうに20分以上も遅刻してしまうのであった。
それから別の日、ニューヨーク近代美術館にも行った。日本でもおなじみ、Museum of Modern Art 通称MoMA(モマ)。なんかふざけた名前だなぁとかいう勝手なイメージを抱いていたのだが、結構メジャーなようでこりゃ失礼。ちなみにここの訪問に関しては、完璧に時間が余ったからという理由のみだったのだが、館内、これが意外にも狭い。メトロポリタン美術館のイメージも残っていたとは言え、あまりの狭さに少しガッカリ。しかも内容も(自分にとっては)たいして面白くない。もともと美術の知識は乏しかったが、日本のCMで見た絵やガイドブックに載っている絵のような有名どころを探して実際に見てみれば少し面白いかも、と思って探してはみたものの、全然見つからない。まぁ、よくよく考えればわかることだが、日本のCMで流れている作品は日本にあるに決まってんじゃん。あぜーん。
ブロードウェイミュージカル |
ミュージカル自体に特別な興味は無い。だが、ブロードウェイと言う名前が付くだけあって、タイムズスクウェアを中心とする街周辺にはいたる所に劇場が存在する。まぁ、せっかく来たんだから見ていこう、というわけで、以前ビデオで見たことのあるBeauty and the Beast(美女と野獣)と、Phantom of the Opera(オペラ座の怪人)を見ることにした。日本公演の場合って、チケットの入手困難度はどのくらいか分からないが、こちらの場合、料金は15ドル程度から購入可能で、自分は双方とも30ドル程度の当日券を難なく購入。買ったのは昼なので、時間まで別の観光地を周り、夜を待つ。
そしてやって来た美女と野獣の夜。小奇麗な格好をするべきだろうか、と内心少し不安になっていたが、心配無用であった。ディズニー作品名だけあって子どもたちの姿も比較的多く目にするのでひと安心。周りもかなりフランクな雰囲気だった。
そして開演時間。なんか、ざわついている中いきなり始まってしまうんだなぁ。おぉ、出てきた出てきた。どれどれ。あっ、英語…(アタリマエ)。でも、以前たまたま見たビデオは英語セリフの日本語字幕であって、しかもその半分程度は歌だったのでだいたい内容はわかる。それに、ミュージカル版もだいたい同じようなセリフを喋っているみたいだ。なにより、子どもの観客の存在も意識してのことかもしれないが、分かりやすいのが非常に助かった。そしてやはり当然と言うか、歌とダンスは確かに素晴らしい。さすがはブロードウェイミュージカルの名が有名なだけはある。内容も英語ながら、ビデオのおかげでほとんど理解できたし、シャレたジョークも面白い。最後にはスタンディングオベーションがしばらく続いたのだが、本当に心から拍手を送っている自分がそこにいた。
これ、本当に良かったです♪ニューヨークを訪れる機会があったら、是非予定に組み込むことをお勧めします。
後日、今度はオペラ座の怪人を見る。こちらは残念ながら事前知識が乏しく、少なからず不安だったのだが、さすが絶大な人気を誇るだけあって、劇場は豪華。そして運の良いことに、値段の割にかなり前のほうで見ることができた。でも…ん〜やっぱりイマイチわからない。全体的なストーリーは分かっていたのだが、細かい部分がよくわからずじまい。拍手するのも、まわりが拍手しているからといった程度で自分もつられて、といった具合で、美女と野獣のときのような感動はこちらでは味わえなかった。そう、字幕無しSPY GAMEと同じような感覚だったのが実に残念。英語が分かればなぁ…
まぁ、一番素晴らしいと言われる作品を(値段の割に)非常に良い位置で見ることができたので、これはこれでよしとしよう。そして、いつか英語がマスターできた日にまた見に戻りたい、と心に想うのであった。
ハードロックカフェ |
世界中に散らばる、もはや説明の必要のないハードロックカフェ。しかし自分が行くのはこれが初めてである。広々とした店内にはミュージッククリップが流れ、お土産屋とバーが隣接する。これと言って購入するような土産はないので(と言うより荷物を増やしたくない)、早速席について食事することにする。しかし…入り口に入れば誰かしらが案内してくれるような店の造りになっていないので、どうやって席につけばよいのか分からない。しょうがないので、かたこと英語で近くの従業員にその旨を伝えることでとりあえず席につくことに成功。メニューを開く。おぉっ、これぞアメリカンというようなメニューが列記されている。その中自分が選んだのは、料金は21ドルとかなり高いTボーンステーキと、5ドル程度のバドワイザーをグラス一杯。しかし、注文するものを決定したはいいが、次なる関門はそれを店員に伝えなければならない事。でも、このテーブルの担当はいったい誰だろうか?アメリカの場合、ご存知の通りテーブルによってその店員の担当が決まっていて、チップもその担当者がもらうことができるのだが、その肝心の店員が誰なのかが全くわからないことにははじまらない。仕方ない。ここはまたひとつ、近くの店員を呼んでしまえ。
というわけで店員をつかまえて注文。しかしその途中で別の店員が割り込んできた。なるほど、このにーちゃんがこのテーブルの担当か。よかった。これで注文できる。
日本人は若く見られがちということで案の定、年齢確認をしてきたが、とうに20歳は超えているから問題無し。
まずはバドワイザーが運ばれてくる。自分、苦いビールは苦手なので日本にいるときも外国産ビールを飲むことのほうが多いのだが、やはり本場で飲むビールは周りの雰囲気も手伝って、ウマい。
そしてお次はTボーンステーキ。デカい皿にドカンと乗せられた骨付き肉に加え、皿からはみ出さんばかりのオニオンとフライドポテト。そしてナイフとフォークに加え、のこぎりのようなナイフ。なんじゃこりゃ、と思っていると、店員のにーちゃんがステーキソースはいるか?と尋ねてきた。テーブルには調味料らしい調味料は塩くらいしかないので、持ってきてもらう。しかしこのソース、日本の味に慣れた自分にはいまいちパッとしない。しかも肉の味もそこそこといったところか。まぁ、これがアメリカなんだからということで不満はないのだが。
半分くらい食べた頃だろうか、担当のにーちゃんが突然背中をポンと叩いて、うまいか?と聞いてくる。とりあえず、でりしゃすと答えるとまた去っていった。こんなフランクな店員、日本じゃ考えられないことから、なんか、アメリカっていうのはこういう国なんだなーと、またひとつ異文化理解を深めることになった(←大袈裟)。
さて、そうこするうちに食べ終えてしまったので、そろそろ店を出ることにした。しかし、最後の関門、それはお金を払う事。さっきまでいた店員のにーちゃんがどこを見渡してもいないのだ。で、またもや適当な店員にちぇっくぷりーずと伝える。しばらくするとようやく担当のにーちゃんがやってきて、伝票を持ってやってきた。料金は31ドルくらい。ん?TAX込みとはいえ結構高いなぁ。えーと、チップは料金の15〜20%くらいだったな。その分は含まれているのだろうか?しかしよく分からん。などと考えているとまたにーちゃんがどこかへ行ってしまう。しかし今度はすぐに戻ってきた。ん?何か手提げ袋を持っている。くれるらしい。思わぬプレゼントに喜びながらも、よくわからずじまいのまま料金を払い、そしてチップを手渡す。もう、お釣りとかといういったこともよくわからないのでそれもチップとして渡してしまう。まぁ、たとえ料金にそのプレゼント代なんかが含まれていたとしても5ドル程度だからよしとする。
店を出てホテルに戻り、袋を開けてみると、おぉっ!これは!さっき飲んだビールのグラスじゃないか。これ、しっかり出来ているし、買えばきっと5ドル以上するだろう。ビールを注文した客に毎回プレゼントするのだろうか。なんでくれたのかよく分からないが、はじめは圧倒されっぱなしだったこの晩御飯もこういった思わぬ贈り物や気さくなにーちゃんのおかげで、結果的には良い思い出がまたひとつ増えたことには違いないのであった。
林家木久蔵ラーメン |
林家木久蔵とは笑点の黄色の着物を着た落語家のことを指し、時々番組内で、「ニューヨークにあるまずいラーメン屋」なる単語が飛び出てくる。外国に行ってまで日本料理を食べることはない、と思っていたが、まぁせっかくだから、ということで噂の?ラーメンを食べてみることにした。店の名は「めんちゃんこ亭」。朝や夕方などは行列ができるほどだという。
閉店1時間前の店内に入ると、そこは日本だった。日本人ビジネスマン同士の仕事後の団らん。日本語表記。それに並んで英語で説明書きがされている。なになに、おにぎりは「rice ball」、それに日本酒祭のポスターには「Japanese Sake Festival」とな。街に点在するSushi Barといいこの店といい、こういった日本料理のネーミングには笑みがこぼれる。
店員のにーちゃんが日本語で「よろしいですか?」と話し掛けてきたので、久しぶりに聞く日本語に思わず戸惑ってしまったのと同時に、さきのハードロックカフェのように四苦八苦することなく、何ら問題無しに注文することができることに少し安堵。それに、聴けば店員同士、日本語で喋っているし、なるほど、日本料理店には日本人以外の店員もいるが、まるっきり日本のお店と変わらないのか。
待つこと数分、噂の木久蔵ラーメンがでてきた。見た目、いつもの醤油ラーメンとほとんど変わらない。具もしっかりお馴染みのものが入っているし、味もいい線いっている。スープもそこそこで、まずくはない。ただ、肝心の麺がどうもねぇ…コシがないというか、なるほど、これが「まずい」と言われる由縁なのか。外国のラーメンはまずいとはよく聞くが、きっと日本人好みの麺が手に入りにくいんだろうなぁ。でもこれはこれでひとつの食べ物として考えればいいんじゃないかな。
料金を支払うとき、今度はちゃんと伝票を確認した。チップは含まれていない、と。チップはいつも通りテーブルの上に置いておいたのだが、店員に「置いたままでいいのか」と聞いたところ、それでいいという答えが返ってきた。しかし、後に韓国料理店に行ったのだが(ほとんど韓国人と日本人しかいない)、その店ではチップは必要ないらしい。その事から考えると、ひょっとしたら日本料理店もチップは必要ないのだろうか。あのとき、「置いたままでいいのか」ではなく、「どう払えばいいのか」「払う必要があるのか」などと聞いておけばよかったかもしれないと少し後悔してしまった。まぁ、旅の恥はなんとやら、という言葉もあるし、毎回毎回どうすべきなのか聞くのもひとつの手かもしれない。次の機会があったらそうしようかな。
ニューヨークのホテル |
概してニューヨークのホテルは高い。しかも税金がこれまた高い。14.25%プラスひと部屋につき2ドルという横暴さ。しかも高い割に設備が整っていないなどのことはよくある。まぁ、海外の中で安全地帯はホテルの部屋であることもあるし、「安全を買う」といったところだろうか。ちなみに自分はガイドブックに記載されている、治安が良い場所の一番安いホテルに何軒か宿泊した。なぜ同じ場所で済まさなかったのかというと、毎回違うホテルのほうが色々な種類が楽しめるだろう、ということからであった。もちろん自分にとって英語で会話するのはタイヘンで、初日のみ日本で予約を取っておいたのでそれはスムーズだったが、2日目以降は自分で交渉しなければならない。ポイントは「予約は取っていないが」「大人一名」「シャワーまたはバス付きの」「一番安い部屋に一泊」の4つ。緊張もあり、最初のうちは「Excuse me, I want to stay here tonight. でも I have ノーりざべーしょん…」などぞ日本語が混じったりして意思を伝えるのが大変だったが、一度喋って部屋が取れてしまえば、それ以降は同じ事の繰り返しなので4日目あたりからは(文法はどうあれ)まったく問題なく交渉することができた。満室で断られるという事が一切無かったのも運が良かった。
そして色々なホテルに泊まったことによる収穫があった。それは西47丁目228番地に位置するホテルエディソン。タイムズスクウェアのすぐそばにあり、ミュージカルを見た後も歩いて1分で帰れる。自分の泊まった中で唯一のボーイの存在するホテル。そして部屋のランクもクイーンサイズベッドで非常に綺麗。それからセキュリティもしっかりしているのに115ドル+TAXと安い。泊まったホテルの中では150ドル程度なのに狭く、しかもシャワーしかないような部屋もあったことも考えると、この立地・設備でこの料金はとてもお得。どうでもいいが、日本からの飛行機はガラガラだと聞いたがそれは本当か、というボーイの質問に、7割程度は埋まっていて、そのうち半数は日本人だった、ということを伝えたかったのだが、それがこの旅行中最大の苦労した英会話だったりする。言いたい事がなかなか出てこないもどかしさといったらそりゃもう…
ついでにいくつか紹介。まずは西31丁目19番地のヘラルド・スクウェア。部屋は狭く、シャワーのみで、立地もまぁまぁではあるがかなり安い。韓国料理店の建ち並ぶコリアンタウンの近くに位置する。料金は85ドルだが、共同風呂の部屋ならば60ドルで泊まることができる。
あと西45丁目132番地のベスト・ウエスタン・アンバサダー。これもエディソンと同じくタイムズスクウェアのすぐ近くという立地。料金は120ドル程度だったろうか。また、唯一ドライヤーが常備されていた。部屋は比較的狭めではあるがとても綺麗。そして軽い朝食付き。ちなみにこのホテルは世界各地に展開していて、そういえば自分も以前のアメリカ旅行で宿泊したことがあった、ということをのちに思い出した。
最終日。飛行機の時間があるのでこの日は観光するような時間はなく、朝食をとり、朝の通勤ラッシュに混じってJFK空港に戻る。帰りもやはり格安の地下鉄を利用。途中、乗換駅を間違えて少し戸惑ったが、もう英会話にかつてほどの不安は無い。行き方を教えてもらって無事Howard Beach駅に到着。初日にお世話になった無料送迎バスに最終日も揺られ、空港到着。
預けるような荷物もなく、何の問題もなく時間を待つこと数十分。そしてようやく搭乗。帰りの便は満席で、香港行きの便に乗り継ぐ客が特に多く、狭苦しい12時間の我慢が続く。しかしアルコールの力を頼り、眠りにつくことでこの苦痛を乗り切る。
成田空港に着く。次第に日本語表記が増えていき、空港を出るとそこは日本だった。成田エクスプレスに乗って新宿で降りると、わずか13時間前までいたアメリカが嘘のように、今まで通りの当たり前すぎる光景が広がる。ビル、車、街行く人。本当に自分はアメリカに行っていたんだろうか。
初めての海外独り旅は幕を下ろした。人は大海を知ると世界観が少なからず変わる、とは言うが、今回は2回目ということもあってそれほど劇的な変化は起こらない。むしろ、海外に行った事のない人間に比較的多いのだが、アメリカの良いとこ取りをするアメリカかぶれな人間はよく耳にするが、それこそが世間知らずなのではないか。特にニューヨークで暮らすことに関しては常に、「常に」前向きな、プラス思考な人間でないと辛いだろう。そういう意味では、程よく厳しく、程よく甘い日本の社会は暮らしやすい範囲に含まれるだろう。
彼らニューヨーカーの強さ、明るさを少し分けてもらおうと目論んでいたものの、結局変わるのは、いや変えるのは自分自身の行動であり考え方に依存するだけなのだ。変わりたいのであれば決して他力本願ではなく、まず自分の意志で変えようと努めなければ、人は決して現状を打破することはできないだろう。インナースペースの大海は未だ知らずじまいなのだ。
いくら待っていても、誰も背中を押してはくれない。自分の意志で、自分の力で動き出せ。
しかし、いったん動き出せば、世界はいくらでもそこに待っている。
世界が呼んでいる。
蛙よ、海へ出ろ。