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〜 閉会式 / はたして自分はこの先、どこへ向かってゆくのだろう 〜



しばしの別れ



激闘の一日が明け、穏やかな朝を迎える。

朝食を取り、荷物をまとめ、閉会式に出たら今日はそのまま空港に行って東京に戻らなければならない。



ウエットスーツは程よく乾いたようだ。
ただ、このすがすがしい天気も変わりやすいようで、早朝は大雨が降っていた。

とすると心配の種は…
トランジッションエリアに残したままの自転車。

雨ざらしになっていやしないだろうか。
さび付いてはいないだろうか。。。


相部屋の彼と2人で、歩いてトランジッションエリアに向かう。




マンホールにもトライアスロンをあしらったデザインが。




昨日これを見たときはやはり、嬉しかった。




トランジッションエリアは案の定、濡れた路面になっていたものの、大会関係者が昨晩のうちにビニールシートで覆ってくれたお陰か、自転車にはほとんど雨水が付いていなかった。


宿に戻り、自転車を再びハードケースに梱包する。




すっかり汗をかいてしまったので、フィニッシャーポロシャツに着替える。
着心地が良かったのが印象的だった。



それにしても、気温が高い。
太陽が顔を覗かせれば、やはり南国。おまけに湿度も高い。

もし昨日がこの天候だったら、暑さにやられてもっと成績は悪かったかもしれない。。。





自転車を復路の航空便に出すべく、これを宿に預け、完走証を受け取りに閉会式会場へと向かう。

宿を出ると、もう一人の相部屋仲間・トライアスロン部所属の彼が自転車のメンテナンスをしていた。
彼も足首を少し前に痛め、その治療経過が今回のレースの不安材料となっていたが、どうやら無事完走できたようだ。

健闘をたたえ、またどこかのレース会場で会おうと握手し、別れる。





初日に訪れたのと同じ、閉会式会場に着く。




会場は初日、選手エントリーで訪れたときと同じようにまだガランとしていた。

完走証を受け取った頃には、、、
相部屋の彼の飛行機の時間が迫ってきていた。

タクシーをつかまえ、荷物を入れ、
またどこかのレース会場で会おうと握手し、別れる。



閉会式まではまだ少し時間がある。




そこで、土産の購入そして、、、
PowerBarブースで休憩を取っている例の2人を見つけ、完走報告をする。

そしてやはり聞かれる次なる目標。
そうだな。。。

やっぱり、ひとつステップを上ったら次に進むべきだよな。
そのほうが楽しいし、何よりもまた生きる大きな目標が出来る。

が、ひとまずは…今年はいいだろう。
また来年。
来年は…再び佐渡に戻るか、鳥取か、それとも長崎アイアンマン・ジャパンか。

しかし、きっとそのいずれに参加したところで、きっと今回のようにPowerBarブースで彼らに再会できる気がする。
単なる希望的観測ではない、何か確信じみたものを感じ取った不思議な感覚だった。




冷房のあまり効いていない会場内に戻り、mixiに書き込みをしながら閉会式の時間を待つ。



…mixiといえば、レース後に覗いてみると多くのコメントが寄せられていて、目頭が熱くなったっけ。

事前にチェックポイントごとの目標通過時刻を書き込んでいたんだけど、それに対する実際の通過時刻がオフィシャルサイトで速報掲示されるので、みんなそれと見比べながら応援してくれていた。

宮古島にただ一人乗り込んで孤独なレースを展開していたけど、自分もポイントを通過するたびに「見てくれているかなぁ」と想いを馳せ、そのたびに不思議な繋がりを感じ、そして前に進むことができた。


目に見えるもの、目に見えぬものの数多くに支えられながら、ボクらは生きている。




同じ光景、異なるキモチ −閉会式






閉会式。
帰りの飛行機の都合もあるが、今日は月曜日。
みんな有給休暇を取るなりしての参加らしく、やはり初日よりかは参加人数が少ないようだ。

幸い自分の飛行機は夕方のため、ある程度閉会式には出られるが、きりの良いところで切り上げなければタクシーがつかまらず、飛行機の時間に間に合わない可能性だってある。

なので少し早めに出よう。



表彰式。


※表彰式の様子を撮影したデジカメ動画をご覧いただけます。
ダウンロードはこちらからどうぞ。(15.3MB)



佐渡でも思ったが、やはり今回も表彰台に立つ彼らに対する「無いものねだり」的な憧れや羨ましさは感じない。
同じ舞台に立ったからこそ、その実力差があまりにも圧倒的すぎて、とてもそんな恐れ多い気持ちなど生まれるよしもないのだろう。


ただ、少なくとも不安に満ちたまま迎えた初日のキモチと今とでは、
初日と同じこの場所にいる自分のキモチに、大きな変化があることだけは確かだ。

本当に、本当によくやった。
よくやれた。

凄いな俺。
まさか本当にやれるとは思っていなかった。。。


でも…なんだか今は、何でもできるような気がする。

あぁぁ・・・なんだか今は、どこまでも行ける気がする。

いったい自分はこの先、どこまで行けるんだろう。
どこへ向かってゆくのだろう。。。





長い長い表彰式の後、お待ちかね、パーティが始まる。



食べ物に群がる人々。
しかしそれも初日の熱気とはどこか違い、雰囲気に余裕が…安堵したような空気があった。





「疲れたねぇ。」「あぁ。」
「よくやったねぇ。」「あぁ。」




さて、そろそろ出るか…。




ありがとう。。。





タクシーで空港に戻り、荷物を預ける。




出発までの待ち時間、そこで相部屋仲間・トライアスロン部の彼に再会。
軽く言葉を交わし、



中に入り、



搭乗ゲートが開き、








宮古島を後にする。。。



様々な出来事が浮かんでは消え、また浮かんではこれを懐かしみ、離れる夢の舞台を実感する。
しかしそこに寂しさは無い。

なにせ、日本国内にはロングディスタンスレースがまだあと3つもある。
まだまだやることはたくさんあるからね。。。





那覇空港に戻る。




東京までの乗り継ぎ便までは、まだ少し時間がある。
そこで、



沖縄名物・ソーキの入った「ソーキカレー」を食べる。




飛行機が到着した。




行楽客が行列を作る。
そこにまぎれ込むロングディスタンス トライアスリートがひとり。

往路こそ、その乗客のほとんどがロングディスタンス トライアスリートだったが、今となっては行楽客にまぎれる一人の客に過ぎない。


日常生活へ戻っていく実感。




数時間のフライトを寝て過ごし、、、



羽田空港到着。




荷物を回収し、




モノレールに乗って、夜の街へと消えてゆく。。。




次なる目標に向かって



「死ぬまでにロングディスタンストライアスロンを完走する。」

このフレーズを口にするようになったのは、いつの頃からだっただろうか。


夜のゴール会場を煌々と照らす照明、そのもとでゴールテープを高々と掲げる選手の姿。
子どもを抱え、奥さんと手をとってゴールする姿。

11年前に見た、トライアスロン専門誌でのシーン。
これをいつか実現させたい。

そう思って夢を馳せていた。



わずか4年前までぐーたらな生活を送っていた。

ふと、競技を再開した。

総距離わずか25.75kmレースで精一杯だった4年前。
現役時代の51.5kmレースの記録を超えた2年前。
自転車レース「ツール・ド・おきなわ」の参戦、そして去年の埼玉&佐渡ミドルディスタンス トライアスロンの完走。

佐渡ロングディスタンス部門のアスリートに完全に感化され、クレイジーな練習を続けた秋。


去年は落選した宮古島トライアスロン。
今年は初参加者の多くが当選し、自分もその恩恵を享受した。


こんなにも早くチャンスが来るとは思わず、鼻息荒く練習に明け暮れた冬。
予想だにしなかったヒザの怪我。
絶望に打ちひしがれた冬。

完治しない春。


不安のままに迎えた当日。。。




いつも、どんな時も心に留めていたフレーズがある。
心が弱った時も必死にすがったフレーズがある。


「大丈夫。すべてはきっと、うまくいく。」



どんな苦難をも乗り越え、困難に直面しても決して最後まで諦めること無く、信念の炎を燃やし続けられたからこそ起こった奇跡。

自分を信じるというのは、こういう事なのではないだろうか。



人間、誰だって不安になる。
打ちのめされる。
弱気に潰されそうになる。


でも、
どこかで、どこかで諦めきれない自分がいた。
諦めない自分がいてくれた。


自分を信じることが出来なくて、何を信じることが出来ようか。



またひとつ、重ねた成長。

歳を重ね、経験を重ね、次なる目標へと旅立つ。



その先にどんな困難が待ち構えていようと、決して悲観することは無い。

諦める必要も無い。


なぜなら、
その先にある終着点は、自分が諦めさえしなければ、自分の望む世界がいつまでも待ってくれているのだから。



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