>> 列島縦断300km <<

2000年5月

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心地よい汗を流せる初夏の土曜日、これはちょっと旅行とはまた違うのだが、これはこれでなかなか凄いことをやってのけた次第で。というのも、東京の中央線快速の終点「高尾駅」から新潟県の「糸魚川駅」に至る、全長300kmにも及ぶ距離を自転車で1日で走りきってしまおうという、ファストランというイベントが明治大学の伝統行事のようなものがあるのだが、それと似たような事を実行したのである。
当時私は、自転車で配送業をおこなう某メッセンジャーなる会社に就いており、ようするにバイク便の自転車版ですな。そういえば前に映画にもなったのだが。ご覧になっただろうか?…まぁそれはいいとして、そのメンバーの有志による勇姿を…というわけでもなく、いつの間にか自分もこのおかしなイベントに参加する方向になっていた。
ちなみにメンバーのほとんどが前日夜遅くまでいつもの仕事+準備に追われ、平均睡眠時間3〜4時間という、オイオイそれで本当に大丈夫かよって感じですな。


 

AM7:30

高尾駅に続々とメンバーが集まり、予定通り午前7:30に出発…と思いきや、いきなりの遅刻者数名。てなわけで、出走は30分遅れの午前8時ジャストに変更という、相変わらずフランクな調子で、土曜日だというのにこんな朝っぱらから仕事や部活に急ぐ通勤通学の老若男女の白い目をもろともせず、各自が黙々と準備を急ぐのであった。いや、けっこう和気藹々とやっていたっけ。

それにしても普段、内勤をやってる方々のチャリンコ姿が見れるとは思いもしませんでしたわな。機動戦士ガンダムのレーシングジャージ着てるし。

  朝礼風景

 

相模湖  

AM9:00

さて、今度こそ時間どおりの8時に出走し、しばし市街地を進む。とは言うもののも、走ることものの十数分で商店は無くなり、あたりは初夏に向けて青々と繁る森の中にただひたすらと突き進むわけである。そしてイキナリの難所、大垂水峠越えに挑戦。
実は最後方から走り始めた自分、結構ゆっくり走っていたものの、気付けば先頭の姿が見えなくなってしまう。「む。こりゃヤバい。」ってことで下りで一気にカッ飛ばすことにする。

いや〜、300kmも独りで走りきる自信がなかったんだもので。

下りの”攻め”は心得たもので、昔から登りで離され下りで追いつくレースパターンがすっかり染み付いている実力が遺憾なく発揮され(汗)、相模湖の街並みに入る頃には先頭に追いついていたので、とりあえずホッと一安心。いや、心から一安心。

 

AM11:00

先頭集団に合流してからひたすら集団についていくこと数十分。離されないように幾分緊張しながら一所懸命走っていて、ふと後ろを見ると誰もいない。気付くと自分を含め、4人になっていた。まぁ、別に順位を競っているわけじゃないし、このメンバーで協力してゴールを目指すことにする、ってことで意見は一致。

…そしてここから残り250km、ゴールまでこのメンバーで走ることとなるのだった。いや〜この頃はまだまだ余裕だったなぁ。

実はこのあとパンクをしたり、集団から離されたりしたものの、ちゃんと待っていてくれたので非常に心強かった。でも他の3人も少し休憩したかったそうな。なるほど、キツいのは皆一緒か、と、またまた少しホッとした一瞬であった。

  心身ともにまだ余裕

 

まだまだ。あと半分。  

PM3:00

松本までもう少しという、塩尻付近。まだ半分あるのに、そろそろ足が限界にきつつあった。念入りにマッサージをするも、絶対的な疲労、そして今更襲ってくる睡眠不足が容赦なく自分を責めたてるわけで。これまでの独走自己ベスト記録?は220kmであったのでもう少しイけるハズ、それに今回は4人いることだし、と、自分を励ます。
幸運にも、塩尻を突破し、国道20号から19号に変わったあたりから先に目立った峠はなく、しかも運の良いことに強い追い風により、集団を引っ張る状態にあっても平均時速は40km/hを容易に維持することができていたのであった(自分が先頭に出て風除けになって集団を引っ張り、順番に交代して体力を温存するというのが自転車競技の基本中の基本なのである)。

 

そして、残り100kmを切る頃から、雲行きが怪しくなり、陽も落ちてきた…がなぜかすがすがしい気持ちで一杯だった。道路案内板もついに「糸魚川」の文字が出現するようになり、4人にも余裕が戻りつつあり、会話も弾む。そしてますます足が回る。アドレナリンが分泌されまくる。ナチュラルハイ?ランナーズハイ、いやいや…

 

…そう。これこそがsecond wind…

 

陽もほとんど落ち、冷たい雨が体を冷やす。が、ついに残り50km、列島の北側は下り道と連続するトンネルが続くばかり。雨ガッパを着たかったが、この調子を止めたくない、という気持ちが皆にあり、ひたすら北を目指す。まるで何かに憑り付かれたかのように。平均時速は軽く60km/hを上回り、一気に残り距離を縮める。

ついに完全に夜となってしまった。初夏だというのに、これほどまでに陽が落ちるのが早いとは…それに、下れど下れど、一向にゴールが見えてこない。そんなとき、ついに遥か彼方に街の明かりが見えてくる。残りあとどれくらいだろうか。

そして。

午後7時46分、ついに糸魚川駅到着!辛うじて12時間を切る、見事な完走であったとたたえ合い、

 

…ゴールに誰もいないじゃん。

 

 


ずぶ濡れの体を拭き、一足先に宿に入ってしばしの団らんをしているうちに、残りのメンバーも少しずつ、そして続々と集まってきた。結果的に完走は6人。およそ半数は生還?したわけだ。
その後、風呂に入り、晩御飯をたいらげ、実に深い眠りに入り、本当に長い長い一日が終わった。

 

翌朝、全員が一緒に朝食をとる。なんだか…学生時代を髣髴させるなぁ…と感傷に浸ってみたりする。のもつかの間、「じゃぁ、飯をたいらげたら各自が適当に帰ってください。明日は遅刻しないように出勤してね♪」と、これまたフランクなお言葉。シャチョー、途中でリタイアして、サポートカーにチャリが入らないからって、レンタカー借りてるし。

  疲労困憊の図

 

広く美しき日本海

なんだか若さのパワーとその勢いに任せて突っ走った感触が、これがまた気持ち良く、今でも鮮明に一挙手一投足を思い出すのである。帰り道は特急でおよそ3時間。わずか4分の1の時間であっという間に元の生活に戻ってしまうという、寂しさにも似たあの感覚はこの時ならず、旅行に行くたびに何度も経験していることではあるけれど、慣れないもんだなぁ。
心地のよい初夏の海風。緑色の山しかない、車窓からの景色。いつかまた、機会があれば…

 

 

 

最高のメンバーたちの図

 

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